『ダークナイト』解説考察|ジョーカーのその後、バットマンの悩み、ジョーカーの意図、手紙を燃やす理由など | - Part 2

『ダークナイト』解説考察|ジョーカーのその後、バットマンの悩み、ジョーカーの意図、手紙を燃やす理由など

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ダークファンタジー

ジョーカーの狙いと行動

ダークナイト 
(引用:https://www.ladbible.com)

ジョーカーは思いつきで行動してるみたいな発言をしていましたが、その犯行は常にバットマンがどう動くかを予測した上の行動で、思考回路や目的も『一般的な犯罪者心理』には当てはめられないため、バットマンや警察がジョーカーの行動を予測することも困難でした。

そんなジョーカーの行動と発言から目的を整理します。

ジョーカーがハービーとレイチェルを別々の場所に監禁した理由

ジョーカーの目的はラウ税理士を拘置所から脱走させることでした。
そして拘置所からラウを出すためには、拘置所内の警備を手薄にして武器を持ち込む必要があります。

そのためには有能なゴードンがいるとやりにくいので、拘置所から出ていて欲しかったのです。
そしてジョーカーが考えたゴードン自ら行動するような案件が『市民の誘拐』だったのです。

ジョーカーは先日のパーティーでハービーを殺し損ねているため、ハービーとハービーの交際相手であるレイチェルを誘拐することにしたのです。

そして、2人をあえて別々の場所に監禁した理由は、恐らく保険のようなものだったのではないでしょうか。
ジョーカーは、ハービーがバットマンじゃない可能性も想定していたということです。

もし2人を1か所に監禁していてバットマンがハービーではなければ、ゴードンは動かずバットマンが助けに行くことになるので、ジョーカーはその可能性を潰したかったのです。

拘置所にバットマンが現れた時(ハービーがバットマンではないと確定した時)、ジョーカーは「保険をかけておいてよかった」と内心自分で自分を褒めていたかもしれません。




あべこべの住所を教えた理由

拘置所で、ジョーカーはレイチェルとハービーの監禁住所をあえてあべこべに教えました。
ジョーカーは、バットマンがレイチェルに好意があることを、ウェイン邸でのパーティーで知っています。

これはバットマンにとって『正義(ハービー)』を取るか『私欲(レイチェル)』を取るかの選択になりますが、ジョーカーはすでにバットマンの選択を先読みして、あえてあべこべの住所を教えたのです。

最大の狙いは、レイチェルを失ったバットマン(とハービー)の絶望する様子が見たかったからでしょう。

バットマンはジョーカーの思惑に気付かず、 ゴードンはレイチェル救助に失敗してしまい、またジョーカーの狙い通りになってしまいます。

 

ジョーカーがハービーに目を付けた理由

ジョーカーがハービーに目を付けたのは、ハービーを悪の道に引きずり込みたくなったからです。
ゴッサムの『正義の象徴』と呼ばれるハービーのような人間が闇落ちしたら、人は誰でも悪に染まると証明することになります。
ついでに、ハービーの闇落ちで市民が絶望する様子も見てみたかったからではないでしょうか。

人は心が弱っている時は他者からの影響を受けやすいです。
ジョーカーはそれを知っていたからこそあのタイミングでハービーに接触したのでしょう。
ジョーカーの悪魔の囁きを聞いたハービーは完全に闇落ちしてトゥーフェイスになってしまいました。

 

2隻の船の爆破

ジョーカーはゴッサムから逃げようとする市民を乗せた船2隻(一般人の船と囚人の船)に爆弾を仕掛けていて、一般人の船には囚人の、囚人の船には一般人の船の起爆スイッチを置いていました。
そして1時間以内にどちらかの船がスイッチを押したら、押した方の船は助けるというゲームを仕掛けました。

ジョーカーは『どちらかが起爆スイッチを押すだろう』と想定して『人間の心(本質)が醜いこと』を証明しようとしていましたが、どちらの船もスイッチを押さなかったのでゲームは失敗に終わりました。

ジョーカーはこの失敗について「希望があったせい」と発言していました。
船に乗っていた人々は、バットマンか警察が助けに来てくれることを信じて最後まで待っていたから誰もスイッチを押さなかったのです。
逆に言うと、もし乗船していた人々が「誰も助けてくれない」と思っていたら、どちらかがスイッチを押したに違いないとジョーカーは思ったのです。

ジョーカーはどちらの船もスイッチを押さなかった時のために自分用のスイッチも用意していて、0時になったら自分でスイッチを押すつもりでいましたが、バットマンに邪魔されたため予告通りに行動できませんでした。

個人的にはゲームそのものよりも、より多くの市民を船に誘導したジョーカーの巧みなやり口に感心してました。

 

ジョーカーのその後は?

