映画「わたしを離さないで」ネタバレ解説|伝えたいテーマ、ヘールシャム閉鎖の理由など | 映画鑑賞中。

映画「わたしを離さないで」ネタバレ解説|伝えたいテーマ、ヘールシャム閉鎖の理由など

わたしを離さないで SF

映画「わたしを離さないで」ネタバレ解説|伝えたいテーマ、ヘールシャム閉鎖の理由など

カズオ・イシグロのSF小説が原作の、クローン人間たちの生涯を描いたストーリー。
イシグロ氏本人も製作に関わっている。

1952年 不治とされていた病気の治療が可能となり、1967年 人類の平均寿命が100歳を超えた世界。
人類は臓器提供のためのクローンを作り、必要な時にクローンから臓器を移植できる医療が一般化していた。
クローンたちは隔離された施設で生活し、健康を管理されながら成長した。

原題:Never Let Me Go
制作年:2010年
本編時間:105分
制作国:イギリス
監督:マーク・ロマネク
脚本:アレックス・ガーランド
製作総指揮:アレックス・ガーランド、カズオ・イシグロ、テッサ・ロス
原作:小説/カズオ・イシグロ『わたしを離さないで

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キャスト&キャラクター紹介

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(引用:https://naokouniun.exblog.jp

キャシーキャリー・マリガン
幼少時代…イゾベル・ミークル=スモール

介護人になって9年になる、28歳のクローン。
物語はキャシーが過去を振り返る形で進められる。

ヘールシャムの施設で育ち、幼なじみで気が強い少女ルースが親友だった。
1978年 キャシーが4年生(10~11歳)の頃、いじめられっ子で癇癪持ちの同級生トミーと親しくなり、恋心を抱く。

 

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(引用:http://blog.livedoor.jp
トミーアンドリュー・ガーフィールド
幼少時代…チャーリー・ロウ

キャシーと同級生の男。
幼いころは癇癪持ちで、癇癪を起こすのを面白がられていじめられていたが、新任のルーシー先生と出会ってから次第に落ち着くようになり、いじめはなくなった。

4年生の頃キャシーに惹かれていたが、キャシーの親友ルースから積極的にアプローチされるようになり、その後ルースと付き合った。

 

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(引用:https://yaplog.jp

ルースキーラ・ナイトレイ
幼少時代…エラ・パーネル

キャシーの親友で幼馴染み。
気が強く、上から目線で見栄っ張りで嫉妬深い。
トミーに異性としての関心はなかったがキャシーとトミーの様子に嫉妬し、2人の間に割って入ってトミーをものにした。

ルースとトミーの恋人らしい様子を見て、悲しそうにしたり怒ったりするキャシーを見て密かに優越感を抱く。
一方で、キャシーを一番信頼しており、不安な時はキャシーを頼る。

 

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(引用:https://ameblo.jp

エミリー先生シャーロット・ランプリング
ヘールシャムの施設の施設長で、校長のような立場の女性。

 

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(引用:https://ameblo.jp

ルーシー先生サリー・ホーキンス
施設に新しく赴任した先生。

・その他のキャスト

マダム・マリ=クロード…ナタリー・リチャード
クリシー…アンドレア・ライズボロー
ロッド…ドーナル・グリーソン
ヘールシャムに商品を運ぶ男…ヒューギー・リーヴァー
コテージに物資を運ぶ男…デイビット・スターン
ハンナ…リディア・ウィルソン
看護師…モニカ・ドラン ほか

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ネタバレあらすじ

クローンであるキャシーたちは『クローンではない本物の人間に臓器を提供するため』に生まれた。

クローンたちは、各地に設立された完全入寮制の学校のような施設で集団生活をしながら幼い頃を過ごす。
施設は全国に何か所かあり、キャシー、ルース、トミーは『ヘールシャム』という施設で育った。
『先生』と呼ばれる大人の保護官に監視され、何よりもまず『健康であること』を第一に、勉強やスポーツに励む健康的な生活を送っている。
彼らが施設の外に出ることは禁止されているが、『施設の外に出ると不審な死をとげる』という恐ろしい言い伝えがあり、施設と外を隔てる柵にすら近づく生徒はいなかった。
この言い伝えは、彼らが好奇心で施設から出ないように保護官たちが考えた作り話だった。

