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ダニー・ウィットワーの狙い
(引用:https://www.dailymail.co.uk)
司法省所属のウィットワー(コリン・ファレル)がナッシュ司法長官から受けていた指示は、犯罪予防システムの欠陥を探すことです。
犯罪予防局はバージェスが局を立ち上げ、どの省庁にも属さず独立して運用されていた機関です。
ナッシュはバージェスの大成功が気に入らず、隙あらば犯罪予防局を司法省の傘下に置きたいと考えていました。
そのためにシステムの問題を探し出して指摘し、別の機関による監視が必要だと訴えようと考えます。
しかし、犯罪予防システムは外からは完璧に見えるようにバージェスが入念な対策を行っていたので、外部調査だけでは欠陥を見つけられなかったのでしょう。
そこでナッシュは、出世欲に燃える賢い男ウィットワーに内部調査を命じます。
ウィットワーが現れた時期と、ジョンがアン・ライブリーに興味を持った時期がほぼ同時だったため、ジョンはプリコグが自分の犯罪を予知した時に『ウィットワーにハメられたに違いない』とミスリードします。
これはバージェスにとって嬉しい勘違いでした。
しかしよく考えてみると、ウィットワーは当時プリコグの予知を操れるほどシステムを熟知していなかったし、ジョンを辞職に追い込める決定的な弱み(麻薬)を知っていたので、そもそもジョンをはめる必要はなかったのです。
ウィットワーはバージェスが犯人の可能性は高いと考えていて、しかし証拠が無いので反応を見て確かめるためにバージェスをわざわざジョンの部屋に呼び出していた可能性が高いです。
恐らくですがウィットワーはバージェスが犯人と見込んで、最初から何らかの裏取引(真実を黙っている代わりに大きな昇進をさせてもらうなど)をしようと目論んでいたのではないでしょうか。
システムの欠陥とは?
外目には完璧に見えていたシステムでしたが、様々な問題を抱えています。
箇条書きにしてしまいますが、欠陥と欠陥に対する対応の変化を書いてみます。
・法を犯していない者を逮捕してしまう可能性が捨てきれない
→今まではシステムの完全性を強調することで運営してきたが、ジョンの事件とバージェスの自殺でシステムの完全性が崩れた。
2人は局内の人間で、自分の未来を事前に知ることが出来てしまったという特殊なケースではあるものの、100%完璧な未来予知は不可能であることや、未来は意思次第で変えられることを再認識するきっかけになった。
・プリコグの扱い
→明らかに彼らの人権を剥奪しているのに世界平和のために必要だと、局内の誰もプリコグの扱いについて疑問を持っていなかったこと自体が大きな問題。
ラマー・バージェスの目的と行動理由は?
(引用:https://movievillaindeaths.tumblr.com)
バージェスがアン・ライブリーを殺したのは、アガサの母親であるライブリーがアガサを取り戻すことを望んだからです。
アガサはプリコグの核となる最重要人物なのでバージェスとしてはどうしても手放したくないですが、法的にも実の母親であるライブリーの要望を止める手段はありません。
恐らくバージェスは最初にライブリーからアガサを買い取ろうとしたはずですが、ライブリーは拒否したため、バージェスは彼女を暗殺することにしたのでしょう。
そして浮浪者を雇いライブリーを殺すよう依頼して、浮浪者が逮捕された直後、バージェスは浮浪者と全く同じ格好をしてライブリーを保護するフリをして近づき殺害しました。
その後にバージェスがジョンを陥れて逮捕させようとしたのは、ジョンがライブリー事件に疑問を持ったからで、優秀な彼なら真実にたどり着くはずだからその前に始末してしまおうと考えたからです。
バージェスが最後に自殺したのは、名声が無いなら生きていても意味がないと判断したからです。
最後にジョンにかけた「許してくれ」という言葉は、ジョンを利用したことに少なからず負い目を感じていた(人間的な感情があった)からだと思っています。
原作小説との違い
原作は同タイトル、SF作家のフィリップ・K・ディックによる短編小説です。
映画の舞台背景は小説の設定そのままですが内容は結構違うので、比較はあまりせずにあらすじを紹介します。
できるだけ簡潔に書こうと思いつつ、複雑なため長くなってしまいました(__)
舞台は近未来のニューヨーク。
主人公のジョン・アンダートンは犯罪予防局の局長です。
ジョンは最近、次期局長として犯罪予防局に就任したウィットワーを疎ましく感じていました。
やがて『1週間後にジョン・アンダートンがレオポルド・カプランを殺す』という未来殺人報告があがり、ジョンは世間にも未来殺人容疑者として公表され指名手配されてしまいます。
ジョンとレオポルド・カプランという人物とは全くの赤の他人で殺す動機もないため、ジョンはウィットワーが局長就任を早めるために仕組んだ陰謀に違いないと思いますが、無実の証明の方法もわからず困惑します。
その日の夜、ジョンはカプランに呼び出されて直接話します。
