映画『孤狼の血』ネタバレ解説|上早稲、大上の死の真相、嵯峨の目的、美人局の理由など考察 | 映画の解説考察ブログ

映画『孤狼の血』ネタバレ解説|上早稲、大上の死の真相、嵯峨の目的、美人局の理由など考察

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クライムドラマ

映画『孤狼の血』の解説・考察をしています!

昭和63年、広島の架空都市『呉原市』で、凶悪なヤクザを飼いならそうとするマル暴の刑事 大上と、新人刑事の日岡の絆を描く物語。

 

孤狼の血

制作年:2018年
本編時間:126分
制作国:日本
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
原作小説:柚月裕子 著『孤狼の血

本作はR-15の年齢制限があります。
刺激の強い殺傷流血描写がみられるためです。(映倫参照)

 

主要人物紹介


©2018「孤狼の血」製作委員会
大上章吾役所広司
広島県警呉原東署の組織犯罪対策部、通称『マル暴』所属のベテラン刑事。
違法捜査も厭わずヤクザ顔負けの風貌だが、上司や同僚は理解を示す。
暴力団の尾谷組と加古村組の均衡を長年保ってきたが、尾谷組に肩入れする傾向があり「尾谷の犬」と揶揄される。
呉原金融の上早稲二郎の失踪に暴力団が絡んでいるとみて捜査を始める。

 

孤狼の血
©2018「孤狼の血」製作委員会
日岡秀一松坂桃李
4月に広島県警本部から呉原東署に出向になり、大上の相棒に就いた新人刑事。
広島大学卒のため、大上に「広大ひろだい」というあだ名を付けられた。
署内では「なにか問題を起こして移動させられた」と囁かれるが、実は県警から派遣されている大上の内偵役(スパイ)。
14年前に起きた暴力団組員絡みの殺人事件に大上が関与していると見て証拠を探す。

 

警察関係者
友竹啓二係長…矢島健一
土井秀雄主任…田口トモロヲ
嵯峨大輔(県警の監察官。日高の上司)…滝藤賢一
岩本恒夫(警視長、嵯峨の上司)…井上肇
菊池(呉原東署のマル暴)…さいねい龍二

五十子会(仁正会傘下)
五十子正平(会長)…石橋蓮司
吉原圭輔(幹部)…中山峻
金村安則(元幹部、14年前に死亡)…黒石高大
加古村組(五十子会傘下)
加古村猛(組長)…嶋田久作
野崎康介(若頭)…竹野内豊
吉田滋(構成員)…音尾琢真
苗代広行(構成員)…勝矢

尾谷組
尾谷憲次(組長)…伊吹吾郎
一ノ瀬守孝(若頭)…江口洋介
永川恭二(若手構成員)…中村倫也
柳田タカシ(若手構成員、里佳子の恋人)…田中偉登
賽本友保(元幹部、14年前死亡)…ウダタカキ

その他一般人など
上早稲うえわせ二郎(呉原金融の経理係)…駿河太郎
高木里佳子(クラブ梨子のママ)…真木よう子
瀧井銀次(大上の友人、右翼団体の代表、仁正会の傘下)…ピエール瀧
高坂隆文(安芸新聞記者)…中村獅童
岡田桃子(薬剤師)…阿部純子
善田新輔(養豚場)…九十九一
善田大輝(新輔の息子)…岩永ジョーイ
上早稲潤子(二郎の妹)…MEGUMI
瀧井洋子(銀次の妻)…町田マリー ほか

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あらすじ紹介

尾谷組 VS 五十子会&加古村組の過去

物語の始まりは舞台となる昭和63年から14年前に遡ります。
広島市に拠点を置く巨大暴力団組織『五十子いらこ』が、呉原市に根を張る暴力団組織『尾谷おだに』に抗争を仕掛け、『第三次広島戦争』とも呼ばれる暴力団同士の大抗争が起こりました。
ちなみに呉原市は実在しない架空の市です。

この抗争で五十子会の幹部だった金村安則が死に、尾谷組も構成員のほとんどを失った上に組長の尾谷憲次(伊吹吾郎)が逮捕され、痛み分けのような形で幕を閉じました。

上早稲二郎の失踪が発覚

第三次広島大戦から14年後の昭和63年8月。
尾谷組長の出所の日が近づく中、加古村組のフロント企業である呉原金融の経理係 上早稲二郎うえわせじろう(駿河太郎)が4月から失踪していたことが発覚しました。

フロント企業とは…裏で暴力団に資金提供していたり、暴力団の人間が経営に関わっている会社のこと。
呉原金融の親会社の経営には五十子正平が関わっていて、上早稲は加古村組に資金提供もしていました。

