映画『私の男』ネタバレ解説|ラストの台詞、血の雨、豚の餌発言についてなど12の考察 | 映画鑑賞中。

映画『私の男』ネタバレ解説|ラストの台詞、血の雨、豚の餌発言についてなど12の考察

クライムドラマ
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映画『私の男』の解説、考察をしています!

2007年の第138回直木賞を受賞した同タイトル小説を映画化した作品。
養子縁組を結んだ親子の禁断の愛の物語。

制作年:2013年
本編時間:129分
制作国:日本
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田一樹
原作:小説『私の男』桜庭一樹

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感想(16件)

 

※年齢制限について
本作にはR15+の年齢制限があります。
刺激の強い性描写と激しい出血を伴う殺人シーンのためです。

キャスト、キャラクター紹介

腐野 花(くさりのはな)…二階堂ふみ
9歳の花…山田望叶

津波で両親と2人の兄妹を亡くし孤児になった少女。
元々の名字は『竹中』だったが、淳悟に養子として引き取られて『腐野』に変わった。
独占欲が強く、養父の淳悟に執着する。

腐野 淳悟(くさりのじゅんご)…浅野忠信

海上保安部の調理係。花を引き取って育てた男。
淳悟の両親は彼が若い頃に2人とも他界している。
「家族が欲しい」と花を養子にした後、成長していく花を女として見るようになる。
大塩の孫の小町と長年交際している。

大塩藤竜也

現役引退した地元紋別の名士。
町で彼の世話になっていない人はいないと言われる程世話焼きで人望の厚い人物。
かつては道内飲食チェーン店の社長だったが、バブル崩壊の影響で倒産した。
奥尻島の避難所で初めて花を見てからずっと気にかけて、毎日のように様子を見にくる。

 

・その他のキャスト

大塩小町(オオシオコマチ・大塩の孫)…河井青葉
田岡(警察官)…モロ師岡
尾崎美郎(オザキヨシロウ)…高良健吾
ダイスケ…三浦貴大
花の父…竹原ピストル
大塩暁(オオシオアキラ、大塩の孫)…仲野太賀
小町の同僚…安藤玉恵
章子(花の同級生)…相楽樹
美郎の先輩…三浦誠己
花の同僚…松山愛里
タクシー会社の事務員…広岡由里子
タクシー運転手…康すおん
避難所の老婆…吉村実子
海上保安官…吉本菜穂子 ほか

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あらすじ前半


(幼い花と20代の淳悟 引用:https://tsutaya.tsite.jp

1993年。奥尻島に住んでいた10歳の竹中花は、※北海道南西沖地震で親兄弟を失った。
その後、避難所に現れた花の遠縁だという海上保安官の腐野淳悟(浅野忠信)に引き取られ、淳悟の住む紋別で育てられた。
※地震の際、一番深刻な被害が出たのが奥尻島だった。

淳悟は職業柄、一度海に出ると数日戻らないことが多かった。
花は現役引退した地元の名士 大塩(藤竜也)をはじめ、近所中の大人達から世話になりながら育った。

淳悟は、大塩の孫の小町(河井青葉)と交際していた。
交際期間は長く、小町は結婚を望んでいたが、淳悟からそのような気配は一切感じられなかった。

ある日の夜。小町は淳悟のコートのポケットからプレゼント用の小箱を発見する。
婚約指輪かもしれないと思いこっそり開けてみると、中身はピアスだった。
それはデザインからして明らかに小町へのプレゼントではなかったため、怒った小町は黙ってピアスを持ち帰ってそのまま捨ててしまった。

町内の集会所で夕食会をした日。
小町は集会所の2階の部屋で、花が淳悟の指を舐めているのを目撃した。

その後、小町は淳悟がまたピアスを買って花にプレゼントしていたことを知る。
花も淳悟に恋愛感情を抱いていることを知り嫌悪感を感じた小町は、すぐに淳悟と別れて東京に引っ越した。


