映画「ゼロの焦点(2009)」ネタバレとちょっと解説 | 映画鑑賞中。

映画「ゼロの焦点(2009)」ネタバレとちょっと解説

ミステリー

昭和32年。結婚して間もない禎子(広末涼子)の夫・鵜原憲一(西島秀俊)が出張先の金沢へ行ったまま行方不明になった。
禎子は憲一を探すため、金沢に向かう。

制作年:2009年
本編時間:131分
制作国:日本
監督:犬童一心
脚本:犬童一心、中園健司
原作:小説/松本清張『ゼロの焦点

キャスト&キャラクター紹介

鵜原禎子(うはらていこ)…広末涼子


(引用:https://www.itsfun.com.tw
結婚して間もない鵜原憲一の妻。
行方不明になった鵜原を必死で探す。
外国語を勉強していたため英語が堪能。

 

室田佐知子中谷美紀


(引用:http://blog.livedoor.jp

憲一の会社の取引先の社長室田の妻。
禎子が室田の会社を訪ねた時に出会い、親しくなる。
女性の社会進出の支援活動をしていて、現在は日本で初めての女性市長候補・上条保子の支援に専念している。

 

田沼久子木村多江


(引用:https://movie.walkerplus.com

室田の会社の受付係。
会社を訪れた禎子は彼女に妙な違和感を抱いた。

 

鵜原憲一西島秀俊 


(引用:http://ron405.blog105.fc2.com

禎子の夫。
結婚式を挙げてからわずか1週間で行方不明になった。
寡黙で多くを語らないが、周囲からの話では禎子を大切にしている様子だった。

 

・その他のキャスト

室田儀作(佐知子の夫、憲一の得意先会社の社長)…鹿賀丈史
鵜原宗太郎(憲一の兄)…杉本哲太
宗太郎の妻…長野里美
鳴海享(なるみりょう、佐知子の弟)…崎本大海
本多良雄(憲一の会社の後輩)…野間口徹
金沢警察署の米田警部…モロ師岡
羽咋駐在の警察官…江藤漢斉
立川署の葉山警部補…小木茂光
山室刑事…本田大輔
上条保子(金沢市長候補)…黒田福美
大隈ハウスの女性…左時枝
鵜原憲一夫婦の仲人…小泉博
青木所長(憲一の上司)…本田博太郎
板根絹江(禎子の母)…市毛良枝 ほか

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あらすじ:起

昭和32年8月。禎子(広末涼子)は、東京の広告会社に勤める鵜原憲一(西島秀俊)とのお見合い結婚が決まった。
禎子の母親は2人の年の差が10歳もあるのを気にしていたが、禎子は物腰柔らかな憲一の態度に安心感を覚えたことと、自分のことをあまり話さない憲一に『この人をもっと知りたい』と思ったのが結婚の決め手だった。

婚儀の1週間後の同年12月1日。
憲一は今は東京の本社勤務だが、禎子とお見合いする直前までの2年間は金沢支社に配属されていた。
この度、憲一の後輩の本多良雄(野間口徹)が金沢に配属になったため、憲一は本多に業務の引き継ぎをするため金沢に1週間出張することになった。
禎子は淋しがったが、憲一は「一週間なんてすぐさ!」と笑い、禎子にお気に入りのキャラメルを渡し、列車で旅立っていった。


(駅のホームで憲一を見送る禎子 引用:https://tv.rakuten.co.jp

憲一の帰宅予定日の12月8日(日)。禎子はすき焼きの準備をして憲一を待ったが、自宅に彼の荷物は届いたものの、本人が帰ってこない。
電報もなく不安になった禎子は、近所の店で電話を借りて会社に問い合わせたが、詳しいことは何もわからなかった。

翌日の9日(月)。届いていた荷物を開けると憲一からの手紙が入っていたが、そこにも『予定通りにそちらに戻ります』としか書かれていなかった。
その後、禎子が憲一の荷物を片付けていた時に辞書が落ち、間に挟まれていた写真が2枚飛び出て来た。
1枚は古い和風の小さな一軒家、もう1枚は立派な洋風の屋敷の写真だった。
禎子にはどちらの家にも見覚えがなかった。

