この記事は映画「ディパーテッド」の解説・考察を書いています!
香港映画『インファナル・アフェア』シリーズをマーティン・スコセッシがリメイクした話題作。
第79回アカデミー賞の作品賞、脚色賞、編集賞、監督賞に加え、第64回ゴールデングローブ賞の監督賞を受賞した。
犯罪組織のスパイ(ネズミ)として刑事になったコリン(マット・デイモン)と、潜入捜査官として犯罪組織に潜り込んだビリー(レオナルド・ディカプリオ)。
互いの存在が組織内部に知られ、お互いを探り合う。
制作年:2006年
本編時間:150分
制作国:アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ
制作:マーティン・スコセッシ、ブラッド・ピット、ジェニファー・アニストン、ブラッド・グレイ、グレアム・キング
原作:映画『インファナル・アフェア

キャスト&キャラクター紹介
(引用:http://www3.cinematopics.com)
ビリー・コスティガン…レオナルド・ディカプリオ
ボストン南部で育ったアイルランド系アメリカ人の刑事。
金や私利私欲で動くようなことは決してなく、強い意志を持つ人物。
学力試験で満点を取るほどの頭脳を持つ一方で親せきに犯罪者が多いことからクイーナン警部に見込まれ、5年間に及ぶ潜入捜査を命じられた。
(引用:http://eiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net)
コリン・サリバン…マット・デイモン
幼少時代…コナー・ドノバン
ビリーと同じくボストン南部で育ったアイルランド系アメリカ人の刑事。
少年時代、コステロに頭の良さを買われ、以後様々な援助を受けて警察学校を経て刑事になったコステロのスパイ。
コステロに完全合理主義を教え込まれて育ったことから、周囲の人間を「道具」としか見られないサイコパスである。
フランク・コステロ…ジャック・ニコルソン
ボストン南部の街の一角を牛耳る犯罪組織のボス。
コリンに合理主義精神を教え込んだ、コリンと同じ完全合理主義者。
主に金銭面でコリンの面倒を見てやる代わりに、警察の動きを教えてもらい長年逮捕から逃れてきた。
クイーナン警部…マーティン・シーン
コリンが配属されたSIUのトップで、まだ警察学校に在籍していたビリーをスカウトしてコステロの元に送り込んだ。
誰に対しても平等で、部下に優しく頭の切れる人物。
ディグナム巡査部長…マーク・ウォールバーグ
クイーナン警部の部下。口が非常に悪く短気で好き嫌いがハッキリしている。
誰に対しても口が態度が悪いが、クイーナン警部だけは尊敬していて言うことを聞く。
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エーラビー警部…アレック・ボールドウィン
特別捜査課(SIU)を率いているコリンの上司。
コリンを信用するという致命的なミスを犯している。
マドリン…ヴェラ・ファーミガ
精神分析医でコリンの恋人。出所して保護観察中だったビリーの担当医師でもある。
コリンと同棲を始めてから少しずつコリンの内面が見え、違和感を抱き始める。
・その他のキャスト
ブラウン(ビリーと同期の警察官)…アンソニー・アンダーソン
ミスター・フレンチ(コステロの右腕)…レイ・ウィンストン
いとこのショーン(ビリーのいとこ、麻薬の売人)…ケヴィン・コリガン
バリガン(コリンの相棒の刑事)…ジェームズ・バッジ・デール
フィツィ(コステロの手下)…デヴィッド・オハラ
デラハント(コステロの手下、潜入捜査官)…マーク・ロルストン
フランク・ラツィオ(FBIから来た助っ人)…ロバート・ウォールバーグ
グウェン(コステロの女)…クリステン・ダルトン
知事…トーマス・B・ダフィー
エドワード(ビリーの叔父)…ディック・ヒューズ
不動産業者…J・C・マッケンジー
