アニメ映画『パプリカ』ネタバレ解説|理事長の目的、小山内と氷室、粉川とあいつと悪夢など考察 | 映画の解説考察ブログ

アニメ映画『パプリカ』ネタバレ解説|理事長の目的、小山内と氷室、粉川とあいつと悪夢など考察

※この記事にはPRが含まれています。
※この記事にはPRが含まれています。
SF

今敏監督のアニメ映画『パプリカ』の解説、考察をしています!

不思議な感覚に浸れる大好きな作品です。
難解映画のひとつとされる本作の理解を少しでも深めるため、疑問点をまとめました。

鑑賞済みの方向けの考察記事です。
まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

・本作のあらすじ記事はこちらです↓

映画『パプリカ』概要

パプリカ

制作年:2006年
本編時間:90分
制作国:日本
監督:今敏
脚本:今敏、水上清資
原作小説:『パプリカ』筒井康隆 著

 

あらすじ

夢の映像化や共有を実現しつつある近未来。
天才科学者の時田浩作が開発した夢共有装置でまだ実験段階にあった『DCミニ』が何者かに盗まれて、研究所所長の島寅太郎が夢に捕われて夢遊病状態になり、高所から飛び降りる事件が起きました。

島の命に別状はありませんでしたが、誇大妄想患者の夢に捕われたまま目覚めません。
DCミニ開発チームの一員で心理セラピストの千葉敦子は、夢探偵『パプリカ』と共に事件の真相究明と被害者の救済に突き進みます。

 

主要キャスト

千葉敦子(パプリカ)…林原めぐみ
DCミニ開発チームの一員で心理セラピスト。
夢に入る時は夢探偵『パプリカ』の姿に変身する。

時田浩作…古谷徹
DCミニを開発した天才科学者で敦子と幼馴染み。
天才だが、性格は子どものまま大人になったような人物。

島寅太朗…堀勝之祐
千葉と時田が勤める研究所の所長兼理事長。
千葉と共に事件の真相を追う。
DCミニ盗難後の最初の犠牲者。

粉川利美…大塚明夫
捜査一課の刑事で島とは大学時代からの友人。
悪夢に悩まされ、島に勧められてパプリカの夢セラピーを受ける。

乾精次郎…江守徹
研究所の理事長の老人。夢を使用した精神療法に反対する人物。

映画『パプリカ』は〈楽天TV〉で見られます!月額利用料無し、単品レンタル可能です。
※本ページの情報は2022年2月時点のものです。最新の配信状況はサイトにてご確認ください。

 

解説、考察

誇大妄想パレードに取り込まれて話の内容が吹き飛んでしまいがちになるので、主要人物の役割を中心に整理してみました。

パレードは何だった?

パプリカ

© 2006 Madhouse, Inc. and Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All Rights Reserved.

事件の中心になった夢の中のパレードは事件の犯人だった乾の夢でした。

人形たちがするナチス式敬礼や、夢に取り込まれかけた島が玉座に座って王様のように振る舞っていたことから、あの夢は誇大妄想を抱く精神疾患者の夢だと敦子は分析していました。

また、DCミニは全てのサイコセラピーマシンに接続可能でもあったので、他のマシンの夢を乾は取り込んで、あのような巨大なパレードになりました。




氷室は何をした?

パプリカ

© 2006 Madhouse, Inc. and Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All Rights Reserved.

夢の主で犯人かと思われていた氷室は、乾に利用されていた職員の1人でした。

元々氷室は時田の助手の1人で人形オタクだったようです。
彼の部屋を捜索した際、氷室は同性愛者だったことが示唆されています。

同性愛者だった氷室は小山内の隠れファンでした。
小山内は氷室に近づき肉体関係と引き換えにDCミニを小山内に渡して盗難の手助けをしました。

島所長が誇大妄想パレードに囚われた時、「犯人も同じ夢を見続けていないといけない」という発言がありました。
氷室は乾に変わって誇大妄想パレードの主をさせられ続けた結果、あの廃墟の遊園地にたどり着いて落下してしまったのでしょう。

氷室は夢の中でも攻撃的だったので、もしかしたら小山内に言いくるめられて自ら夢の主をしてしまったのかもしれません。

 

小山内は何をした?