その日の夜。自宅に憲一の会社の人間が来て、「鵜原憲一は7日に金沢出張所から出た記録が残っているが、その後のことは何もわからない」とだけ報告して帰った。
禎子は憲一の兄・宗太郎(杉本哲太)を訪ねた。
宗太郎も妻(長野里美)も「きっとどこかで所用が出来たんだ。そのうち何でもない顔をして帰って来るさ」と禎子をなだめた。
宗太郎は禎子があまり気に病まないように「憲一が子どもの頃にも、何度かフラッとどこかに行ってしまったことがあったよ!」と陽気に話すが、宗太郎が話す憲一の話は、禎子が普段見ている憲一の雰囲気とは違っていた。
余計に心配になった禎子は、憲一を探すため単身金沢に行くことを決意した。

金沢行きの列車の中で、禎子は憲一と新婚旅行で本州へ行った時のことを思い出した。
楽しい旅行だったが思い返せば、憲一の言動全てが自分と誰かを比べていたように感じられた。
旅行先で初めて結ばれた時、憲一の右肩に戦争の時の大きな傷が残っているのを知った。

翌朝。列車の外には一面の雪が広がっていた。
金沢駅で降りると、憲一の後輩の本多と金沢所所長の青木(本多博太郎)がホームで待ってくれていた。
本多と青木はその場でさっそく禎子に、今朝、羽咋(はくい)の海岸で、30代半ば、茶色の背広を着た男性の死体があがったと話した。
憲一は出張に行った時、茶色の背広を着ていた。
3人は死体を確かめるために羽咋の海岸へ向かった。
車で海岸線を走っている途中、青木が「この辺一帯の海岸線を能登金剛(のとこんごう)と言って、切り立った断崖が続いているから自殺の名所になっている」と空気の読めない話をした。
海岸に着くとすぐに警官(江藤漢斉)に死体を見せてもらった。
警官は「岩に何度もぶつかったようで、あんまり人に見せられる状態ではないけど・・・」と言いながら死体の覆いをとった。
ひどく腐敗していて判別が難しい状態ではあったが、憲一ではないと禎子は判断した。

 
(羽咋の海岸での禎子、本多、青木 引用:http://blog.livedoor.jp

その後、禎子は憲一の金沢赴任時代の下宿先と聞いていた津幡(つはた)の宿に行ってみたいと言ったが、本多と青木は「津幡の下宿からは1年半前に出ている」と答えた。
憲一は2年間金沢にいたはずなので、引き払った後の1年半はどこに住んでいたのだろう。
禎子にも本多、青木にも見当がつかなかった。

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翌朝。憲一の兄の宗太郎から電話があり、宗太郎は京都に出張に来ていて、仕事が終わり次第、禎子と合流したいということだった。
その後、本多と青木が禎子の様子を見に来た際、本多が「鵜原が懇意にしていた得意先、室田耐火煉瓦株式会社の社長の室田儀作氏に話を聞いてみてはどうか」と提案してくれた。
青木はギョッとして「本多、お前は同席するな!これはあくまでも『奥さんの個人的なこと』にしてもらわないと困る」と言い出した。
青木は憲一の失踪の責任が会社にふりかかる事を恐れていた。
青木とは宿で別れ、禎子と本多は室田耐火煉瓦に足を運んだ。

室田耐火煉瓦株式会社は今までの営業担当が苦戦していた取引先だったが、憲一が室田社長と妻の佐知子にいたく気に入られ、得意先になったそうだ。
室田社長は九州の炭鉱町から流れてきて一代で会社を築き大きくした経営手腕の持ち主だった。
室田社長は本多いわく『アクが強い人』で、佐知子とは約3年前に再婚したそうだ。

禎子は会社に向かう途中の街中で、市長選挙の演説を目にした。
壇上に上がるのは上条保子(黒田福美)という日本で初めての女性市長候補で、室田の妻 佐知子は、上条保子を目に見えない形で応援していると本多は語った。

会社に着くと、受付の女性(木村多江)が段取りを説明してくれたのだが、その時 禎子と本多はその女性に違和感を覚えた。
それは、彼女が受付嬢にしては手荒れがひどいことと、外国人客に対応していた時に話していた英語がどこかおかしかったのだ。