施設では毎週 健康診断が行われる他、特に芸術活動が重視され、良い作品は定期的に施設を訪れるマダムと呼ばれる女性に引き取られて施設の外に持って行かれます。
マダムに引き取られた作品は、外の世界の展示会で飾られると噂されていますが、真実は先生たちしか知らない。

芸術活動に励むと『代用コイン』がもらえる。
代用コインは『マーケット』と呼ばれる、不定期に開かれる商品交換会でお金の代わりとして使うことができる。
このマーケットでは、施設の中にはない様々な物が売られていて、彼らにとっては新しい物を得られる唯一の機会。
そのため、彼らは代用コインを貯めることに熱中する。
マーケットに並ぶのは、主に使い古されたおもちゃや楽器(壊れているものも多数)、その他、誰かが使い古した物(ジャンク品)が大半を占めている。
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(施設の子どもたちの集合写真 引用:http://blog.livedoor.jp
彼らは18歳になると施設を出てコテージに移動する。
そして他の施設で育ったクローンたちと一緒に保護官のいない環境に住み、割と自由に生活しながらドナーとして臓器を提供する日が来るのを待つことになる。
コテージでは論文を書くことを課されるが、コテージを出て『介護人』になるための訓練施設へ行くという選択肢もある。
介護人は、提供が始まった仲間の精神的、肉体的な面倒をみたり、書類関係の手続きを代行する仕事で、本物の人間だったら家族がするようなことを代わりにする仕事で、提供が始まったクローン1人に1人ずつ介護人がつく。
この介護人の制度は、肉親を持たない彼らに配慮した制度になっている。

1978年 キャシーたちが10歳頃のある日。
その日はマーケットが開かれていて、キャシーは人混みが嫌でマーケットの会場の外で人が減るのを待っていた。
その時、トミーからジュディ・ブリッジウォーターというジャズヴォーカリストのカセットテープ『Songs After Dark』をプレゼントされた。
※ジュディ・ブリッジウォーターは架空の人物です。
キャシーはトミーからのプレゼントが嬉しくて、『Never let me go』と歌っているその曲が大好きになった。

ある日の授業で、キャシーたちは新任教師のルーシー先生から、自分たちの将来がすでに決まっていることを聞かされた。
この施設にいる子どもたちは臓器提供のために生を受け、ほとんどが若いうちに提供を命じられること。
3度目か4度目の手術で一生を終え、中年まで生きられる者はほとんどいないということだった。

先生の説明を聞いて生徒たちは呆然としたが、全員が心のどこかでは自分たちの運命を知っていたのか、騒ぎだす者はいなかった。
ルーシー先生はそれからまもなく教師を辞めて施設から去っていった。
生徒たちに詳しい説明はなく、やめてしまった本当の理由は誰にも分からなかった。

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(幼少時代のキャシーとルース 引用:https://ameblo.jp/pmds90l80

それからすぐのこと。
親友のルースが突然トミーに接近するようになった。
集会中にこっそり手を繋いだり、中庭でキスをしたりして、やがて2人は付き合うようになった。
キャシーは自分とトミーが両想いだと漠然と感じていたこともあり、大きなショックを受けた。
今までトミーをバカにしていたルースが なぜトミーを選んだのか、キャシーにはわからなかった。

1985年 キャシーたちは18歳になり、ヘールシャムから旅立つ年齢になった。
ルースとトミーは思いのほか長続きしていて、2人はまだ付き合っていた。
キャシー、ルース、トミーは3人一緒の場所へ移動することになり、廃農場を利用したコテージで新しい生活が始まった。
キャシーはまだ密かにトミーを想っていたので、ルースとトミーと同じ施設に行くのは気が重かった。

