『パンズ・ラビリンス』解説考察|3つの試練の意味、時計、ペイルマン、マンドラゴラなど | 映画の解説考察ブログ

『パンズ・ラビリンス』解説考察|3つの試練の意味、時計、ペイルマン、マンドラゴラなど

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パンズ・ラビリンス ダークファンタジー

映画『パンズ・ラビリンス』の解説・考察をしています!
3つの試練とオフェリアの心理、大尉と時計の関係などについて書いています。

鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

パンズ・ラビリンス

制作年:2006年
本編時間:119分
制作国:メキシコ/スペイン/アメリカ
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
この映画はPG-12の年齢制限があります。
残酷な殺傷描写があるためです。

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キャスト紹介

パンズ・ラビリンス
©2006 ESTUDIOS PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ
オフェリアイバナ・バケロ
スペインの森の中にある屋敷に引っ越してきた女の子。
新しく住む屋敷で守護神パンや妖精と不思議な体験をする。

 

パンズ・ラビリンス
©2006 ESTUDIOS PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ
守護神パンダグ・ジョーンズ
オフェリアがお屋敷の庭で出会った不気味な神様。
オフェリアを魔法の国のお姫様の生まれ変わりだと言い、魔法の国に行くための試練を出す。

 

カルメン(オフェリアの母)…アリアドナ・ヒル
ビダル大尉(オフェリアの新しい父)…セルジ・ロペス
メルセデス(メイド)…マリベル・ベルドゥ
フェレイロ医師…アレックス・アングロ
ペドロ(メルセデスの弟)…ロジェール・カサマジョール
ガルセス(ビダルの部下)…マノロ・ソロ
セラーノ(〃)…セザール・ベア
吃音の男…イヴァン・マサゲ ほか

 

あらすじ紹介

舞台は1944年のスペインです。
主人公の女の子オフェリアは父親をスペイン内戦で亡くし、母カルメンの再婚で森の中のお屋敷に引っ越します。
屋敷に向かう途中、オフェリアは不思議な石像と、石像の口から大きなナナフシが出てくるのを見て何だか楽しくなりました。

屋敷に着くと、オフェリアはカルメンの再婚相手ビダル大尉に初めて会いますが、ファシスト党のビダルは冷酷で高圧的で、オフェリアはビダルもこの屋敷も好きになれそうにありませんでした。

その日の夜。オフェリアの寝室に昼間のナナフシが現れて、可愛らしい妖精に姿を変えました。
オフェリアは妖精につれられて庭にある石壁に囲まれた迷宮に入り、守護神パンと名乗るヤギの魔人と出会いました。
パンは「あなたは魔法王国の王女モアナ様の生まれ変わりだ 肩にあるアザがその証拠だ」と言います。
たしかにオフェリアには生まれつき肩に三日月型のアザがありました。

パンは「あなたを我々の魔法の国に招待したいが、その前に3つのテストを受けてもらう。あなたがただの人間になっていなければクリアできる テストの内容は本に書かれている」と言い、オフェリアに本を渡して消えました。

オフェリアは魔法の国に連れていってもらうため、3つのテストに挑みます。




解説・考察・感想など

この映画を初めて見たのは22~23歳の頃だったと思いますが、美しさとグロテスクさに衝撃を受けたのをよく覚えています。
私はダークファンタジーが好きかもしれないと感じた瞬間でもありました。
人にはあまりオススメしませんが、個人的には大好きな映画のひとつです。

今回ひさしぶりに鑑賞したので、思ったことや感じたことを書いていきます。

時代背景

この映画の舞台は1944年のスペインで、『内戦』という言葉が何度か登場します。
筆者は歴史にうといので調べたところ、スペインでは1936年〜1939年に大規模な内戦が起きていて、簡潔には共産党派のスペイン政府にファシスト派の反政府組織が攻撃を仕掛け、ファシスト派が勝利しました。
この内戦は直後に起きる第二次世界大戦の大規模化に一役買っています。
1939年に内戦の決着自体は付いていたものの、まだ各地で小規模の内戦は続いていました。

ビダル大尉が森でウサギを狩っていた農民親子を共産党員と間違えて殺してしまうシーンや、召使いのメルセデスや医師が共産党派のスパイであり、共産党の残党がビダル大尉グループを攻撃しようとしているのも内戦の続きであり、戦争が本当の意味では終わっていないことを意味します。

またオフェリアの実の父親は内戦で亡くなっています。
つまり、ビダル大尉はオフェリアの実の父親の仇と言えます。
オフェリアがカルメンに「なぜ再婚したの?」と聞くのは「なぜお父さんを殺した側の人と結婚したのか」という意味もあったのかもしれません。

カルメンの再婚は心無くも見えますが、最悪な治安の中で娘のために少しでも安定した生活を送るには、ファシスト軍人と結婚するしか彼女には選択肢がなかったのです。
ビダル大尉に嫌われないように必死なカルメンの様子は見ていて苦しくなります。

主人公オフェリアや母カルメン、召使いメルセデスからは女性、子どもの社会的立場の弱さや、当時は社会的弱者は心を殺さなければ生きられなかったということがよくわかります。

 

石像から出てきたナナフシ

オフェリアがビダル大尉の屋敷に来る途中、石像の口から巨大なナナフシが出てきました。
オフェリアにはこの時からすでにこのナナフシが妖精に見えていたようですが、調べてみるとナナフシには『虫の知らせ』の類の言い伝えがあったので残しておきます。
偶然ナナフシを見かけた時は『(良くも悪くも)何かが起こる前触れ』という意味があるようです。




牧羊神パンのモデル

牧羊神パンのモデルは、ギリシャ神話に登場する牧羊の神様パーンです。
パーンは気まぐれで好色で、突然周囲に混乱と恐怖をもたらし『パニック(panic)』という言葉の語源になったとされるなんとなく怖い神様で、悪魔的な一面があることから不気味な印象の銅像や絵画が多く存在します。

オフェリアを妄想の世界(死の世界)に導く案内人にはぴったりです。

 

1つ目の試練:大木の中のカエル

パンズ・ラビリンス

©2006 ESTUDIOS PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

オフェリアがパンから与えられた試練には、彼女の心理状態が反映されていたと考えながら試練の内容を見ていきます。

1つ目の試練は、枯れかけている大木の中に棲む巨大ガエルを倒し、次の試練に必要なカギを手に入れることでした。
大木の中に入ったオフェリアは、木の中でぬくぬくと過ごすカエルを見て「木が死にそうなのに太ってるなんて、恥ずかしくないの?」と問いかけます。
このカエル討伐の試練には、カルメンのお腹にいる子どもに対するオフェリアの気持ちが反映されています。
大木=母カルメン、巨大カエル=お腹にいる子どもです。

オフェリアは心のどこかで「お腹に子どもがいなければ母は元気だったに違いない」と思い、弟を憎らしく思っているのです。
新しく生まれる子に母の愛情を奪われるかもしれない危機感も混ざっていたのではないでしょうか。
カエルが吐き出した臓器のような物体もどこか『中に赤ちゃんが入っている子宮』のように見えて、オフェリアが抱く『赤ちゃんへの恐怖』が具現化していたように見えました。

 

次のページに続きます!

2ページ目は『ペイルマン』『3爪の試練』『ビダルと時計』です。




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