禎子は受付を済ませて本多と別れ、室田社長のいる事務所に入った。
室田は事情を聞くなり「男が突然消えると言ったら、大概は女が理由だろう」と笑った。
禎子が悲しそうな顔をすると、「でも大丈夫、あんたなら絶対に帰ってくるさ」とフォローを入れた。
そこに、室田の妻の佐知子(中谷美紀)が工場には似合わないハイカラな格好で現れて、会社の用事を忘れていた室田を叱りつけた。
この時、禎子と佐知子は明日、上条保子の事務所で改めて話をする約束をした。

事務所からの帰り際、室田は禎子に「鵜原の私生活のことなら佐知子の方がよく知っている。
あいつは佐知子のお気に入りだったからな」と真顔で言った。
佐知子はとても美しく魅力的なので、禎子は憲一と佐知子がただならぬ関係なのではないかと不安にかられた。

その後、宿泊先に向かって歩いていた禎子は、禎子の宿泊先のすぐ近くでタクシーに乗り込んでいる憲一の兄 宗太郎を見かけた。
禎子は不思議に思ったが、何か用事があるのかもしれないと思い、追いかけなかった。

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あらすじ:承

翌日。今日は上条の事務所で佐知子と会う日だ。
その日の新聞には上条保子に関する記事が載っており、そのタイトルは『街の声は否定的』だった。
この記事は、上条保子とライバルになる男性市長候補が上条の好感度を下げるために書かせたものだそうだ。

禎子が上条の事務所に入った時、事務所内には不安の声が飛び交っていたが、佐知子が全員に喝を入れると、皆が落ち着きを取り戻して笑顔になった。
そのとき突然、ガラスが割れる音がした。
外から事務所の窓に石が投げ込まれたのだ。
佐知子はすぐに外をのぞいたが、外に犯人らしき姿は見えなかった。

その後、禎子は佐知子の車で室田邸に行った。
この時、禎子はこの室田邸が憲一の辞書に挟まっていた写真の家だと気が付いた。


(室田邸を見る禎子 引用:https://eiga.com

家に入ると、佐知子は「鵜原さんとは6日の夜にここで室田と3人で食事をしたが、それ以降のことは知らない」と話した。
※憲一の帰宅予定日は7日だった。
思い切って佐知子と憲一の関係を問い詰めてみると、佐知子は「夫が大げさに言っただけよ!あの人こそ、鵜原さんが大好きだったんだから。
『鵜原の目は人が死んだのをちゃんと見てきた目だ、そういう奴は信頼できる』って言ってたわ」と笑った。
その後、佐知子は突然思い出したように、6日の晩に憲一が口ずさんでいた歌がプラターズの『Only you』だったと話した。

その日の夜。禎子が宿泊先で母親と電話していると、母親も憲一の情報を得ようと親戚などに電話して、憲一の前職が警察の巡査で、以前勤めていたのは立川署だったと教えてくれた。
禎子も母も、憲一が警察官だったとは知らなかったので驚いた。

12月16日(月)の昼間。宗太郎が禎子の宿泊先を訪れた。
宗太郎が「さっき金沢に着いたところです」と言うので、禎子は宗太郎が何か隠しているに違いないと感じた。
禎子が「手がかりは何も無く、警察に捜索願いを出しました」と話すと、宗太郎は「気が早い気もしますがねぇ」と苦笑いした。
禎子が憲一の前職の話を出すと、宗太郎は知っていることを話してくれた。
憲一は戦争から帰ってきてすぐに警察に就職したが、働いた期間は1年もなかったという。
宗太郎は「そんなに心配しなくても、きっと帰ってきますよ。
大丈夫、私が必ず探し出します!」と笑った。

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その日の夜。宗太郎は石川県の鶴来にある茶屋で何者かに毒殺された。
人と会う約束をしていたようで、仲居が宗太郎がいた個室から赤いコートにサングラス、頭にネッカチーフを巻いた女が逃げていくのを目撃していた。
さらに、米田警部(モロ師岡)の調べによると、宗太郎は『京都出張のついでに金沢に来た』と言っていたが、実際は会社には3日前から休暇願を出していたことがわかった。
移動時間や、禎子が宗太郎を目撃した日時から考えても、禎子に会いに来る丸1日前にはすでに金沢にいたことになるが、詳しいことは誰も知らなかった。