マル暴刑事の大上章吾おおがみしょうご(役所広司)は暴力団が絡んでいると見て、この4月に広島県警から来た新人刑事の日岡秀一(松坂桃李)を連れて捜査を始めます。

大上は聞き込みをした加古村組の構成員苗代広行の態度から、上早稲は加古村組が殺したと予測します。
苗代はその後、数名の加古村組若手構成員と共に姿をくらましました。

 

尾谷組と加古村組の現在と抗争の激化

14年前の抗争後、大上の尽力もあってそれなりの平和が続いてきましたが、五十子会は尾谷組長が出所する前に尾谷組の残党の壊滅を企て、五十子会の下部組織『加古村かこむら』を使って尾谷組のシマ(縄張り)を荒らし始めます。
反発した尾谷組の若手永川恭二(中村倫也)が加古村組の若手とやり合い、2組の間に緊張が走りました。

大上は尾谷組の若頭一ノ瀬守孝(江口洋介)に「今やり合ってもお前達が負ける。加古村組を抑えるプランはあるから、絶対に手出しするな」と警告すると、一ノ瀬は不満気ながらも同意しました。

しかしそのすぐ後、クラブ梨子のママ高木里佳子の恋人(愛人?)で、尾高組の若手構成員タカシが銃殺されました。
タカシは里佳子に手を出そうとした加古村組の吉田滋(音尾琢真)に我慢ならず、襲撃して返り討ちにあっていました。

さらに、事情を知らなかった日岡が、タカシの仇を討とうとした尾谷組の備前を銃刀法違反の現行犯で逮捕したことで、一ノ瀬の堪忍袋の緒が切れました。

大上は一ノ瀬から「3日待っても加古村組に変化が無ければ、わしらがやる」と宣告されます。

 

上早稲二郎の捜査

大上の友人で右翼団体『全日本祖国救済同盟』の代表 瀧井銀次(ピエール瀧)から「4月に連れ込み宿で加古村組が騒動を起こしていた」と証言を得た大上と日岡はその足で宿に行きますが「仁正会に話を通してからだ」と拒否されました。

広島仁正会ひろしまじんせいかいとは…五十子会や全日本祖国救済同盟など反社会組織を取りまとめている巨大組織です。
広島仁正会の親玉は登場しませんが、五十子正平(石橋蓮司)よりもさらに上が居ることを示唆していると思われます。

令状も無く困った大上は宿でボヤ騒ぎを起こし、受付の監視カメラの映像が入ったビデオテープを盗みました。
そのビデオには、姿をくらました加古村組の苗代ら4人が上早稲を拉致する様子が映っていました。
マル暴の刑事達はこの映像を証拠に令状を取り、翌日早朝に加古村組のアジトを家宅捜索しますが、幹部陣は不在、証拠も出ずで不発に終わりました。

大上は里佳子を使って加古村組の吉田滋をラブホテルに誘い込んで拷問し、上早稲が五十子の指示で殺されたと知りました。
その後、上早稲の拷問と殺害に使われた養豚場の経営者の息子 善田大輝(岩永ジョーイ)を麻薬使用で連行&拷問して上早稲を捨てた場所を吐かせました。

上早稲の遺体は広島県付近の無人島に埋められていました。




日岡の正体


©2018「孤狼の血」製作委員会

日岡は県警の監察室から呉原東署に出向になった人物で、上司の嵯峨大輔(滝藤賢一)から大上の内偵(スパイ)の任務を任されていました。

14年前に五十子会の幹部 金村を殺したのは大上ではと疑いがあったからでした。
嵯峨は日岡に「大上が付けているという日記を持ってこい」と命じました。
その『日記』には大上の過去のすべてが記されているに違いなく、14年前のこともそこに書いてあるはずだそうです。

日岡は大上の違法捜査の過激さに我慢出来なくなると共に、大上は尾谷組の復讐を肩代わりしていると推測しました。
違法捜査の証拠を揃えて、大上がボヤ騒ぎを起こした後も、吉田を拷問した後も、嵯峨に早急な対応を訴えましたが、嵯峨は「大上の日記を持ってこい。処分はそれからだ」と命じるばかりでした。
日岡は嵯峨の対応に疑問を感じます。

また、日岡は大上に連れて行かれた薬局で出会った薬剤師の岡田桃子(阿部純子)と、その後何度か偶然出会った末に親密な関係になりました。

 

