映画『マイノリティ・リポート』徹底解説|それぞれの思惑など13の考察、原作との比較など | 映画鑑賞中。

映画『マイノリティ・リポート』徹底解説|それぞれの思惑など13の考察、原作との比較など

SFサスペンス

映画『マイノリティ・リポート』の解説・考察をしています!

犯罪予知が可能になった近未来。
犯罪予防局チーフとして未来殺人の犯人逮捕に尽力してきたジョンは、36時間後に自身が加害者となる事件の報告を受ける。
ジョンは予知そのものが捏造に違いないと判断し、犯罪予知システムの欠陥を調査する。

原題:MINORITY REPORT
制作年:2003年
本編時間:分
制作国:アメリカ
監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ジョン・コーエン、スコット・フランク
原作:SF小説『マイノリティ・リポート』フィリップ・K・ディック著

トータル・リコール【電子書籍】[ フィリップ K ディック ]

 

キャスト&キャラクター紹介

ジョン・アンダートントム・クルーズ

犯罪予防局・犯罪防止科の警察官。
約6年前、当時10歳だった1人息子ショーンを誘拐で失い、それが原因で離婚している。
現在は仕事に打ち込む一方で、いつまでも癒えない喪失感を埋めるためクラリティーと呼ばれる違法薬物に依存している。

アガササマンサ・モートン

未来予知の能力があり、犯罪予防局に管理されているプリコグ(予知能力保持者)の1人。
3人のプリコグの中で最も能力の高い人物。

ダニー・ウィットワーコリン・ファレル

FBI調査官。司法省長官ナッシュの代理人として予防犯罪局に出入りして、システムの粗探しをする。
野心に燃え、威圧感のある人物。

ラマー・バージェスマックス・フォン・シドー

犯罪予防システムの設立メンバーで犯罪予防局の局長。
ジョンと家族ぐるみの付き合いがあり、ジョンが息子を失ってから長年特に気にかけている。

 

・その他のキャスト

ララ・クラーク(ジョンの元妻)…キャスリン・モリス
アイリス・ハイネマン(システム考案者、生物遺伝子学者)…ロイス・スミス
レオ・クロウ…マイク・バインダー
ウォリー(モニター技師、プリコグの世話係)…ダニエル・ロンドン
ギデオン(収容所長)…ティム・ブレイク・ネルソン
エディ・ソロモン(闇医者)…ピーター・ストーメア
ミス・ヴァン・アイク(ソロモンの助手)…キャロライン・ラガーフェルト
ルーファス・T・ライリー(技術者)…ジェイソン・アントゥーン
アン・ライブリー…ジェシカ・ハーパー
アーサー、ダシール(プリコグ)…マイケル・ディックマン
ジャッド(ジョンの部下)…スティーブ・ハリス
フレッチャー(ジョンの部下)…ニール・マクドノー
ノット(ジョンの部下)…パトリック・キルパトリック
ケイシー(ジョンの部下)…アンナ・マリア・ホースフォード
エヴァンナ(ジョンの部下)…ジェシカ・キャプショー
ショーン(ジョンの息子)…タイラー・パトリック・ジョーンズ、ドミニク・スコット・ケイ
リュコン(麻薬売り)…デビッド・シュティフェル
キャサリン・ジェームス医師…アン・ライヤーソン
バージェスの妻…ナンシー・リネハン・チャールズ
バージェスの秘書…サラ・シモンズ
ヴィンセント・ナッシュ(司法長官)…ヴィクター・レイダー・ウェクスラー 
犯罪予防局の技術者…ユージーン・オスメント
ハワード・マークス(逮捕された男)…アリー・グロス
サラ・マークス…アシュレイ・クロウ 
上司を殺したい男…ウィリアム・メスニック
ホームレス…マックス・トランパワー ほか

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舞台背景

本作のあらすじを把握するために、まずは舞台背景やシステムの理解がマストです。
少々複雑なので整理しながら。

時代設定と犯罪予知システム


(引用:https://i1.wp.com

舞台は西暦2054年、アメリカの首都ワシントンD.C。
年々増え続ける犯罪の撲滅策として、政府は『犯罪予防局』を2046年に設置し、2048年から本格的に『犯罪予防システム』の運用を開始します。

