映画『ヘルドッグス』ネタバレ解説考察|室岡の過去、内部抗争の整理など | 映画の解説考察ブログ - Part 2

映画『ヘルドッグス』ネタバレ解説考察|室岡の過去、内部抗争の整理など

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ヘルドッグス クライムドラマ

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兼高と室岡が十朱のボディーガードになる経緯

十朱の敵である氏家勝一は、関西最大の暴力団組織『華岡会』の協力を得て東鞘会を取り戻そうと画策していました。
つまり氏家は現在の東鞘会最高幹部(十朱、土岐、熊澤、大前田)を殺し、彼ら以下は氏家を親と認める者だけを残して組織を再構成しようとしていたのです。

そんな中、華岡会は中東地域で名のしれた極悪非道の何でも屋オリバー・ヘンドリクソンを雇って日本に連れてきていることがわかりました。

その写真には氏家勝一とヘンドリクソンが一緒に写っていました。
ヘンドリクセンの来日は氏家&華岡会が東鞘会の暗殺を彼に依頼したからかもしれなかったため、兼高たちが十朱のボディーガードをすることになりました。

ここで注意しておきたいのは、氏家とヘンドリクセンが一緒にいる写真の提供者が恵美裏(松岡茉優)だった点です。
恵美裏もまた阿内のエスなので、警察は『氏家とヘンドリクセンには繋がりがある』と東鞘会に思わせるのが目的でした。

 

十朱が華岡会の構成員と会ったのはなぜ?

ヘルドッグス

©2022「ヘルドッグス」製作委員会

十朱が高級クラブで会った男2人は、俵谷金村という華岡組の構成員でした。

華岡会は氏家勝一が和鞘連合を結成した頃から氏家を支援しています。
同会は名古屋と神戸に拠点を置いていて、俵谷と金村は関西勢で、俵谷は幹部候補の若衆、金村は俵谷の右腕です。
華岡組の本拠地は元々は神戸でしたが、現在の組長 琢磨栄が名古屋出身のため本陣が名古屋に移り、それに伴い関西勢と中京勢は関係が悪化しています。

華岡組は東京進出を狙っているため、氏家に恩を売って東京進出の足がかりにするべく支援しているのです。
一方で中京勢の勢力拡大に不満を持つ関西勢の一部は、東鞘会に積極的に内部情報を漏らしました。それが俵谷と金村です。

氏家勝一が東鞘会6代目会長神津を殺してメキシコに逃亡していた間、東鞘会は神津の仇討ちとしてヘルドッグスを使い和鞘連合の幹部陣を殺し、残るターゲットは氏家だけになった頃、氏家が日本に戻っている情報が恵美裏経由で土岐に舞い込みました。

十朱が氏家の命を狙うことは明白なので、氏家帰国の件は俵谷たちも東鞘会に対して極秘にしていたものの、警察が恵美裏を通してリークしたため知られてしまいました。

十朱は氏家の居場所を探るために俵谷と金村に会いましたが、ストレートに居場所を聞いても教えてもらえないのはわかり切っていましたし、また、奇襲をしかけるためにあえて氏家の帰国を知らないフリをして俵谷と金村に接しました。

一方で華岡会はオリバー・ヘンドリクセンを雇ったことは隠していなかったため、十朱は俵谷に「琢磨はなぜヘンドリクセンを雇ったのか」「俺達を殺すつもりか」と聞くと、俵谷は「組長の本当の狙いはわからないが、多分俺達関西勢への脅しだろう」と答えます。

十朱は納得せず「噂話は聞きたくない。もし琢磨が俺たちを攻撃するつもりなら、東鞘会は琢磨を殺す。このままでは俺たちは安心して寝られない。だからヘンドリクセンを雇った確かな理由を調べて教えろ」と強気に命じました。
「場合によっては組長を殺す」と言われて俵谷は激怒してもおかしくない場面でしたが、十朱が「中京勢と立場逆転して悔しくないのか。内部抗争を逆手にとって力を示し、立場を取り戻せ」とたきつけると、俵谷は丸め込まれて同意しました。

さらに、十朱は俵谷と金村に3億円を渡して頭を下げました。
突然大金を渡された俵屋と金村は、十朱の依頼にどう答えるか、華岡組の組長琢磨に相談することにします。
大金を渡せばすぐにでも俵谷は琢磨に会い、琢磨の近くには必ず氏家がいるだろうと見越していた十朱は、3億のアタッシュケースにGPS発信機をしかけていました。

こうして氏家の居場所は東鞘会にバレ、十朱は暗殺部隊を放って勝一を華岡組もろとも皆殺しにして仇討ちを果たしました。
氏家の帰国をリークしたのが警察だったことから、警察の狙いは東鞘会と華岡組を対立させることだったので、これらの抗争は警察の計画の内だったのがわかります。




女殺し屋ルカの正体は?阿内(警察)の計画とは?

