映画『ナイトメア・アリー』のあらすじ紹介と解説、考察をしています!
ショービジネスでの成功を夢見る青年スタンはたどり着いたカーニバル一座で読心術を身に着け、恋人のモリーと共に独立してメンタリストとしてニューヨークのショービジネス界でのし上がっていく。
制作年:2022年
本編時間:150分
制作国:アメリカ
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:キム・モーガン、ギレルモ・デル・トロ
原作小説:『ナイトメア・アリー 悪夢小路』ウィリアム・リンゼイ・グリシャム著
主要キャスト紹介
スタントン・”スタン”・カーライル…ブラッドリー・クーパー
通称スタン。ショービジネスでの成功を夢見る男。
冒頭から死体を家ごと焼き払うなど、ただならぬ犯罪者臭を漂わせている。
行きついたクレム・ホートリーの奇人・獣人カーニバル一座に弟子入りして成功の秘訣を学ぶ。
酒を嫌悪して絶対に口にしないと決めている。
©2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
リリス・リッター…ケイト・ブランシェット
著名な心理学者。
カウンセラーとして街の権力者たちの悩みやトラウマを知り尽くしている。
スタンと手を組む。
©2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
モリー・ケイヒル…ルーニー・マーラ
カーニバル一座のメンバー。
電気を使った見世物をしている。
スタンと出会って恋に落ちる。
©2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ジーナ・クランバイン…トニ・コレット
カーニバル一座のメンバー。
夫のピートとインチキ千里眼で観客の悩みを言い当てる。
スタンを下働きとして招き入れた。
エズラ・グリンドル(権力者)…リチャード・ジェンキンス
ピート(ジーナの夫)…デヴィッド・ストラザーン
ブルーノ(カーニバルの大男)…ロン・パールマン
ギーク…ポール・アンダーソン
アンダーソン(グリンドルのボディガード)…ホルト・マッキャラニー
チャーリー・キンボール(判事)…ピーター・マクニール
フェリシア・キンボール(チャーリーの妻)…メアリー・スティーンバージェン
ジャレッド(保安官)…ジム・ビーヴァー
カーニバルのボス…ティム・ブレイク・ネルソン
カーニバルのメンバー…クリフトン・コリンズ・ジュニア ほか
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※このページの情報は2022年6月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
あらすじ紹介
あらすじ①成功者になりたい犯罪者
(家を焼き払うスタン ©2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.)
田舎町出身の男スタントン・”スタン”・カーライル(ブラッドリー・クーパー)は、ずた袋に入れた人間の死体を家ごと焼き払った後、街中で見かけた小人の後をつけて移動式カーニバルのテントに辿り着きました。
スタンはカーニバルの見世物の不思議な雰囲気に魅せられます。
中でも鶏を生きたまま食らうパフォーマンスを見せたギーク(獣人)からは目が離せなくなりますが、スタンは一文無しで見物料が払えません。
こそこそ逃げようとしていた所、座長のクレム・ホートリー(ウィレム・デフォー)にスカウトされて下働きとして雇われました。
その夜、ギークが入れられていた檻から脱走します。
彼を見つけたスタンは優しく声をかけますが、ギークが襲い掛かってきたので殴り返して捕まえて、ギークは頭に怪我をしてしまいました。
翌日から、スタンは千里眼の見世物をするジーナ(トニ・コレット)とピート(デヴィッド・ストラザーン)夫妻と知り合い、2人の手伝いを中心に仕事をします。
夫婦のショーの内容は、ジーナが『千里眼を持つ占い師』になって舞台に立ち、まずは観客に悩みをメモに書いてもらい回収し、メモの内容を読むことなく内容を言い当ててアドバイスしていく、というものですが、ジーナは本物の千里眼ではなくちゃんとトリックがありました。
所定の位置に待機しているピートが、暗号などでメモの内容をジーナに教えていました。
2人の読心術を応用したショーに感心したスタンは、独自の読心術を考案したピートに弟子入りします。
ピートはスタンを可愛がり、息子に教えるかのように術を伝授しました。
あらすじ②ギークの作り方
(スタンとホートリー ©2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.)