プリコグと呼ばれる3人の『予言能力保持者』が予知した内容を元に、捜査官が犯人と犯行場所を特定し、罪を犯す前に犯人を逮捕してしまうのが仕事です。
プリコグが予知・提供できるのは犯行の一部始終の予知夢のようなイメージ映像と、被害者・加害者の名前、犯行時刻です。
犯人と同姓同名が複数いる場合、イメージ映像と公的書類(免許証など)の顔写真を照らし合わせて犯人を絞り込んだり、犯行場所についてもイメージ映像のみを手掛かりに特定し、犯行時刻までに現場に向かいます。
ちなみにプリコグが予知できるのは1~2週間先の未来までです。

プリコグの予知は精密マシンが瞬時に分析し、被害者と加害者の氏名が書かれたゴルフボール大の球を排出します。
赤い球は衝動的犯行、茶色の球は計画的犯行を意味しています。
捕まった加害者は『未来殺人罪』で逮捕された後、精神治療班に引き渡され、『帽子』と呼ばれる装置を頭部に着けられて収容所へ送られ、あらゆる権利をはく奪された上で社会から排除されます。(恐)
帽子を付けられた者は意識を失い、夢の中をさまよい続けます。
刑期があるのかどうかは明らかになりませんが、状況から察するに、一度刑務所に入れられると死ぬまで出られない模様。

プリコグの予知はワシントンD.C内で起こる犯行に限られています。
また、プリコグが予知するのは加害者と被害者が存在する殺人事件のみで、それ以外の事件(窃盗、レイプ、自殺など)は扱われません。

彼らの活動が功を奏し、システム運用から1年で殺人犯罪は前年の90パーセント以上減少し、特に計画的犯行はほぼ壊滅しました。
現在はシステムの全国的な導入が検討されつつあり、国民投票で『犯罪予防法案』が可決されるかどうかの瀬戸際です。

 

プリコグについて


(引用:https://i1.wp.com

予言能力保持者のプリコグは3人いて、女性がアガサ、双子の男性がアーサーとダシールです。
彼らは犯罪予防局内の『聖域』と呼ばれる部屋の中に設置された特別なプールの中にいます。
プールを満たしている溶液には栄養剤と、イメージを高めるための伝導体も含まれています。
彼らの頭にはマシンに繋がる白色光のコードが何本もつけられていて、常に脳をモニターし、プリコグが見た予知夢を捜査官が解析します。

彼らはドーパミン(興奮作用のある脳内麻薬の一種)とエンドルフィン(鎮静作用のある脳内麻薬の一種)の定期的な投薬で精神状態も安定しており、常に熟睡も覚醒もしていない中間の状態が保たれています。

3人の中でも特に優れた能力を持つのはアガサで、彼女が居なければ予知システムは成り立たないと科学者たちは口を揃えます。

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エコー(こだま)とマイノリティ・リポート(少数意見)

プリコグは人間なので、同じイメージ映像を繰り返し見ることがあります。
似たようなイメージをプリコグが何度か見た場合、それは既に処理済みの事件を繰り返し見ているだけのエコーと判断されてデータべースから消去されます。

また、捜査官に知らされる事件の予知は多数報告のみで、1人だけが見た予知夢はマイノリティ・リポート(少数意見)と言われ、こちらもエコーと同じく消去されます。

市民の管理体制


(引用:https://tascent.com

政府が個人を管理する方法の代表として『網膜走査』が採用されています。
その他にも政府側が個人を把握する材料として、納税記録や免許証など現代にあるものもあります。

網膜走査は眼球をスキャンし、その個体差で個人を登録・管理するシステムで、公共交通機関の利用履歴や、職場、施設などへの出入り(各部屋への出入りも含む)も網膜走査により履歴が残るようになっています。

ジョンの職場で関係者以外立ち入り禁止の部屋は、網膜を事前に登録している人物しか出入り出来ないようになっています。

本作を初めて見たのは高校生位だったと思うんですが、その時からずっと虹彩で認識してるんだと思いこんでいて、網膜だったことに今更気付いてプチ驚きでした(網膜走査って何回も言ってたのに笑)
虹彩は指紋みたいに個人で違うと聞いたことがあるけど、網膜もそうなんですかね。

