映画『哀愁しんでれら』の解説・考察をしています!
ラスト考察、童話との関連、伏線回収などについて書いています。
鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。
本編時間:114分
制作国:日本
監督・脚本:渡部亮平
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キャスト紹介
福浦 小春…土屋太鳳
児童相談所に勤める20代後半女性。
10歳の頃に母親に捨てられたことがあり、特に子育てに関して無責任な親を忌み嫌う。
怒涛の不幸が続いて全てを失った直後に大悟に出会い、恋に落ちる。
泉澤 大悟…田中圭
泉澤クリニックを運営する開業医。
線路上で倒れていたところを小春に助けられる。
前妻は事故で亡くなっている。
泉澤ヒカリ…COCO
大悟と前妻の娘8歳。
小春によくなつき、小春と大悟の結婚にも大賛成してくれたが、実は性格に問題があることが徐々にわかってくる。
千夏(小春の妹)…山田杏奈
千春の祖父…ティーチャ(めいどのみやげ)
泉澤美智代(大悟の母)…銀粉蝶
千春の友人…安藤輪子、金澤美穂
小春の上司…中村靖日
亀岡(校長)…正名僕蔵
ヒカリの担任…兵藤公美
ワタル(ヒカリのクラスメイト)…阿久津慶人
来実(〃)…野澤しおり
ヒロム(小春の彼氏)…水石亜飛夢
白石(小春の先輩)…綾乃彩
患者…清水伸
女の子の母親…桝田幸希
モンペ…枝元萌 ほか
あらすじ紹介
児童相談所に勤める26歳の福浦小春(土屋太鳳)は、10歳の頃に母親が出て行ってから父の正秋(石橋凌)、妹で高校生の千夏(山田杏奈)、祖父との4人で仲良く暮らしています。
ある春の日、小春の祖父が自宅で倒れ、小春たちが祖父を病院に連れて行っている間に自宅が火事になって1階の正秋のお店(自転車屋)が燃えてしまいました。
早めに消し止められたため、幸いにも2階の住居スペースは無事でした。
火事が起きた日は自宅に帰れなかったため、小春は近くに住む彼氏ヒロムの家に泊めてもらいに行きますが、ヒロムは小春の職場の先輩白石と浮気の真っ最中でした。
小春は裸のヒロムと白石に手あたり次第物を投げつけてからヒロムのアパートを飛び出します。
その後、小春が当てもなく外を歩いていると、踏切の真ん中で酔いつぶれて倒れていた泉澤大悟(田中圭)を助けました。
大悟は小春にお礼を言い、別れ際に名刺を渡して別れました。
名刺から大悟は開業医の医師だとわかり、小春は友人2人に勧められて大悟と2人で会うことにします。
小春が家族に起きた不幸を大悟に打ち明けると、大悟はとても親身になってくれて正秋の再就職先を紹介してくれたり、倒れた祖父には本来ならかなり高額になる医療サービスを無料で提供してくれたり、大学受験を控えた千夏には無償で週に1度家庭教師をしてくれることになりました。
大悟はあっという間に小春の家族に気に入られ、大悟の前妻の娘のヒカリ(coco)も小春を気に入ったこともあり、小春と大悟は出会ってからたったの1ヶ月でスピード結婚しました。
こうして現代のシンデレラのように開業医の妻になった小春でしたが、徐々に大悟とヒカリの価値観や性格に違和感を感じるようになります。
解説・考察・感想など
モラハラ男の田中圭、サイコパスのCOCO、正義感の強すぎる土屋太鳳と見応えはありましたが、絡めてある童話が多かったり伏線らしきもの、意味深に聞こえる発言が多かったり、家族や親子関係に関するテーマらしきものなどとにかく盛沢山でごちゃごちゃしてしまっていた印象でした。
映画を観て感じたことなどを書いていきます。
小春が訪ねたシングルマザーのアパート
冒頭で小春が先輩と一緒に訪ねた母子家庭のアパートでは、子どもは元気そうでどちらかというと母親の方がしんどそうに見えたのに、職場に戻った小春は「女の子の目に光が無かった」と言います。
このときまだ母親経験がなかった小春は過去の『無責任な母親』の記憶に捕われていて、母親の体調不良には気づかず(気付いていたとしても問題視していない)、この家庭を客観的に見ることはできていません。