その後、宗太郎の訃報を受けた本多が警察署に駆けつけてくれて、さらに、上条保子のボディガードを警察に頼みに来ていた佐知子と偶然再会した。
宗太郎が亡くなったことを告げると、佐知子は驚いていた。

佐知子が車で禎子と本多を送ってくれることになったが、禎子は途中で車酔いをしてしまった。
佐知子はすぐに道路わきに車を停めて禎子を下ろし、外の風に当たらせてくれた。
やがて落ち着いた禎子は、佐知子と本多に「憲一も、もうこの世に居ないのではないか」と不安を漏らした。
佐知子と本多は「憲一のことと宗太郎の事件は関係あるかどうかまだわからないから、そんな風に考えるな」と励ました。
禎子は「今回のことで憲一さんのことを何も知らなかったということがよく分かりました。
この事件を乗り越えれば本当の夫婦になれる気がするけれど、何もわからない今の状況が耐えられない。
もし最悪の結果だったとしても、早く真実を知りたいと思っている自分もいる、私はひどい人間です」と打ち明けた。
佐知子は禎子の手を握り「そう思うのも当然よ、結婚が本当にあなたの夢だったのなら、そんなに簡単にあきらめてはだめよ!」と優しく言い聞かせた。

翌日。禎子は宗太郎の葬儀のために一度、東京へ戻ろうとしていた。
駅に本多が見送りに来てくれていたので、禎子は「葬儀が終わったらまた戻ってきます」と伝えて列車に乗った時、受付の女性に抱いた違和感が何だったのかわかった。
禎子は本多を引き留めて「室田の会社の受付女性の話していた英語は、まるでパンパン(アメリカ軍人相手に売春する女性)が使うような現地のスラングでした」と話すと、本多は禎子が戻って来るまでに受付の女性のことを調べておくと約束してくれた。

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あらすじ:転

禎子が東京に戻って数日。日本初の女性市長候補、上条保子の存在は東京でも大きな話題になっていた。

宗太郎の葬儀が終わった頃、本多から電話があった。
受付女性は田沼久子という名前で、宗太郎が殺された16日から会社を休んでいるという。
先日、田沼の夫が能登金剛から身投げして亡くなり、彼女を不憫に思った室田が受付として雇ったのだそうだ。
ただ、亡くなった田沼の夫と室田がどんな関係だったのか、社内の人間は誰も知らないという。
社内では、田沼久子は室田の愛人ではないかという噂も出ているそうで、それは佐知子と室田の馴れ初めに所以があった。
室田は前妻が亡くなるよりも前から別の会社で働いていた佐知子を見初め、室田の会社に引き入れていたそうだ。
本多はこのあと田沼久子と会う約束をしているそうで「直接会って真相を確かめるつもりです!事件記者みたいで楽しくなってきました!」と嬉しそうに電話を切った。

翌日。本多が田沼久子の自宅で遺体で発見された。
包丁で背中を一突きにされていた。

数日後、禎子と青木所長が被害者の確認のため警察に呼ばれ、米田警部は『宗太郎と本多を殺害した犯人は田沼久子で間違いない』として彼女を指名手配したことを伝えた。
本多が殺された夜、夜更かししていた中学生が近所のバス停で、赤いコートにネッカチーフの女を見たと証言もあったからだ。
田沼には親族もおらず、彼女と内縁関係だった夫の曽根益三郎 36歳は、8日に海から遺体が上がっているそうだ。
禎子は、曽根益三郎と憲一が同じ年齢、帰宅予定日と遺体発見日が一緒だったので嫌な予感がした。

禎子は警察から出るとすぐに田沼の家の近くに行き、田沼久子と曽根益三郎の話を聞いて回った。
近所の住民の話によると、田沼は戦後からここに住んでいて、彼女がかなり派手な服装だったため近所では噂になっていたという。
曽根益三郎は金沢と東京を行ったり来たりしていたらしく、性格はとても無口で、田沼は益三郎によく尽くしていたという。
住民から話を聞けば聞くほど、曽根益三郎が憲一だったのではないかという推測が膨らむばかりだった。

田沼の家に着いた時、その家が憲一の持っていた2枚目の写真の家だと気付いた。
家の中に入ると中に物はあまりなかったが、居間には遺骨と線香がぽつんと置かれていた。
その家は建付けが悪く、隙間風が家に吹き込み、禎子の足元に何かが転がってきた。
それは憲一のお気に入りのキャラメルの箱だった。
憲一は金沢では『曽根益三郎』と言う名前で田沼久子と暮らしていたのだと確信した。