(淳悟について話す花と小町 引用:https://tsutaya.tsite.jp

数年後。花は高校生になり、淳悟とは肉体関係を持つようになっていた。

ある日の早朝。2人が体を重ねていた時に外から物音が聞こえた。
外にはもう誰も居なかったが、大塩に見られてしまったことを確信する。

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(大塩に見られていたことに気付く花と淳悟 引用:https://www.video.unext.jp

その日の下校中、花は大塩に会った。
大塩は「一刻も早く淳悟から離れるべきだ」と言い、旭川にいる花の遠い親戚に、花が高校卒業するまで面倒を見てもらうように話をつけてきたと打ち明けた。

大塩は淳悟と花が実の親子であることなどを明かして説得しようとすると、花は「そんなのとっくに気付いてるよ!」と激怒し、大塩を紋別の海に浮かぶ流氷に突き飛ばしてそのまま逃げ帰ってしまった。

花が産まれる約1年前、淳悟は母親に暴力をふるったため、遠縁である花の両親に短期間預けられていた。
淳悟はそこで花の母と男女の仲になり、母は花を身ごもったのだった。

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あらすじ後半※ネタバレしてます

淳悟が海から帰ってくる日。
花は警察官の田岡(モロ師岡)から、大塩が沖合の流氷の上で凍死していたのが見つかったと知らされた。

淳悟が帰宅すると、花はすぐに大塩を殺したことを告白した。
「後悔してない」と言う花の頬を淳悟は優しく包んだ。

その後、2人は逃げるように東京に引っ越して、借家の一戸建てで新生活を始めた。
淳悟は引っ越しを機に海上保安官を辞めてタクシー運転手に転職し、花は都内の高校に転校した。

数カ月後、淳悟が1人で自宅に居た時に、警察官の田岡が突然訪ねて来た。


(淳悟を訪ねてきた田岡刑事 引用:https://tsutaya.tsite.jp

田岡は家に上がりこむと、「豚の餌だ!」と言いながら壊れた花のメガネを淳悟に見せた。
それは花が大塩を殺した時に、どこかに落として失くしていたメガネだった。
淳悟はとっさに田岡を包丁で刺し殺した。

その後、帰宅した花は台所にうずくまる淳悟と田岡の死体を見て状況を理解し、その場にへたり込んだ。

花は短大を卒業し、派遣社員として大手会社の受付嬢として働いた。
一方で淳悟は無職になり、一日中酒を煽って人生に後悔する日々が続いた。

ある日、花は派遣先社員の尾崎美郎(高良健吾)と親しくなり、お洒落なバーでデートした。
美郎は酔い潰れた花を自宅まで送った時に初めて淳悟に会った。
美郎は淳悟に言われるままに家に上がると、花と淳悟が明らかに親子ではなくカップルの雰囲気を醸し出しているので、美郎は驚きで固まってしまった。

花が寝た後、淳悟は美郎の服を無理に脱がせたり指を舐めたり「お前には無理だ」と言い放つなどの異常行動をとり、美郎が怒ったところで家から追い出した。

美郎との破局がきっかけで、花は淳悟から離れて一人暮らしを始めた。


(美郎の服を脱がせる淳悟 引用:https://callme-ojisama.com

約3年後。花はダイスケという青年と婚約し、高級レストランで淳吾に結婚の報告をした。

淳悟は花に「綺麗になったな」と声をかけた後、ダイスケにも「お前には無理だ」と言い放った。
ダイスケが料理を注文している間、花は靴を脱いだ足を淳悟のふくらはぎに這わせながら、口パクで「おめでとう、は?」と祝福を強要した。
淳悟は息を呑み、美しい花を見つめた。

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感想、解説、考察など


(引用:https://eiga.com

撮影当時19歳だったとは思えない妖艶さを見せてくれた二階堂ふみさんに、年を重ねるごとに花に依存してダメ男と化していく淳悟を演じた浅野忠信さんも、相変わらず良い味出してくれてました。

二階堂ふみさんの、動物モチーフの耳当てを着けた中学生のシーンと、浅野忠信さんがどんなに若作りしても20代後半には見えなかった点以外は楽しく鑑賞させていただきました。