ビリーの叔母…メアリー・クラッグ
ミス・ケネフィック…ペグ・ホルズマー
リズ(コステロの女)…サリイ・トウセイント
ジミー・バッグ(潜入捜査官)…ミック・オルーク ほか
あらすじ:起
警察学校でトップの成績を収めていたビリー・コスティガン(レオナルド・ディカプリオ)は、ボストン警察SIUのトップのクイーナン警部(マーティン・シーン)に見込まれて、警察が今 最も押さえたい犯罪組織のボスであるフランク・コステロ(ジャック・ニコルソン)の組織に潜入捜査(警察のネズミとしてコステロ一味に入り込み、警察へ情報を流すこと)を命じられた。
ビリーは注意深いコステロに怪しまれないための対策として、犯罪歴を作って実際に刑務所に数年間服役、出所後すぐの保護観察の身でコステロに近づくこととなった。
ビリーの亡き父親とコステロは知り合いだった。
コステロはビリーの父の人間性を高く評価しており、ビリーが父親に似て賢く度胸があると信用し、組織に入れることを決めた。
ビリーは組織内で上手く立ち回っていたが、あまりにも多くの暴力や殺しを目にした上、常に『いつコステロに正体がバレて殺されるかわからない』というストレスにさらされていた。
だが誰かに相談できるはずもなく、次第に心を病み精神科に通って薬に依存するようになる。
一方、少年時代に父親を亡くし、以後目をかけてくれたコステロを2人目の父親のようにして育ったコリン・サリバン(マット・デイモン)は、「何か(誰か)を見たら、まず何に使えるか考えろ」など、人間関係を含めてすべてを合理的に考えることをコステロから教わりながら育った結果、出世に貪欲で『成功者』になるためなら手段をいとわない完全合理主義者、いわゆるサイコパスになった。
コリンはコステロのスパイ(コステロのネズミ)として警察学校を経て警察官になり、自身の能力とコステロの裏の支えでどんどん出世し、数年であっという間にエリートが集まる『特別捜査課(SIU)』に配属された。
だが、そこでの任務はコステロ逮捕であり、コリンはどう対処すべきか考えあぐねていた。
あらすじ:承
コリンが刑事に昇格して間もない頃、コリンは署内を訪れていた精神分析医のマドリン(ヴェラ・ファーミガ)と恋に落ち、結婚を前提に付き合い始めた。
交際開始数か月で2人は同棲を決め、州会議事堂が一望できる高級マンションに引っ越しを決めた。
将来的には議員になることが夢だったコリンは、毎晩議事堂を眺めながら自身の将来に思いをはせた。
ある時、コステロ一味の中に潜入捜査官(ネズミ)がいることを知ったコリンは、すぐにこのことをコステロに伝えた。
ビリーがネズミであることを知っているのはクイーナン警部とディグナム巡査部長(マーク・ウォールバーグ)だけだったので、コリンは潜入捜査官の情報開示を求めたが、クイーナンは「開示してしまうと、どこから情報が洩れて捜査官が危険にさらされるかわからないから」と情報開示を拒否した。
コリンがこれを報告すると、コステロは組織のメンバー全員の個人情報が書かれた紙を封筒に入れてコリンに渡し、ネズミの特定を迫った。
コリンはとても危ない橋を渡ってコステロの部下を1人ずつ警察署内のパソコンで調べたが、警察のネズミが誰なのか知ることはできなかった。
潜入捜査官はもちろん警察官なので、全ての警察官の情報が登録されているデータベースで検索すれば出てくるはずなのだが、誰もヒットしなかったのだ。
この頃から、コリンはコステロに従い続けることを重荷に感じ、嫌気が差してくるようになる。
コステロとの関係が明るみにでもなれば、コリンに警察官としての未来が無くなるからだ。
しかし、コステロと関係を切ろうとすれば、コリンはコステロに殺される。
しかも、コリンは贅沢な暮らしをするためにコステロから金銭的な援助も受けていた。
コリンのストレスは増えていく一方だった。