禎子は曽根益三郎(憲一)が身を投げたという能登金剛の崖に立ち、荒れている海を見ながら1人涙を流した。

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その後 禎子は警察へ行き「別れ話をされて憲一を恨んだ田沼が、憲一を崖に呼び出して突き落としたに違いない」と推測を米田警部に話した。
米田警部は困った顔をして、禎子に一枚の紙を見せた。
田沼の自宅から憲一(益三郎)の遺書が見つかったのだ。
緊張しながら遺書を開くと、
『久子へ 色々と思うところがあって、生きていくのが辛くなった。
詳しい事情はお前に知らせたくない。
ただ僕は、この※煩悶を抱いて永遠に消えることにする。
これまでありがとう。 益三郎』と書かれていた。
※煩悶:悩み苦しむこと
警部はこの遺書と、会社に残っていた憲一の書類とを筆跡鑑定にかけ、同一人物の筆跡だと結果が出ていることを明かした。


(遺書を読む禎子 引用:https://www.youtube.com

憲一が自殺したことがどうしても納得いかなかった禎子は佐知子に会いに行った。
憲一が自殺するような人間には思えないこと、久子には遺書が残されていたのに、禎子には何も残されていなかった理由もわからない、もし自分がどうでもいい存在だったのなら憲一が許せない、と佐知子に訴えた。
佐知子は優しく禎子を抱きしめて「あなたはもう十分がんばった、まだ冷静に考えることが出来ないのよ。
後のことは警察に任せて、東京に戻ってしばらくゆっくり休まれた方がいいわ」と慰め、禎子に別れを告げた。

その後、東京に戻った禎子は、憲一が勤めていたという立川警察署へ出向き、憲一のことを覚えていると言う交通課の葉山警部補(小木茂光)に話を聞いた。
葉山と鵜原は当時、風紀係を務めていた。
その当時はまだ日本がアメリカに占領されていて、アメリカ軍人は街に溢れ、彼らの金目当てにパンパンが集まっては軍人を口説いていたそうだ。
米軍は風紀の乱れを嫌ってパンパンの狩り込み(捕まえて特定の施設に収容すること)を行っていたが、実際に刈り込みをやらされたのが風紀係だった。
鵜原と葉山は米軍の車でパンパンが集まる場所に連れて行かれては、彼女たちを追いかけて捕まえる仕事をさせられた。
米軍の男が時に女性たちを殴ったりしても、日本警察は文句ひとつ言えなかったそうだ。
「そんなあり方を鵜原は悩んでいたようだった」と葉山は語った。
禎子は葉山に田沼久子の顔が載っている新聞の切り抜きを見せて「風紀係をしていた頃、この女性を見た記憶は?」と尋ねた。
すると葉山は「この女性に見覚えは無いが、おとといもこの女性の事で訪ねてきた人がいたよ、ひどく思いつめた表情をしていた」と答え、その人物の名刺を出した。
それは室田儀作の名刺だった。
葉山は、中神にこの種の仕事をしていた女性が集まる『大隈ハウス』という下宿があるから、そこで聞いてみればいいと教えてくれた。

大隈ハウスに足を運んだ禎子は、管理人らしき初老の女性(左時枝)に田沼久子の話を聞くと、女性は「またか」という顔をしながらも話してくれた。
田沼はここで『エミー』という名前で、内気だったが米兵からは大人気だったそうだ。
女性は「おととい来た人にも見せたから」と言い、田沼が写っている当時の写真を見せてくれた。
そこには十数人の華やかなドレス姿の女性がいて、田沼は楽しそうに笑っていた。
写真の中の女性たちの顔を1人ずつ見ていくと、その中に室田佐知子も写っているのを発見し、禎子は驚いた。
女性は「あんたも『マリー』のこと知ってんのかい?」と言い、彼女の身の上話を始めた。
佐知子は空襲で両親をなくし、肺病を患っている弟の治療費のために働いており、大隈ハウスからいなくなる前は将校の※オンリーをしていたという。
※オンリー:特定の人物しか相手にしないこと。
田沼久子と室田佐知子はほぼ同時に大隈ハウスから出ていったと言う。
つまり、田沼が室田の会社に雇われた背景には佐知子が関わっていたのだ。
禎子は血相を変えて駅まで走り、金沢行の列車に飛び乗った。

