映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』を見ていて気になった、鳥飼の行動や劇中のセリフについて考察しています。
「なぜ鳥飼は池神に拳銃を見せたのか?」「組織にいる人間は書類の中で生きてる、とはどういう意味?」「正義は胸に秘めとく位がちょうどいい、の意味は?」など、物語の伏線や登場人物の考え方を個人的な解釈も交えながら解説します。
本編:126分
監督:本広克行
脚本:君塚良一
主題歌:『Love Somebody CINEMA Version Ⅳ』歌/織田裕二
メインキャスト:織田裕二(青島刑事)、深津絵里(恩田刑事)、小栗旬(鳥飼管理官)、柳葉敏郎(室井警視監)、ほか
解説、考察、感想など
鳥飼(小栗旬)が池神(津嘉山正種)に押収した拳銃を見せたのはなぜ?
鳥飼は、6年前の誘拐事件で逮捕された誘拐犯の土門が証拠不十分で無罪判決が出た直後、警察に返却された押収品の拳銃を池神の前に持ってきます。
そんな鳥飼に、池神は怪訝な顔で「保管庫に入れとけ」とあしらいます。
鳥飼は、6年前の誘拐事件を池神が覚えているか、どう思っているかを反応を見て確認するために押収品を持ってきたと思われます。
ひろみちゃんの死は池神の保身的な捜査指揮により起きた悲劇だったので、池神は職務上の責任は負わなかったとしても、心ある人間なら罪悪感が生じる事件だったはずです。
しかし池神は「自分の指示が原因で子どもが亡くなった事件」のことをまともに覚えていませんでした。
鳥飼は、池神の性格を理解した上であえて確かめたと思われるので、改めて池神の反応を見ることで、鳥飼の計画を実行する前に自分を焚きつけていたようにも見えました。
ちなみに池神が誘拐事件の際に捜査規定に固執したのは、規定を守った上でなら、仮に捜査に失敗しても責任を問われませんが、規定を無視して失敗したら池神は責任を負うことになるからです。
恐らく捜査規定さえ守っていれば、捜査過程で何が起きても上層部は責任を問われないシステムにでもなっているのでしょう。
「組織にいる人間は書類の中で生きてる」の意味
上層部の隠蔽工作に青島が抗議したときの鳥飼のセリフです。
青島たちの世界の警察上層部や管理職は、現場で実際に起きた出来事よりも「書類上の辻褄が合うかどうかや報告書の記述」だけで物事を判断し、書類の中で立派な人間は、実際がどうであるかに関わらず出世します。
そんな組織の仕組みをとても簡潔に表したセリフです。
池神や安住が書類上だけで立派な功績を残したり、自分の罪を他者に背負わせることで現在の地位を獲得したことを理解した鳥飼は、その「書類」を逆手にとって上層部を追い詰めようとしていることを仄めかす伏線的なセリフです。
鳥飼が青島と室井をスケープゴートに選んだ理由

(C)2012 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー
鳥飼があえて青島と室井を隠ぺいの犠牲者として矢面に立たせたのは、上層部にとって青島と室井が「扱いづらい存在」だったからです。
上層部が「これで自分たちの保身が図れる」と飛びつくことを見越し、彼らに自ら「隠蔽」と「トカゲのしっぽ切り」を行わせる罠として2人を差し向けました。
ちなみに鳥飼は、青島と室井を本当に辞職させるつもりはありません。
2人の辞職を上層部への罠にして、内部告発で上層部を一掃できれば、2人の辞職はなかったことになるからです。
ただし鳥飼は、青島と室井にも伝えたいことがあって「トカゲのしっぽ」にしています。
それは、正義感を持って現場で尽力してきた2人も、組織のトップが腐っていれば、彼らの都合と保身のためにあっさりと切り捨てられることが起こりうるのだと警告していたと思われます。
また、鳥飼は池神に建白書を捨てられた経験から、青島と室井が行っている「正攻法での組織改革」を「まともな方法での改革は不可能だ」と否定したかった可能性も考えられます。
メイウェンティの意味は?