同じ頃、ネズミとしての生活に疲れ果てたビリーは唯一心を許せそうな人物で、ビリーの保護観察官であるマドリンの所を訪れていた。
マドリンはコリンと一緒に暮らし始めて徐々にわかってきたコリンのこだわり(自分が成功者だと周囲に印象付ける行動)や、時折見える本当の性格が目に付き始め、不安を感じていた。
そんなとき、マドリンはビリーの何気ない言動に心を動かされ、惹かれ合った2人は一夜だけの関係を持った。
あらすじ:転
ある日、コリンは警察内にいるネズミ(コリンのこと)を特定するようにエーラビー警部(アレック・ボールドウィン)から命じられた。
コステロのネズミが警察内部いることを知ったビリーがクイーナン警部に報告、クイーナンはエーラビーにネズミを特定するよう命じ、エーラビーはそれをコリンに命じたのだ。
『自分探し』を命じられて困ったコリンは、部下にクイーナン警部の見張りを指示した後、クイーナン警部がビリーと接触するタイミングを見計らって「今からクイーナン警部と会う奴が警察のネズミだ」とコステロに伝えた。
これは、警察には『クイーナン警部がコステロの部下と接触していると見せかける(コステロのネズミがクイーナン警部だと周囲に思わせる)』と同時に、コステロ側にいる警察のネズミも特定してやろうという一石二鳥を狙った作戦だった。
コステロから指示を受けた部下たちがクイーナンとビリーが会っていた廃ビルに押し寄せ、ビリーはクイーナンに助けられて何とか身バレせずに済んだが、クイーナンはコステロの部下に殺された。
クイーナン警部の死後、警察のネズミ(ビリーのこと)の正体を知る者はディグナム巡査部長ただ1人になった。
コリンはディグナムに改めて情報開示を訴えたが、ディグナムは「誰も信用できないから」と拒否してコリンと大喧嘩になった。
クイーナンの後継者に任命されたエーラビー警部がディグナムに情報開示を命じると、ディグナムはその場で「辞める」と言い残して署から出ていった。
その後、コリンはクイーナン警部の携帯からネズミの正体がビリーだったことを知ると共に、ビリーがクイーナンに提供していた資料から『コステロがFBIとつながっている』という情報を目にした。
警察がプロビデンス派(コステロと敵対しているグループ)に肩入れしていたことから、それに対抗するためにコステロはFBIの情報提供者になっていたのだ。
一方ビリーは、クイーナン警部が死んだ銃撃戦の時に撃たれて死んだコステロ一味のデラハント(マーク・ロルストン)が、ビリー自身と同じ潜入捜査官だったことをニュースで知って驚いた。
組織内では「これでネズミが消えた」と皆が思い込み、ネズミ探しはなくなった。
その日の夜。コリンはコステロと関係を持ち続けても意味がない(自分のこれからの出世に響くのではないか、自分もFBIに売られるのではないか)という不安がピークに達し、コステロとの関係を断ち切る決意をした。
後日。コステロが右腕のフレンチ(レイ・ウィンストン)と部下のほとんどを連れて麻薬取引に行くことを知ったコリンは、大勢の部下を引き連れてコステロ一味が集まっているというシェフィールド倉庫へ向かった。
そこでコステログループとコリン率いる警察隊の銃撃戦となり、結果ほとんどのコステロの部下が死に、追い詰められたフレンチは銃で自殺した。
コステロも腹に銃弾をくらって自身の死を悟り、人けのない場所に逃げて携帯でコリンを呼んだ。
コステロの前に現れたコリンは彼が死にかけているのも気にとめず、自分をFBIに売っていないかどうかを確認した後、コステロを撃ち殺した。
あらすじ:結
こうして捜査は幕を閉じ、コステロを仕留めたコリンは警察内で高い評価を受けた。
ビリーは潜入捜査官の任を解かれて警察署に姿を現し、この時コリンとビリーは初めて顔を合わせた。
コステロが死んだ今、残るコリンの気がかりはたったひとつ、それはコステロのネズミがコリンだとビリーが知っているかどうかだった。
