映画『ちいかわ 人魚の島の秘密』に関する解説・考察記事②です。
この記事では、映画のラストを中心に、ヒトハとフタバのその後を考察し、「ひみつ本」で明らかになった初期構想と映画・漫画版の違いについても紹介します。
鑑賞済みの方向けの記事です。
制作国:日本
本編時間:99分
監督:及川啓
脚本・原作:ナガノ
主要キャスト:青木遥(ちいかわ)、田中誠人(ハチワレ)、小澤亜李(うさぎ)、井口裕香(モモンガ)、淺井孝行(くりまんじゅう)、内田雄馬(ラッコ)、島袋美由利(シーサー)、春海百乃(古本屋)、鈴木みのり(セイレーン)、最上嗣生(島二郎)寺澤百花(ヒトハ)、鈴代紗弓(フタバ) ほか
解説・考察・感想つづき
ラストのセイレーンはどういう意味?
エンドロール後、ヒトハとフタバはボートで島を出て無人島らしき場所にたどり着き、そこで洞穴を新しい住処に暮らそうとしています。
そしてその後、島に向かって海を泳ぐセイレーンの姿がありました。
犯人が分かったセイレーンは、ヒトバとフタバを追って無人島に来たのです。
この後なにが起きるのか・・・想像が嫌でも膨らんでしまう終わり方です。
こういう終わり方にも「ちいかわ」作品ならではのダークみを感じます。
ヒトハとフタバはどうなる?その後を予想
その後セイレーンが2人を捕まえたのかどうかまではわかりません。
私個人の想像や、ファンの間で話されている2人のその後を予想します。
1番王道の「その後」は、2人はつかまって、セイレーンが言っていた通り「カラダピッタリのオリに入れて、深くて暗いところで永遠の命を味わってもらう刑」にされることです。
かわいそうすぎますが、現実的に考えると電池式のものって防水じゃない限り、水につけるとすぐ壊れますよね。
セイレーンが想像していた「なんかずっと暗いとこ」は海の底のような場所でした。
なので、もしその刑になったら、2人は水没した段階で電気回路がショートして壊れてしまう(死んでしまう)と思われます。
そもそも海に近いと潮風で錆びるのが普通より早いので、海の近くはよくないです。
2つ目の説は、「話し合って減刑してもらうとか、何かの形でお詫びをする」です。
セイレーンに捕まったら、ヒトハとフタバは事情を説明せざるをえませんよね。
フタバが死にかけたからといって人魚を殺していい理由にはなりませんが、フタバが死にかけた原因を上手く伝えられたら、多少の減刑は検討してもらえる可能性があります。
ただ、フタバが死にかけたのはほぼ事故で、セイレーンに悪気はなかったので、どれくらい「セイレーンのせい」なのかは難しいところですよね。
もし法律があるなら「セイレーンが車でフタバが人間みたいな事故」と考えたらセイレーンに非があると言えそうですが、この世界に法律はないですし、セイレーンの近く(危ない場所)にいたヒトハとフタバも悪いという見方もできます。
なので、セイレーンにどれだけ上手に責任(フタバに対する罪、無関係の島民を食べた罪)を感じさせることができるかがカギになります。
もし減刑になったとしたら、ヒトハとフタバが今後のセイレーンのご飯を無人島で作り、提供し続ける(2人だときっとめっちゃ大変)とか、そういう感じにシフトするのではないかと勝手に想像しています。
完全な悪者がいない
この話には、完全な悪人も善人も存在しないところも大きな特徴のひとつです。
セイレーンは仲間の人魚を失った被害者ですが、無差別に島民を襲った加害者であり、
犯人の2人は、セイレーンがきっかけで死にかけた被害者ですが、人魚を食べ、無関係の島民が襲われるのを傍観した加害者です。
もう少し範囲を広げると、島民はセイレーンで危機的状況にあった被害者ですが、「カンタンな討伐で100倍の報酬」などの誇大広告で討伐者を募るという悪さをはたらいています。
そしてちいかわは誇大広告に釣られた被害者ですが、犯人に気づきながら真実を周囲に教えませんでした。
全員が「正しい・悪い」を分けられる存在ではなく、だからこそ結末を描き切らず、観客に委ねる形になっています。
ちいかわは犯人がわかったのに言わなかったのはなぜ?