大上、捜査から外される

孤狼の血
©2018「孤狼の血」製作委員会

上早稲の遺体が見つかり、姿を消した苗代達4名を指名手配してこれからと言う時、大上は署長命令で捜査から外されて自宅謹慎を食らいました。

大上達が無人島に行っている間に、安芸新聞の記者の高坂(中村獅童)が署長に大上の不正の数々をリークして問題になったからです。

違法捜査は事実なので仕方ないですが、高坂のリーク内容には『吉田への拷問』も含まれていました。
吉田の拷問は大上、日岡、里佳子、姿をくらました吉田しか知らないため、高坂が知っているのは変です。
日岡は拷問を嵯峨には報告していたので、嵯峨がマスコミにリークしたと確信します。

一方で、尾谷組の一ノ瀬は大上が捜査から外されたと知って「約束はなくなった」と受取り、抗争の準備を始めます。
その後、尾谷組の若手構成員永川(中村倫也)が五十子会の幹部吉原中山峻を撃ちました。
吉原は腹に銃弾が貫通しましたが、致命傷には至りませんでした。

その後、永川は自ら出頭して逮捕されました。

 

抗争を防ごうとする大上

孤狼の血
(大上と五十子 ©2018「孤狼の血」製作委員会)

大上が指示通り自宅謹慎しているはずもなく、すぐに日岡と合流して吉原のお見舞いをしていた五十子会長に会い、上早稲殺しでの逮捕をちらつかせて「報復するな」と説得しました。

すると五十子は「祝い金1000万円、尾谷組長の引退と一ノ瀬を破門するなら目をつぶる」と言いました。
それは尾谷組の事実上解散を意味します。

大上は譲歩するように言いますが、五十子は「どっちかが潰れるまで戦争したって構わん」と譲りませんでした。

大上は仕方なく一ノ瀬に極道から足を洗うように説得しますが、一ノ瀬は「そんな条件飲めるか」と怒って立ち去ります。
大上は1人で尾谷組長がいる鳥取刑務所まで車を飛ばして尾谷に引退を促しますが、尾谷の答えは「一ノ瀬に従う」でした。

その日の夜に広島に戻ってきた大上は、日岡に「五十子は県警上層部と癒着している。そのネタでもう一度五十子をゆすりにいく」と告げました。
日岡は「こんなことを続けていたらいつか殺される。県警に14年前のことから洗いざらい打ち明けて協力を仰ぐべきだ」と詰め寄りますが、大上は「もう手遅れだ」と聞きませんでした。

その後、大上は「飲みに行こう」と日岡を誘いますが、日岡は大上の帰りを待つ間にお酒をたらふく飲んでしまったので、誘いを断って帰りました。

その後、大上は行方不明になり連絡が取れなくなりました。

 

結末※ネタバレ注意

3日後、苗代達が愛媛県に潜伏しているとわかり、逮捕されました。
立て続けに加古村組長と若頭の野崎が上早稲二郎殺害の罪で逮捕され、事件は片付きました。

まだ大上は姿を見せません。
日岡は嵯峨に大上の捜索協力を依頼しますが、嵯峨は「休暇じゃないのか?今のうちに大上の自宅にでも行って早く日記を持ってこい」と、日記しか興味がないようです。
この時に日岡と嵯峨との対立が決定的になりました。

手がかりを探してクラブ梨子に行った日岡は、ママの里佳子から「何かあったら日岡に渡せと言われてた」と言い、大上のノートを出しました。

それは嵯峨が欲しがっていた『大上の日記』ですが、中身は警察上層部による犯罪や不正行為をまとめたもので、14年前のことも大上自身のことも書かれていません。
それは『警察上層部は保身のためにそのノートを回収したかっただけ』ということを示唆していました。
その日記から、大上は日岡が嵯峨のスパイだということも知った上で黙認していたのもわかりました。

さらに里佳子から、14年前に金村を殺したのが里佳子だったことが暴かれました。
里佳子は14年前に尾谷組の構成員だった夫を金村に殺された上に肉体関係を求められ、激昂して気付いたら殺していたそうです。
その当時、里佳子は夫の子を妊娠していました。
駆け付けた大上は「刑務所で産ませられない」と言い、全て処理してくれたと語りました。

大上の友人だった瀧井とも話した日岡は、大上は一般市民の安全を常に第一に考えてきて、長年ヤクザを必死に飼いならし続けていたことを知り、そこに大上なりの正義を見ました。

翌日。大上が水死体で発見されました。
明らかに他殺なのに、署長は『不運な事故』で片付けてしまいます。
大上の腹部に10か所以上の刺し傷があったことも、胃に豚の糞が詰まっていたことも無視されました。