数週間経ちました。
他のパフォーマーは人間らしく生活する中、ホートリーはギークだけは檻に住まわせ、お風呂にも入らせず酷い有様です。
スタンはギークを哀れに思い、たまに煙草や食料を差し入れました。
ギークの口癖は「こんなはずじゃなかった」です。
ある日、ギークは頭の怪我が化膿して瀕死状態に陥りました。
するとホートリーは、スタンに手伝わせて病院の前に置き去りにします。
スタンは罪悪感を感じますが、助けられる勇気も余裕もありませんでした。
その後スタンは、ギークをどうやって見付けてくるのか聞くと、ホートリーは「基本はアル中のホームレスだ」と言います。
ホートリーの所には、たまに仕事を求めるホームレスが現れます。
そういう男が来ると、ホートリーは最初は「仕事は無い」と断って、代わりに手作りの醸造酒に少量のアヘンを混ぜて与えます。(アヘンは催眠作用と多幸感が味わえる依存性の高い麻薬です。)
すると、男はアヘンを盛られたとは気付かずホートリーのお酒に心を奪われます。
アヘンが効いてきた頃、ホートリーは『実は今、見世物に出すギークを探してる。生活に困ってるなら、食事と酒と寝床は用意するから一時的にギークをやってくれないか?本物のギークが見つかるまでの間だけ』と交渉し、その後は使い物にならなくなるまで飼うと自慢げに答えました。
ホートリーは口が上手く観客を魅了する才能がある一方で、生まれる前に死んでしまった胎児を人間、動物問わず収集する気持ち悪い趣味を持つ男でした。
スタンは、彼の一番のお気に入りだと言う『エノク』と名付けられた人間の胎児を見せられます。
エノクはお腹の中でひどく暴れて母親と一緒に死んでしまった男児で、おでこには第3の目玉のような巨大なコブがありました。
あらすじ③カーニバルからの卒業
スタンは読心術を勉強する中、ピートが大切にしている読心術の全てが記された小さなノートには、ピート自身が危険と判断した禁断の技術も書かれていることを知りました。
スタンは禁断の術も知りたがりますが、ピートは「お前自身の破滅に繋がるからダメ」と拒絶します。
ノートが欲しくなったスタンはある夜、酒を欲しがるピートに燃料用のメチルアルコールを与えて殺してしまいました。
翌朝、ピートの死が発覚してカーニバルの一座はざわつきますが、彼は元々アル中でだらしない一面があったため『不慮の事故』と皆が思い込みました。
そしてスタンはピートのノートを形見として譲り受けました。
ある日、カーニバル営業中に保安官が表れて「虐待を商売にしている」と一座に営業停止を命じます。
一座に緊張が走る中、スタンは保安官の持ち物や身体的特徴から彼の悩みを言い当てて、本物の霊能力者のように振る舞ってその場を収めました。
スタンはホートリーを始め、全員から『救世主』と絶賛されました。
その日の夜、スタンは雇われた直後から思いを寄せていたモリー(ルーニー・マーラ)の心も手に入れました。
モリーの親代わりの大男ブルーノ(ロン・パールマン)の大反対を押し切って、2人は一座を卒業してニューヨークで独立することにしました。
あらすじ④リリス・リッター博士との出会い
数か月後。スタンはモリーと協力して読心術を磨き、高級ホテルでショーを行う程に成功していました。
内容はジーナとピートの『千里眼ショー』と全く同じです。
スタンは世間的に成功者となりますが、モリーを支配しようとするので仲は険悪気味でした。
ある夜。2人がいつも通りショーを行っていると、富裕層相手にカウンセリングする心理学者リリス・リッター(ケイト・ブランシェット)が声を上げ、ショーのトリックを暴こうと絡んできました。
スタンは負けじと対抗し、観客の前で彼女のトラウマを暴いて逆に恥をかかせました。
その様子を見ていたリリスの連れのキンボール判事(ピーター・マクニール)は、スタンの才能を見込んで個人的なセッションを依頼します。
モリーは「トリックだとバレたら危険だからやめて」と断固反対しますが、高額な謝礼金を期待したスタンは依頼を受けてしまいました。
その後、スタンはモリーに内緒でリリスに会いに行き、ショーのトリックは読心術だと明かした上で「富裕層への個人セッションで金儲けしたいから協力して欲しい」と頼みます。
リリスは「あなたが私のカウンセリングを受けるなら協力する」と答え、彼女が業務上知りえたキンボールの悩みをスタンに漏らしました。
あらすじ⑤富豪グリンドル
数日後。スタンはキンボールの妻フェリシア(メアリー・スティーンバージェン)にセッションを行い、リリスに教えてもらった『夫婦が1人息子を亡くした苦悩』が霊能力で分かったフリをしました。
調子に乗ったスタンは降霊術の真似事をして、夫妻が感動しそうな息子の霊からのメッセージを連発して狙った以上の謝礼金を得ました。
金を自宅に持ち帰れなかったスタンは、謝礼金をリリスの職場の金庫に預けました。
この頃から、スタンとリリスは愛人関係になります。
その後、スタンはキンボール判事を通して、街の権力者エズラ・グリンドル(リチャード・ジェンキンス)の個人セッションを依頼されました。
リリスは「グリンドルは疑り深いし怒らせると危険だからやめておけ」と忠告しますが、グリンドルがキンボールよりも金持ちだと知ったスタンは、迷わず依頼を受けてしまいます。
スタンはリリスから『グリンドルは十数年前に妻を亡くした』という情報を得て、彼女の遺品が入れられている金庫もチェックして、彼女が妊娠していたことを知りました。
