映画『ヘルドッグス』ネタバレ解説考察｜室岡の過去、内部抗争の整理など

映画『ヘルドッグス』のあらすじ紹介、解説、考察をしています！

反社会組織への潜入捜査を命じられた闇落ち警察官 兼高昭吾（岡田准一）と周辺の人間模様を描いたドラマ。
鑑賞済みの方向けの解説考察記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

 

主要キャスト

兼高 昭吾 / 出月 梧郎…岡田准一
警察官から復讐に生きる殺人犯に堕ちた男。本名は出月五郎。
組織犯罪対策課の阿内に抜擢されて関東最大の暴力団組織『東鞘会（とうしょうかい）』への潜入捜査を行う。

室岡 秀喜…坂口健太郎
通称サイコボーイ。東鞘会お抱えの暗殺部隊『ヘルドッグス』の一員。
大量殺人で死刑になった親の子どもとして特異な環境で育った。
人殺しや拷問を難なくこなすサイコパス。

十朱 義孝（とあけ よしたか）…MIYAVI
実力だけでトップに上り詰めた東鞘会の若き会長。
暴対法が強化され日本でのシノギが難しくなる中、東鞘会の海外進出を決めて軌道に乗せたインテリヤクザ。日本語、英語、中国語の三か国語を使いこなす。
前組長の神津が生きていた頃はナンバー３だったが、神津の死後はトップに抜擢されている。

阿内 将…酒向芳
兼高を潜入捜査官に抜擢した警察庁のエース。

あらすじ紹介

交番勤務の巡査 出月梧郎（岡田准一）はスーパーの女性従業員４人が殺された強盗殺人事件をきっかけに暗殺者に転身し、失踪してから数年かけて事件の加害者数名を全員殺害しました。

出月は最後のターゲットを殺した直後に自首しますが、組織犯罪対策課の刑事 阿内（酒向芳）は出月に『兼高昭吾』という新しい戸籍を与えて警察官に復職させた上で、組員7000人を超える関東最大の暴力団組織『東鞘会』への潜入捜査を命じました。

兼高は阿内の指示で東鞘会お抱えの暗殺部隊『ヘルドッグス』のメンバー室岡秀喜（坂口健太郎）に近づいて組織の一員となり、東鞘会ナンバー2の 土岐（北村一輝）の忠犬となり暗殺活動に勤しんで組織内で信頼を得ました。

兼高はエス（警察のスパイ）仲間であるヤクザ御用達のマッサージ師 典子（大竹しのぶ）と定期的に情報交換しながら組織の動向を阿内に密告しながらヤクザ生活を送ります。

そんな中、兼高と室岡が東鞘会のトップ十朱（MIYAVI）の専属ボディーガードを任されることになると、阿内は「十朱が持っている警察庁幹部の極秘情報が入ったパソコンを盗んでこい」と兼高に命じました。

 

解説・考察・感想など

演者の皆さまのヤクザ姿はカッコよかったですが、原作小説を読んでいないと意味がわからない状況が多かった印象があります。
原作小説を読まなくとも映画は映画で完結させてある作風の方が個人的には好みなのでそこは少し残念でした。

映画は見たけど原作小説は読んでおらず、ストーリーが掴めなかった方のために組織同士の関係や内部抗争をメインにまとめます。
原作小説ももちろん面白かったので、機会があれば読んでみてほしいです。

兼高と室岡が沖縄で殺したのは誰？

冒頭で兼高と室岡は沖縄の廃墟に潜伏し、廃墟の下見に来ていたヤクザらしき男を殺しました。

この男は喜納という東鞘会の敵対組織『和鞘連合』の残党です。
兼高（出月）が東鞘会に潜入する４年前、東鞘会のトップだった５代目組長の氏家必勝が獄中死しました。

５代目の死後、必勝が６代目に指名していた神津太一と、氏家の実子 氏家勝一との間に後継者争いが起こり、氏家勝一は『和鞘連合』を新設して東鞘会から脱会しました。
その後、氏家は神津を暗殺してメキシコに逃亡し、７代目には神津の秘書だった十朱義孝（MIYAVI）が選ばれました。

十朱が東鞘会のナンバー１で、ナンバー２は『東鞘会三羽ガラス』と呼ばれる土岐勉（北村一輝）、熊沢伸雄（原光夫）、大前田忠治（大場泰正）です。
熊沢は十朱の秘書を担当しています。
セオリー通りにいけば７代目は三羽ガラスの誰かが就くのが妥当でしたが、内部抗争の醜さを身をもって知った3名は相談し、新たな内部抗争を避けるためにも十朱にトップの座を譲りました。

東鞘会は同時に和鞘連合への仇討ちを開始し、冒頭で兼高と室岡が殺した男 喜納は日本に残っていた和鞘連合幹部の最後の1人でした。

兼高（出月）の過去

出月は交番勤務の巡査だった20代前半の頃、管轄だった新宿２丁目のスーパーで強盗殺人事件が起こり、想い人だったスーパーのアルバイト店員の女子高生を殺されました。

出月は自分がもっとしっかりしていれば事件を未然に防げたに違いないという思いから、雑務に追われて本当の危険を見過ごした自分を責め、暴力団組織を憎悪します。
事件の後、出月は第四機動隊に異動して戦闘訓練と警備訓練を受けて武術を身に着けた後で姿をくらましました。

出月はスーパー強盗殺人を起こした加害者を執念深く特定し、彼らを一人ずつ殺害しました。
復讐を終えた直後、出月は自首しようとした所を阿内に目を付けられて東鞘会に潜入捜査することになります。

出月は警察からの給料とヤクザからの給料をダブルで得るようになったことで収入に余裕ができたため、スーパー強盗の被害者遺族たちに『G・I』というイニシャル名で金銭的援助を始めました。

これは出月なりの償いでもあり、潜入捜査中の出月が本当の自分を忘れないようにするための行動でもありますが、これらの行動が後に三神や室岡に正体がバレてしまう原因にもなってしまいます。

 

三神（金田哲）が兼高を目の敵にしていたのはなぜ？

東鞘会の下部組織に『三神組』があり、その組長が三神（金田哲）です。
小説から得た情報が多いですが、三神はヤクザには珍しく有名私立大学に進学した経歴を持つものの、カネへの執着からマルチ商法の勧誘にハマり逮捕され大学を除籍になりました。

三神はまともな会社に就職できず、詐欺行為で反社系から多くの恨みを買っていたため身を守るためにもヤクザの道を選び、海外進出を目論んでいた東鞘会で巧みな話術と語学力を重宝されて組長の地位を得ました。

ナメられたらおしまいの極道の世界で、三神は度胸と戦闘力が無いことにコンプレックスを持ち、ボクシングなど習得しようとしますが早々に挫折しています。

そんな三神が兼高を嫌う理由は、兼高は三神が欲しかったもの（度胸と腕力）を持っていて、さらに三神よりも出世スピードが早かったからです。

三神の出世は比較的早い方でしたが、組入りした20歳頃から約10年かけて東鞘会下部組織の組長の座に就きました。
一方で兼高はヘルドッグス経由で東鞘会に組入りしてから土岐の信用を得て、４年あまりで一気に若頭補佐（立場的には三神の下）にまで出世しました。

さらに十朱の秘書だった熊沢の死後、十朱は熊沢の後継者を兼高に選びます。
兼高は三神を飛び越えて土岐と同列になり、立場的には三神の上司になりました。
三神が熊沢の死や十朱が襲撃された責任を兼高に向けて激怒したのも、兼高の大出世に嫉妬のあまり殺意を抱いたからです。

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