コリンは何気ない会話でビリーに探りを入れつつ「君に功労賞を贈るよ」とねぎらいの言葉をかけたが、ビリーはろくに話をせず、ただ「警官には戻らない。
俺の本当の身分を返してくれ」とだけ訴えた。
つまり、『ビリー』というのは警察が用意した潜入捜査のための偽の身分だったのだ。
この時、コリンはビリーの本名が”ウィリアム・コスティガン”だったことを知った。
だから、コリンがコステロの部下をデータベースで検索しても誰も引っかからなかったのだ。
コリンがビリーの本当の身分を確認するために別室に行っている間、ビリーはコリンの机の上の、見覚えのある1通の封筒に目が釘付けになった。
それは、コステロが全員に個人情報を書かせた書類を入れていた封筒だったからだ。
コリンの正体を知ったビリーは、コリンが部屋に戻って来るのを待たずに署から姿を消した。
ほぼすれ違いで部屋に戻ってきたコリンは、ビリーが消えており、同時にコステロから受け取った封筒の位置が動いているのを見てビリーに正体がバレたと悟り、署のパソコンからウィリアム・コスティガンの身分情報を削除した。
ビリーが警察官である証拠が消えれば、ビリーは『暴行歴のある犯罪者のビリー・コスティガン』のままコリンを逮捕も出来ないし、万が一起訴されてもビリーの発言の信ぴょう性は低くなるからだ。
ビリーはその足でマドリンの元に行き「俺に何かあったら開けてくれ」と言い茶封筒を渡した後、コリンの自宅宛てに小包を送った。
数日後。マドリンは男の子を妊娠したことがわかり、妊娠を知ったコリンはとても喜んだ。
その後、マドリンは郵便物の中からビリーからコリンあてに届いた小包を発見し、気になってコリンに黙って開けてみると、中に入っていたのは1枚のCDだった。
再生すると、それはコリンとコステロの会話を録音した、コリンがコステロのネズミだという証拠の音声だった。
コリンの正体を知ったマドリンは失望し、コリンの言い訳も一切聞かずに自室に閉じこもった。
証拠のCDは、コステロが事前に弁護士に「俺に何かあったらビリーに渡してくれ」と預けていたものだった。
コステロは、コリンはいずれ出世して自分が必要なくなれば始末されることが分かっていた。
子どもがいないコステロはコリンを本当の息子のように育てたが、恐ろしいほど自分に似てしまったコリンの考えが手に取るようにわかったのだ。
コステロはもし自分の身に何かあっても、そのときはコリンを道連れにしようと考えていたので、証拠を残して弁護士に預けたのだ。
コリンの自宅にCDが届いた頃を見計らい、ビリーはコリンをクイーナン警部が死んだビルの屋上に呼びだした。
コリンが屋上に来ると、ビリーはすぐにコリンに手錠をかけて逮捕しようとしたが、コリンは「お前の身分は消したから、お前はもう警察官じゃなくただの犯罪者だ!もう逮捕は出来ないんだよ!」と笑った。
ビリーはコリンを銃で黙らせてビルの外に出ようとしたが、突然現れたバリガン刑事(ジェームズ・バッジ・デール)に撃たれて死んだ。
バリガン刑事はコリンが新米だったころに組んでいた刑事だ。
このとき、同じくビリーに呼ばれてここに来ていた黒人刑事のブラウン(アンソニー・アンダーソン)(ビリーの警察学校時代の同期で、ビリーが警察官だと覚えている人物)もバリガンに殺された。
突然のことにコリンがあっけに取られていると、バリガンは彼自身もコステロのネズミだったことを明かし、「俺たちはFBIに売られそうになっているから、お互い助け合おう」と言った。
状況を理解したコリンは証拠隠滅のため、バリガンをその場で撃ち殺した。
コリンはビリーを葬ることはできたが、ビリーが潜入捜査官だったことはその後の捜査で明らかになってしまった。
コリンは事情聴取と記者会見で「バリガン刑事に突然襲われたので発砲した。他の2人は既に倒れていた。ウィリアム(ビリー)は亡くなってしまったが、彼に功労賞を贈る」と証言し、必死で立派な刑事を演じた。
