ロサンゼルスの桟橋で麻薬船の爆破事故が起きた。
その後、無傷で生き残った唯一の男ヴァーバル・キント(ケヴィン・スペイシー)に捜査官が話を聞くと、コトの発端は約6週間前の面通しで5人の犯罪者の男たちが出会ったことから始まる。
監督は映画『X-メン』(2000)のブライアン・シンガー。
制作年:1995年
本編時間:106分
制作国:アメリカ
監督:ブライアン・シンガー
脚本:クリストファー・マッカリー
キャスト&キャラクター紹介
(引用:https://www.imdb.com)
ディーン・キートン…ガブリエル・バーン
汚職事件で解雇された元刑事。
その後は恋人のイーディと共に全うな日々を送っていたが、面通しでキントらと出会ったことがきっかけで再び犯罪に手を染める。
(引用:https://www.imdb.com)
ヴァーバル・キント…ケヴィン・スペイシー
通称『おしゃべり(ヴァーバル)キント』と呼ばれる詐欺師。
一見神経質で大人しそうな小者に見えるが、何をしでかすかわからない危なさがある。
左半身に障害があり、左手と左足がうまく使えない。
(引用:https://www.imdb.com)
マイケル・マクマナス…スティーヴン・ボールドウィン
フェンスターと組んで盗みで生計を立てている強盗のプロ。
フェンスターいわく『良い奴だがクレイジー』な人物。
(引用:https://www.imdb.com)
トッド・ホックニー…ケヴィン・ポラック
爆薬のプロ。
キントいわく『開き直りで生きている』人物。
恐らくメンバーの中で一番短気で気性が荒い。
(引用:https://www.imdb.com)
フレッド・フェンスター…ベニチオ・デル・トロ
マクマナスの相棒の強盗屋。
ヒスパニック系で派手な服装、頭は良いがどこかぶっとんでいる。
(引用:https://www.imdb.com)
デヴィッド・クイヤン捜査官…チャズ・パルミンテリ
関税局の特別捜査官。
プエルトリコで起きた事件捜査のためキントら5人を勾留した。
・その他のキャスト
イーディ・フィネラン(キートンの恋人)…スージー・エイミス
コバヤシ(弁護士)…ピート・ポスルスウェイト
ジャック・ベア(FBI捜査官)…ジャンカルロ・エスポジート
ジェフ・ラビン巡査部長…ダン・ヘダヤ
アーコシュ・コバッシュ(火傷の男)…モーガン・ハンター
通訳…ケン・ダリー
レッドフット…ピーター・グリーン
エメラルドの運び屋…ポール・バーテル
宝石商…カール・ブレスラー
プルマー医師…クリスティーン・エスタブルック
ウォルター医師…クラーク・グレッグ
似顔絵師…ミシェル・クラニー
汚職警官…ヴィト・ダンブロージオ
カイザー・ソゼの妻…スマダー・ハンソン
アルトゥーロ・マルケス(ソゼを見た男)…カスチュロ・ゲッラ
マルケスのボディガード…ピーター・ロッカ ほか
あらすじ:起
カリフォルニア州サンペドロの桟橋で1隻の船が爆破され、船と周辺の海から遺体が27体見つかった。
爆破された船はマフィアの麻薬密輸船で、そこにあったはずの麻薬と9100万ドルは未だ見つかっていない。
警察はマフィア同士の抗争が事件の原因とみていた。
この爆破事件には2人の生存者がいた。
1人は全身にひどい火傷を負ったハンガリーマフィアの一味の男アーコシュ・コバッシュ(モーガン・ハンター)で、危険な状態のため病院で処置を受けていた。
コバッシュはぶつぶつとハンガリー語で喋り続けているので、聞き取り調査に来ていたFBI捜査官のベア(ジャンカルロ・エスポジート)は急いで通訳を要請した。
一方、ほぼ無傷で生き残った詐欺師の男 ヴァーバル・キント(ケヴィン・スペイシー)は重要参考人としてサンペドロ署に勾留されていたが、言ってしまえば『小者』のキントの保釈のために市長や知事が動いたため、この事件の裏に大きな黒幕がいることは明らかだった。
だが警察も知事には逆らえず、キントは取り調べでも何も喋らない。
真実は謎のまま、2時間後にキントは保釈される予定だったが、どうしても真実が知りたかった関税局捜査官のクイヤン(チャズ・パルミンテリ)が事件の担当者であるジェフ・ラビン巡査部長(ダン・ヘダヤ)に頼み込み、保釈されるまでの間キントと話をすることになった。
この事件にはクイヤンの元同僚で元汚職警官のキートン(ガブリエル・バーン)が関わっていて、キントは「キートンは死んだ」と証言しているが、まだ本人だと確認出来る遺体は挙がっていなかった。
クイヤンはキートンが死んだことが信じられず、キントと話をしにわざわざニューヨークから来たのだった。
キントが取り調べ室を嫌がるので、話はラビン巡査部長の部屋で行われた。
クイヤンが「お前は何か隠してる。知ってることを全部話せ!