キャシーたちがヘールシャムから出た数年後、ヘールシャムは閉鎖された。

自分たちよりも先にコテージで暮らす数人の先輩クローンもいる中、キャシーはテレビを見たり散歩をしたりして、施設にいた時よりも静かで落ち着いた生活を送ることができた。
キャシーは ルースとトミーの恋人同士らしい場面を見るたび嫌な気持ちになり、時には2人にきつく当たることもあった。
その度にルースは「自分に恋人がいないからって嫉妬しないで!」と、勝ち誇ったように言い返してくるので、キャシーには満たされない感情が募っていった。

ある日、先輩カップルのクリシーとロッドが、ドライブした先でルースの”もしか”(オリジナル)かもしれない、そっくりの女性を海岸沿いのオフィスで見たという。
その女性を確かめに、キャシー、ルース、トミーは初めてコテージの外に出かけることになった。
だがクリシーとロッドの狙いは別にあり、『執行猶予』についての噂を確かめるために3人を連れ出したのだった。
その噂とは、ヘールシャム出身の者たちは『2人が本当に愛し合っていること』が認められれば、提供までに3~4年の猶予期間が与えられ、その間は2人きりで暮らすことが出来るというものだった。
この噂を信じていたクリシーとロッドは、執行猶予の申請の方法が知りたかったのだ。
キャシーとトミーは「そんな話は聞いたことがないし、多分でたらめだろう」と正直に答えると、クリシーとロッドはショックで言葉を失った。

その後、5人はルースの”もしか”かもしれない女性を見に行ったが、後姿の雰囲気はまぁまぁ似ていたものの、顔は全く似ていなかった。

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(ルースの『もしか』を見ようと覗き込むキャシーとルース 引用:https://ameblo.jp
ルースは「あんな女、全然似てない!」と怒りだし、慰めようとしたキャシーとトミーに罵声を浴びせ、2人の元から離れていった。
バカにされて怒ったキャシーとトミーは、怒って立ち去るルースを追いかけなかった。

コテージから帰った後、ルースは自分を追いかけてこなかったトミーを怒り、その夜は2人が言い争う声がコテージ中に響いていた。

翌朝。キャシーとトミーが散歩をしていると、トミーが話し出した。
「『執行猶予』の話が本当だったら、施設で芸術が重視されていて、マダムがしょっちゅう来ていた理由がわかる」
「芸術作品は外の人たちが出品者の『人間性』を見るためのもので、後に執行猶予を申請したときに『猶予に値するかどうか』の判断材料にするために違いない!」
トミーは執行猶予の話を信じたがっていた。

だが、『執行猶予』を信じられなかったキャシーは「すべて噂と憶測よ」と諭して冷静になってもらおうとしたが、それでも、少しでも長く生きられる可能性に目を輝かせるトミーを見ていられなかった。

その日の夜。ルースとトミーは仲直りしたらしく、キャシーの部屋までルースの大きな喘ぎ声が聞こえてきたので、キャシーはトミーからもらった『Songs After Dark』を大音量で聞いてルースの声をかき消していた。
しばらくすると、トミーから※ポルノ雑誌の話を聞いたルースがキャシーのところにやって来て
「私たちが別れるのをずっと待ってるんだろうけど、そんなの無駄なことだわ。
ポルノ雑誌の話も、2人で大爆笑した!
トミーは気付いてなかったけど、私にはあなたが雑誌を見た理由がわかる。欲求不満なのよね」
と、嫌味たっぷりの言葉を吐いて部屋から出ていった。
キャシーはただ悔しさに涙を流すばかりだった。