ビリーが警察官だったことが明るみになったため、コリンはビリーの身分を消したことなども全てバリガン刑事になすりつけたのだ。
その後、ビリーの『演奏付きの立派な葬式』が厳かに行われた。
マドリンが参列していることに気付いたコリンは、葬式のあと彼女を待ち構えて「子どもはどうするんだ?」と声をかけたが、マドリンはコリンを無視して行ってしまった。
数日後の休日。コリンが買い物を終えて自宅に戻ると、コリンの部屋の中でディグナム(クイーナンの元部下)が待ち構えていた。
ディグナムはジャージ姿で銃を持ち、足跡が残らないようにスニーカーに布をかぶせて履いており、その姿は明らかにコリンを殺しに来ていた。
ディグナムを見たコリンはすぐに観念して大人しく撃たれて死んだ。
コリンの死を見届けたディグナムはニット帽を深くかぶると、足早にコリンの部屋から出ていった。
Dropkick Murphys『I’m Shipping Up To Boston』
解説、考察や感想など
この作品は伏線や役者陣の発言などに裏の意味も含んでいるという描写が非常に多いです。
私のわかる範囲でその意味などを解説していきます。
コステロの部下(フィッツ・ギボンズ)の事情聴取の際のコリン・サリバンの行動
コステロの部下であるフィッツ・ギボンズが逮捕されたと同時に、警察のガサ入れが進行中でコステロに危険が迫っていることを知ったコリンは、ギボンズ逮捕がまだ上司に知られていないのを良いことに取り調べ室の監視カメラを停止させ、部下の刑事ブラウンの携帯を使ってギボンズからコステロの右腕フレンチに電話させています。
このとき監視カメラを止めたことと、コリン自身の携帯を使わずにわざわざブラウンの携帯を借りた理由は、後でもしも捜査の倫理性や合法性が問われたときに、コリンがやったという証拠を残さないためです。
しかも、この時ギボンズにかけさせた電話の履歴(フレンチの番号)から部下にコステロ関係者の居場所の住所を割り出させ、コステロの情報を掴んだと警察側に対しても印象付けて手柄を上げようとしています。
この辺りに、どんな人物でも関係なく利用するというコリンの人間性が描かれています。
さらに、このシーンについて『コリンはなぜギボンズが弁護士と面識がないことがわかったの?』という質問をいただいたので考察していきます。
ギボンズは取調室に入った時、ブラウン刑事に「弁護士を呼べ」と言ってメモを渡しています。
そしてブラウンはそのメモの番号に2度電話をかけましたが、弁護士は電話に出ませんでした。
ギボンズがただ『メモを渡しただけ』だったことから、コリンは『ギボンズは弁護士の名前などの詳細を知らないんだろう』→『ギボンズと弁護士は面識がないんだろう』 と推測したのでしょう。
こういう時は早く来て欲しいはずなので、ギボンズがもし弁護士の番号以外の情報を知っていればブラウン刑事に伝えているはずです。
ギボンズが持っていた番号のメモは、警察に捕まった時のためにコステロが部下全員に持たせていたのだと推測します。
コステロと中国人との取り引きについて
コステロは、ある会社から高性能のマイクロチップを盗み、中国の政府高官に高値で売り付けようとしていました。
この取引現場をおさえることをクイーナン警部らは部下たちに事前に伝えず、取り引き開始直前に突然部下たちに指示を出しました。
取引現場を押さえることを警部が部下たちに事前に伝えていなかったのは、この捜査で警察内部にコステロのネズミがいるかどうかを突き止めること、そしてできればネズミの特定をするという意味合いを持っていました。
突然の指令に焦ったコリンは家族への電話を装ってコステロに警告した後、さらにこっそりポケットの中で携帯を操作して携帯のGPS情報が見られていることを伝えました。