特に冒頭の、花が流氷の海から産まれるみたいに陸に上がるシーンは、こっちまで冷たい水につかったみたいに息が苦しくなりました。

気になったシーンを振り返り、原作小説とも比較しながら考察します。

 

花について


(引用:https://twinavi.jp

映画の花は、小説の花よりもメンヘラな部分を強調して描かれていたように感じます。

小説には地震が起こる直前の花と家族の様子が描かれています。
その情報を元に花の家族について補足すると、花の両親は奥尻島で民宿を経営していて、母は元ホステスで22歳の時に花を産んでいます。
震災当時9歳だった花には、中学生の兄と小学校低学年の妹がいました。
兄と妹は父親(花の母の夫)にそっくりなのに、自分だけ兄妹と顔立ちが違うことや、近所に住む父の姉夫婦から花だけ好かれていないのを気にしている様子も描かれています。

 

母親の死体を蹴る花

9歳の花が避難所で母親の死体を見た時、花は死を確かめるように死体を蹴ります。
その様子は、まるで虫や動物が死んでいるか確かめるかのようでした。
普通はすがりついて大泣きするような場面ですが、それは親を好きだった場合に取る行動だと考えると、花は母親が好きではなく、どちらかというと嫌悪感があったのでは、と考えられます。
原作小説では、母親の死体は見つかっておらず、花が死体を蹴るという行動もしないので、映画の花はよりサイコパス風に描かれているように思います。

映画で地震前の花の生活は一切描かれないので、語られる過去の話などから推測するしかないですが、少なくとも花の母は、一時的に預かった親戚の青年と不倫してしまうような女ということです。
一般的には倫理観に欠ける行動で、少なくとも淳悟は後腐れの無いその場だけのアバンチュールを楽しんでいたような懐かしみ方をしていました。

見方を変えて、花の母が『淳悟の元恋人』という点に着目すると、淳悟の女を排除しようとする花の姿勢を表現していたようにも思えます。

一方で、花が『性』に対して異常な程早熟だったのは、花の母親の普段の行動が関係していたのではないかと推測がよぎりました。
子どもは親をよく見て真似をしながら学び成長します。
花は母親に無意識の嫌悪感を抱きつつ、似る所は似てしまったというか、男が喜ぶ仕草やポイントを母から学んだのでしょう。

母親は死体を蹴り、生きていた時の顔すら出てこないのに対して、花は父親を『自分を必死で守ってくれた頼もしい存在』と記憶していて、顔もちゃんと覚えていたようです。
この育ての父親が頼れる存在だったからこそ、淳悟には理想の父親像と恋人像の両方を重ねてしまい、過度な依存に至ったのではないかな〜と思います。

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水を飲まない花


(引用:http://blog-imgs-88.fc2.com

飲み水を手放さないのは生きることへの執着よりも、『自分の物』に対する執着の方が強いことを示してしたのではないでしょうか。
淳悟がキャップを開けてやっても飲まなかったからです。

この時の花はペットボトルの水しか頼れる物がありません。
飲むための水なのに、飲んでしまうのがもったいなくて、失いたくない気持ちの表れで、花の強い独占欲が描かれていたように見えました。

また、家族も家も失って避難所に連れてこられた花は、少しでも不安感を和らげるためにペットボトルを抱きしめていた(すがれる人間が居ないから)、という心理状況も表していたように見えます。

そんな花が車の中で、淳悟が「俺はお前の物だよ」と言われたとき、花は淳悟を『自分の物』認定したのでしょう。

原作小説では、花がペットボトルを持ち歩く描写はありますが、飲まないのはペットボトルのふたを開ける力がなかったからで、淳悟がキャップを開けてやると一気に飲んでいます。

また、老婆に「お金持ってない?」と聞かれた際は、お金がない代わりに「水飲む?」と言いますが、いざ老婆がペットボトルのキャップを開けてやろうとすると嫌がります。
老婆が信用出来ず、ペットボトルごと取られるのを恐れたからです。