キャシーとポルノ雑誌の話
キャシーは先日、ゴミ箱に捨ててあったポルノ雑誌を拾い、目を通します。
それを見たトミーが、「なぜ女の君がポルノ雑誌なんて見ているのか」と訊ねる場面があります。
キャシーは「私もこういうのに興味があるの」と答えましたが、トミーは「でも全然楽しそうじゃない」と不思議そうにしていました。
前の晩にトミーとルースがセックスしていたことを思い出したキャシーは、嫉妬心から「参考のためにルースにも見せてあげたら?」と言って雑誌をトミーに押し付けてその場を離れました。
ルースはこの話をトミーから聞き、仕返しするためにキャシーの部屋に来ました。

ルースとトミーと離れることを決意したキャシーは介護生になる申請をしてコテージから去り、”国立提供者プログラム”の訓練所に入所した。

それから約10年が経った1994年。キャシーは成人してから数年が経ち、介護人として働いていた。
コテージを出てから、ルースとトミーとは一度も会っていない。
2人を思い出す日も少なくなり、もう二度と会わないんじゃないかと思い始めていた。

介護人というのは形だけの仕事で、病院や回復センターで自分が担当している『提供者』に必要な手助けや手続き、会話をするほかに仕事はなく、キャシーは提供者のベッドのそばで読書をしていることがほとんどだった。
こうして介護人は自分が提供者になるのを待ちつつ、心の準備をするのだった。
中には1度や2度の提供で『終了』(死ぬこと)を迎えてしまう者もおり、自分が看ていた提供者の終了は、キャシーにとっても辛いことだった。

ある日 キャシーが担当していた提供者ハンナが合併症で終了を迎えた。
病院から書類へのサインを頼まれて受付へ行くと、パソコンの画面にルースのカルテが表示されていた。
2人が知り合いだと知った看護師は、ルースの状態を教えてくれた。
ルースは現在2度目の提供手術を終えて体力がかなり落ちており、次の提供で終了だろうということだった。
偶然にも同じ病院にいたことを知り、キャシーは迷った末にルースに会うことに決めた。
約10年ぶりの再会をルースはとても喜んだ。
ルースは看護師から聞いた通りで、歩行器がなければ1人で歩けない状態だった。
キャシーは彼女を見ていたたまれない気持ちになったが、ルースの様子は相変わらずだったので安心した。
そして、キャシーはルースの介護人になった。

ある日ルースが「船が打ち上げられているという海岸に船を見に行くついでに、海辺の回復センターにいるトミーに会いに行こう」と言いだした。
ルースはコテージに居る間にトミーと別れていて、コテージを出てからは一度も会っていないという。
トミーは2度目の提供を終えたものの、経過が良く状態は良好だと人づてに聞いていた。
キャシーは病院に許可をもらい、ルースと一緒に海辺の回復センターに向かった。

トミーは噂通り元気そうで、再び3人で会えたことをとても喜んでいた。
そのままトミーを乗せて海岸まで車を走らせて海岸に着くと、浜辺には噂通り小さな漁船がポツンと打ち上げられていた。
トミーは喜んで船に登り、しばらく中を散策した。

3人で浜辺に座って船を見ていると、ルースが突然キャシーとトミーに謝罪をはじめた。
ルースは「2人をここに誘ったのは謝るためだった」、「2人の仲を裂き続けたのはやきもちからだった」
「私とは違って、キャシーとトミーには本当の愛がある。だから、2人で猶予申請をしてほしい」
と言い、マダムの家の住所が書かれた紙をキャシーとトミーに差し出した。
キャシーは「今更遅い」と怒ってルースから顔をそむけたが、トミーは紙を受け取った。

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(砂浜に座るキャシー、トミー、ルース 引用:https://ameblo.jp

それから間もなく、キャシーとトミーはどちらからともなく付き合うようになり、キャシーがトミーの介護人も務めることになった。

トミーは「ルースの”もしか”を探しに行った次の日から描きためてたんだ」と言い、たくさんの動物の絵をキャシーに見せた。
トミーは執行猶予の話を聞いた日から、申請には芸術作品の提出が必要だと信じて絵を描き続け、数百点の絵を持っていた。
キャシーが感心して絵を見ていると、トミーはコテージで キャシーがポルノ雑誌を見ていた理由がわかったと話した。
「君がポルノ雑誌を見ていたのは『性への興味』からではなく、『自分の”もしか”を探していた』からだろう?」とトミーは言った。
その通りだった。
キャシーも若い頃は性の欲望のままに行動してみたいと思ったことがあり、自分がそう思うのは”そういう人間”がオリジナルだからなんじゃないかと推測したからで、だからポルノ雑誌を見ていたとトミーに語った。

