映画『マイノリティ・リポート』徹底解説|それぞれの思惑など13の考察、原作との比較など | 映画鑑賞中。

映画『マイノリティ・リポート』徹底解説|それぞれの思惑など13の考察、原作との比較など

SF

映画『マイノリティ・リポート』の解説・考察をしています!

犯罪予知が可能になった近未来。
犯罪予防局チーフとして未来殺人の犯人逮捕に尽力してきたジョンは、36時間後に自身が加害者となる事件の報告を受ける。
ジョンは予知そのものが捏造に違いないと判断し、犯罪予知システムの欠陥を調査する。

原題:MINORITY REPORT
制作年:2003年
本編時間:分
制作国:アメリカ
監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ジョン・コーエン、スコット・フランク
原作小説:『トータル・リコール』に収録の短編『マイノリティ・リポート』フィリップ・K・ディック著

 

キャスト&キャラクター紹介

マイノリティリポート
©2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.
ジョン・アンダートントム・クルーズ
犯罪予防局・犯罪防止科の警察官。
約6年前、当時10歳だった1人息子ショーンを誘拐で失い、それが原因で離婚している。
現在は仕事に打ち込む一方で、いつまでも癒えない喪失感を埋めるためクラリティーと呼ばれる違法薬物に依存している。
マイノリティ・リポート
©2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.
アガササマンサ・モートン
未来予知の能力があり、犯罪予防局に管理されているプリコグ(予知能力保持者)の1人。
3人のプリコグの中で最も能力の高い人物。
マイノリティリポート
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ダニー・ウィットワーコリン・ファレル
FBI調査官。司法省長官ナッシュの代理人として予防犯罪局に出入りして、システムの粗探しをする。
野心に燃え、威圧感のある人物。
マイノリティリポート
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ラマー・バージェスマックス・フォン・シドー
犯罪予防システムの設立メンバーで犯罪予防局の局長。
ジョンと家族ぐるみの付き合いがあり、ジョンが息子を失ってから長年特に気にかけている。

 

ララ・クラーク(ジョンの元妻)…キャスリン・モリス
アイリス・ハイネマン(システム考案者、生物遺伝子学者)…ロイス・スミス
レオ・クロウ…マイク・バインダー
ウォリー(モニター技師、プリコグの世話係)…ダニエル・ロンドン
ギデオン(収容所長)…ティム・ブレイク・ネルソン
エディ・ソロモン(闇医者)…ピーター・ストーメア
ミス・ヴァン・アイク(ソロモンの助手)…キャロライン・ラガーフェルト
ルーファス・T・ライリー(技術者)…ジェイソン・アントゥーン
アン・ライブリー…ジェシカ・ハーパー
アーサー、ダシール(プリコグ)…マイケル・ディックマン
ジャッド(ジョンの部下)…スティーブ・ハリス
フレッチャー(ジョンの部下)…ニール・マクドノー
ノット(ジョンの部下)…パトリック・キルパトリック
ケイシー(ジョンの部下)…アンナ・マリア・ホースフォード
エヴァンナ(ジョンの部下)…ジェシカ・キャプショー
ショーン(ジョンの息子)…タイラー・パトリック・ジョーンズ、ドミニク・スコット・ケイ
リュコン(麻薬売り)…デビッド・シュティフェル
キャサリン・ジェームス医師…アン・ライヤーソン
バージェスの妻…ナンシー・リネハン・チャールズ
バージェスの秘書…サラ・シモンズ
ヴィンセント・ナッシュ(司法長官)…ヴィクター・レイダー・ウェクスラー 
犯罪予防局の技術者…ユージーン・オスメント
ハワード・マークス(逮捕された男)…アリー・グロス
サラ・マークス…アシュレイ・クロウ 
上司を殺したい男…ウィリアム・メスニック
ホームレス…マックス・トランパワー ほか

 

舞台背景

本作のあらすじを把握するために、まずは舞台背景やシステム仕組みを整理します。

時代設定と犯罪予知システム

マイノリティ・リポート

©2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

舞台は西暦2054年、アメリカの首都ワシントンD.C。
年々増え続ける犯罪の撲滅策として、政府は2046年に『犯罪予防局』を設置し、2048年から本格的に『犯罪予防システム』の運用を開始します。