あらすじ前半


(引用:https://www.hollywoodreporter.com

犯罪予防局の捜査官ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は、多くの部下に慕われる模範的なチーフリーダーだった。

ある日、ジョンは女性プリコグのアガサ(サマンサ・モートン)が時たま見る解決済み事件のエコーが気になり、興味本位で調査する。
被害者はアン・ライブリーという初老の女性、加害者は身元不明の薬物中毒者だった。
アン・ライブリーの現在を調べるが、事件発生前に薬物中毒で入院した履歴があるが、事件後のことはエラー表示でわからなかった。
ジョンはこの件をラマー・バージェス長官(マックス・フォン・シドー)に相談するが、「ただのエコーだから気にするな。それよりもウィットワーに気を付けろ。君の薬物使用がバレればさすがに守れんし、ララも心配してたぞ」と話を逸らされた。


(引用:https://thesectorm.files.wordpress.com

数日後。プリコグが、ジョン・アンダートンが加害者となる計画殺人を予知する。
被害者はレオ・クロウと言う名の中年白人男性で、イメージ映像から顔を確認するが、ジョンの全く知らない人物だった。
見知らぬ男を計画的に殺害するなど、殺人を人一倍嫌悪するジョン自身にとってもありえないことだ。
となると、考えられるのは陰謀だった。

ジョンは最近、犯罪予防局内を欠陥探しのために嗅ぎまわっているウィットワー(コリン・ファース)がシステムに何か細工をして、ジョンを嵌めようとしているに違いないと考え、無実を証明するため逮捕の手から逃れながら独自に調査を開始する。

まずはバージェス長官に連絡するが、バージェスは「システムへの細工を不可能とは言い切れないが、方法はわからない」と答えた。
やがて未来殺人の容疑者としてジョンは指名手配され、ジョンのポストはウィットワーに横取りされた。


(ジョンとハイネマン博士 引用:https://www.youtube.com

その後、ジョンは犯罪予防システムの生みの親であるアイリス・ハイネマン博士(ロイス・スミス)にシステムに欠陥があるのかどうかを聞きに行った。
彼女の答えは『システムの完全性を高めるために、マイノリティ・リポート(少数報告)は削除される』というものだった。
それは、もしもプリコグ3人が同一人物に対して違なる未来を予知した場合、少数の予知が削除され、多数の予知のみが捜査官に知らされるという意味だ。
彼女の助言で、ジョンはプリコグで最も優秀な能力を持つアガサのマイノリティ・リポートを調べることにする。

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あらすじ後半※ネタバレしてます


(闇医者ソロモン 引用:https://www.gtplanet.net

ジョンは網膜走査から逃れるために闇医者ソロモン(ピーター・ストーメア)の診察室を訪れて、眼球を取り替える手術を行った。

その後、犯罪予防局に侵入してアガサを誘拐し、彼女の記憶を取り出す技術を持つ天才プログラマーのルーファス・T・ライリー(ジェイソン・アントゥーン)が経営するバーチャル体験施設『バーチャル・クラブ』に向かう。

ジョンはルーファスにアガサのマイノリティ・リポートを探してもらうが、彼女の記憶にあるのはやはりジョンがレオ・クロウを銃で撃ち殺す映像であり、アガサは他の予知を見ておらず、マイノリティ・リポートは存在しないと言う。
その直後、アガサの脳は再びアン・ライブリーの殺害映像を意味深に映し出した。
ジョンは捏造の可能性を示す証拠が無いことに落胆するも、クロウを殺すまでの経緯が気になり、イメージ映像に登場する看板などを手掛かりにアガサと共に事件現場へ向かう。

とあるホテルにたどり着いたジョンは、アガサの忠告を無視してクロウが宿泊している部屋にたどり着く。
部屋にクロウはおらず、ベッドには無数の子どもの写真がばらまいてあった。
その中に息子ショーンの写真を見つけたジョンは、ショーンを誘拐し、殺した犯人が彼であると判断する。
部屋にクロウが戻ってくると、ジョンは銃を取り出して殺そうとするが、アガサの「未来は変えられる!」と止める声を聞き、必死で殺意を抑えた。