同じ頃、田沼と佐知子は車で山道を走っていた。
佐知子は久子に「私たちの昔のことが知られたら、宗太郎や益三郎の同僚が殺された件はろくに調べもしないであんたがやったことにされるわ。それが心配で隠れてもらったんだから!
皆、私たちみたいな人間は捨てられるもんなら捨てちまいたくてウズウズしてるのよ!
金沢は固められてるけど、高岡から東京へ向かえばきっと大丈夫だから」と言い聞かせた。
つまり、一連の事件の犯人は田沼久子ではなかったのだ。

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あらすじ:結

憲一が失踪する数週間前、久子の前に突然 益三郎の兄の宗太郎と名乗る男が現れて、益三郎が偽名ということや、彼は東京で結婚したことを聞かされた。
「いまだに信じられないし、事実だとしても何か事情があったはず・・・」と久子が話していると、佐知子は車を止めて突然笑いだした。
佐知子は「あんたって昔から本当にお人よしね、あんたより若くていい女がいたから乗り換えただけよ!
鵜原憲一が結婚していたのは本当よ、東京で結婚式も挙げてるわ」と嘲笑うかのように話した。
久子が「そんなのウソよ」と言うと、「ウソなもんですか!あいつはね、その若い女と『一緒になりたい』なんて、しゃあしゃあと言ってたのよ?
『東京に行って生まれ変わりたい』なんて、本当にひどい人!」と憎らしげに話した。

その後、佐知子は車が故障したフリをして外に出ると、ボンネットを開けて車を修理するフリを始めた。
その間、久子も外に出て真っ暗な崖を眺めながら、憲一との出会いを語り始めた。

パンパン狩りが行われた冬の日の夜、久子と佐知子は近くの学校の中に逃げ込んだ。
教室で身を潜めながら、2人は黒板に書かれていた『この道』の歌詞を見て、小さな声で歌った。
この歌声を教室の外でこっそり聞いていた憲一は、2人をこっそり逃がしてくれたのだ。

話し終わって久子が佐知子の方に向き直ると、佐知子はナイフを持って久子の前に立っていた。
佐知子は、室田の会社で偶然 憲一と再会していて、室田が憲一を気に入って自宅に呼ぶ程になったことや、憲一の結婚が決まった直後に『知り合いの女性(久子)の仕事を世話してやってほしい』と憲一から頼まれていたことを明かした。
さらに、憲一は佐知子に「僕は禎子と会うまで、誰とも結婚する気はありませんでした。
だから同居していた女性(久子)にも本名は明かさず『曽根益三郎』という戦死した友人の名前を使っていました。
でも本当は、僕もあなたと一緒なんです。
生まれ変わりたい、生まれ変わって新しい時代を生きて行きたい。
禎子となら、それが出来るかもしれない」と話したこと、そして、佐知子は憲一にどうしようもない怒りを感じたことを語った。
なお、憲一は女の詳細を伏せていたため、同居していた女が久子だと佐知子は知らなかった。

佐知子は憲一に、女と上手く別れるために『曽根益三郎の自殺を偽装すること』を提案した。
憲一に『曽根益三郎』の名前で遺書を書かせ、遺書と靴を能登金剛の崖に置いた。
崖に同行していた佐知子は、憲一から仕事の世話をして欲しい女性の名前と住所が書かれた紙きれを受け取った直後、崖を見下ろしていた憲一の背中を衝動的に突き飛ばした。
パンパンだった過去を消し去りたいと強く思っていた佐知子は、過去を知る憲一を殺してしまいたくなったのだ。
その後、佐知子は紙切れを見て、憲一が同棲していた女が久子だと知った。

一連の事件の真犯人は佐知子だった。
その後、佐知子は久子を助けているように見せかけて、久子を殺人犯に仕立て上げようとしていたのだ。
絶望した久子は「あんたは生き延びて、私の分まで生きればいい。またいつか、会おうね」と言うと、道路脇に広がる崖に身を投げた。
佐知子はとっさに久子を掴もうと手を伸ばしたが、もう遅かった。
トランクから久子のカバンを出して崖に投げようとしたとき、転んで中身が散らばった。
荷物の中に母子手帳が入っているのを見て佐知子はむせび泣き、自宅に帰った後、罪の呵責に耐えられなくなり発狂した。