ちなみに、この老婆は小説にも登場しますが、お金を催促するような発言はしていませんでした。
大塩が花に殺される前、花にこの老婆の「お金持ってない?」のフラッシュバックがどういう意味なのか、考えたけどわかりませんでした(T_T)

 

花が結婚した理由

「お互いがお互いじゃなきゃだめ」と語り、淳悟に対して一途だった花がなぜ結婚しようと思ったのか明確な発言などはありませんが、美郎との別れがきっかけになっていることは確かです。

美郎と別れた後、花は淳悟の家から出て一人暮らしを始め、裕福なダイスケと出会って結婚を決めました。
東京に出て、成長と共に社会に触れて視野が広くなったことや、男が淳悟だけではないことを知ったこともあるでしょうが、恐らく一番の理由は、花は大塩と田岡の罪を葬るために淳悟から離れたのではないでしょうか。

また、美郎に「大人になればなるほど淳悟の考えていることがわからなくなった」と語っていたのも理由のひとつなのでしょう。 

小説では、花が抱く葛藤や、普通の人生に対する憧れから結婚を決めたことが語られているので、一部引用します。

いままでのどうしようもなく暗い生活から、なんとかして抜け出したいとばかり望んでいた。
取りかえしのつくうちに、きちんとした相手と結婚して、たしかな幸せをつかみたかった。
気味の悪い過去に囚われて、咲かずに、枯れてしまうのはいやだった。
わたしは、まだ若いのだ。 (引用:小説『私の男』より)

『気味の悪い過去』は、大塩と田岡を殺した過去をさしています。

 

この人となら、と、結婚を決めたときわたしは考えたのだった。
こういう男の人とだったら絶望的に絡みあうのではなくて、息もできない重苦しさでもなくて、ぜんぜんちがう生き方ができるかもしれない。生まれ直せるかもしれない。
不吉さの欠片もない、彼の若さそのものに安堵する気持ちもあった。
わたしは、できるならまともな人間に生まれ変わりたかった。
ゆっくりと年老いて、すこしずつだめになっていくのではなく、ちゃんと家庭を築き、子供を産んで育てて、未来をはぐくむような、つまりは平凡で前向きな生き方に、変えたかった。
そうすることで、手ひどい過去までも、ずるく塗りかえてしまいたかった。
そうやって自分を生き延びさせようとしていたのだけれど、いまこうして、こんな明るい場所にじっと座っていると、わたしのわたしそのものである部分 - 見たことも触ったこともない、魂の部分が、ゆったりと死んで、震えながら急速に腐っていくようにも感じられた。  (引用:小説『私の男』より)

小説は美郎が結婚相手なので、『この人』は美郎です。
『絶望的に絡みあい、息もできない重苦しさ』は、花が淳悟と一緒に居た時に感じていたことで、『ゆっくりと年老いて、すこしずつだめになっていく』のは淳悟であり、花は淳悟を暗に反面教師にしているのがわかります。

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淳悟について


(引用:https://woman.excite.co.jp

寡黙で謎めいたキャラクターだった淳悟について考えます。
小説の内容とごっちゃになっているのでわかりづらかったらすみません。

まず彼の年齢について、映画版では花と淳悟の年齢を聞かれた時、花は17歳、淳悟は34と言いかけて35歳と言いなおす場面がありました。
この発言から考えると、花は淳悟が18歳の時の子ですが、原作小説では、花は淳悟が16歳の時の子です。
倫理的な観点から修正されたと思われます。

淳悟は怒ると何をしでかすかわからないタイプで、実の母にも暴力をふるっています。
怒ると衝動的になり殺人まで犯してしてしまう点は、花と淳悟の共通点です。

実の娘と知りながら花と肉体関係を持つ点や、花の初めての恋人候補(もしくは恋人)だった美郎に初対面で気味の悪い行動を取ったり、かなり衝動的で自制心が弱く欲望に勝てない性格であるとわかります。

田岡を殺した後は本格的に後悔の念に囚われて、花が働きだすと同時に仕事を辞めています。
花がいなければ自殺でもしていたんじゃないかと思うほど、生きる気力を失くしているように見えます。