(ジョンとレオ・クロウ 引用:https://picinmotion.files.wordpress.com

すると、クロウは「殺してくれなきゃ困る!家族に金が支払われない!」と慌てふためく。
クロウは軽犯罪で刑務所に収容されていた男で、見知らぬ男と『子どもの連続誘拐殺人犯になりすまして殺されてくれれば、残った家族に多額の保険金を支払ってやる』と電話でやり取りして約束し、刑務所から出してもらったと言う。
クロウは混乱するジョンの銃に手を伸ばし、無理やり引き金を引かせて死亡した。

ジョンの事件は犯罪予防局発足以来初めての殺人事件となった。
ウィットワーは現場検証の末、部屋に置かれた過剰な証拠から、これがジョンをはめるために仕組まれた事件だと見抜く。
ウィットワーはジョンが容疑者になる直前に調べていたアン・ライブリーは、報告上は殺害前に保護されたことになっているが、本当は予知通りに殺されていて、犯人はシステムの網をすり抜けて現在も逮捕されていないことを悟る。
ウィットワーはバージェスをジョンの部屋に呼び出して、アン・ライブリー事件の真犯人とジョンをはめた犯人は同一人物であり、システムを熟知するごく限られた人物に違いないと推理を明かす。
推理を聞き終わると、バージェスはジョンの銃でウィットワーを撃ち殺した。

その頃、ジョンはアガサを連れて元妻ララの住む湖畔沿いの家に来ていた。
ララは2人が来ていることをバージェスに知らせ、彼を保護してほしいと頼む。
ジョンはララに今までの経緯を話していて、ウィットワーと同じ推理にたどり着き真相に気付く。
アガサにアン・ライブリー事件の真犯人を教えてもらおうとするが、同時にバージェスが手配した隊員が押し寄せ、ジョンはクロウとウィットワーの殺害容疑で逮捕されて収容所へ、アガサは保護されて局に戻された。


(収容されたジョン 引用:https://imgur.com

その後、ララはバージェスがアン・ライブリーの事件と関わりがあることを知り、収容所に侵入してジョンを解放した。

ジョンを陥れたのも、アン・ライブリーを殺したのも、犯人はラマー・バージェス局長だった。
バージェスは、ジョンがアンの事件の真相に近づいたため、ジョンを排除しようとしていたのだ。

国民投票により犯罪予防システムの全米展開が決まった記者会見の日。
ジョンは、ララと信頼できるかつての部下ジャッドの協力の元、記者会見の場でバージェスがアン・ライブリーを殺し、捜査官の目を欺き隠蔽していたことを暴く。
すると、プリコグはバージェスがジョンを殺す予知レポートを出した。


(ジョンに銃を向けるバージェス 引用:https://screenrant.com

会場のテラスで、ジョンがバージェスに『予知に従って収容所送りになるか、予知に逆らって自らシステムの欠陥を明らかにするか』の選択を迫ると、バージェスは「許してくれ」と言い、自ら命を断った。

その後、犯罪予防システムは廃止され、『未来殺人罪』で捕まっていた囚人は解放された。
ジョンとララはヨリを戻して新しい命を授かった。
アガサ、アーサー、ダシールはプリコグの責務から解放され、人里離れた山頂の小屋で安らかな日々を送る。

 

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解説・考察、感想など

学生の頃に初めて見たときは何となく面白いな~で見ていましたが、改めて見返してみると考えさせられる要素が満載で、面白い作品でした。
コリン・ファレルのフォトジェニックな雰囲気が好きなので、個人的には彼演じるウィットワーにもう少し活躍してほしかったです。

犯罪予防システムの設定のおさらいや、個人的に感じた疑問を元に解説や考察をしてみます。

麻薬売りの男に目玉が無い理由


(引用:https://getyarn.io

ジョンが麻薬を買っていた男は目玉が無く、目にぽっかり空いたグロテスクな穴が特徴でした。
あの男に目玉が無かったのは、恐らく金銭的な問題です。
収容所の所長ギデオンが「最近は目玉を取り換えるのも安価で出来るようになった」とは言っていたものの、それはあくまでも相場の話で、昔よりは安くなっているとしても、まだ一般的に見れば高額であることは間違いありません。
あの男は身分の特定を逃れるために目玉を取り除きましたが、新しい目玉を手に入れる費用を用意できなかったか、金と視力を天秤にかけて金を選んだのか、どちらかだったのでしょう。
彼の身なりから判断しても、恐らく前者でしょうが。

