映画「三度目の殺人」についての解説、考察をしています!
それは、ありふれた裁判のはずだった。
殺人の前科がある三隅が、解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。
犯行も自供し死刑はほぼ確実。
しかし、弁護を担当することになった重盛は、なんとか無期懲役に持ち込むため調査を始める。
何かが、おかしい。調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれていく。(引用:映画『三度目の殺人』公式HP)より
本編時間:124分
制作国:日本
監督・脚本・原案:是枝裕和
キャスト&キャラクター紹介

(引用:https://ameblo.jp/karin-suh)
重盛朋章…福山雅治
『勝ち』にこだわる弁護士。
国選弁護士として、死刑求刑されている被告人の三隅の弁護をすることになる。
結果至上主義で合理的な性格のため、事件の真相・真実には興味を持ったことがなかったが、三隅に魅せられて真相に興味が湧く。
(引用:https://www.iza.ne.jp)
三隅高司…役所広司
強盗殺人の容疑で死刑求刑された被告人。
30年前にも殺人事件を起こして服役していた。
殺したことは認めるものの、供述の内容をコロコロ変えて弁護士を困らせる。
相手の感情を読み取る特技がある。
川島(重盛の部下の新人弁護士)…満島真之介
篠原(検察官)…市川実日子
服部亜紀子(重盛の弁護士事務所の事務員)…松岡依都美
山中美津江(咲江の母、被害者の妻)…斉藤由貴
重盛彰久(重盛の父)…橋爪功
重盛ゆか(重盛の娘)…蒔田彩珠
裁判官…井上肇
留萌の警察官…品川徹
桜井(工場の従業員)…高橋努
三隅のアパートの大家…根岸季衣
留萌のバーの男…山本浩司
検察官(篠原の上司)…岩谷健司
店長…中村まこと ほか
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※このページの情報は2022年2月時点のものです。最新の配信状況はサイトにてご確認ください。
あらすじ紹介
平成29年12月。結果至上主義で実績を積み重ねてきた弁護士の重盛(福山雅治)は、弁護士仲間の摂津(吉田鋼太郎)から「強盗殺人事件裁判の被告人弁護を代わりに担当してほしい」と頼まれました。
その事件とは同年10月11日、多摩川の河川敷で食品工場の社長・山中ミツオ50歳が殺されて燃やされた殺人事件です。
この事件で逮捕された三隅高司(役所広司)は、山中の工場を9月末で解雇された元従業員で、三隅自身は山中の殺害を認めています。
実は三隅は、約30年前にも強盗殺人の罪で服役していた前科がありました。
2度目の殺人事件なので、強盗殺人で有罪になれば三隅は死刑になる可能性が非常に高いです。
元々は摂津が三隅の国選弁護人でしたが、三隅の供述がコロコロ変わるのが手に負えず、重盛に助けを求めたのです。
12月5日。重盛が初めて三隅と面会すると、三隅は罪を認めた上で、動機は『酒を飲んでいて、思い付きで殺した』と答えました。
この動機も前回の供述とは変わっていて、摂津は苛立ちます。
その後、重盛は『三隅が盗んだ山中の財布』を見ると、財布にはガソリンが付いていました。
重盛は『財布を奪うつもりで殺したのではなく、殺してから財布を盗ろうと思いついた』と判断し、殺人動機を『強盗目的の殺人』ではなく『怨恨による単純殺人と窃盗』に変えることで減刑を求める方針にしました。
※『単純殺人と窃盗』の方が罪が軽い
12月16日。この日発売された週刊誌に三隅の事件の特集が組まれていて、そこで三隅がまた違う動機を取材陣に話していたことが発覚します。
その記事には『中山の妻に依頼されて保険金目当てで殺した』と書かれていました。
重盛が慌てて三隅に会いに行くと、三隅は「中山の妻美津江に頼まれてやった。携帯メールに証拠が残っている」と言います。
三隅の携帯には、美津江からの「あの件、50万円でお願いします」と怪しいメールがあり、確かに10月の頭に給料とは別に50万円が三隅の口座に振り込まれていました。
重盛は急遽、罪状を『共謀共同正犯』に変え、主犯は美津江だったと主張して減刑を狙うことにしました。
※共謀共同正犯:複数人で犯罪の計画を立てて実行した罪のこと。
この事件はマスコミにも取り上げられ、世間では三隅と美津江が不倫関係にあったのではと騒がれました。
数日後。重盛は三隅の人間性を探るため、三隅のアパートを訪れます。
そして大家さんとの会話で、山中の娘で高校生の咲江(広瀬すず)が何度か三隅の部屋を訪れていたことを知ります。
真実に無関心だったはずの重盛も、だんだん事件の真相が気になり始めます。
解説・考察や感想など
真相が何なのかも明かされないまま終わり、モヤモヤが残る作品でした。
このモヤモヤ感は是枝監督の意図だったと解釈していますが、私なりに真相を考えていきます。
本当の犯人は結局誰なのか?
事件の真相・犯人・動機など全てが曖昧なまま終わりますが、少なくとも実行犯は三隅で間違いないと筆者は解釈しています。
冒頭で、三隅が山中を殺害するシーンは『実行犯は三隅』と観客に示すためではないかと思っています。
『器』とは何なのか
重盛は三隅を『器』と表しますが、30年前に北海道で三隅を逮捕した警察官も「三隅は空っぽの器のような男」と同じ印象を語りました。
三隅には他人の感情や思考を読み取れるサトリのような特殊能力があったので、その能力のことを『器』と言い表していたのではないでしょうか。
三隅自身は特徴が無いのが特徴のような男で、確立された自己や自我が無く、大抵の人間が持っているような夢や目標、願望、欲望も無い『空っぽな人間』です。
そんな空っぽの三隅には、相手の願望がわかってしまう特殊能力がありました。
そして三隅の『空っぽの部分』に、相手の抱く感情、願望が入り込んでしまうのです。
だから三隅は目の前にいる人間に同調してしまい、相手の願いを叶えることが三隅の行動理由になってしまうのです。
ここから、空っぽの器を持つ三隅をイメージしながら書きます。
三隅の『心の器』には、他人の感情が入ってしまうことがあります。
他人の感情が器に入ると、その感情に三隅自身が支配されてしまいます。
基本は三隅が接触した人全員の感情が入ってしまうと思われますが、三隅と波長が合う人物(重盛、咲江など)には、より強く影響を受けてしまうようです。
そして器が他人の感情でいっぱいになると三隅は憑依状態になり、空っぽにするための行動を起こします。
その行動が今回は『山中を殺すこと』だったわけですが、三隅は憑依状態だったので、動機を聞かれても明確には答えられません。
それに器の影響もあるので、質問した人物に「欲しい答え」があると、三隅は相手が欲しい答えを口走ってしまうというのが、彼の供述がコロコロ変わっていた原因ではないでしょうか。
例えば三隅が週刊誌の取材に『山中の妻に頼まれて殺した』と答えたのは、記者が『スキャンダラスな答え』を三隅に求めていたからです。
次のページに続きます!
2ページ目は『事件の真相、タイトル考察』、『三隅が犯行を否定した理由』、『司法の仕組みについて』です。
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