さもないと、これから始まる裁判でお前の罪が重くなるように働きかけるぞ」と脅すと、キントは渋々話し始めた。
爆破事件の6週間前。ニューヨークにいたキントは面通しのため警察署に勾留され、そこで同じ理由で一緒に勾留された元汚職刑事のキートン、強盗2人組のマクマナス(スティーヴン・ボールドウィン)とフェンスター(ベニチオ・デル・トロ)、爆薬のプロのホックニー(ケヴィン・ポラック)と出会った。
※面通し…容疑者を集めて事件関係者に容疑者の容姿や声を確認させて犯人を割り出す捜査方法。
(面通しで集められた5人 引用:https://www.imdb.com)
面通しが終わった後の拘置所の中で、マクマナスが仕事(犯罪)の話をキントらに持ちかけてきた。
それは稼げる金額は大きいがリスクも高く、死人を出さずに済ませるには5人必要だという。
フェンスター、ホックニー、キントはふたつ返事で話に乗ったが、キートンは犯罪から足を洗ってまっとうに生きようと努力している最中だったため、話も聞かずに断った。
拘置所から解放された翌日、キントがキートンを説得しに現れた。
キントは「俺は金が必要だからこの仕事がしたいんだ、お前だって金が必要だろ?
一度汚点が付いた奴が堅気になるのは簡単じゃない、資金を作ってからやり直せばいいじゃないか。
それに、人を殺さずに済ませるにはどうしても5人必要なんだ。
君が加わらないと他の奴らは構わずヤりまくる気だ、君の力で止めて欲しい。」と頼み込んだ。
キートンは弁護士の恋人イーディ(スージー・エイミス)と出会ってから人生をやり直そうと決意してインテリア関係の仕事を始めたが、客はキートンの過去(犯罪歴)を知るとたちまち去っていくため全く上手く行かず、現在キートンはほとんど彼女に養ってもらっている状態だった。
さらに、キートンは現在交渉中だったクライアントがいたのだが、彼らの目の前で面通しのために警察に連れて行かれたことが原因で今回の仕事も無くなってしまったため、半ばヤケを起こしたキートンは仲間に加わることにした。
あらすじ:承
仕事の報酬はうまく行けば300万ドル以上にもなり、それを5人で山分けすることになる、つまり最低でも1人50万ドル以上稼げるのだ。
詳細は、南米の運び屋が大量のエメラルドをロサンゼルスのレッドフットという宝石商に売るためにニューヨークを通過するらしく、そのエメラルドと所持金を奪う、というものだった。
実は、こういった運び屋を送り届ける時は小遣い稼ぎがしたい地元の警察官が請け負ってパトカーで護送していた。
マクマナスは面通しの仕返しも兼ねて、運び屋を護送中のパトカーを襲って事件を起こし、利益を得る上に警官の汚職を世間に知らしめてニューヨーク警察に恥をかかせるという計画を立てたのだった。
犯行当日。キートンらはバン4台で運び屋を護送中のパトカーを囲み、エメラルドと警官が運び屋から受け取った金を奪うと、パトカーに可燃性の液体をかけて火をつけ、素早くその場から逃走した。
(燃える車から非難する宝石商と警察官 引用:https://www.imdb.com)
早めに通報していたので死者が出ることはなく、警察よりも早くマスコミが現れて事件は大きなニュースになり、汚職警官50人が芋づる式に検挙された。
こうしてキントたちは大満足で仕事を終えた。
5人が隠れ家に戻った後、マクマナスはこのエメラルドを運び屋の代わりにレッドフットに売り付けに行くつもりだと周囲に明かした。
取引場所はロサンゼルスで、マクマナスはフェンスターと2人だけで行くつもりらしい。
これを聞いたホックニーは「そのまま俺たちに金を渡さずトンズラする気だろ!」と怒ったので、結局5人でロスへ行くことになった。
キートンはイーディに何も言えずにロスへ行くことをためらいつつ、後ろ髪を引かれる思いで空港へ行った。
ここまでのキントの話を聞いて、クイヤン捜査官は「お前はキートンを信頼しているようだが、あいつのことをよく知ってる俺から言わせれば、奴は根っからの悪人だ。
利用するならまだしも、女を大事にするなんて信じられない!」と言い、キントが語ったキートンの恋愛話を信じなかった。