プリコグと呼ばれる3人の『予言能力保持者』が予知した内容を元に、捜査官が犯人と犯行場所を特定し、罪を犯す前に犯人を逮捕してしまうシステムです。
プリコグが予知・提供できるのは犯行の一部始終の予知夢のようなイメージ映像と、被害者・加害者の名前と、犯行時刻です。
犯人と同姓同名が複数いる場合、イメージ映像と公的書類(免許証など)の顔写真を照らし合わせて犯人を絞り込んだり、犯行場所についてもイメージ映像のみを手掛かりに特定し、犯行時刻までに現場に向かいます。
ちなみにプリコグが予知できるのは1~2週間先の未来までです。

プリコグの予知は精密マシンが瞬時に分析し、被害者と加害者の氏名が書かれたゴルフボール大の球を排出します。
赤い球は衝動的犯行、茶色の球は計画的犯行を意味しています。
捕まった加害者は『未来殺人罪』で逮捕された後、精神治療班に引き渡され、『帽子』と呼ばれる装置を頭部に着けられて収容所へ送られ、人間としてのあらゆる権利をはく奪され社会から排除されます。(恐)
帽子を付けられた者は意識を失い、夢の中をさまよい続けます。
刑期があるかどうかは定かでないですが、状況から察するに一度収容所に入れられると基本的に死ぬまで出られないようです。

プリコグの予知はワシントンD.C内で起こる犯行に限られています。
また、プリコグが予知するのは殺人事件のみで、それ以外の事件(窃盗、レイプ、自殺など)は予知できません。

彼らの活動が功を奏し、システム運用から1年で殺人犯罪は前年の90パーセント以上減少し、特に計画的犯行はほぼゼロになりました。
舞台となる時期はシステムの全国的な導入が検討されつつあり、国民投票で『犯罪予防法案』が可決されるかどうかの瀬戸際です。




プリコグについて

マイノリティ・リポート

©2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

予言能力保持者のプリコグは3人いて、女性がアガサ、双子の男性がアーサーとダシールです。
彼らは犯罪予防局内の『聖域』と呼ばれる部屋の中に設置された特別なプールの中にいます。
プールを満たしている溶液には栄養剤と、イメージを高めるための伝導体も含まれています。
彼らの頭にはマシンに繋がる白色光のコードが何本もつけられていて、常に脳をモニターし、プリコグが見た予知夢を捜査官が解析します。

彼らはドーパミン(興奮作用のある脳内麻薬の一種)とエンドルフィン(鎮静作用のある脳内麻薬の一種)の定期的な投薬で精神状態も安定しており、常に熟睡も覚醒もしていない中間の状態が保たれています。

3人の中でも特に優れた能力を持つのはアガサで、彼女が居なければ予知システムは成り立たないと科学者たちは口を揃えます。

 

エコー(こだま)とマイノリティ・リポート(少数意見)

プリコグは人間なので、同じイメージ映像を繰り返し見ることがあります。
似たようなイメージをプリコグが何度か見た場合、それは既に処理済みの過去の事件を繰り返し見ているだけのエコーと判断されてデータべースから消去されます。

また、捜査官に知らされる事件の予知は多数報告のみで、1人だけが見た予知夢はマイノリティ・リポート(少数意見)と言われ、こちらもエコーと同じく消去されます。
例えば同じ事件についてプリコグ2人が見た予知Aとプリコグ1人だけが見た予知Bの2つの未来の可能性が発生した場合、2人が見た予知Aの方が現実に起こる確率が高いと見られるため、確率の低いBは捜査の混乱を避けるために消されるのです。

 

市民の管理体制


(引用:https://tascent.com

政府が個人を管理する方法の代表として『網膜走査』が採用されています。
その他にも政府側が個人を把握する材料として、納税記録や免許証など現代にあるものもあります。

網膜走査は眼球をスキャンし、その個体差で個人を登録・管理するシステムで、公共交通機関の利用履歴や、職場、施設などへの出入り(各部屋への出入りも含む)も網膜走査により履歴が残るようになっています。

ジョンの職場で関係者以外立ち入り禁止の部屋は、網膜を事前に登録している人物しか出入り出来ないようになっています。




あらすじ紹介

あらすじ①:


(引用:https://www.hollywoodreporter.com

犯罪予防局の捜査官ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は、多くの部下に慕われる模範的なチーフリーダーです。