 

一般市民の生活

様々な場面で一般の人々の生活風景が登場していました。
一般人が暮らすアパートや、ララの自宅、低所得者層が暮らすアパートなどです。
ジョンの自宅や職場はいかにもSF的なハイテク機器に囲まれていたのが印象的だったのに対し、一般人の生活は至って普通というか、私達になじみがあったり懐かしさを覚えるような生活風景でした。
ハイテク機器に囲まれた生活は、ジョンがごく限られた一部のエリートであることや、犯罪予防システムそのものが我々の生活の延長線上にあることを強調し、観る側がよりリアルな近未来に感じるような制作側の工夫だと思われます。

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プリコグの生い立ち


(引用:https://splinterend.tumblr.com

プリコグは特殊な遺伝子操作で生まれた試験管ベイビーだと多くの人が想像していましたが実際には、麻薬中毒者の子どもでした。
彼らの神秘性を守るために明かされていなかったのでしょう。

新種の『ニューロイン』という麻薬が市場に出回った頃、生物学者のハイネマン博士は、麻薬中毒者が産んだ子供の遺伝子研究をしていました。

出回ったばかりのニューロインは粗悪品で、中毒者の子どものほとんどが遺伝子異常を抱えて生まれ、多くは12歳までに死んでしまいます。
その中で生き延びた少数の子どもたちは特殊能力を持っていることに博士は気付きました。
それがアガサ、アーサー、ダシールです。

プリコグが置かれていた状況

熱心なお世話係のウォリーは『彼らに自分自身を人間だと思わせないために、このような管理体制にしている』と説明していました。
プリコグは世界に3名しかおらず、彼らに求められる仕事の性質も考えると、プリコグは常にいつ起こるかわからない予知に備えていなければなりません。
過酷な状況下に置くために、プリコグは人権をはく奪されて自我すら持たないように徹底管理されています。
彼らが自分達の置かれている状況を理解すれば解放を願うようになるのは間違いないし、彼らが普通の人間と同様の生活をしていれば肉体的にも精神的にも良不良の波が生まれ、より正確性の高い予知が出来なくなるからです。

プリコグを理解すればするほど政府の闇の深さがわかるというか、そもそも健全なシステムではないことは明らかです。

 

ジョンがマイノリティ・リポートを求めた理由

ジョンとハイネマン博士が会う辺りから話が複雑化してくるので整理します。
ジョンは博士との会話でマイノリティ・リポート(少数報告)の存在を知ります。

ジョンの殺人予知は、プリコグの2人か3人全員が見たマジョリティ・リポートであり、ジョンはそれが捏造された予知だと確信しています。
なので、プリコグがもしジョンの事件に関して別の予知夢を見ていたとすれば、そちらが捏造されていない真実の可能性があったからです。

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バーチャル・クラブで名誉欲を満たす男


(引用:https://i.stack.imgur.com

ジョンがアガサの記憶を取り出してもらうために訪れていたバーチャルクラブは、現実世界では叶えられない密かな願望、欲望をバーチャル世界で体験できる施設でした。
オーナーのルーファスが客に真っ先に勧めていたのが理想の女性との性体験だったことから、性的な体験が一番の売りであることがわかる一方で、予防局の隊員が施設に現れて今まさに体験中の客のブースを開けた時、その客は沢山の人々から称賛される名誉の体験をしていたのが印象的でした。
後のバージェスの記者会見で、この客とバージェスが非常に似た立ち位置になるシーンがあったので、バージェスは名誉欲のために犯罪に手を染めていたことが示唆されています。
これは、彼が後に自殺を選んだ理由でもあります。

 

社会科見学の子どもたち

小学校高学年位の子どもたちと、彼らの教師らしき男性が犯罪予防局の前で校外学習していて、先生はプリコグについてこう説明しています。
彼らは騒音から隔離された場所に居て、部屋にはベッドやテレビ、ジムもある快適な生活をしている

これは実際のプリコグたちの生活とはかけ離れているものです。
なぜ教師がそのような説明を行ったのかというと、犯罪予防局(バージェス)がプリコグの普段の生活について、教師が話したような内容を世間に公表しているからです。
そもそも彼らは薬漬けにされて人間扱いすらされていませんから、本当の状況を知れば世間から非難の声が出るのは間違いありません。
このように情報操作をするのも、全てはシステム存続のためです。