クイヤンの調べでは、キートンは警察をクビになる前に3件の殺人容疑、7件の罪で告訴された過去があり、裁判になると証人がキートンに都合の良いように証言をコロッと変えるか、死ぬかしたことが何度もあったそうだ。
最後は詐欺罪で有罪になり警察を解雇、5年の実刑をくらい、その間に囚人3人を殺したという噂もあった。
さらに2年前、キートンが殺人事件の容疑者になり裁判になった際、証人がキートンに不利な証言をしようとした直前、キートンは倉庫の爆発事故で自身の死を偽装して裁判を無理やり終わらせ、その3ヶ月後に不利な証言をしようとした2人が『不慮の事故』で死んだという出来事もあったそうだ。
今回の事件でキートンは死亡したとされているが、クイヤンはまたキートンが死んだフリをしているのではないかと疑っていた。
その頃。アーコシュ・コバッシュのいる病院に通訳と似顔絵師が到着し、医療処置を中断して聞き取り調査が行われていた。
コバッシュによると、その日はコカインの取引をする予定だったが、『カイザー・ソゼ』という悪魔のような男が現れてマフィア達は襲われ、大勢が殺されて船が爆破されたそうだ。
(クイヤン、ベア、ラビン 引用:https://www.imdb.com)
コバッシュは「カイザー・ソゼの顔を見てしまった。命を狙われるからしばらく保護して欲しい」と警察に訴えていた。
ベア捜査官はカイザー・ソゼの人相を聞き出し、似顔絵師に犯人のイラストを描かせた。
あらすじ:転
キントの話の続き。
キント達5人はロサンゼルスへ到着してレッドフット(ピーター・グリーン)と会った。
問題なくエメラルドと金の交換を終えた後、レッドフットが『宝石商から宝石を強盗する仕事』を持ちかけてきた。
(レッドフットとキートン 引用:https://www.imdb.com)
詳しく聞くと、今ロスのホテルに宿泊しているテキサスの宝石屋が持っている宝石と大金を盗み出して欲しいという案件だった。
宝石はレッドフットに、大金はキント達の報酬という好条件だったのでキートン以外は乗り気で仕事に応じた。
キートンは「仕事は1つだけのはずだ」と渋ったが、乗り気の4人に引きずられて結局引き受けることにした。
5人はホテルで宝石商(カール・ブレスラー)が駐車場に来るのを待ち伏せし、銃で脅してスーツケースを渡すよう迫ったがスムーズに事は運ばず、キントが宝石商の頭を銃で撃ち抜き、マクマナスがボディガード2人を殺す結果になった。
その後、スーツケースを開けてみると中身は宝石と金ではなくヘロインが入っていた。
レッドフットにどういうことか問い詰めると、レッドフットは「俺も弁護士から振られたヤマだったから、こんなことになるとは知らなかった」と答えた。
キントが「その弁護士に会わせろ」と言うと、レッドフットは「弁護士もお前たちに会いたいと言ってる」と言うので、5人は弁護士と会うことにした。
5人はホテルの一室で弁護士のコバヤシ(ピート・ポスルスウェイト)と会った。
コバヤシは、彼もまたボスの命令で動いているのみだと告げた後、「ボスから君たちに別の仕事を預かっている」と告げた。
それは死者が出るかもしれないとても危険な仕事だが1日で終わり、9100万ドルの報酬が出るというものだった。
コバヤシのボスが『カイザー・ソゼ』だと聞いた途端、キント以外の4人は表情が曇った。(キントだけがソゼを知らなかった)
ソゼはキント達5人全員から過去に持ち物を盗まれことがあり怒っていること(5人ともソゼの物とは知らずに盗むか壊すかしたことがあった。ちなみにこの時、面通しをした事件の犯人がホックニーだったことがわかった)、5人が出会うきっかけとなった面通しを仕組んだのもソゼだったことが明らかになり、コバヤシは「これは命令だ、ソゼ氏への借りを清算して欲しい」と念押しして仕事の話を続けた。
ソゼの主な収入源は麻薬売買によるもので、商売敵はアルゼンチンの組織だった。
そのアルゼンチン組織が数日後にサンペドロの桟橋で9100万ドルの麻薬取引をするため、5人にはそれを阻止して麻薬ごと船を焼いて欲しい、ソゼの目的は『取引の邪魔』なので9100万ドルは報酬として生き残った者で山分けすればいい、というものだった。