高級クラブで十朱に毒を盛ろうとした女殺し屋ルカはどんなにきつい拷問を受けても口を割らず、黙秘を貫き通しました。
ルカは氏家&華岡会が放った殺し屋のように見えますが、実際にはルカを用意したのは阿内(警察)でした。
つまりルカは警察官だった可能性が高いのです。

また、阿内は十朱の持つ情報を確保できる目処がついてからでないと十朱を殺せないため、ルカが十朱の酒に毒を盛ろうとしたのは、兼高がルカの不審さに気付く前提で仕組まれたパフォーマンスで、殺し屋だとバレて倉庫に運ばれることも計画の内でした。
兼高に計画が事前に知らされなかったのは、事前に伝えて兼高に演じさせてしまうと十朱や熊沢に見抜かれて、兼高の正体がバレる危険があると阿内が判断したからです。
阿内は兼高の「殺し屋(不審者)を見抜く能力」は信じていたので、兼高ならルカを見抜くはずだと見越して計画を教えませんでした。

そして拷問場所の倉庫に乗り込んできたのはオリバー・ヘンドリクセン率いる暗殺部隊かと思いきや、実はこれも警察が用意した特殊部隊でした。
警察は、ルカとヘンドリクセンを送り込んだのは氏家&華岡会だと東鞘会に思い込ませようとしています。
一同が倉庫に移動するように仕組んだのは一般人に被害者が出ないようにするためです。

また、この時点で警察はまだ十朱を殺せないため、部隊を送り込んだ本当の目的は三羽ガラスである熊沢の殺害でした。
ルカが熊沢を撃つ時の目力がそれを物語っています。

警察は東鞘会と華岡会とを戦わせるためにヘンドリクセンの仕業に見せかけて熊沢を殺しました。
「ヘンドリクセンは華岡会の琢磨が関西勢に対する牽制のために呼び寄せた」という「噂」は真実であり、彼は抗争の引き金として利用されたのです。

警察の思惑通り東鞘会は華岡会にやられたと思い込んだ上で攻撃を仕掛け、氏家もろとも華岡会を壊滅状態に追い込みました。

また、兼高がルカの不審さを見抜くように阿内が仕向けたのは、殺し屋を見抜いて十朱を救うことで兼高がさらに十朱からの信頼を得るようにするためでした。
阿内の狙いは兼高の東鞘会内での出世であり、思惑通り兼高は熊沢の後継者として十朱の秘書となり、極秘ファイルに近づける立場になりました。

 

土岐が十朱を殴ったのはなぜ?

熊沢の葬式の日、三羽ガラスの土岐は十朱を殴って怒りを表しました。
土岐達は殺し屋ルカと倉庫に現れた暗殺部隊の狙いは十朱だったと思いこんでいます。

東鞘会からしたら熊沢は十朱を狙う争いに巻き込まれて死んだので、十朱がもし倉庫に来ていなければ奇襲されることはなく、熊沢も死ななかったと考えられるため、熊沢の死の責任は十朱の行動にあることになります。
なので、土岐は十朱の安易な行動を責めたのです。

しかし、ナンバー2の土岐がトップの十朱を殴るという行為は極道の世界ではご法度なので、土岐は十朱を殴る代わりに何らかの代償を払う責任が生じます。
土岐が小指を詰めようとしたのは『親に逆らった代償』ですが、十朱が「そこまでしなくて良い」と許したので土岐の小指は生き残りました。

 

室岡はなぜ三神を殺した?

室岡が三神を殺したのは、三神が裏で氏家勝一と繋がっていると勘違いしたからです。

阿内(警察)はヤクザ同士を争わせて戦力を削ぐために東鞘会内の結束を壊そうと考え、あらぬ噂を流しました。
そのニセの噂が『三神は氏家勝一と結託している』というものでした。
噂を信じた室岡は殺し屋ルカを送り込む件に三神も加担していたと思い込み、激怒したのです。

原作小説ではこのような背景が明らかになっていますが映画では描かれないので、これらの事情抜きで考えると、熊沢の代わりにナンバー2に就任した兼高に切れた三神は『親に逆らった』ことになるので、室岡は兼高に代わって激怒し、元々相性も良くなかったので激昂して殺してしまったとも捉えられます。

 

タイトル『ヘルドッグス』の意味

本作のタイトル『ヘルドッグス』は直訳すると地獄の犬ですが、兼高は潜入捜査官で『警察の犬(スパイ、回し者)』であることや、十朱の用心棒(番犬)としての役割もこなしていたので、兼高(出月)の仕事内容や生き様を表現したタイトルだと思いました。

また、犬は『負け犬』『犬死に』など悪口や罵倒の際にもよく使われるので、阿内に良いように操られる兼高の有り様を皮肉的に表現していたようにも感じました。

次のページに続きます!

室岡の過去、お歯黒、マッサージ師典子について、原作小説との違いなどです。




感想などお気軽に(^^)

  1. 匿名 より:

    確かに。
    最初にストーリー説明兼ねてる大事なところなんか早口のハゲのおっさんが早口な上にセリフがモゴモゴ切れてなく、最初のところ戻って見たけどやっぱりわからなかった。
    これだけで原作でなく入る大半の人が意味がわからない映画から入らなくてはいけなくなってしまいますよね。

    それでネットで内容調べるという結果になりここに書き込んでます。

    最初の1番大事な導入をしくじるとどんな良い作品でも最後まで引っかかってスッキリしないままの作品になってしまうのでこうして拝見して細部まででなくても大まかな事がわかったので感謝します。
    これでやっと見始められます。

  2. mt より:

    本を読むのが苦手なので、原作との比較ブログなどを探してこちらへ参りました。
    三神のキャラは、概ね想像した通りでしたので、答え合わせみたいでよかったです!
    でも、映画のなかのキャラ作りがうまかったんだと思いました。
    途中、ちょっとややこしかったですが、全部すみずみまですっきり理解する必要もないと思っているので笑
    岡田さんの岡田さん自身をかっこよく見せるアクションコレオグラフが見られてよかったです!
    お蔭で鑑賞後を楽しめました。ありがとうございました!

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