ある日、ジョンは女性プリコグ(予知能力者)のアガサ(サマンサ・モートン)が時たま見るエコーの事件が気になり、興味本位で調査します。
そのエコーはアン・ライブリーという初老の女性が、身元不明の薬物中毒者に川辺で殺されている映像です。
資料では『アン・ライブラリーを保護して犯人は逮捕(解決済み)』となっているためジョンはライブリーを調べますが、現在の彼女の生死や居住地は不明で、事件発生前に薬物中毒で入院していた履歴位しかわかりませんでした。

ジョンはライブリー事件に違和感を感じ、犯罪予防局創設者のラマー・バージェス長官(マックス・フォン・シドー)に相談しますが、バージェスは最近予防局内をうろついているFBI捜査官のウィットワー(コリン・ファレル)が気がかりらしくライブリーの話は聞いてもらえませんでした。
ウィットワーはバージェスと敵対関係にある司法長官ナッシュの指示で『犯罪予防システムの欠陥探し』をしていて、欠陥が見つかればそれを理由にバージェスを蹴落とそうとしているのです。


(引用:https://thesectorm.files.wordpress.com

数日後。プリコグが『ジョン・アンダートンが加害者となる計画殺人事件』を予知しました。
被害者はレオ・クロウと言う名の中年白人男性ですが、ジョンはレオ・クロウとは会ったこともなく名前も初めて聞く赤の他人でした。
釈明も虚しくジョンは逮捕の対象となり指名手配され、かつての部下や仲間に追われる身となってしまいます。
ジョンが容疑者になると同時に、ジョンのポストはウィットワーに横取りされました。

 

あらすじ②:

マイノリティ・リポート

ジョンとハイネマン博士 ©2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

ジョンは、ウィットワーが裏で働いているに違いないと考え、無実を証明するために追っ手から逃れながら独自に調査を開始します。

ジョンはまず、プリコグの予防システムに細工することは可能かどうか知るためにバージェス長官とコンタクトを取りますが、バージェスは「細工は出来ないはずだが、絶対に不可能とは言い切れない。もし方法があるとしても、私にもわからない」と答えました。

その後、ジョンは犯罪予防システムの考案・開発者であるアイリス・ハイネマン博士(ロイス・スミス)に会いに行き、システムに欠陥があるかどうか聞きました。
すると博士は『システムの完全性を高めるために、マイノリティ・リポート(少数報告)は削除される』と答えました。

それは、もしプリコグ3人が1つの事件に対して2パターンの未来を予知した場合、1人のレポートは削除され、2人の予知レポートだけが捜査官に知らされるという意味です。
ジョンは自分の事件についてもマイノリティ・リポートがあるに違いないと思い、プリコグで最も優秀な能力を持つアガサ(サマンサ・モートン)のマイノリティ・リポートを調べることにします。

マイノリティ・リポート

ソロモン ©2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

ジョンは網膜走査から居場所がバレるのを避けるため、闇医者ソロモン(ピーター・ストーメア)に頼んで眼球を取り替える手術を行いました。

その後、ジョンは犯罪予防局に侵入してアガサを誘拐し、彼女の記憶を取り出す技術を持つ天才プログラマーのルーファス・T・ライリーに会い、アガサのマイノリティ・リポートを探してもらいますが、結局マイノリティ・リポートは見つからず、アガサ本人からも「別の予知は存在しない」と言われてしまいました。

ジョンは事件の被害者となる男レオ・クロウの正体が気になり、予知映像を手掛かりにアガサと共に事件現場へ向かうことにします。




あらすじ③:

事件現場となるホテルにたどり着いたジョンは、アガサの警告を無視してクロウが宿泊している部屋に入りました。
部屋にクロウはおらず、ベッドには無数の子どもの写真がバラまかれています。
その中に、数年前に誘拐されてそのまま見つかっていないジョンの1人息子ショーンの写真がありました。

レオ・クロウの正体は連続児童誘拐殺人犯で、ショーンを誘拐・殺害した張本人だと確信したジョンは、犯罪予防システムが間違っていないことを実感します。
ジョンは部屋に戻ってきたクロウに殺意が抑えられず銃を向けますが、アガサの必死の呼びかけで引き金を引くのをためらいました。