コバヤシは「これはソゼ氏からのプレゼントだ」というとアタッシュケースをテーブルの上に置いて去っていった。
恐る恐るアタッシュケースを開けると、中には5人の名前が書かれた封筒が5通入っていて、中身はそれぞれが18歳から犯した全ての犯罪と共犯者の名前、キートンに至ってはイーディの盗撮写真も添えられていた。
(アタッシュケースを開けるキートンと集まる一同 引用:https://www.imdb.com)
ソゼは裏社会では名の知れた麻薬王だが、彼の顔を知っている人間は誰もおらず、様々な恐ろしい伝説話や、本当は実在しないのではないかという噂さえある都市伝説のような人物だった。
有名な話は、ソゼがトルコで麻薬の売人をしていた時代にライバル組織に目をつけられ、ソゼは自宅を特定されて妻と子どもを人質に取られた。
家族が襲われていることに帰宅してから気付いたソゼは、銃で妻子を撃ち殺し、敵の下っ端を一人だけ生かして他は皆殺しにした。
ソゼが家族を殺したのは「いっそ殺した方が救いになる」と考えたからだそうだ。
妻子の葬式の後、ソゼは家族を襲った人物の家族と友人を皆殺しにし、彼らの自宅と働いている店を焼き払って復讐したという。
その後、ソゼはこつ然と姿を消して伝説の人物になったそうだ。
キントいわく、ソゼのすごいところは自身の存在自体を『謎』にしたことだった。
翌朝。ソゼに怯えたフェンスターが『幸運を』というメモを残してエメラルドの報酬金を持ち逃げした。
その日の夜、コバヤシからフェンスターの居場所を知らせる連絡があり行ってみると、浜辺近くの鍾乳洞でフェンスターの遺体が見つかった。
キートンは「ソゼなど実在しない。言いなりになんてなるものか。コバヤシを殺ろう」と提案し、フェンスターを浜辺に埋葬した。
キートン、キント、マクマナス、ホックニーはオフィスビルの一室で取引先と待ち合わせしていたコバヤシを拉致し、改装中のフロアに連れ込んだ。
そして殺そうと銃を突きつけた時、コバヤシは「これから私が会う取引相手はイーディだ」と告げた。
(コバヤシに銃を突きつけるマクマナス 引用:https://www.imdb.com)
驚いているキートンに、彼女を人質に取るために仕事の依頼をしてロスに来させたことを明かし「仕事を遂行しなければキント、マクマナス、ホックニー君の家族も一人ずつ酷い目に合わせる」と脅し言い残してイーディが待つ会議室に入っていった。
あらすじ:結
マフィアの船は思っていたよりも大きく人数も多かったので、この船を爆破して金を奪ってマフィアから逃げ切るのはかなり難易度が高かった。
実行当日、4人はそれぞれの位置について行動を起こすタイミングを待った。
ホックニーに最初の爆破を頼むと、キートンはキントに「お前はここに隠れてろ、俺達が死んだらお前が金を持って逃げるんだ。
イーディに金を渡して全て話せ、そうすれば彼女が何とかしてくれる、コバヤシも葬ってくれるさ。
…もし俺が死んだら『努力はした』と彼女に伝えてくれ」と言い残すと、船に向かって歩いていった。
キントが見守る中、最初の爆破を合図にキートン、マクマナス、ホックニーは銃を撃ちまくって船員を片っ端から殺しながら必死で麻薬を探した。
途中、ホックニーは桟橋の側に停めてあった車の荷台に9100万ドルがあるのを発見したが、その直後に何者かに殺された。
ホックニーが殺されたのとほぼ同時に、船内に麻薬が無いことを悟ったキートンとマクマナスは、訳はわからないがとりあえず退散することにして船を爆破させる準備をした。
この後、マクマナスは何者かにナイフで首の後ろを一突きにされて殺された。
同じ頃、キントは金が積んであるバンとホックニーの死体を発見。
車のカギか無かったので探していると、船内にどこからともなくカイザー・ソゼと思われる背広の男が現れてキートンの背中を撃った。
背広の男はキートンと数分話した後さらにキートンを撃ち、船に火を着けて逃げていった。
この一部始終をキントは物陰からずっと見ていたという。