コリンの努力の甲斐もあり、コステロは取り引き成功の上、今回も逮捕をを逃れましたが、この時コリンは取引現場に仕掛けられていた監視カメラの存在までは伝えきれていなかったにも関わらず、コステロはカメラの存在はおろか取引現場の裏口には監視カメラがないことまで知っていました。
つまり、これは警察内部にコリンの他にもネズミがいることを示唆しています。
コリンが契約した高級マンション
コリンは刑事になってからも金銭的にコステロに頼っていて、新米刑事の給料では到底払えないような、マサチューセッツ州会議事堂がよく見える景色の良い高級マンションに入居しています。
いずれは議員になって議事堂に行くという夢をコリンは持っていました。
部屋の内見に来た時、コリンが独身の新人刑事だと知った不動産業者が途端に貸すのを渋り出したことから、新米刑事の給料が低いことがわかります。
そして同時にコリンが私生活にもステータスを求めていることがわかります。
コリンがマドリンを選んだ理由
(引用:http://eiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net)
コリンが刑事になった当初からちらほら署内の女性を見定めている様子が描かれ、コリンが女性を求めていることが窺えます。
世間体を良くして出世につなげるために早くパートナーを見付けたかったからです。
そんなコリンが偶然出会った美人女医のマドリンに積極的にアプローチをしたのは、彼女が美人だったことに加え、”一流大学出身の医師”だったから。
つまり、コリンはマドリンのステータスに惚れたのです。
サイコパスというのは、外面は非常に魅力的でコミュニケーション能力に長けている人物が多いそうです。
コリンも例外ではなく、独特のユーモアや賢さに惹かれたマドリンは結婚前提の真剣交際をするに至りました。
マドリンがビリーと浮気した理由&コリンが目指していたもの
マドリンとコリンは交際を始めて2、3カ月で同棲します。
コリンはマドリンが子どもの頃の写真をリビングに飾っているのを見て「リビングに合わないから飾らない。僕のも飾らないから」と言って勝手に片付けてしまいます。
マドリンは、そんなコリンの反応が予想外だったため顔をしかめました。
その写真はマドリンのお気に入りの写真で、以前の彼女の部屋ではリビングに飾っていたものでした。
コリンにとって大切なのは『成功者』のイメージなので、それに合わないものは、来客の際に一番人目に触れやすいリビングには置きたくなかったのでしょう。
また、コリンは幼い頃の貧乏だった日々を忘れたいと恐らく思っているので、写真を見て彼自身の幼少時代を思い出したくなかったというのもあるでしょう。
コリンはマドリンを愛していたと思いますが、一番大切なのは『仕事で成功していて理想のパートナーもいる、誰から見ても勝ち組の自分』だったんです。
この写真の件や、マドリンが大切にしている『公共奉仕の精神』の話にコリンが理解(興味)を示さなかったことで、マドリンがコリンの人間性に疑問を抱き始めていたとき、彼女の所にビリーが訪ねてきました。
ビリーはマドリンの子どもの頃の写真を見て(一度コリンの部屋に運んでいたのになぜ彼女の部屋に戻っていたのかは不明)、より良く見える場所に写真を飾り直しました。
ビリーのこの行動が、コリンに写真を片付けられたことに不満を感じていたマドリンの心を動かしました。
ビリーに惹かれたマドリンは、そのままビリーと一夜を共にします。
また、コステロ側にいるネズミ(ビリー)を割り出すために、コリンは危険な思いをしてコステロから個人情報が入った封筒を受け取ったあと、コリンはマドリンに「もう引っ越そうかな」、「僕はダメ男だ」など弱音を吐いていました。
これは援助を続けてもらうためにコステロの命令を聞かなければならないという今の状況、たとえ援助が必要なくなったとしても、コステロとの縁は切ることができないと感じたコリンがコステロとの関係にうんざりし始めていることを示しています。
マドリンの子どもはどっちの子?