※クローンたちの間では、薬物やアルコール中毒者、売春婦、ホームレスといった、社会から外れた人間がオリジナルに選ばれているのではないかという噂がありました。

トミーの熱意に影響されて『執行猶予』に希望を抱き始めたキャシーは、来週トミーの外出許可を取り、マダムに会いに行くことをルースに伝えた。
ルースはただ「良かった」とだけつぶやき、キャシーに笑顔を向けることはなかった。
その週のうちにルースは3度目の提供をすることになり、そのまま手術室で静かに『終了』を迎えた。

キャシーとトミーは自信作の絵を数点持ってマダムの家へ行った。
愛し合っていることを少しでもわかってもらえるように、マダムの家で2人はずっと手をつないでいた。
突然現れた2人にマダムは少し戸惑いながらも、家の中へ招き入れてくれた。
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(マダムの家を訪れたキャシーとトミー 引用:https://ameblo.jp
2人は執行猶予の噂の話や、ヘールシャムでのギャラリーの目的(推測)を説明して絵を広げて見せると、ヘールシャムの施設長だったエミリーが2人に答えた。
「ヘールシャムは臓器提供の倫理を実践する最後の場で、芸術作品は『提供者である子どもたちも人間だ』と証明するためよ。
つまり残念だけど、猶予申請は無いの、今も昔も。
ギャラリーは、あなたたちに『魂があるかどうか』を確かめるためだったのよ。」

キャシーはこの答えが心のどこかではわかっていたため受けとめられたが、トミーはショックで言葉を失った。
エミリーたちは哀れみからか「絵が気に入ったから欲しい」と申し出てきた。
トミーは黙ってすべての作品を置いてマダムの家を後にした。

帰り道、トミーは感情が抑えきれず、車から出て思いきり泣き叫んだ。
キャシーに抱き着いて泣き叫ぶトミーを、ただ抱きしめ返すしかなかった。

数日後。トミーは3回目の提供で終了を迎えた。
手術の様子が見られる隣の部屋で、トミーの臓器が取り出されるのをキャシーは静かに見守った。

2週間後。
キャシーの提供開始が1ヵ月後だと知らせる通知が届いた。
キャシーは かつてヘールシャムがあった場所で草原を眺めながら考えたが、自分たち(クローン)と、自分たちが救う『本物の人間』の間に何の違いがあるのか、なぜ自分たちは『本物の人間』のように生きてはいけないのか、なぜ自分たちが救っている『本物の人間』が自分たちを嫌うのか、何もわからなかった。
そして、天国でトミーと再会できることを願って涙を流した。

主題曲:オリジナルサウンド
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解説、考察や感想など。

医療に利用されるクローンたちが、少しでも生きる希望を見出すために、根も葉もない噂や言い伝えなどを信じ、翻弄されてしまう悲しいお話でした。

個人的に気になったシーンを解説します。

ヘールシャムがなくなった理由

キャシーたちがヘールシャムから出てすぐに施設は閉鎖されています。
施設長のエミリーは、キャシーたちが施設にいた頃から集会などで
「私たちを排除しようとする勢力と戦うのは容易ではありません。
彼らは根拠のない価値観と固定観念を尊ぶのです。
でも、私は屈しません。」
と発言しています。
つまり、この頃からすでにヘールシャムの存続は危うかったのです。

エミリーはヘールシャムのことを””臓器提供の倫理を実践する最後の場””と話していました。
クローンの子どもたちも人間であることを証明するために、子どもたちに芸術作品を作らせてクローン医療を利用する側の人間に見てもらう活動をしていたのです。