クイヤンが「お前は銃を持ってたろ、なぜキートンを助けなかった?」と問い詰めると、キントは「怖くて動けなかったんだ、俺はこんな体(左手足麻痺)だ、もし弾が外れたらどうなる?」と怯えた表情で答えた。
その後、クイヤンに捜査の報告が入り、船に麻薬がなかった理由が明らかになった。
船での取引内容は麻薬ではなく、ある男を売買するためだった。
その男はアルゼンチンマフィアの一味であり、船の焼け跡から遺体で発見されたアルトゥーロ・マルケス(カスチュロ・ゲッラ)で、マルケスの額には焼かれる前に銃で撃たれた跡があった。
マルケスは自分が刑務所に入りたくない一心で警察にカイザー・ソゼを含む犯罪組織メンバー50人の名前を密告した男だった。
さらに、彼は本国に強制送還する手続きが行われている最中で、その手続きを任されていたのはイーディだった。
つまり、アルゼンチン組織にマルケスの取引を持ちかけたのはソゼで、ソゼの目的はマルケスとアルゼンチン組織を一網打尽に殺すことだったのだ。
(ソゼに怯えるマルケス 引用:https://twitter.com)
クイヤンはソゼの正体はキートンだと推理した上で「お前たち4人はアルゼンチン組織を皆殺しにするために奴に選ばれたんだ。
奴がお前を助けたのは、お前がまぬけだったからだ。
お前がキートンがソゼだと思いもしてなかったのがその証拠だ。
お前の免罪措置は、仕事に対する報酬だ。
奴は今回も本当はまだ生きていて、奴の正体を知った今、お前は命を狙われるだろう、警察に保護してもらうべきだ」と告げた。
さらに、イーディが昨日殺されていたことも明らかになり、ソゼの正体がキートンである可能性はさらに濃厚になった。
この頃、キントが釈放される予定の時間は過ぎていた。
キントは「いや、キートンは死んだ。俺はこの目で見たんだ!
それにキートンがカイザー・ソゼなんて、信じられるわけがない!
俺を逮捕しておいて今度は保護するだと?警察なんてくそくらえだ!」と言うと、部屋から出て行った。
数分後。クイヤンはコーヒーを飲みながらラビン巡査部長のオフィスのボードに貼られた大量の資料を眺めていて、あることに気が付き呆然とした。
キントの話の中に登場した5人とイーディ以外の人物の名前(レッドフット、コバヤシなど)はボードに貼られている紙に載っていた名前や、クイヤンのマグカップの裏に印字されている社名そのままのデタラメだったからだ。
キントが喋っていた事件とは関係のない身の上話も、全てその辺にあった資料を見て適当に作った作り話だったことがわかった。
つまり、キントが話していた内容は何が真実で何が嘘なのかもわからないデタラメだったということだ。
ちょうどその時、アーコシュ・コバッシュのいる病院からクイヤン宛てにカイザー・ソゼの似顔絵のファックスが送られてきて、その人相はキントそっくりだった。
クイヤンは急いで署の外に出たが、キントはもうどこにも居なかった。
キントは署から出てから数分は左足を引きずりながら歩いていたが、やがて普通に歩き出し、道路脇で立ち止まると左手で器用にライターを持ちタバコに火を着けた。
そして隣に停まっている黒い高級車に乗り込むと、運転手のコバヤシと共に街に消えていった。
(左手でライターを使うキント 引用:https://3brothersfilm.com)
『le sons et parfumes tournent dans l’air du soir』C・ドビュッシー
『STEPPIN’ OUT』ポール・ネルソン
解説・考察や感想など
(引用:https://www.imdb.com)
本作を初めて見たのは中学生の頃だったと思います。
当時は細かい内容はよくわかっていませんでしたが、思わぬどんでん返しに衝撃を受けたことは覚えています。
今回久しぶりにまた観てみたんですが、やっぱり面白いと思いました。
キント演じるケヴィン・スペイシーの表情の演技はやっぱりすごいです。
内容について、ざっくりとは理解出来るけど、真実と嘘が織り混ざっていると思うと細かい部分がよくわからなくなってきます( °ω。 )
ということで、手探り状態ではありますが考察していこうと思います!