バットマンがジョーカーを宙吊りにして動きを封じた際、精神病院(アーカム)に入る話が出ています。
原作コミックにもジョーカーが逮捕後に精神病院に入れられる流れがあるので、ジョーカーはアーカム行きでほぼ間違いないでしょう。

ちなみに原作コミックでは、後にジョーカーは精神病院から脱走して再びバットマンと戦います。
ジョーカーはバットマンを『お気に入りのおもちゃ』のように思っているので、ジョーカー的に言えば『バットマンと遊ぶ』ことになるでしょうか。




その他の考察

主にレイチェルとアルフレッドについてです。

レイチェルがハービーを選んだ理由


(引用:https://filmest.jp

レイチェルは『ハービー・デントと結婚します』という手紙をブルースに残し、その後ジョーカーの罠にはまって死んでしまいました。
レイチェルはブルースを愛していたはずなのに、どうしてハービーと結婚することにしたのでしょうか。

答えは手紙にも書いてありましたが、レイチェルはゴッサムがバットマンを必要としなくなる日(ブルースがバットマンを卒業できる日)は永遠に来ないと確信したからです。

ブルースを愛しているなら、約束とか関係無くくっつけば良いのにと思いますが、彼女の中ではそう簡単な話ではなかったようです。

常に命の危険が付きまとうバットマンを続けるブルースと結婚しても心安らぐ家庭は築けないでしょうし、『法律を無視した活動』が重宝されるバットマンと結婚することは、検察という法の下で働いているレイチェルにとっては『後ろめたさ』があったはずです。
つまりレイチェルにとってバットマンは危険な恋だったのです。

そんなレイチェルの前に現れたのがハービー・デントでした。
ハービーはバットマンのような『正体不明の自警市民』ではなく、ブルースの言葉を借りると『堂々と顔を出して悪と戦う本物の正義のヒーロー』です。
レイチェルはそんな2人の違いというか、好き嫌いは後回しにして『どちらと結婚すれば幸せになれるか』を比較していたのかもしれません。

そして、彼女の発言に振り回されてハービーの記者会見の演出を止めようとしなかったブルースの行動が、レイチェルには決定打になってしまいました。

どちらかというと、ハービーを選んだというよりはブルースに失望したというニュアンスが大きかったように見えますが、レイチェルは、ブルースが正義よりも彼女(私欲)を選んだことが許せなかったのでしょう。

 

ギャングのマローニが警察にジョーカーを売ろうとした理由

病院爆破の後、ゴードンの前にマローニが現れてジョーカーの居場所を教えます。
マローニがジョーカーを売ろうとしたのは、マローニがジョーカーの異常さを知って手を組んだことを後悔したからだと思います。

ジョーカーの次のターゲットがレイチェルだとわかり、ゴードンがマローニに詰め寄った時、マローニは「ジョーカーが怖くて誰も奴を売らない」と答えています。
ジョーカーを近くで見ていたマローニは、ジョーカーに忠誠を誓うことに意味がないことを悟ったのでしょう。

ジョーカーの仲間になっても利用された後は殺されるし、反抗しても殺されるなら、少しでも生き残れる可能性が高い選択肢として『ゴードンに助けを求める』ことを選んだのです。

そして自分がジョーカーの標的になる前に警察に訴えて、ジョーカーを排除(身の安全を確保)しようとしたと思われます。  

 

アルフレッドがレイチェルの手紙を燃やした理由

Top Ten Alfred Pennyworth Quotes | Movies-Films-MotionPictures
(引用:https://moviesfilmsmotionpictures.files.wordpress.com

執事アルフレッドは、レイチェルがブルースに宛てた手紙を燃やしました。
それは「レイチェルは自分を選んだ」とブルースが勘違いしていたままの方が良い、真実を知らせるべきではないとアルフレッドが判断したからです。

ブルースの親代わりでもあるアルフレッドにとって一番大切なのは、ブルースの心の安定を保ってあげることです。
もしブルースが真実(フラれていたこと)を知ってしまえば深く傷つくでしょうし、自暴自棄な行為に走る可能性もあるので、身を案じてのことだったのでしょう。
だから手紙を見せず、真実を闇に葬りました。

最愛の女性レイチェルと頼れる友人ハービーを失くしたブルースにとっての唯一の救い、原動力は「レイチェルが選んだのは自分だった」と信じることです。
たとえそれが真実ではなかったとしても、その幻想を信じることが彼の精神的な支え、救いになります。
それは皮肉的に、バットマンの「真実だけでは人は満足しない、幻想を満たさねば」という言葉と繋がっています。  

 

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感想などお気軽に(^^)

  1. RYO より:

    解説で作品への理解が深まりました。ありがとうございます。

    個人的にひっかかるのは、レイチェルの発言です。
    「正体を明かしたら結婚は夢」だとブルースに言ったにもかかわらず
    ハービーの記者会見でブルースが名乗り出なかったことに対して
    「卑怯だ」と批判していました。
    「正体を明かしたら結婚は夢」だと発言していた時には、記者会見のような状況は想定していなかったでしょうが、一貫性という視点で見ると
    少し気になる点でした。
    とは言えケースバイケースだと思うので、レイチェルにとったら記者会見のような状況では正体を明かして欲しかったのでしょうね。

    • mofumuchi より:

      RYOさん
      コメントありがとうございます!
      レイチェルの行動は私も疑問というか、悪く言ってしまいますがそもそも結婚する気が無さそうというか、結婚をダシにブルースを都合の良いようにしていたようにしか見えませんでした。。笑
      とはいえレイチェルはブルースとハービーどちらを選ぶか迷ってハービーを選んだという過程もありますし、そういった気持ちの揺れが言動に表れていたんだろうと思っています。

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