芸術作品を見るためにヘールシャムによく足を運んでいたマダムは、先生たちとは普通に接するものの、子どもたちとは目を合わそうとせず、体が触れることすら嫌がっていました。
つまり、マダムはクローンの子どもたちを『自分たちと同じ人間と認めたくない』と心のどこかで思っていたのです。
キャシーとトミーがマダムの家を訪ねた際も、2人を家の中へ案内した後はすぐに別の人に対応させていて、彼女自身はキャシーたちと同じ部屋にいようともしませんでした。

猶予申請の話をしたとき、エミリーは2人にこう話していました。
「誰かがこう聞いた。
”また昔のようにガンや神経性疾患で苦しみたい?”
答えは”ノー”よ。」

人類は、クローンから臓器を得ることによってガンや神経性疾患を克服しました。
エミリーたちはそんなクローン医療に倫理的に問題があることを示すために、ヘールシャムの子どもたちに芸術活動をさせていたのです。
クローンも心がある1人の人間であり、彼らの身体を便利使いして殺すのは良くないと証明するために。
ですが、世間はエミリーたちの活動に目を向けようとしませんでした。
なぜなら、クローン医療がなくなれば人類は再び『臓器移植が必要な病気や怪我など』で苦しむことになるからです。
人々はクローン医療を続けたかったので、クローンに魂があるかどうかを確かめることを拒否しました。
クローンが魂ある存在だと認めてしまえば、倫理的な問題が生まれるからです。
なので自然とエミリーたちの活動は排除されていき、ヘールシャムは閉鎖に追い込まれました。
[adchord]

 

キャシーがルースに猶予申請することを伝えたとき、ルースが喜ばなかった理由

キャシーがトミーと猶予申請しに行くことをルースに伝えたとき、ルースはニコリともせず、ただキャシーの報告を受け流しました。
ルースが2人に猶予申請することをすすめたのは本心からだったはずです。
キャシーとトミーに幸せになって欲しい、許してほしいと思ってしたことです。
ですが、キャシーがルースに報告したとき、ルースは3回目の提供手術を直前に控えていました。
つまり、死が目前に迫っていたのです。
心から愛する人がいて、もしも猶予制度が実在すれば、数年間は2人きりで幸せに暮らすことができる、将来に少なからず希望があるキャシーと、愛する人も愛してくれる人もおらず、すでに臓器を2つも取られて待っているのは死しかないルース。
ルースはキャシーと自分の状況を比較していたのでしょう。
死への恐怖や悲しさ、絶望と戦っていたルースは、生きることに希望を見出したキャシーに大きな嫉妬心を抱いたことでしょう。

 

「わたしを離さないで」が伝えたいテーマとは?

映画「わたしを離さないで」ネタバレ解説|伝えたいテーマ、ヘールシャム閉鎖の理由など

(引用:http://blog.livedoor.jp

本作は救いようのない、後味の悪い作品と言えますが、その裏にはキャシーがラストシーンで話していた””『生』とは何か?””を考えさせられる作品になっています。

人々の価値観は、時代の移り変わりによって変化していきます。
現代では、生きることに特別なテーマや目的を付けがちで、死を意識する場面や、衣食住や周囲の人に心から感謝するような場面は、特に若い頃はないことが多い時代です。
本作は恋愛や友情やその他の経験、それにともなう感情すべてを体験することが、生きることだと伝えているのだと感じました。

人との関わりの大切さを再確認してもらうことが、この作品のテーマであると思います。
が、ストーリーが残酷すぎて伝えたいテーマが薄れてしまいそう…と感じたのは私だけではないと思います。
それでも鬱映画が嫌いではない私にとっては、わりとグッとくるお話でした。

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・参考記事
柴犬こちゃの幕末・維新史跡探索ノート
Who is Judy Bridgewater ? _『わたしを離さないで』 by カズオ・イシグロ

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