伏線をおさらい
最後のどんでん返しに繋がる伏線をいくつ見つけられましたか?
私も完璧ではないと思いますが、復習もかねて伏線のおさらいをします。
(引用:https://www.imdb.com)
冒頭のキートンがカイザーに撃たれる前、カイザーの正体を見たキートンが「脚の感覚が無いよ」と言います。
これは障害者のフリをしていたキント(カイザー)に対して皮肉を言っていたというのが結末を知ってからわかります。
同じく冒頭で、暗くてあまり良くは見えませんが、カイザーの持ち物である金のライターと金の腕時計が登場し、カイザーが左利きであることが強調されます。
結末シーンでキントが警察署に預けていた金のライターと腕時計を受け取り、左半身の障害は演技で本当は左利きであることが明かされるので、これもカイザーがキントだと示す伏線です。
冒頭でマクマナス、ホックニー、フェンスター、キートンの順に警察に連れ行かれるシーンがありますが、キントだけは捕まるシーンがありません。
これもキントに対する違和感を感じさせる演出なのではないでしょうか。
ラビン巡査部長がクイヤン捜査官にキントが保釈される経緯の説明をしていた際「キントの弁護士と話した検事は態度が豹変して罪が大幅に軽くなった」という話が出ます。
この弁護士というのは恐らくコバヤシ(偽名ですが)のことで、カイザーと繋がる伏線です。
(引用:https://www.imdb.com)
キントがラビン巡査部長の部屋に入った際、キントはラビンのデスク後ろにあるボードをまじまじと眺めたり、部屋にあるものを見つめていました。
これは、キントがこれからどういう話を刑事に話そうかと考えを巡らせている場面です。
トルコ製のシガレットケースを見つめていたのも、意味ありげにシガレットケースが大きく映し出されたのも、回想に登場するソゼの容姿も含めて、キントが語ったカイザー・ソゼのトルコ時代の過去というのが作り話だということを示す伏線になります。
作中でも説明がありますが、キントのファーストネームのヴァーバル(verbal)には『言葉の』という意味があり、転じてキントには『お喋りキント』というあだ名がありました。
またこっちは作中で説明はありませんが、カイザー・ソゼの『カイザー』にはドイツ語で『王様』、『ソゼ』はトルコ語で『お喋り』という意味があります。
繋げると『カイザー・ソゼ』は『お喋りの王様』になり、ソゼの正体がキントであることの伏線になります。
キントの作り話のひとつです。
「イリノイ州でカルテットを組んでいた時、バリトンのデブ男がひどいストレス症だった」と語っていますが、これはキントが部屋のボードに貼ってあった情報を繋ぎ合わせた作り話です。
これもボードの情報を元にキントが作った話の1つです。
ラビン巡査部長が持ってきてくれたコーヒーを飲んだ時、キントが「グアテマラのコーヒー園で働いていて美味いコーヒーを飲んだ こんな小便とは大違いだ」と言い、ラビンをイラつかせます。
コバヤシの名前がキントの口から出る前の段階で、キントがクイヤンのコーヒーカップの裏をじーっと見ているシーンがあります。
これもキントが作り話(偽の名前)を考えている表情を写しているものです。
(引用:https://www.rolexmagazine.com)
キートンが右腕に時計をしているのがよくわかるシーンが2.3回あります。
一般的に腕時計は聞き手と逆側に着けるので、ここに気付いた方は「キートンは実は両利きで、本当は左利きなの?」と考えると思いますが、実際には腕時計をどちらの腕に着けるかは本人の自由ですし、たまたまキートンが右腕に時計を着ける派だっただけで、このシーン以外にキートンが左利きかもしれない事を示す描写は見当たりません。
それに、麻薬船を襲撃する命に関わる大事な局面でもキートンは右手で銃を使っていたので、右利きで間違いないでしょう。
なので『腕時計は利き腕と逆につけるもの』という一種の思い込みを利用して『キートンがソゼなのでは?』と観客にミスリードさせるための演出だと思われます。
クイヤン捜査官が、過去にキートンが裁判でピンチになった際に自身の死を偽装して有罪を免れた話をしていました。