ラストで花とダイスケに呼ばれてレストランに現れた時の、『スーツにサンダル』というちぐはぐな組み合わせや、女物の赤い傘をさして通行人にぶつかりながら歩く様子は、彼の社会性の欠如も上手く表していたと思います。

このとき淳悟は無職になって数年経っていたので、身なりに気を使うことが精神的にも金銭的にも難しくなっていたんだとは思いますが。

ちなみに、東京に出てからの淳悟の職業は映画ではタクシー運転手ですが、小説ではバイク便の契約ライダーの仕事(企業や個人からの急ぎの郵便物を運んで受取主に直接渡す仕事)をしています。

映画では淳悟の家族の詳細は明かされませんが、小説によると淳悟は一人っ子、父親は漁師で、淳悟が小学4年生の時に船の事故で行方不明になり遺体も見つかっていません。

淳悟の母は父が死んでから、父の代わりをするように淳悟に厳しくなり、淳悟が高校卒業する頃に病気で亡くなっています。
淳悟は母から愛情をもらえないことで母を憎み、母性を求めていました。

また、映画では淳悟は母に暴力を振るって距離を置くために花の両親の所に送られたことになっていますが、小説では淳悟が16の時に母の病状が悪化して、代わりに世話を頼んだのが花の両親であり、家庭内暴力の話はありません。

淳悟は奥尻島で高校卒業まで世話になる予定でしたが、花の母との関係が明らかになり半年で紋別に戻されています。
紋別に戻ってからは大塩の家庭に世話になりながら育ち、高校卒業後は京都にある海上保安学校で2年間勉強した後、紋別に戻って海上保安官になりました。

小説と映画では淳悟のキャラクターも多少異なる雰囲気で描かれています。
小説の淳悟は幽霊のように不気味で身なりも貧乏くさいけれど、立ち振る舞いはどこか優雅で気品がありつつ、人殺し特有の鋭さを併せ持つ美男子、というような人物でした。

映画の淳悟との1番の違い、小説の淳悟には花に対する執着があまり無かった点です。

 

父親になりたかった淳悟

冒頭で9歳の花を抱き上げて「俺の娘だ」と公言している場面を筆頭に、彼の発言には嘘がありません。
なので、淳悟の「俺は父親になりたい」という、実際の行動とは矛盾する発言も、彼の本心だったはずです。
花が料理が出来る年齢になっても淳悟が台所に立ち続けるシーンなどが、彼が父親になろうと努力していたことを物語っていたように感じます。

そう考えると、淳悟が真に目指していたのは健全な普通の親子関係だったけれど、実現出来なかったのでしょう。

彼は欠損家庭で育ったため、健全な親子関係がどんなものか知らないまま花を養子にしました。
漠然とした理想はあったものの、欲望に忠実な淳悟が誘惑と孤独に負け結果、異性を求めていた花の『男』になってしまったように思われます。

その後の美郎やダイスケに対する態度も、本当なら父親らしく振る舞いたかった所が、嫉妬心に負けて思わず排除しようとしてしまったのでしょう。

淳悟が嫉妬するのは小説には無い描写です。

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淳悟の指のにおい

淳悟は会社の事務の女性に指のにおいを嗅がれて「不潔だと年頃の女の子に嫌われるよ」と注意されていました。
事務の女性が感じ取ったのは『性を感じるようなにおい』だったようですが、このシーンの直前に、淳悟のお弁当が傷んでいた場面があったので、腐敗臭かな(苗字も腐野だし)、と最初は思ってました。

淳悟は事務員に指摘されて『花のにおい』が指に染みついていることに気付きます。
美郎の指を舐めたり匂いを嗅いだのは、花と美郎に肉体関係があるかかどうかを、美郎から花の味やにおいがするかどうかで確認しようとしていたのではないでしょうか。

ついでに淳悟の「お前じゃダメ」は、言い変えると「花は俺じゃなきゃダメだ」と言っていたんだと思います。
理由は淳悟自身が『他人じゃダメ』なので、花もそうだという確信めいた思いがあったのではないでしょうか。