パプリカ

© 2006 Madhouse, Inc. and Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All Rights Reserved.

小山内は乾の手足となってDCミニを盗んだ実行犯でした。
小山内はDCミニ管理責任者である時田の管理がずさんなのを知っていて、時田の助手の氷室が同性愛者でひそかに小山内をアイドル視していることに目を付けて、ハニートラップを仕掛けました。

DCミニを盗んだ後、小山内はDCミニを使いこなす訓練をして覚醒したまま現実と夢を行き来出来るようになっていました。
パプリカが粉川のセラピーをした時に「DCミニが完成すれば、覚醒したまま夢に入れる」と言っていた内容を実現していたのです。

小山内は敦子に好意を抱いていたので、事件に深入りしないように氷室の部屋で警告しますが、効果はありませんでした。

劇中に登場した小山内は完全に乾の手下になった後だったので、乾に支配される前の彼も知りたかったです。

 

小山内が乾に選ばれた理由

乾が小山内を選んだのは、彼も『自分は特別な人間』という思いが強く、乾によく似て誇大妄想に捕われやすい人物だったからなのでしょう。

一方 小山内が乾に従ったのは、出世を約束されたなど、何か小山内が食いつくメリットを乾は提示していたと思われます。

また、小山内が『整った顔と体』だったことも恐らく選ばれた理由のひとつです。(顔は乾のままだったので関係ないかもですが)
もしも時田が肥満体型でなければ、乾はまず時田を狙っていたのではないでしょうか。

 

乾はなぜDCミニを盗んだ?

パプリカ

© 2006 Madhouse, Inc. and Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All Rights Reserved.

乾は小山内の体を乗っ取ろうと目論んでいた点から、彼が欲しかったのは『若さ』と『健康的な体(特に脚)』だったようです。

この2つ(特に若さ)を手に入れることは現実世界では不可能なので、乾は夢に目を付けたのでしょう。
そして、DCミニがあれば夢を現実世界に反映させることが出来ることに気付き、夢で現実を乗っ取ってしまおうと考えたのです。
計画を誰にも邪魔させないために、研究所でもサイコセラピーマシンの使用を禁じたのでしょう。

「科学によって安住の地が奪われてしまう」みたいなこと言っていましたが、科学によって世界中の夢を奪おうとしていたのは乾本人だったということです。

そう考えると、乾はやっぱり天才時田の頭脳も本当は欲しかったのではと思えますが、時田の性格上取り込むのが難しかったのかもしれません。

夢でなら何でも実現できそうなので、小山内の体を乗っ取らなくても思い込むだけで若返りできそうですが(粉川も夢で若返っていましたし)、乾が小山内の体に固執していた所を見ると、夢を現実に反映させるためには現実にある若い体が必要だったりなど、何かルールめいたものがあったのかもしれませんね。

 

残り2台のDCミニの行方

残りの2台は乾と小山内が使用していたのでしょう。

氷室が発見された時、DCミニは彼の頭の中にあったので、乾と小山内も何らかの形でDCミニを脳内に装着していたのではないでしょうか。
外科手術の痕は全くなかったし触れられても居ないので何とも言えないですが、3人とも何らかの形でDCミニを脳に装着したのではないでしょうか。

氷室はアナフィラキシー反応で植物状態になりましたが、乾と小山内は「覚醒したままで夢と現実を行き来出来るようになった」と言っていたので、症状が出ることなく使いこなすことが出来ていたということなのでしょう。




時田→ロボット、氷室→人形、乾→樹木、小山内→蝶

パプリカ

© 2006 Madhouse, Inc. and Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All Rights Reserved.