(ジョンとレオ・クロウ 引用:https://picinmotion.files.wordpress.com

すると、クロウは「早く殺せ!そうしないと俺の家族が困るんだ」と慌てはじめます。
その後のクロウの発言から、彼はショーンを殺した犯人ではなく、元々は軽犯罪で刑務所に収容されていたところを、突然面会に来た見知らぬ男と『契約』して児童誘拐殺人犯に成りすましていたことがわかりました。
その契約とは『児童誘拐殺人犯になりすましてジョン・アンダートンに殺されれば、遺族に多額の保険金を支払ってやる』というものでした。
クロウは混乱しているジョンの銃に手を伸ばし、無理やり引き金を引かせて死亡しました。

ジョンの事件は犯罪予防局発足以来初めて起こってしまった殺人事件となり、世間を騒がせます。
ウィットワーは現場検証の末にクロウが本物の誘拐犯ではないことを見抜き、ジョンが誰かに陥れられていることに気付きます。

ウィットワーはアン・ライブリー事件も調べ、アン・ライブリーは報告上は『殺害前に保護された』となっていますが、実際には予知通り殺されていることを知ります。
さらに、彼女を殺した犯人は現在も逮捕されていません。
犯人は犯罪予防システムの網をすり抜けて逮捕を逃れていたのです。
それはつまり、アン・ライブリーを殺した犯人は犯罪予防システムを熟知するごく一部の人間以外にあり得ないことを意味していました。

ウィットワーはバージェス長官をび出して推理を打ち明けると、バージェスは用意していたジョンの銃でウィットワーを撃ち殺しました。
ジョンを陥れようとしていたのはバージェスだったのです。

その頃、ジョンはアガサを連れて元妻ララ(キャスリン・モリス)の自宅に来ていました。
ジョンとララはショーンの件が原因で離婚しています。
ララはジョンが来たことに気付いた時点でバージェスに連絡して助けを呼んでしまいます。

ジョンはララに事件の経緯を説明している最中にウィットワーと同じ推理にたどり着き、アガサにアン・ライブリー事件の真犯人を教えてもらおうとしますが、バージェスが手配した隊員が押し寄せて、ジョンは逮捕されて収容所へ入れられ、アガサは予防局に戻されてしまいました。

 

あらすじ④:※ネタバレ注意


(収容されたジョン 引用:https://imgur.com

その後、ララはバージェスが信用できないことを察してジョンが陥れられたことに気付き、収容所に侵入してジョンを解放します。

ジョンをハメたのも、アン・ライブリーを殺したのも、犯人はラマー・バージェス局長でした。
バージェスは、ジョンがアン・ライブリー事件の真相に気付きかけていたから排除しようとしていたのです。

国民投票により犯罪予防システムの全米展開が決まった記者会見の日。
ジョンは、信頼できる仕事仲間ジャッドとララの協力の元、記者会見の場でバージェスがアン・ライブリーを殺した殺人犯であることを暴きました。
すると、プリコグは『バージェスがジョンを殺す衝動殺人の予知』を見ました。


(ジョンに銃を向けるバージェス 引用:https://screenrant.com

バージェスを追い詰めたジョンは『予知に従って(ジョンを殺して)収容所送りになるか、予知に逆らって(ジョンを殺さずに)自らシステムの欠陥を明らかにするか選べ』と迫ると、バージェスは「許してくれ」と言い、自ら命を断ちました。

その後、犯罪予防システムは廃止され、過去にジョンが逮捕した『未来殺人罪』の囚人は解放されました。
ジョンとララはヨリを戻して新しい命を授かり、幸せに暮らしています。
プリコグだったアガサ、アーサー、ダシールは職務から解放され、人里離れた山頂の小屋で穏やかな日々を送っています。




解説・考察、感想など

学生の頃に初めて見たときは何となく面白いな~で見ていましたが、改めて見返してみると考えさせられる要素が満載で、面白い作品でした。
コリン・ファレルのフォトジェニックな雰囲気が好きなので、個人的にはウィットワーにもう少し活躍してほしかったです。

犯罪予防システムの設定のおさらいや、個人的に感じた疑問を元に解説や考察をしてみます。

麻薬売りの男に目玉が無い理由

マイノリティ・リポート

©2013 DREAMWORKS LLC AND TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

ジョンが麻薬を買っていた男は目玉が無く、目にぽっかり空いたグロテスクな穴が特徴でした。
あの男に目玉が無かったのは、恐らく金銭的な問題です。
収容所の所長ギデオンが「最近は目玉を取り換えるのも安価で出来るようになった」とは言っていたものの、それはあくまでも相場の話で、昔よりは安くなっているとしても、まだ一般的に見れば高額であると思われます。