補足で、小説で淳悟の体臭は『降り続く雨のような湿った匂い』と花が語っています。

映画で印象的だった、淳悟が美郎の指を舐める行動は小説にはありません。
小説では美郎が淳悟の家に泊まった際、美郎は2人の親密さに疑問を抱きはしますが、花と淳悟の育った環境を知っていたので、一般家庭で裕福に育った美郎とは別世界で育ったことを考慮して理解しようと努めています。

さらに美郎はこの時に、田岡の幽霊と、押入れに隠された田岡の遺体を目撃していますが、夢や幻覚だと思い込み、始発の時間に淳悟の家から出ています。

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その他の疑問

淳悟が花を引き取るのに反対した大塩

淳悟が花を引き取ると言い出した時、大塩は反対していました。
1番の理由は淳悟が母親に暴力をふるった過去を大塩が知っていたからですが、それをハッキリ言えなかったので、独身で子育て経験のない淳悟よりも、経験のある夫婦に預ける方が良いと一般的な説得しようとしたのでしょう。

しかし、淳悟は譲りません。
淳悟は花の実の父親で、それは淳悟自身も大塩も知っていましたから、大塩は黙るしかありません。
それに大塩はあまり淳悟に大きく出ると何をされるかわからないという保身もあったのかもしれません。
この時既に50歳を超えていた大塩は、当時25歳の淳悟には肉体的に勝てないからです。

小説では、大塩は「淳悟は子どもの頃から何を考えているかわからず、少し怖いと思うところがあり、だから花を引き取ると言いだした時も絶対にダメだと直感したが、淳悟を恐れる気持ちから反対できなかった」と発言しています。

 

血の雨

花と淳悟の愛の営みの最中、2人に血の雨が降り注ぎます。
この雨は、花が語っていた「淳悟が実の父親だと、体中が叫んでいる」という感覚を映像化したもののように見えました。

花は誰に教わるでもなく、血が騒ぐことで実の親子だと確信していると同時に、2人ともが近親相姦という禁忌に対する背徳感を持ちながら行為に及んでいることを、血の雨で表現していたのではないでしょうか。

言い換えると、セックスで感じる背徳感が親子である証拠で、親子の絆のようになっていたのです。

ちなみにこの血の雨は原作小説には登場しない表現です。

 

鮮やかな赤い小物


(引用:https://ameblo.jp

本作では赤い小物が印象的に使われています。
花の真っ赤なマフラー、淳悟が使っていた赤い傘などです。

これらの赤い小物は、花と淳悟の関係において依存している方(精神的にも経済的にも)が身に着けています

初めて赤いマフラーを身に着けたシーンが出るのは、花が高校生になった時です。
花が淳悟と男女の関係になって間もない頃で、一般的な恋愛においても盛り上がる時期です。
経済的にも、大黒柱は働いている淳悟が財布を握っています。

花が社会人になった後、このマフラーは淳悟が身に着けます。
シンプルなロングマフラーだったので、淳悟が巻いていても自然に見える範囲内です。

この頃、花はこのままではいけないと思い結婚相手を探していて、淳悟から離れようと努力している最中です。
経済面でも花が働き、淳悟は無職で頼れる人間も花だけということもあり、花への依存度合いが高まっています。
また、北海道に居た頃は花が外で淳悟の帰りを待っていたのに対し、上京後は淳悟が外で花の帰りを待っている点も、関係が逆転している様子を表しています。

ラストの赤い傘は、男性が持つにはかなり違和感のある女性的な花柄の傘です。
この不釣り合いな雰囲気には、淳悟が見た目に気を遣うことをすっかりやめてしまったのと共に、花への依存度合が高まっているのを表していたようにも見えます。

この傘は花の物だろうと思っていましたが、小説には淳悟が百貨店の傘立てから適当に盗んだ物だったことが書かれています。

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豚の餌


(引用:https://tsutaya.tsite.jp

警察官の田岡は「豚の餌だ」と言いながら、淳悟に花のメガネを見せます。
本作1番のパワーワードですよね。

「豚の餌だ」の意味は、恐らく『花を豚箱(刑務所)に入れるための餌(証拠)を見つけたぞ』という意味だろうなと感じました。
犯人に対する憎しみがにじみ出た表現なんだろうと思います。