マドリンが妊娠した子が誰の子どもなのかは作中では明言されていません。
実際にどっちの子でもストーリーに影響はありません。
しかし、コリンが性的不全であることを示す描写と、コリンとマドリンの濡れ場がなかったこと、対してビリーの体は健康で、マドリンとのラブシーンが強調されていたことから、恐らく子どもはビリーの子だったと思われます。
ビリーの父親とコステロの関係
ビリーの父親は、身内に犯罪者が多いという環境だったにも関わらず、自身は犯罪に身を染めたりせず堅実に生きた人物でした。
そんなビリーの父親をよく知っていたコステロは、ビリーの父を『信念を貫いた男』と高く評価していて、ビリーの母親の葬式には花も贈っていました。
ビリーの父の生き方を知っていたからこそ、コステロはビリーが現れた時に警察官なのではないか?と疑いました。
ビリーは実際に前科を作ることでその疑いを払拭し、コステロの仲間入りを果たします。
コステロはビリーの言動をその後も注意深く観察し、父親似で信頼できる男だと確信しています。
コステロがコリンの証拠を警察に預けなかった理由
コステロは死ぬ前に、コリンがネズミである証拠を弁護士に託してビリーに届けるように伝えていました。
これが警察でなくビリーだった理由は、コステロが警察を信用していなかったからでしょう。
コステロが自分のスパイとしてコリンを警察官にしたように、警察内部にはどんな人間がいるかわかりません。
警察に提出してももみ消されてしまう可能性を考えたコステロは、信用できると肌で感じたビリーに大事な証拠を託したのでしょう。
また、コステロはビリーが潜入捜査官だということにも気づいていました。
それは、コステロがコリンと映画館で会った後、ビリーから自分がいた場所と同じ匂いがして、尾行されていたことに気付いたからです。
しかしコステロはそのことを表沙汰にせずビリーを仲間に残していて、同じ潜入捜査官だったデラハントの死が報道されると、一同がネズミ探しをやめても何も言いませんでした。
これもコステロがいざという時に何かを残す相手にふさわしいと考えていたためです。
ビリーがコリンを逮捕することに固執した理由
(引用:https://natalie.mu)
ビリーがコリンをビルの屋上に呼び出した時、ビリーはコリンを殺さず、コリンが金で交渉しようとしても一切応じず、ただ『逮捕』しようとしました。
これはビリーが、コリンの正体が明るみにならないまま死ぬことも、そのまま生きていくことも許せなかったからでしょう。
ビルから降りるために乗ったエスカレーターの中で、コリンは、もし自分の正体が暴かれれば将来がなくなることが頭をよぎり、絶望して「殺してくれ」と頼みます。
ビリーはそれに「殺すよ」と答えますが、それは恐らく『社会的に殺す』という意味です。
ですが、エスカレーターの扉が開いたときビリーは撃たれ、恨みを晴らせないまま死んでしまいました。
ビリーがマドリンに渡した封筒の中身は?
コリンの生き方はコステロと同じように必ず誰かから恨みを買い、いずれはやり返されるような生き方です。
ビリーがコリンの自宅に送ったCDでコリンの正体を知ったマドリンは、作中には出てきませんが、閉じこもった自室で恐らくすぐにビリーから受け取っていた封筒を開いたでしょう。
封筒の中身も出てきませんが、恐らくビリーとコリンそれぞれの正体がわかる何かの証拠が入っていたにちがいありません。
コリンはなぜ大人しく殺されたの?