このキートンの過去が、クイヤンがキートンの死を疑っている大きな理由でもあり、私たち観客もキートンがソゼだと疑う理由になります。
ソゼ目線で考えると、キント(ソゼ)はキートンのこういった過去を知ってソゼの正体をかく乱するために彼を選んだんだろうと推測できます。
レッドフットから振られた仕事を行った際、売人に銃を突きつけて脅したのはキートンでしたが、売人を撃ったのはキントでした。
このシーンで重要なのは「え、あなたが殺ったの?」という違和感だと思います。
キントは「人殺しを避けたいから」と言ってキートンを仲間に誘っていたのに、あの場面ではためらいなく売人を殺していたので不思議に思いました。
キントはクイヤンにカイザーの正体がキートンだと思わせたいので、キント自身が殺したとわざわざ話すのは不自然かもしれませんが、恐らくキントはちゃんと調べればバレるだろうと推測し、あえて真実を語ったんだと思われます。
このシーンでキントの正確な射的能力が明らかになることと、カイザーがあの売人に消えて欲しがっていたこともあるので、これはキント=カイザーの伏線になります。
キントはカイザーの存在を知らなかったと言っていたにも関わらず、カイザーのトルコ時代の伝説をクイヤンに語るなど、やけにカイザーに詳しいです。
それに、キント自身がカイザー伝説に振り回されているフリをしながらやたらとカイザーを持ち上げる発言も多いので、キントがカイザーを語る場面もカイザー=キントの伏線です。
『ユージュアル・サスペクツ』の意味
(引用:https://www.imdb.com)
本作のタイトル「ユージュアル・サスペクツ」の意味も書いておきます。
『usual suspects』は直訳すると『いつもの(常連の)容疑者たち』となり、本作で言うところの『面通し捜査』をするような時に毎回容疑者として招集されるような犯罪歴のある人物のことを言います。
ソゼはキートン、マクマナス、ホックニー、フェンスターが『ユージュアル・サスペクツ』であることを利用して彼らを集めた、とコバヤシが明かしてましたね。
キントの話の真実と嘘は?
キントが語った内容の真実と嘘の線引きについては制作に関わったスタッフの間でも意見が分かれるそうで、つまりこの疑問には答えがなく、観客に委ねられているようです。
ここでは私なりの解釈を書くことになりますが、注目したいのはキントが警察署で話していた『明らかな嘘』の内容です。
明らかな嘘というのは近場にあった情報を繋ぎ合わせた作り話のことですが、この嘘って本筋とは関係ないどうでも良い話ばかりです。
具体的に言うとグアテマラのコーヒー園の話、カルテットを組んだ話などです。
大事なキートン達に関する話で確かな嘘だとわかるのは、弁護士コバヤシとレッドフットが偽名であること位です。
あの時どうでも良い話をしなくても、レッドフットとコバヤシが偽名なのは調べていけば後に嘘だとわかるので、キントがなぜわざわざクイヤンにわかりやすくどうでも良いホラ話を挟んでいたのかというと、『単純に警察をおちょくって楽しんでいた』、『ウソがいつバレるか(クイヤンがいつ気が付くか)というスリルを楽しんでいた』、という理由位しか考えられません。
恐らくキントはクイヤンの傲慢な態度や「俺はお前より賢いぞ」等の言葉に相当イラッとしたんだと思われます(笑)
さて、真実と嘘の話ですが、警察の調べでわかっている真実は
・キートンとイーディが恋仲だったこと
・ニューヨークで宝石商が強盗被害に遭い、汚職警官が50人逮捕されたこと
・麻薬船が焼かれて27人の遺体が見つかったこと
・取引内容は密告屋マルケスの売買だったこと
・マルケスは当時強制送還手続き中で、その手配をしていた弁護士がイーディだったこと
・マルケスが銃殺されていたこと
・イーディが殺されたこと
になります。
キートンとイーディについては本当に恋仲だったのか確かな証拠はありませんが、クイヤンがキートンを捕まえに来たときにキートンの仕事の席にイーディも同席していたことや、彼女の働きでキートンが面通し後に素早く釈放されたことなどもあるので、恋人だったのは間違いないかなと判断しました。