『人魚を食べた犯人』に気づいた ちいかわは、最後の夜にヒトハとフタバに事情を聞こうとしますが、結局聞けず、その後も犯人がわかったことを誰にも話しませんでした。
この ちいかわの行動を非難・疑問視するレビューも一定数見られました。
ちいかわが犯人を明かさなかった理由として思いつくのは2つあります。
ひとつは、ちいかわは親切にしてもらったヒトハとフタバを追い詰める行為をしたくなかった、またはできなかったから。
もうひとつの理由は、犯人をさらすことが正しいのかわからなかったからではないかと推測しています。
もし周囲に真実が知られたら、ヒトハとフタバは島民に恨まれ、捕まってセイレーンに差し出され、「なんかずっと暗いとこ」の刑になります。
2人が島民とセイレーンの両方から恨まれることをしたのは事実ですが、セイレーンが考えている罰は過酷過ぎます。(犯人が黙っているから、より怒りが募ってしまうのはわかりますが)
セイレーンは被害者ですが、被害者だからといって無関係の島民を食べたり、犯人を永遠に拷問するなど、何でもしていいわけではありません。
ちいかわが犯人を明かすことで起こりそうなことに、ちいかわ自身が納得していないから言わなかったのではないかと解釈しています。
それでも2人が島から逃げたことで、2人が犯人だったことが島民にわかりますが、2人が黙っていたために犠牲になった無実の島民のことを考えると、2人を逃がしたちいかわは間違っていた気もするし、どうすればよかったのかわからなくなります。
考えていたら、こんな複雑な事件が起こる世界で、仕事やお酒に関わるルールはあるのに、殺しなどの重犯罪に関わるルールや警察的な機関がないのはおかしい気がしてきましたw
ギリシャ神話のセイレーン
セイレーンのモデルは、ギリシャ神話『オデュッセイア』に登場する人魚の怪物「セイレーン」です。
ギリシャ神話のセイレーンは、美しい歌声で船乗りを魅了して、魅了された人間は自らセイレーンに食べられに行ってしまうという恐ろしい魔物です。
また、ギリシャ神話のセイレーンには姉妹がいるので、ちいかわのセイレーンの「3匹の人魚」は、「セイレーンの姉妹」から生まれたキャラなのかもしれません。
『ひみつ本』で分かった原案との違い
2026年9月19日から配布された入場者特典第5弾の「ひみつ本」には、セイレーン編が完成する前の初期構想が収録されています。
初期構想からわかる、漫画・映画版との違いを書いていきます。
初期構想には古本屋(カニ)が登場しない
初期構想の段階では、カニちゃんがまだ漫画に登場していなかったため、いません。
モモンガは基本的に単独行動しています。
セイレーンの顔が「あのこ」だった
初期案ではセイレーンのデザインが決まっておらず、「あのこ」をセイレーンの代わりに配置していたそうです。
これはナガノさん本人のインタビューでも明かされています。
ヒトハとフタバには顔とセリフがあった
ヒトハとフタバは「モブかわ(容姿が描かれないキャラ)」で、ほぼ喋れません。
ところが初期案では2人にはちゃんと顔があり、ハチワレ並みにおしゃべりもできるキャラでした。
初期案のヒトハはインパラ、フタバが犬です。(意外な組み合わせ)
しかしナガノさんは「喋りすぎ」だと感じ、最終的にはモブかわに変更したと説明しています。
お魚のコスチューム
漫画・映画には登場しませんが、初期案では、セイレーンに対して敵意がないことを示すために、みんなで「人魚の衣装」を着てセイレーンを探しています。
とっても可愛いのでそのままにしてほしかったですが、なくなっています。
ハチワレたちはさらわれない
映画と漫画版ではハチワレ、うさぎ、ラッコ、モモンガ、カニがセイレーンにさらわれて昆布巻きにされますが、初期案ではちいかわの仲間は誰も拉致されません。
初期案では、さらわれた島民のモブかわが昆布で巻かれて海ぶどうでくすぐり拷問を受けています。
ちいかわの耳が伸びるシーン
ちいかわが崖でモモンガに助けられて耳が伸びるシーンは、初期案にはありません。
初期案では、モモンガはちいかわを助けず村に帰ってしまい、代わりにラッコ先輩が現れて助けてくれます。
カレーじゃない