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同じ頃、禎子は金沢行きの列車の中で考えを整理していた。
宗太郎は憲一の失踪後、金沢で調べているうちに久子と佐知子の関係に気が付いた。
その後、宗太郎が佐知子に連絡を取ったことで、彼が自分たちの過去を知っていると分かった佐知子は「憲一と久子に合わせる」などと言って茶屋に呼び出し、赤いコート姿で茶屋に来て宗太郎を毒殺した。
本多も同様で、彼が久子について調べ回っていたことに気付いた佐知子は、久子を装って本多を久子の家に呼び出し、殺害した。
その後、殺害時に使用した赤いコートを久子に渡して着させたのだ。

数日後。金沢市長選挙が行われ、会場には多くの記者が全国から集まって上条保子が当選するかしないかで賭けをしたりと盛り上がっていた。
金沢に着いた禎子はタクシーに乗っているとき、車内のラジオで『田沼久子と思われる遺体が海からあがった』と聞いて驚いた。
この件は自殺とみられており、遺体は金沢警察署に収容されたと流れた。

金沢市の会館では、上条保子たちは会見を開くための準備に追われていた。
佐知子は享(弟)に連れられて会館に来ており、一番後ろの席で女性たちが歌う『婦選の歌』を一緒に口ずさんでいた。
佐知子は両手に包帯を巻き、大きめのサングラスをしていたが、発狂して部屋で暴れた時に出来た大量のすり傷は隠しきれていなかった。

同じ頃、警察は室田の会社に向かい、室田儀作を逮捕した。
室田は佐知子を守るために犯人と偽り自主したのだ。
室田は『愛人の田沼久子と共謀して、内縁の夫だった曽根益三郎=鵜原憲一を殺害し、それに気づいた鵜原の兄と本多も殺害した』ことになった。
室田は警察に連行される際に隙をみて警官から銃を奪い、頭を撃って自殺した。

禎子が会館に到着するとほぼ同時に、上条保子が見事当選したことが周囲に伝えられた。
すぐに記者会見が行われ、佐知子は上条からスピーチを求められて壇上に上がった。
佐知子のスピーチ中、禎子はゆっくりと壇上に近づくと、会場の拍手が起こった瞬間に合わせて大きな声で「マリー!!」と叫んだ。
その瞬間 佐知子の表情は凍り付き、声の主が禎子だとわかった瞬間に意識を失た。


(パンパン時代の呼び名が聞こえて凍り付く佐知子 引用:https://ameblo.jp

控室で意識を取り戻した佐知子はマスコミを避けて裏口から出ると、外に禎子を呼び出した。
禎子は佐知子に強烈なビンタを食らわせた。
佐知子は「これだけは伝えておかなくてはと思ったの、鵜原さんは『あの人となら生まれ変わることができる。
新しい時代を一緒に生きていくことが出来る』そう言ってたわ。
あの時、鵜原さんは間違いなくあなたを愛していた」と伝えた。
禎子は鵜原憲一を最後に見た時の笑顔を思い出し、泣き崩れた。

一週間後。室田佐知子の遺体が海で発見された。

禎子は東京の実家に帰り、供養もかねて憲一の私物を焼いた。
憲一が辞書に挟んでいた田沼久子と室田佐知子の家の写真を見て、憲一は2人のことを忘れないようにするために撮影したに違いないと考えながら、写真が燃え尽きるのを眺めた。

主題歌:中島みゆき『愛だけを残せ
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解説や感想など!

禎子が「マリー」と叫んだ理由

事件の真犯人が佐知子だとわかった禎子は、佐知子がスピーチをしている会場で佐知子に向かって「マリー!」と叫びます。
佐知子が憲一を殺したのは、彼女自身がパンパンだった過去が明るみになるのを恐れてしたことでした。
それが分かった禎子は、佐知子にとっての大事な演説の場面で彼女のパンパン時代の呼び名だった『マリー』という名前を叫ぶことで、佐知子へのせめてもの仕返しと、過去は消せないのだとわからせようとしたのではないでしょうか。

 

 

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