「三度目の殺人」ネタバレ解説|器の意味、事件の真相など5の考察 | 映画の解説考察ブログ - Part 2

「三度目の殺人」ネタバレ解説|器の意味、事件の真相など5の考察

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サスペンス

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事件の真相、タイトルの意味は?


(引用:http://blog.imalive7799.com

三隅は供述をコロコロ変えて観客を翻弄しますが、真実は明かされることなく、観客には死刑判決だけがポンと渡されるような形で物語は終わります。

ここは三隅の供述はあてにならないものとして置いといて、起こった事実と周辺人物の発言は真実と考えれば話の筋が通る気がします。

30年前に三隅が殺したのは借金取りの男でしたが、警察官は「借金取りは皆から恨まれていたが、三隅はあいつを恨んでいなかった。なのに殺したのは三隅だったから不気味だ」と言っていました。
なので、三隅は町の皆が抱いた借金取りへの恨みで『器』が満たされてしまい犯行に及んだのでしょう。

そして今回の事件では、三隅は咲江に強く共感して『器』は咲江の感情で満たされ、山中の殺害に至ったと思われます。

裁判の最中、咲江は重盛の事務所に現れて、実の父である山中に性的虐待を受けていたことを打ち明けます。
咲江は山中を憎み、死んでほしいと思っていたのです。

三隅は咲江の発言通り、頼まれてはいないものの彼女に代わって山中を殺したというのが真実だと思います。
三隅が重盛の父に出していたハガキにあった「娘と一緒に雪のケーキを作った時、娘が手袋をしていなかったので、私のを半分渡した」という文章も、三隅と咲江の共犯関係を暗示していたように思えます。

タイトル『三度目の殺人』は、三隅は『器』が原因で3度人を殺し、その3度目の被害者が三隅自身になったという意味だと筆者は解釈しています。

 

裁判中、三隅がコロッと供述内容を変えた理由

裁判が始まった後、咲江は三隅の刑を少しでも軽くするために、咲江が山中に性的虐待を受けていたこと、それを三隅に打ち明けていたことを証言したいと重盛に申し出ます。

重盛が咲江の件を三隅に伝えると、途端に三隅は犯行そのものを否定して無罪を主張し始めました。
今まで殺人を認めていたのに突然無罪を主張したことが決め手となり、三隅は裁判官の信用を無くして死刑判決を下されます。

裁判の後、なぜ突然無実を主張したのか聞くと、三隅は「俺はただの人殺しだ」「もし咲江を守るためだとしたら、良い話かもな」と発言をします。
三隅が理由をはっきり答えないあたり、無罪を主張した時の記憶が無かった可能性もあります。
三隅は恐らく重盛の「咲江の精神面や将来を守ってあげたい」という感情で器が満たされて、そうなるような言動をしたのです。

三隅に死刑判決が出て裁判が終わった後、重盛が頬をぬぐいます。
三隅と咲江も同じ仕草をしていたので、本作において頬をぬぐう仕草は『共犯関係』を意味します。

つまり、重盛もこのままでは三隅は死刑になると知りながら、あえて救わなかったのです。
十字路の真ん中にぽつんと立ち、あたかも十字架の真ん中に立っているように見えるのは、重森が殺人の罪を背負っていることを示すメタファーです。




三隅のキャラクターから感じたこと

三隅はサトリの特殊能力を持ち、能力に支配されてしまった悲しい男でしたが、この共感能力は群れで生きる動物や人間なら誰でも少なからず備わっています。

相手の気持ちを考えて相手がどうしてほしいか考えながら行動することは、仕事でもプライベートでも人間関係を良好にするにはとても大事なスキルです。
しかし、相手の気持ちを考え過ぎたり相手の要望に応えることを生きがいにしてしまうと、自分を大切にできなくなります。

他人の要望に応えすぎて自分の望みがわからなくなり、破滅してしまったのが三隅です。
そんな三隅のキャラクターからは、是枝監督からの「他人に操られる人生、他人に依存する人生で良いのか?」という問いかけを感じました。

 

司法の仕組みについて

本作の言葉を借りると『司法の船に乗っている者たち』にもそれぞれ事情があることが明かされていました。
裁判官は、裁判を多くこなすことで評価が上がります。
そのため裁判官は1つ1つの裁判をスケジュール通りか、それより短く終わらせることに執着します。

人間を生かすか殺すかを決める今回のような裁判ですら、裁判官は顔色一つ変えずにとにかくスケジュール通りに終わらせようとしていました。
彼らは人の生死を決めることに慣れてしまい、裁判官のはずなのに倫理観がマヒしています。
こういう点もモヤモヤというか胸糞悪さを感じますが、これが司法の現実だと是枝監督は訴えているのでしょう。

弁護士の中で唯一、偏った考えを持たないというか平等な倫理観を持っていたのは新人弁護士の川島(満島真之介)だけでしたが、三隅の裁判を続行する理由を摂津に教えてもらった時は素直に納得していました。
司法にとって最も大切な『平等・公平』も、少しずつ「司法の仕組み」によって捻じ曲げられていくのだと感じてしまいます。

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