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ジョンの犯行現場に捜査官が来なかった

ジョンの犯行時刻になった時、予防局の捜査隊は殺害現場に現れませんでした。
いつ来るのかとハラハラして待っていたのに、来なかったので逆に驚きました。
彼らは結局、プリコグが予知した犯行時刻までに現場を特定できず、通報後にしか駆け付けることが出来なかったのでしょう。
冒頭で繰り広げられていた逮捕劇で、ジョン達が犯行現場付近に着いたとき、数軒並ぶ同じデザインの家を前に、どの家が現場なのかを特定するのに時間がかかっていましたが、ジョンの現場は大型アパートの一室だったので、難易度が特別高かったようです。
現場の特定が難しかったからこそ、ウィットワーはジョンが犯行現場に行く前に捕まえてしまおうと尽力していましたが、ジョンはアガサの力を借りて上手く捜査官たちから逃げ続け、犯行現場に到着しています。

ジョンがメインで犯人や場所の特定をしていた描写が印象的でしたし、実際に殺人ゼロで犯行前に容疑者全員を逮捕出来ていた点がジョンの捜査官としての優秀さを強調し、ごく限られた極めて優秀な捜査官にしか、システムを使いこなすことができない難易度の高さも示しているように見えます。

死んでないけど生きてもいない

アン・ライブリーの娘について、アガサは『死んでないけど生きてもいない』と言います。

それはプリコグとして生きている彼女自身の状態のことを言っていて、人間として生きることが出来ていないということです。

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ショーン誘拐の犯人は

ジョンの息子ショーンを誘拐した犯人は結局一切登場しなかったのが残念でした。
アガサの発言の「ショーンを連れ去った男も足が速い」という発言しか手がかりがないですが、この発言から無理やり膨らませて考えると、この誘拐犯は犯罪予防局の守備範囲であるワシントンD.C以外に逃げてしまっているのでしょう。

彼女が誘拐犯について多く語らなかったのは、彼についての現在などは見ることが出来なかったからです。
それでもアガサはショーンの誘拐現場の過去イメージを見たんですから、局に戻って映像を取り出してもらって犯人の顔だけでも確認するなど、もう少し貪欲に行動しても良い気がしました。

アガサがショーンの将来について語っていたのは『ショーンがもし生きていたらどうなっていたか』というものです。
ショーンがもし生きていたら、父親似のスポーツ万能な青年になっていて23歳で結婚もしたけれど、もうこの世にいないため「だけど、彼はまだ6歳のまま」で締めくくっています。

 

ダニー・ウィットワーの狙い


(引用:https://www.dailymail.co.uk

司法省所属のウィットワーがナッシュ司法長官から受けていた指示は、犯罪予防システムの欠陥を探すことです。
犯罪予防局はバージェスが長官となりシステムと局を立ち上げ、どの省庁にも属さず独立して運用されていた機関です。
システムが犯罪予防として素晴らしい成果をあげていたため、ナッシュはバージェスがシステムの権利を独占して地位と名誉と金を集めていたのが気に入らず、隙あらば司法省の傘下に置きたいと考えていました。
そのためにシステムの問題を探し出して指摘し、別の機関による監視が必要だと訴えようと考えます。

しかし、犯罪予防システムは外からは完璧に見えるようにバージェスが入念な対策を行っていたので、外部調査だけでは欠陥を見つけられなかったのでしょう。
そこでナッシュは、出世欲に燃える賢い男ウィットワーに内部調査を命じます。
ウィットワーが現れた時期と、ジョンがアン・ライブリーに興味を持った時期がほぼ同時だったため、ジョンはプリコグが自分の犯罪を予知した時に『ウィットワーにハメられたに違いない』とミスリードします。
これはバージェスにとって嬉しい勘違いでした。

しかしよく考えてみると、ウィットワーは当時プリコグの予知を操れるほどシステムを熟知していなかったし、プリコグが殺人以外は予知しないと知り、安心してジョンの自宅に無断で侵入して彼を辞職に追い込める決定的な弱み(麻薬)を掴んでいたため、さらに自ら手を汚す必要はないです。