当時の新聞記事に載っていたグリンドルの妻の絵はモリーにそっくりでした。
セッションの日が近づくと、スタンは極度の緊張から今まで絶対に飲もうとしなかったお酒を飲むようになります。
お酒を彼に勧めたのはリリスでした。
初めてのセッションの日、グリンドルはスタンをウソ発見器にかけるほどの用心深さを見せますが、スタンは上手く切り抜けてグリンドルを信用させました。
2度目のセッションで、グリンドルはスタンに「キンボールの時のように、妻も降霊してほしい」と言い出しました。
スタンは「出来ると思うが、時間もかかるし最悪出来ない場合もある」と逃げ道を作ろうとしますが、グリンドルは「成功してもしなくても毎回高額を払うから、成功するまで続けてほしい」と頼み込みました。
スタンは降霊トリックの方法に悩んだ末に、モリーに事情を説明して妻の幽霊役を頼みます。
スタンの気迫に負けたモリーは「準備に時間をかけさせてくれるならやる」と答え、グリンドルの妻の遺品や新聞記事を読み、入念に準備を始めました。
スタンはモリーの準備が出来るまで時間稼ぎしようとしますが、グリンドルはそれを見透かすかのように「早く降霊しろ。お前はペテン師か」と早くもプレッシャーをかけ始めます。
あらすじ⑥結末
プレッシャーに耐えかねたスタンはモリーに「明日決行する」と言いますが、モリーはまだ準備が整わず、そもそも霊能力詐欺には反対だったので翌朝逃亡を図りました。
スタンはモリーを駅で捕まえて懇願し「これで最後にする」と約束して、モリーをグリンドルの妻の霊園に連れてきました。
計画では、グリンドルの居場所から十数m離れた場所に妻の霊に変装したモリーが立ち、距離を保ったままスタンを通して霊的なやり取りをして、すぐに霊(モリー)は消えるというものでした。
しかし、本番では幽霊(モリー)を見たグリンドルは興奮して彼女に駆け寄って抱き着き、全て演出だとバレてしまいました。
焦ったスタンは、泣きながら怒り狂うグリンドルを殴り殺してしまいます。
スタンがグリンドルを殴っていた時、ラジオではキンボール夫妻が無理心中したニュースが流れていました。
騒ぎに気付いたグリンドルのボディガードのアンダーソンが現れると、スタンは彼も車で轢き殺してモリーを連れて逃走しました。
車を止めた後、スタンに愛想を尽かしたモリーは去っていきました。
逃亡することにしたスタンは預けていたお金を取りに行くと、リリスはすんなりお金を渡しますが、よく見ると100ドル紙幣の札束が1枚目から下は全て1ドル紙幣にすり替えられていました。
乱闘の末にスタンはリリスも殺しかけますが、警備員が来たので無一文のまま逃走することになりました。
その後、逃亡生活中のスタンが見る夢で、冒頭の死体は彼の父親で、スタンが凍死させた過去が明らかになりました。
数か月後。各地を転々とするホームレスになり下がったスタンは、唯一大切にしていた父親の形見の時計もお酒のために手放すほどのアル中になり果てていました。
スタンは転々とした末に、ホートリーの一座の道具やテントが揃う場所にたどり着きますが、ホートリーが事務所代わりにしていたバンには知らない男が居ました。
その男は、ホートリーから商売道具を丸ごと譲り受けた新しい運営者で、似たような移動式カーニバルがしたいと語ります。
バンの棚には、同じくホートリーからもらったという『エノク』が置かれていました。
スタンは「千里眼のショーが出来る」と言って雇ってもらおうとしますが、男は「それは興味無い。あんた、一時的にギーク役をやらないか?本物のギークが見つかるまでの間だけでいい」と言い、スタンにお酒を差し出しました。
これが自分の運命だと悟ったスタンは、覚悟を決めてお酒を受け取りました。
解説・考察
スタンが犯した罪とその理由
スタンは冒頭から死体を家ごと焼き払うなど怪しさ満点の主人公でしたが、話が進むにつれてどんどんクズっぷりを披露してくれました。
スタンは衝動的に殺人を犯し、犠牲になったのは皆初老の男性でした。
1人目はスタンの実の父、2人目は師匠のピート、3人目はクライアントのグリンドルで、スタンはピートとグリンドルとは親子に近い信頼関係を築きかけていた男性でした。
スタンが殺してしまった男性は3人ともスタンにとっては父同然の人物です。
恐らくスタンは実の父とは築けなかった親子関係に無意識の憧れや執着があり、ピートとグリンドルに拒絶された時に沸いた憎悪が父に対する憎悪と重なって憎しみが抑えきれず殺してしまったと思われます。
詳しくは以下の記事にまとめています。
リリスはなぜスタンを裏切った?
スタンと共犯関係になった心理学者リリス・リッター(ケイト・ブランシェット)の思惑は最後まで明かされなかったので行動理由に謎が多かったです。
リリスとグリンドルの発言などから推測すると、リリスはグリンドルの元愛人です。
胸の傷も、恐らくグリンドルにつけられたもので、リリスはグリンドルに復讐するチャンスをうかがっていました。
そこに現れたのがスタンで、リリスはスタンをショーで観察した結果、復讐に利用しようと考えて近づいたのです。
詳しくは以下の記事にまとめました。
以上です!読んでくださりありがとうございました。
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