初期案では、セイレーンに出す激辛料理がカレーではなく「レンコンの料理」です。
辛そうに見えない料理をこっそり辛くしておいて、普通にふるまう感じで食べさせる作戦でした。
電池を入れる場所
ヒトハとフタバの電池を入れるとこはお尻にありましたが、初期構想の段階では胸にありました。
死なない生き物は、もはや生き物かどうか怪しいと読者に思わせるために、動くぬいぐるみなどの電池の場所によくある「お尻」に変更したのかもしれません。
島二郎も初期案にはいなかった
実は島二郎も最初から登場する予定だったキャラクターではありません。
ナガノさんによると、「頼れる仲間が欲しい」ということで、新しいキャラを1人登場させることになりました。
当初は島二郎ではなく、くりまんじゅうに似た「酒まんじゅう」という、島の村長的なキャラクターを出す予定だったそうです。
そのキャラめっちゃ見たかったです。(酒まんじゅうは、ひみつ本に登場していません)
人魚のウロコ
漫画、映画版では、ちいかわは拾った人魚のウロコを帰りの船まで持ってきていますが、初期案ではちいかわはウロコを見つけますが、拾って持ち歩いてはいません。
ラストがビミョーにちがう
初期構想と漫画・映画版はラストが少しだけちがいます。
初期構想では、ヒトハとフタバはちいかわたちが乗る帰りの船にこっそり乗船し、ちいかわたちの島で新生活をはじめます。
2人は森の中に住み、「湧きどころ」に湧く食べ物を食べてつつましく暮らします。
そこに、セイレーンが2人を追ってちいかわたちの島に泳いで近づいている…というラストでした。
2人が逃げる場所が変更になった理由までは明かされませんが、
ヒトハとフタバが湧きどころに湧く食べ物を笑顔で食べる一コマに、疑問と違和感を感じているナガノさんのコメントがついていたので、
ヒトハとフタバをちいかわの島に行かせるのはやめたのかもしれません。
それに、ちいかわの島に食べ物が湧く時は、ちいかわ族の誰かが死んだとき(または「でかつよ」などに食べられた時)なのでは、というファンの間の考察は有名なので、もしその裏設定が本当だとしたら、なおさらヒトハとフタバには沸きどころの食べ物を食べる資格はありません。
それに、セイレーンがちいかわたちの島に来てしまうと、「あのこ」と出会う可能性や、誰かに討伐される可能性、魔女と出会ったら何が起こるのか?などなど、色々と想像が広がりすぎてしまいそうでもあります。
まとめ
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』は、セイレーンもヒトハ・フタバのどちらもが被害者と加害者であり、単純に善悪を分けられない物語になっています。
ラストでは、2人がセイレーンに捕まったのか、話し合いによって何らかの形で決着したのかなど、さまざまな想像ができます。
また、ちいかわが犯人を知りながら告げなかったことも、この作品の答えの出ない部分のひとつです。
何が正しいと簡単には言い切れないところに、『ちいかわ』らしい複雑さがあります。
さらに、入場者特典の「ひみつ本」では、セイレーン編が完成する前の初期構想が明かされ、キャラクターの設定や激辛料理、電池を入れる場所、ラストなど、映画・漫画版とは異なる部分が確認できます。
こうした制作過程を知ることで、物語をさらに違った角度から楽しめる作品になっています。
ちなみに、原作漫画はナガノさんのXの投稿からでも読めますし(遡るのがちょっと大変ですが)、『人魚の島編』は漫画本では8巻に収録されています。
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ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(8) 【電子書籍】[ ナガノ ] 感想(3件) |
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『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』公式サイト
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