映画「わたしを離さないで」の解説・考察をしています!
「ヘールシャムがなくなった理由」「キャシーの猶予申請にルースが怒った理由」「伝えたいテーマとは?」について書いてます。
鑑賞済みの方のための考察記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。
制作年:2010年
本編時間:105分
制作国:イギリス
監督:マーク・ロマネク
脚本:アレックス・ガーランド
製作総指揮:アレックス・ガーランド、カズオ・イシグロ、テッサ・ロス
原作小説:カズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』
出演者:キャリー・マリガン(キャシー)、アンドリュー・ガー・フィールド(トミー)、キーラ・ナイトレイ(ルース)、シャーロット・ランプリング(エミリー)、サリー・ホーキンス(ルーシー) ほか
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解説、考察や感想など。
医療に利用されるクローンたちが少しでも生きる希望を見出すために、根も葉もない噂や言い伝えなどを信じ、翻弄されてしまう悲しい話でした。
個人的に気になったシーンを考察します。
ヘールシャムがなくなった理由は?
キャシーたちがヘールシャムから出てすぐに施設は閉鎖されています。
施設長のエミリーは、ある日の集会で
「私たちを排除しようとする勢力と戦うのは容易ではありません。
彼らは根拠のない価値観と固定観念を尊ぶのです。でも、私は屈しません」
と発言しています。
つまり、この頃からすでにヘールシャムの存続は危うかったのです。
また、エミリーはヘールシャムを『臓器提供の倫理を実践する最後の場』とも話していました。
エミリーはクローンも人間であることを証明するために、
ヘールシャムの子どもたちに芸術作品を作らせて
クローン医療を利用する『本物の人間』に見てもらう活動をしていたのです。
芸術作品を見るためにヘールシャムによく来ていたマダムは、先生たち「本物の人間」とは普通に接しますが、
クローンの子どもたちとは目を合わそうとせず触れることも嫌がりました。
恐らくマダムはエミリーの活動(クローンを人間と世間に認めさせること)に抵抗をかんじながらも、なにか理由があってマダムに協力していたと思われます。
しかし、施設が閉鎖されキャシーたちが大人になってもクローンへの待遇が改善されていないのを見ると、エミリーの活動は失敗に終わったのでしょう。
キャシーとトミーが猶予申請のお願いをしたとき、エミリーは2人にこう話していました。
「誰かがこう聞いた
『また昔のようにガンや神経性疾患で苦しみたい?』
答えは『ノー』よ」
人類は、クローンから臓器を得ることでガンや神経性疾患を克服しました。
クローン医療という臓器提供システムがなくなれば、
人類はふたたび臓器移植が必要な病気や怪我などになったとき、
いつ現れるかわからないドナーを待ち続けることになります。
クローンも魂のある本物と同じ人間だと認めてしまえば
クローンに人権を与えることになり、
クローン技術を生み出した意味すらなくなってしまいます。
なので自然とエミリーたちの活動は排除されていき、
ヘールシャムは閉鎖に追い込まれてしまいました。
ルースが猶予申請に行くキャシーを喜べなかった理由
キャシーがトミーと猶予申請しに行くことをルースに伝えたとき、
ルースはニコリともせず、ただキャシーの報告を受け流しました。
ルースが2人に猶予申請することを勧めたのは本心からだったはずで、
キャシーとトミーに幸せになって欲しい、許してほしいと思ってしたことです。
ですがキャシーが報告したとき、ルースは3回目の提供手術を直前に控えて死が目前に迫っていたのです。
心から愛する人がいて、猶予制度で将来に少なからず希望があるキャシーと、
すでに臓器を2つ取られて死を待つばかりのルース。
ルースはキャシーと自分の状況を比較してしまい、あの時は素直に喜べなかったのでしょう。
「わたしを離さないで」が伝えたいテーマとは?
本作は救いようのない後味の悪い作品と言えますが、その裏にはキャシーがラストシーンで話していた”生きるとは何か?””魂とは何か?”を考えさせられる作品になっています。
人々の価値観は、時代の移り変わりによって変化していきます。
現代では、生きることに特別なテーマや目的を付けがちで
死を意識する場面や、衣食住や周囲の人に心から感謝するような場面は
特に若い頃はないことが多い時代です。
本作は恋愛や友情やその他の経験、それにともなう感情すべてを体験し、
学ぶのが人間であり生きることだと伝えているように感じました。
人との関わりの大切さを再確認してもらうことも、この作品のテーマだと思います。
しかしストーリーが残酷すぎて伝えたいテーマが薄れてしまいそう…と感じたのは私だけではないと思います。
それでも鬱映画が嫌いではない私にとっては、わりとグッとくる映画でした。
以上です。読んでいただきありがとうございました。
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