ウィットワーが推理を明かす時の口ぶりからもそうですが、バージェスが犯人の可能性は高いと考えていて、しかし証拠が無いので確かめるためにバージェスをわざわざジョンの部屋に呼び出した可能性が高いです。
ウィットワーは、もしバージェスが犯人じゃなければ、この推理をひとつの業績にしてもらえるアピールにして、もし彼が犯人だと断定出来れば、何らかの取引をする(真実を黙っている代わりに大きな昇進をさせてもらうなど)という展開を望んでいたのではないでしょうか。

システムの欠陥とは

外目には完璧に見えていたシステムでしたが、様々な問題を抱えています。
箇条書きにしてしまいますが、欠陥と欠陥に対する対応の変化を書いてみます。

・法を犯していない者を逮捕してしまうこと
→人権的な問題はあるものの、システムの完全性を強調することで押し通してきたが、ジョンの事件とバージェスの自殺で完全性が崩れた。
2人は局内の人間で、自分の未来を事前に知ることが出来てしまったという特殊なケースではあるものの、100%完璧な未来予知は不可能であることや、未来は意思次第で変えられることを再認識するきっかけになった。

・プリコグの扱い
→明らかに彼らの人権を奪っているのに、世界平和のためには必要だと、局内の誰もプリコグについて疑問を持っていなかったこと自体が大きな問題。

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ラマー・バージェスの狙い


(引用:https://movievillaindeaths.tumblr.com

バージェスがアン・ライブリーを殺したのは、アガサの母親だった彼女がアガサを取り戻すことを望んだからです。
アガサはプリコグの核となる重要人物だったので、どうしても手放したくなかったバージェスは、アンを殺すにはどうすれば良いか考えを巡らせます。
そして、浮浪者を雇いアンを殺すよう依頼して、浮浪者が逮捕された直後、浮浪者と全く同じ格好をしてアンを保護するフリをして殺害します。
アン・ライブリーが娘と暮らしたいと願わなければ、彼女が殺されることは無かったでしょう。

その後にジョンを嵌めようとしたのは、ジョンがアンの事件の真相に疑問を持ったからで、優秀な彼なら真実にたどり着くだろうとバージェスは悟ったからです。

最後に自殺を選んだのは、もう生きていても明るい未来が無いと判断したからです。
バージェスはシステムの存続よりも、自身の命よりも、名声が大切だったからという理由が一番大きいのでしょうが、最後にジョンにかけた「許してくれ」という言葉は、ジョンを利用したことに対して少なからず負い目を感じていた(人間的な感情があった)ことを表していたのではないでしょうか。

 

原作小説との違い

原作は同タイトル、SF作家のフィリップ・K・ディックによる短編小説です。
舞台背景は小説の設定そのままですが、内容は結構違うので、比較はあまりせずにあらすじを紹介します。
できるだけ簡潔に書こうと思いつつ、複雑なため長くなってしまいました(__)

原作小説『マイノリティ・リポート』のあらすじ

舞台は近未来のニューヨーク。
主人公のジョン・アリスン・アンダートンは犯罪予防局の局長です。
ジョンは最近、次期局長として犯罪予防局に着任したウィットワーを疎ましく感じています。
やがて、『1週間後にジョン・アンダートンがレオポルド・カプランを殺す』という未来殺人報告があがり、ジョンは驚愕し、ウィットワーが局長就任を早めるために仕組んだでっち上げだと確信します。
もちろん、ジョンはレオポルド・カプランを知りません。

その日の夜、ジョンはカプランの部下に連れられてカプランと対面します。
ジョンは殺人の意思が無いと説明すると、カプランは「わかったが、少なくとも殺害予定時間が過ぎるまでは身を隠していてくれ」と言い、ジョンも同意して別れます。
カプランと別れた直後、ジョンは突然現れた謎の大男フレミングと出会い、新しい身分と1週間生きていけるだけの生活費をもらいます。

その後、ジョンは逮捕への不安から、ただ待つだけということが出来なくなり、マイノリティ・リポートを確かめるために予防局に忍び込みます。
プレコグの3人はドナ、ジェリー、マイクといい、ジョンの殺人予知をしたのはドナとマイク、殺人を犯さない未来を予知したのはジェリーでした。
システムの性質上、ドナとマイクのマジョリティ・リポートが採用されて一般人にも公表されています。
ジェリーのリポートを手に入れたジョンは、カプランが軍の中でもまだかなりの権力を持っていることを知り、カプランにマイノリティ・リポートを見せた上で殺意が無いことを改めて信じてもらい、カプラン自身から軍と予防局にジョンの逮捕命令を取り下げるよう説得してもらおうと決心します。