夢の中では、それぞれが象徴するものや大好きなものに変身していました。

時田と氷室はそれぞれ大好きなものに変身している感じでしたが、乾の樹木、小山内の蝶々は、その対象に多くの類似点を見出していたからではないでしょうか。

例えば乾が樹木だったのは、キリスト教に登場する『生命の樹』や、ギリシャ神話に登場する『樹木崇拝』、日本だと『ご神木』のような観念に由来していたと思われます。
『生命の樹』は死者に生命をもたらし、病気を治し、若さを回復する神秘の木です。
『樹木崇拝』はその名の通り、樹木は力を象徴しているとされ、神様の化身として崇拝する風習です。

乾の願望や誇大妄想による『私は特別』という思想が乾を樹木にしていたのでしょう。
最初に登場した乾の顔の大木の周辺に青い蝶々が飛んでいるのも、小山内と乾の関係がサブリミナル効果的に示されています。

『蝶』は、完璧主義者の悪役が蝶の標本を趣味にしている場面なんかは他の映画でもたまに見かけます。
蝶は幸運を運んでくれる神秘的なイメージだったり、あの世とこの世を繋ぐスピリチュアルなイメージもある昆虫ですが、幸運の象徴のような存在を趣味のために殺し、それを処理して飾ってしまうという標本の制作過程にある種の猟奇性を感じるからではないでしょうか。
小山内もまた完璧主義者で、美しいものを好む性格を表現していたように思います。

 

粉川の悪夢の原因と『あいつ』の正体

パプリカ

© 2006 Madhouse, Inc. and Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All Rights Reserved.

パプリカのセラピーを受けていた粉川は、自分自身に追われたり、犯人を捕まえられない悪夢に悩まされていました。

後半のバーデンダー2人との会話で、粉川が学生時代に経験した唯一無二の親友だった『あいつ』との別れが悪夢の原因だったと判明しています。
あいつは粉川にとって彼自身の分身のような存在でもあったのです。

『あいつ』と粉川は高校生時代に映画を製作中でしたが、進路を決める時に粉川は映画の道を諦めていわゆる『普通の進路』を選び、映画製作も途中辞めであいつに押し付けてしまいました。
映画の道を諦めたことは、粉川にとって『将来の夢を諦めて逃げた』という強い後悔に繋がりました。

『あいつ』は高校卒業後、映画の学校に進学しますが若くして病気で亡くなってしまいます。
粉川は彼が病気だったことを知りませんでした。
それは恐らく『あいつ』が知らせない方が良いと判断してそうしたのでしょうが、粉川は教えてもらえなかったことにも『親友失格』『嫌われてしまった』と傷ついていたのかもしれません。

そして、あいつが死んでしまったことで粉川は「あいつも将来の夢も、もっと大事にするべきだった」とより強く後悔していたのです。

粉川があいつの存在を忘れていたのは、恐らく粉川が彼の死を受け入れられなかったからなのでしょう。

 

オイディプスとスフィンクス

パプリカ

© 2006 Madhouse, Inc. and Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All Rights Reserved.

オイディプスはギリシャ神話に登場する王様の1人で、『エディプスコンプレックス』の語源にもなった人物です。
オイディプスはスフィンクスを倒した功績が讃えられて王になりましたが、自分の父親とは知らずに実父を殺し、自分の母親とは知らず実母と結婚しています。
その後、真相を知ったオイディプスは絶望して放浪の旅の末に死亡しています。

パプリカが小山内に「あなたはオイディプスがお似合いよ」と言ったのは、小山内もオイディプスのように、気付かぬ内に重大な間違いを犯している様を指摘していたのでしょう。

 

乾、小山内はあの後どうなった?

乾と小山内は夢と現実を自由に行き来出来るようになった代わりに、恐らく夢が現実に多大な影響を及ぼすようになっていました。

小山内は粉川の夢の中で胸を撃たれ、その後床に沈んで真っ黒な世界に落ちていたので、恐らく意識も死んでしまったのでしょう。(マトリックスとかインセプションみたいに)

乾も同様で、敦子に意識を食べられてしまい植物状態になったと思われます。

乾と小山内は乾の自宅に居たので、2人共そこで植物状態で発見されることになると思われます。

次のページは名言一覧です!




感想などお気軽に(^^)

タイトルとURLをコピーしました