日岡は例の養豚場で、豚の糞まみれになっていた大上のジッポを発見します。
善田が大上殺害に加担したことを知り激昂した日岡は、善田を半殺しにしました。

日岡は大上の意思を受け継ぐ決意をし、瀧井銀次やマル暴の刑事達と共に大上の仇を討つことにしました。
毎年夏に開かれる県警上層部主催の『広島やっちゃれ会』には、五十子と瀧井が参加します。
日岡は瀧井の合図で、会場に尾谷組の一ノ瀬と数名の若手構成員を忍びこませ、一ノ瀬が五十子を殺すお膳立てをしました。
五十子殺しの罪は若手構成員が被る予定でしたが、日岡達は一ノ瀬を殺人の現行犯で逮捕し、五十子会と尾谷組に両成敗を下しました。

なお、尾谷組の壊滅には五十子と県警上層部が絡んでいたことも、やっちゃれ会での会話で発覚しました。

大上の葬式の日、日岡は嵯峨の罪も書き加えた大上の日記を嵯峨に渡しました。
嵯峨は「県警に戻してやる」と言いますが、日岡は呉原東署に残りたいと申し出ました。

何日か後。日岡は大上の墓参りに岡田桃子を見かけ、彼女が大上の差し金で日岡と関係を持っていたことを知りました。
大上は日岡にも得意の美人局を仕掛けていたのです。
桃子は大上にDV夫から救ってもらった過去があり、大上は恩人でした。
日岡は大上の用意周到さに笑った後、大上のジッポでたばこに火を点けました。

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解説、考察、感想など

タイトル『孤狼の血』

『孤狼の血』は、死んだ大上の正義の意志を、日岡が受け継ぐことを示唆したタイトルです。
『大上(おおがみ)』という名前も『狼(おおかみ)』を意識して付けられた名前なのでしょう。

大上の血を受け継いだ日岡が見れるのは自作のレベル2なので楽しみです!

上早稲二郎はなぜ殺された?


©2018「孤狼の血」製作委員会

上早稲は加古村組のフロント企業『呉原金融』の経理係でした。

彼は常日頃から加古村組の若頭 野崎を主導に搾取されていて、暴力に怯え要求されるまま金を渡していました。
野崎達は上早稲がちょっと脅すだけですぐに金を出すのを面白がり、上早稲に呉原金融の利益以上の金を要求しました。
上早稲は「これ以上は会社がつぶれてしまう」と言いますが、野崎達は脅しを止めません。
困り果てた上早稲は、呉原金融の本店ホワイト信金の金を着服して渡してしまいました。

ホワイト信金を経営していたのは五十子会長だったので、上早稲は五十子の金を盗んだことになります。
言い直すと五十子の金を上早稲に盗ませたのは野崎達です。

着服を知った五十子は、加古川組に上早稲を懲らしめるよう命じます。
野崎達は上早稲を豚小屋で拷問すると同時に、ホワイト信金の金が野崎達に流れたことは黙らせて拷問だけで済ませようとしますが、五十子は最終的に上早稲を殺すよう命じました。

野崎達は五十子の指示にためらいますが反論もできず、彼らの罪を全て上早稲に着せて殺してしまったということです。
五十子が真相に気付いていたかどうかは不明ですが、知った上であえて殺させて殺人という罪を彼らに負わせることで、暗に野崎達にお灸をすえたのかもしれません。
この事件の流れそのものに大上や瀧井が彼らを「ノータリンのヤクザ」と称する理由が表れています。

大上の目に映る炎

大上が連れ込み宿に放火した時、大上のサングラスに炎が映っていたのが印象的でした。
あの炎には、大上が抱く『正義感』が表れていたように見えました。

放火は犯罪なので、放火した炎で正義感ってわけわからん気もしますが、日本の法律も警察も信用していなかった大上は彼なりの正義を土台に動いていて、そこには日本が定めた法律は関係無いということを意味しているのでしょう。

宿が仁生会を盾にして大上に証拠を渡さなかったのも、簡単に証拠を渡してしまうと、後で仁生会にバレたときに責められるのが怖いからです。

大上は宿側が証拠を渡さない理由も『極道に対する恐怖』からだと知った上で、あえて証拠を盗みました。
大上が盗めば、後で仁生会にバレても怒りの矛先は大上で、宿の経営者たち(一般人)が責められることはないからです。

ちなみに連れ込み宿は和風のラブホテルのことです。

解説、考察は次のページです!

『大上が捜査を外された理由』、『大上の死の真相』、『日岡の美人局』などです。




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