コリンが殺される直前、買い物を終えてマンションに戻ってきたコリンが他の部屋の女性とすれ違ったとき、その女性はあからさまにコリンを避け、すれ違った後には他の住人とひそひそ話をしています。
これは恐らくマドリンが封筒の中身を使って、事件の全貌がメディアなどで報道されたということになります。
警察署内にあった『ウィリアム・コスティガンの身分』はコリンが消したはずなのに、その後の捜査でビリーが警察官だったと判明したのも、恐らくマドリンが適切な対応をとったからです。
こうして世間的にも『裏切り者の犯罪者』になったコリンは、警察関係者からの情報・もしくはメディアを通じて全貌を知ったディグナムに殺されることになります。
コリンが抵抗しなかったのは、マンションの住人に無視されたこと、ディグナムが自分を殺しに来たことから、自分の正体が大勢に知れ渡ったことを悟ったからです。
婦人に無視された後、コリンがドアの前で顔を覆っている仕草がコリンの心境を物語っています。
コリンは、自分が思い描いた通りの人物になれないのなら、生きていても仕方がないと考えていたため、大人しく殺されました。
マーク・ウォールバーグと役柄について
作品の冒頭にチラッと登場するSIUメンバーのフランク・ラツィオ役のロバート・ウォールバーグは、ディグナム役のマーク・ウォールバーグの実の兄です。
結構似てますよね。
この2人は作品の舞台となっているボストンの出身なので、出演の経緯が伺えます。
特にマークは若い頃、このボストン警察に何度もお世話になったことがあるヤンチャな人物だったそうです。
彼が演じているディグナム役は原作には登場しない人物なので、マークが演じるキャラクターには”ボストン警察には口の悪く乱暴な人が多い”という皮肉が含まれているのかもしれません。
タイトル『ディパーテッド』の意味
“depaet”の意味は『去る、いなくなる』、転じて『死ぬ』という意味のある言葉です。
その過去形である”depaeted”は『去った、死んだ者(たち)』ということで、作品の内容とつながります。
この単語の意味を知っていれば、この作品を観る前から『この3人は死ぬんだな』と予測できるようなタイトルになっています。
—
解説は以上です。
意味がすべて分かればとても面白い作品ですが、伏線や曖昧な表現が多すぎて少し理解が難解な映画かもしれません。
上に書いたこと以外にもわからないことや指摘などがあれば、コメントなどで教えてください!
ちなみに私が好きなのは、ディカプリオのにおいをかいでいた時のJニコルソンのネズミのモノマネ顔です(^0^)
コメント
とてもわかり易く面白い解説でした。
これほど謎掛け?があった事すら気付かず、
スコセッシ監督の印象が変わりました。
アイコン?にされているモーターサイクルダイアリーズや
名作ギャング映画などの解説もお聞きしたくなりました。
ちなみに、茶封筒の中身については描かれていませんでしたね。
sさん
わかり易いと言って頂けて嬉しいです!!
仰られているアイコンは、実は『ブログ村』専用のアイコンで、このブログ独自のものではないんです。。
他のデザインもあったんですが、可愛くてつい選んでしまいました。
記事もないのに紛らわしいですね、すみません(^^;)
モーターサイクルダイアリーズは近々取り掛かりたい作品のひとつです。
更新が遅いので先になってしまうかもしれませんが(汗)、また覗きに来てもらえると嬉しいです*
封筒の中身については意見がわかれる所なのかもしれませんね。。
嬉しいコメントありがとうございました(^^)
封筒の中身描かれてたけど?
ゴンゾさん
コメントありがとうございます!管理人です。
記事を読んでくださり嬉しいです(^^)
あ、描かれてました?
私は状況判断で中身を推測するしか出来なかったので、このような書き方をしました。。
理解力が足りずすみませんm(__)m
読んでやっとわかった部分がありました!ありがとうございます!
ただ、マークウォルバーグのお兄さんは、ドニーウォルバーグかな?
名無しさん
コメントありがとうございます、お役に立てて嬉しいです!
マーク・ウォールバーグのお兄さんについて、エンドロールにロバート・ウォールバーグと表記がありそのまま書いたはずなんですが、今見直すことが出来ず正確なお答えが出来ないです、すみませんm(__)m
サラッと調べたところロバートさんもドニーさんもお兄さんのようです。
曖昧な回答で申し訳ないですm(__)m