緒方が言っていた「メイウェンティ」は、中国語で「没問題」、「問題ない」という意味です。
日本でよく知られる「無問題(モウマンタイ)」と同じ意味の言葉です。
小池(小泉孝太郎)の嘲笑の理由
殺された土門が6年前の誘拐事件の裁判で無罪になっていたことを、真下が「知らなかった」と言ったとき、小池が嘲笑します。
小池は真下が誘拐事件のその後を知らなかった(興味がなかった)ことを知り、怒りを通り越して呆れたからです。
小池、久瀬、鳥飼が誘拐事件に関して、真下にも強い怒りや憤りを抱いていることを示す伏線です。
真下は課長としてもっと必死に交渉を続けさせるよう訴えたりするべきだったのに、すぐに池神の命令に従ったことや、事件の後は何事もなかったように幸せな家庭をきずいていたことで鳥飼たちから恨みを買ったと思われます。
鳥飼の目の動きが不自然な理由
鳥飼がサングラスを外した時、左目が不自然な動きをしていました。
鳥飼は前作『ヤツらを解放せよ!』で左目を負傷していたので、おそらく左目が義眼であることが示されています。
さらに、鳥飼が事件で姪を失った悲しみと、警察上層部に対する激しい怒りにより正義感が歪んでしまったことも表現されていたと思われます。
「正義は胸に秘めとく位がちょうどいい」の意味
逮捕された鳥飼に対して青島がかけた言葉です。
鳥飼は自分の「正義」を強く信じ、それを理由に警察組織や関係者を追い詰めています。
一方で青島は同じく正義感の強い人間ですが、考え方は鳥飼とは対照的です。
特に鳥飼の場合、過去の誘拐事件でひろみちゃんを失った悲しみと、ひろみちゃんの死の一因である警察上層部に対する怒りが強すぎるあまり、正義がいつの間にか「復讐」や「制裁」へと変わっています。
ここで青島が言いたかったのは、恐らく
「お前の怒りは理解できるが、その正義を振りかざして、誰か(特に子ども)を傷つける理由にしてはいけない」
「正義を振りかざして人を裁くのではなく、信念として胸の内に秘めておく位でいい」
というようなことではないでしょうか。
しかし、鳥飼が相討ち覚悟で犯罪と隠ぺいを自作自演したおかげで警察トップが交代したことは、タイトル通り警察組織にとって「新たな希望」になりました。
青島が言うように正義を胸の内に秘めておくだけではなく、鳥飼のように信念と怒りをもって、自分も破滅する覚悟で立ち向かわなければ変えられないものもあるという皮肉的な内容にも感じます。
「おじまげな」の意味は?
室井が青島に警察手帳を返そうとした際、青島が「大事なもんはここに持ってますから」と胸を指したことに対して、室井が呆れ笑いと共に投げかけた言葉です。
「おじまげな」は、秋田弁で「かっこつけるな」という意味です。
まとめ
この記事では、映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』について、鳥飼が池神に拳銃を見せた理由や、「組織にいる人間は書類の中で生きている」「正義は胸に秘めとく位がちょうどいい」といった印象的なセリフの意味を中心に考察しました。
鳥飼の目的や過去の誘拐事件との関係、鳥飼の左目がおかしい理由、青島と鳥飼の「正義」の違いなどを振り返ると、本作に込められた警察組織への批判やメッセージが見えてきます。
そのほか、「メイウェンティ」や「おじまげな」の意味、小池が真下を嘲笑した理由など、劇中の細かな疑問についても調べました。
鳥飼の行動や警察上層部の隠ぺいなど、見方によって解釈が変わる部分も多い作品です。
この記事を読むことで作品の理解の手助けになればうれしいです!


「踊る」シリーズの関連記事はこちら
感想などお気軽に(^^)