この最初の場面から、小春がかなり思い込みの激しい性格だということがわかります。
『子どもの幸せは、その母親の努力によって決まる』
小春と大悟が知っていたこの格言はフランスの初代皇帝ナポレオン1世(1769~1821)のものです。
ナポレオンの母は賢くやり手の女性で、ナポレオンの出世にも大きく貢献したらしく、そんな母親を褒めたたえるための発言だったようですが、意味を取り違えると『子育ては母親の仕事』のような古い価値観がにじみ出てしまう現代の日本にはあまりそぐわない格言です。
実際にナポレオン自身は貴族の生まれなので、ナポレオンの母は子育てを小春やシンママのように全て1人で背負ったではなく、日常のお世話の大半はメイドがしていたと思われます。
小春はシングルマザー宅訪問後にこの格言を引用しますが、そこには家庭状況や母親の事情を無視した『正論の押し付け』が詰まっていたように感じますし、結婚前の小春や大悟のような子育ての大変さを知らない人が使う言葉ではないように感じます。
筆箱盗難事件の真相は?
小春がヒカリにプレゼントしたお手製の筆箱を、ヒカリは「ワタル君に盗まれた」と言いましたが、これはヒカリがワタルの気を引くためについた嘘でした。
小春と大悟が学校に行って事情を説明すると、その日の夜にワタルの親がワタルと一緒に謝りに来ますが、ワタルは最後まで「俺はやってない」しか言わず大悟は気分を害します。
その後、フデバコは小春の自宅のトイレから出て来たので、ヒカリがウソをついていたことがわかります。
恐らくヒカリは小春と大悟を動かすために筆箱を使ったのです。
小春が一生懸命作った筆箱をこんな風に利用してしまうあたり、ヒカリはかなりのメンヘラ気質であることが発覚します。
小春が実家に戻らなかったのはなぜ?
小春は大悟に追い出されて真っ先に実家に行きますが、千夏、父、祖父の様子を眺めただけで結局実家には戻りませんでした。
小春が実家に戻れなかったのは、恐らく3人が小春がいなくても楽しそうにしていたからではないでしょうか。
小春は千夏の「大悟が怖い」という相談にまともに答えておらず気まずいのもあったのかもしれませんが、父に相談しても要点だけまとめると「小春はヒカリを殴り、大悟が怒って追い出された」ので全面的に小春が悪く、大悟は怒って当然だと他人は思うはずです。
小春は実家に相談できる相手がいないと判断したことも、戻らなかった理由のひとつかもしれません。
ヒカリは本当に来実を殺したのか
ヒカリは机の上に立っている来実に近づきましたが、実際に突き飛ばす瞬間は映りませんでした。
監督いわく、眼鏡の女の子が小春に渡した手紙「ヒカリちゃんは殺してない 皆知ってるよ」は真実だ とコメントされていたようなので、あの時ヒカリは来実を突き飛ばそうと思って(あるいはワタルの居場所を確かめたくて)近づいたら、来実が勝手にバランスを崩して落ちてしまったというのが真相なのではないでしょうか。
そうなると、ワタルの「ヒカリが突き飛ばしたのを見た」は嘘だったことになります。
ワタルはヒカリに「筆箱を盗まれた」と嘘をつかれた仕返しをしたのです。
ヒカリが来実の死について「罰が当たった」と言ったのは、彼女が突き飛ばした前提で聞くと『ヒカリ自身が来実に罰を与えた』ように聞こえますが、ヒカリが何もしていなかったとすれば本当にそのままの意味だったことになります。
しかし、いくら恋のライバルだったとはいえクラスメイトが亡くなったのを『罰が当たった』と言ったり、お葬式でワタルに会えて微笑むのはやっぱり感覚がまともじゃありません。
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2ページ目は『童話との関係』『ラスト考察』『その他細かい疑問や伏線』です。
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