麻薬売りの男は身分の特定や逮捕を逃れるために目玉を取ったようですが、新しい目を入れる費用を用意できなかったか、金と視力を天秤にかけて金を選んだのか、どちらかだったのでしょう。
彼の身なりからても恐らく前者でしょうが、麻薬売りって何となく金回りが良いイメージがあるので彼がなぜ貧乏なのかは疑問です。

 

一般市民の生活

様々な場面で一般の人々の生活風景が登場していました。
一般人が暮らすアパートや、ララの自宅、低所得者層が暮らすアパートなどです。

ジョンの自宅や職場はいかにもSF的なハイテク機器に囲まれていたのが印象的だったのに対し、一般人の生活は至って普通というか、私達になじみがあったり懐かしさを覚えるような生活風景でした。
ハイテク機器に囲まれた生活は、ジョンが限られたごく一部のエリートであることや、犯罪予防システムそのものが我々の生活の延長線上にあることを強調し、観る側がよりリアルな近未来に感じるような制作側の工夫だと思われます。

 

プリコグの生い立ち

プリコグは特殊な遺伝子操作で生まれた試験管ベイビーだと多くの人が想像していましたが実際には、麻薬中毒者の子どもでした。
彼らの神秘性を高めるために明かされていなかったのでしょう。

『ニューロイン』という新種の麻薬が市場に出回った頃、生物学者のハイネマン博士は麻薬中毒者が産んだ子供の遺伝子研究をしていました。

出回ったばかりのニューロインは粗悪品で、中毒者の子どものほとんどが遺伝子異常を抱えて生まれ、多くは12歳までに死んでしまいます。
その中で生き延びた少数の子どもたちは特殊能力(未来予知能力)を持っていることに博士は気付きました。
それがアガサ、アーサー、ダシールです。

プリコグが置かれていた状況

プリコグの熱心なお世話係のウォリーは『彼らに自分自身を人間だと思わせないために、このような管理体制にしている』と説明していました。
プリコグは地球上に3名しかおらず、彼らに求められる仕事の性質も考えると、プリコグは常にいつ起こるかわからない予知に備えていなければなりません。

そうなると24時間年中無休で働き続けてもらう必要があるため、プリコグは人権をはく奪されて自我すら持たないように(自分たちが人間であると気づかないように)徹底管理されています。
彼らが自分達の置かれている状況を理解すれば自由を願い、人間らしい扱いを求めるのは当然ですが、彼らが普通の人間と同じように生活してしまうと肉体的にも精神的にも良い時や悪い時などの波が生まれ、常に高い正確性が求められる予知業務に支障が出ます。

プリコグが麻薬付けにされていたのは予知の正確性を高めるためだけでなく、彼らが支配されていることに気付かないようにするためでもあったのです。

プリコグを理解すればするほど闇の深さがわかるというか、そもそも健全なシステムではないのは明らかです。

次のページに続きます!




感想などお気軽に(^^)

  1. 名無し より:

    すごく時間が経ってしまっていてすみません。
    最後の筆者様の質問に関してですが、私の拙い英語力で聴きとる限りでは、
    「殺せ、さもなくばシステムは崩壊する」と言っているようです。
    前後の文脈からしても、その時点ではジョンはシステムを信じ維持したいと思っているような台詞がある為、システム崩壊を回避したいなら予知通り殺すべき、という会話であると判断出来るかと思います。
    博士が非常に電波な喋り方な為、混乱させられますが、字幕も混乱しているのかも知れませんね。
    遅レスで大変失礼致しました。

    • mofumuchi より:

      名無し さん
      作品の該当シーンを見返すのに時間がかかってしまい、返信が遅れました。すみません。。
      回答くださって本当に助かりました!!
      大変参考になったと同時に、私の英語力の無さが浮き彫りになってしまいお恥ずかしい限りです(笑)
      質問は残しておく必要が無さそう(読んだ方まで混乱させてしまいそう)だったので削除しました。
      本当にありがとうございました((*_ _)

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