田岡は殺された大塩に人一倍恩を感じていた人物で、恩人を殺した犯人を憎み、密かに犯人逮捕に燃えていました。
恐らく、大塩の葬式の直後に引っ越した2人を怪しいと思っていたのでしょう。

唐突に「豚の餌だ」と言われると若干意味不明で考えてしまいますが、これは原作小説で田岡が犯人への憎しみや軽蔑を込めて使用した表現です。
ただ、小説ではまだ自然に登場していて雰囲気は全く違うので、引用しておきます。

「身内しか愛せない人間は、結局、自分しか愛せないのと同じだ。
利己的で、反社会的なそれらは、豚みたいに生きていくしかないんだ。
食う物だって…豚の餌だ」
吐き捨てるような声。ちらりと見ると、嫌悪感に満ちたゆがんだ顔をして、俺の手元をじっと見下ろしていた。(引用:小説『私の男』より)
※「」は田岡の発言、『俺』は淳悟です。

東京に出てきた田岡が私服だったことや、仕事を休んで来たという発言から、大塩殺しの犯人探しは警察の意向ではなく田岡が独自に捜査していたことを示します。

田岡の死体をどうやって処理したのかなどは映画では全く描かれませんが、小説では、田岡の死体を布団用の大きなビニール袋にくるんで押入れに隠し続けています。

また、田岡が淳悟に見せる大塩殺しの証拠は、映画では『花のメガネ』ですが、小説では『大塩のカメラ』です。
小説では、淳悟は田岡を殺した後も大塩のカメラを処分せず、花と美郎の結婚で『サムシング・オールド』を持ってきてほしいと花に言われた時に、罪を思い出させるかのようにこのカメラを渡しています。
※小説で花が結婚するのは美郎です。

 

 

ラストの考察


(引用:https://callme-ojisama.com

花は高級レストランに淳悟を呼び、ダイスケと結婚することを報告します。
そこで、花は約3年前から淳悟と離れてひとり暮らししていたことが明かされます。

美郎との関係を壊されたことが、花が淳悟から離れようと思うきっかけになったのは間違いないです。   
ダイスケとの結婚を歓迎しようとしない淳悟に、花は祝福を強要します。
花は淳悟が原因でダイスケと別れることになるのは絶対に避けたかったからです。

足をなぜるシーンには、花が淳悟に対して上下関係をはっきり示し、かつダイスケに気付かれないための行動であり、表面的には普通に見えて、水面下では心も体も繋がっているような、これまでの2人の関係が表れています。
花の意図を汲み取った淳悟は、この後2人を祝福する言葉を発すると思われます。

今後の2人については映画の内容だけで想像すると、花は『普通の幸せ』を掴もうと必死な一方で、花の淳悟に対する愛情が消えることは考えにくいですし、誰にも言えない秘密を共有しているので、愛情と憎しみの入り混じる腐れ縁が続くのではないかと予想します。

なお、映画のラストのような描写は小説にはありません。
小説では、花が淳悟の家を出るのは美郎との結婚式の当日です。
結婚式が終わると、花は美郎とそのままハネムーン旅行に出て海外で数週間過ごします。
花は帰国してすぐ、淳悟と住んでいたアパートの大家からの「部屋に荷物が残っている」という留守電を聞き、訳が分からずアパートに行きます。
淳悟は花に何も言わずアパートを解約して消えました。
部屋は、花が残していたいくつかの私物を残してきれいに片付けられていて、花が結婚式のとき淳悟に渡した花束が台所に置きっぱなしで腐敗臭を放っていました。

花は田岡の死体が気になって押入れを確認すると、死体はきれいになくなっていてひとまず安心した後、淳悟が消えたことに絶望しながらアパートを出ます。
淳悟がどこに行き、どうするつもりなのかは花にもわからずじまいです。

 

以上です!お読みくださりありがとうございました(^^)

 

私の男【動画配信】

 

 

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