これらの事実を交えながら大きな嘘をつくのは難しいと思うので、『キントは物陰に隠れてソゼがキートンを殺すのを見ていた』ことと、コバヤシとレッドフットの偽名以外の大筋は本当だったんじゃないかな~と考えています。
キントは物陰に隠れていたのではなく、背広に着替えてからキートン、マクマナス、ホックニーを殺して、船に火を着けて9100万ドルを回収してコバヤシに預け、また元の服装に戻って警察が来るのを待っていたことになります。
数秒に渡って何度か映し出されていた物陰のアップシーンでも、キントや他の誰かの顔や人影は全く映っていません。
なので、物陰には本当は誰も居なかったのではないでしょうか。
可能性があるとすればもう一人の生き残りのコバッシュ位ですが、あそこにいたらそもそも火傷しないと思うので、コバッシュは全く別の場所というか燃えている船内のどこかでソゼを目撃したんでしょう。
ソゼが逃げずにあえて捕まった理由は、自分以外にもう1人の生存者がいたことを知ったからだと思います。
ソゼの狙いは生き残りの男(コバッシュ)の名前と居場所、他に自分の顔を見た者がいないかを探るためで、また、コバッシュが取り調べを受ければソゼの正体は恐らくワレてしまいますし、どうせバレるなら自分で明かしてやろう、そしてあわよくば捜査官をおちょくってやろうと思ったのではないでしょうか。
キートンとキントは面通しで出会う前よりもさらに数年前に面識があると言っていたので、キント(ソゼ)は顔を変えることもなくちょこちょこヴァーバル・キントとして街に現れて仕事を依頼した人間がちゃんと仕事しているかどうか確認したり、仕事を頼める人探しを自ら行っていたのかもしれません。
マルケスの取引の詳細
マルケスの取引の詳細がわかりづらく感じたので整理します。
キートンたちが『麻薬の取引現場を襲え』とソゼから命令されて麻薬船を襲いますが、そこに麻薬はありませんでした。
後のコバッシュの供述と警察の調べで取引内容は麻薬ではなくマルケスの売買だったことがわかります。
マルケスを9100万ドルで誰かが買おうとしていて、コバヤシは取引相手が誰なのかまではキートンたちに説明していませんでしたが、この買い手というのはソゼ本人です。
ソゼが『マルケスを買いたい』とアルゼンチン組織に持ちかけて組織とマルケスを一か所に集め、キートンたちに襲わせて組織を全滅させ、ソゼ(キント)はマルケスとキートン達を殺し、金を支払うことなく逃走した、というのがあらすじだと解釈しています。
もし違っていたら誰かご指摘ください(;’∀’)笑
ソゼは次は何をする?
(引用:http://www.sanpedrobeacon.com)
ソゼのその後の行動について考察していきます。
ソゼが警察に入り込んだ目的はもう1人の生存者コバッシュの名前と居場所を突き止めることだったので、当然この後ソゼはコバッシュを殺しに行く、もしくは誰かを雇って殺しに行かせるでしょう。
さらに、ソゼの正体を知ったクイヤン、ラビン、ベアの警察官3人も命を狙われる可能性が高いです。
そもそも、ソゼは今まで裏社会でごく一部の人間以外は誰にも顔を知られることなく謎の存在として猛威を振るっていましたが、マルケスの密告で警察に存在が知られてしまいました。
今回の件で似顔絵も作られてしまったし、捜査官3人を殺したとしても、顔を変えたりしない限りはこれからも都市伝説的な『謎の存在』で居続けるのは難しくなるのではないでしょうか。
コメント
はじめまして。
先ほどCSの放送で久しぶりにこの作品を観て、懐かしくなって色々な考察や感想を見てまわっているうちにこちらに辿り着きました。
解説も感想も楽しく読ませていただいたのですが、、、
あらすじ:結のラストの文と解説の中の数カ所で、コバヤシの名前がハシモトになってしまっています。
通りすがりに失礼いたしました。
匿名さん
コメントありがとうございます!
確認したところ、7か所ハシモトになっておりました笑
最近読み直せずにいたので気が付きませんでした。。
ご指摘感謝します。ありがとうございましたm(__)m