この時、カプランは退役軍人だとわかりました。
ジョンは無実を訴えますが、カプランは「とにかく殺害予定日時を過ぎるまでどこかに身を隠して欲しい」と要求したので、ジョンは同意して話し合いは終わります。
カプランと別れた直後、ジョンは突然現れた謎の大男フレミングから新しい身分と1週間分の生活費をもらいました。
※フレミングが誰に雇われているのかこの時点では不明です。
その後、ジョンはじっとしていられずマイノリティ・リポートを確かめるために犯罪予防局に忍び込みます。
すると、当時プリコグ2名がジョンが殺人を犯す未来予知を見ていて、ジェリーというプリコグ1人がジョンが誰も殺さない未来を予知していたことがわかりました。
それからジョンはカプランが軍組織の中でもかなりの権力者だったことを知ると、カプランにマイノリティ・リポートを見せて殺意が無いことを信じてもらい、カプランから直接予防局に働きかけてもらってジョンの逮捕命令を取り下げてもらおうと計画します。
カプランの所に行こうとしていたジョンの前に妻リサが現れて、ジョンを高速艇(空飛ぶ小型船)に乗せました。
船の中でリサはジョンに銃を向けて「あなたは自首すべきよ」と言い、警察本部へ船を進めます。
そこに、船に忍び込んでいた謎の男フレミングが現れてリサを止めました。
この時フレミングはカプランに雇われていることが判明し、今回の件の黒幕はカプランだと教えてくれました。
カプランは予知システムの不完全性を証明する(ジョンがカプランを殺さないことで予知が完全ではないと証明する)ことで、軍や警察での権力を得ようと企んでいました。
つまりカプランは、ジョンが殺人を犯さない前提でこの計画を立てていて、ジョンがカプランの要求通り犯行予定日時を過ぎるまで身を隠していれば(逮捕されずにいれば)、カプランの計画通りになるはずだったのです。
フレミングの仕事はジョンをマイノリティ・リポートとウィットワーと逮捕から遠ざけるためでしたが、フレミングはジョンに同情して真相を教えてくれたようです。
ジョンは急いでウィットワーに会い「世間に公表された予知通りの未来にしなければ、予知システムの確実性を問題視されてシステムを存続できなくなる。
私は君に局長の座を譲って予知通りカプランを殺すから、君は私を他の惑星に逃がす手助けをしてくれ」と取引を持ち掛けます。
その後ジョンはカプランを殺害し、妻リサと共に地球から遠く離れた惑星に逃がしてもらい新しい生活を始めます。
(話の随所にリサとウィットワーの不倫関係が暗示されていて、リサはウィットワーとくっつくためにカプランの計画に乗じてジョンを逮捕させようとしていた可能性あり。)
その他、映画と小説のプリコグの違いについて紹介します。
映画でのアガサに相当するドナ(女プリコグ)は、実年齢45歳ですが体の発達が異常に遅く、見た目は10歳程度にしか見えないと書かれています。
男性プリコグのジェリーは24歳で、元々は水頭症の精神遅滞者でしたが6歳の頃に専門家が彼の予知能力を見出して政府運営の訓練学校に入学させたとあります。
3人目のプリコグについては名前の紹介だけです。
また、映画では麻薬中毒者の子どもがプリコグでしたが、小説では彼らの両親については触れられません。
彼らは極めて高い予知能力に恵まれた代わりに身体にも精神にも大きな疾患を抱えていて、ただただ予知夢を見てはその内容をつぶやきながら生きている、という風に描かれています。
映画ではプリコグらは神聖視されていましたが、小説の彼らは『ただ未来予知をし続けている障がい者』であり、彼らが居る場所は『モンキー・ブロック』と差別的な表現をされています。
プリコグたちの人格は成長することなく未発達のままで、自分たちが未来予知していることすら理解していないかのように描かれています。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
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感想などお気軽に(^^)
すごく時間が経ってしまっていてすみません。
最後の筆者様の質問に関してですが、私の拙い英語力で聴きとる限りでは、
「殺せ、さもなくばシステムは崩壊する」と言っているようです。
前後の文脈からしても、その時点ではジョンはシステムを信じ維持したいと思っているような台詞がある為、システム崩壊を回避したいなら予知通り殺すべき、という会話であると判断出来るかと思います。
博士が非常に電波な喋り方な為、混乱させられますが、字幕も混乱しているのかも知れませんね。
遅レスで大変失礼致しました。
名無し さん
作品の該当シーンを見返すのに時間がかかってしまい、返信が遅れました。すみません。。
回答くださって本当に助かりました!!
大変参考になったと同時に、私の英語力の無さが浮き彫りになってしまいお恥ずかしい限りです(笑)
質問は残しておく必要が無さそう(読んだ方まで混乱させてしまいそう)だったので削除しました。
本当にありがとうございました((*_ _)