そこに、ジョンの妻リサが現れて、彼を高速艇(空飛ぶ小型舟)に乗せてくれると言います。
艇の中で、リサは「あなたは自主すべきだ」と告げ、ジョンに銃を向けてウィットワーの居る警察本部へ艇を進めます。
そこにいつの間にか艇に忍び込んでいたフレミングが現れて、フレミングがカプランの部下だと判明します。
一連の事件の黒幕はカプランで、彼は軍の権力を取り戻すためにシステムの不完全性を証明(ジョンがカプランを殺さないことで、予知が完全ではないと証明する)してシステムを崩壊させようと企んでいたのです。
つまりカプランは、最初からジョンが殺人を犯さない前提でこの計画を立てました。
フレミングを正体不明にしていたのは真相が知られるのを防ぐためで、ジョンをマイノリティ・リポートとウィットワーから遠ざけることが目的でした。
ジョンが当初の予定通りに犯行予定日が過ぎるまで身を隠していれば、カプランの計画通りだったということです。

真相に気付いたジョンはウィットワーの所へ行き、「公表されている予知通りにウィットワーを殺さなければシステムが崩壊させられる。私は君に局長の座を譲って予知通りにウィットワーを殺してやるから、私を他の惑星に逃がせ」と取引を持ち掛けます。
ジョンはカプランを殺害し、妻と共に地球から遠く離れた惑星に秘密裏に逃がしてもらい、新しい生活を送る。
(話の随所にリサとウィットワーが不倫していたことが仄めかされている。)

 

その他、細かい映画との違いについて気付いた限り挙げていきます。
映画でのアガサに相当するドナは、実年齢45歳ですが体の発達が異常に遅く、見た目は10歳程度にしか見えないと書かれています。
双子のどちらかに相当する男性プレコグのジェリーは24歳で、元々は水頭症の精神遅滞者でしたが、彼が6歳の頃に専門家が彼の才能を見出して政府運営の訓練学校に入学させたとあります。
3人目のマイクはプレコグの1人として名前しか登場せず、説明はありません。

また、映画では麻薬中毒者の子どもがプレコグでしたが、小説では彼らの両親については触れられません。
彼らは極めて高い予知能力に恵まれた代わりに、身体の発育が非常に遅く、人格形成もされないまま、ただ未来だけを見てうわごとをつぶやきながら生き続けている存在、という風に描かれています。
映画では彼らは神聖視され、部屋は『聖域』と呼ばれていましたが、小説では彼らはジョン達(健常者)にとって『ただただ未来予知をし続けている意思疎通の出来ない重度障がい者』であり、彼らが居る場所は『モンキー・ブロック』と差別的な表現をされています。
プリコグの管理者が彼らに自我が芽生えるのを制限しているなどの描写はなく、彼らの人格は生まれつき破綻していて、自分たちが未来予知していることすら理解していないかのように描かれています。

筆者からの質問

解説記事を書いておきながら、理解できなかった点があるので残しておきます。

不明点は、ハイネマン博士が『システムを崩壊させたいなら、予知通り殺人をしなさい』とジョンに告げたことです。
なぜジョンが予知どおりに殺人を犯すことがシステム崩壊になるのでしょうか。
字幕の間違いかも?と思ったんですが、違うようです。
システムが完全でないことを示すには、プリコグの予知に反してジョンが殺人を犯さない未来を選択する必要があると思います。
博士が言うように、ジョンが予知通りに殺人すれば、それはよりプリコグの予知の完全性を示す良い機会になると思うのに、なぜ博士が『システム崩壊させたければ殺せ』と言うのか、わかりません(T_T)
ウィットワーのように、システム管理を人間が行うことの欠陥について言っていたのでしょうか。

本作を最近見た方がいたら、教えてください(T_T)

 

以上です!お読みくださりありがとうございました(^^)

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主要キャストの出演作品

・スティーブン・スピルバーグ監督作品

 

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