映画『万引き家族』の長男 祥太(城桧吏)、治(リリー・フランキー)、信代(安藤サクラ)の行動理由などについて解説・考察しています。
鑑賞済みの方のための記事です。未鑑賞の方はネタバレにご注意ください。
本編時間:120分
制作国:日本
監督・脚本・原案:是枝裕和
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治と信代が祥太とリンを盗んだ理由
(ベランダに締め出されていたじゅり 引用:https://ameblo.jp)
常にお金に困っていたはずの治と信代が祥太とリンを盗んで育てていたのは、それほど2人が『親』になりたがっていたことを意味します。
また、子供を盗んだ理由は終盤で明かされる信代は子どもが欲しくても出来ない体だったことが大きな動機です。
2人は祥太とリンに「お父さん、お母さん」と呼んで欲しがっていたことから、子どもを欲しがっていた(親になりたかった)ことがわかります。
しかし、信代は子どもができない体なので自然に子どもを授かることはできません。
なので、虐待されている子が可哀想と思う以前にふたりが切望する子どもを当然のように持っているのに、大切にしない親が許せなかったのが、あえて盗んだ動機ではないでしょうか。
また、治と信代の過去は犯罪歴以外明かされませんが、信代は辛い幼少時代だったことが発言から仄めかされています。
家に帰ってこない祥太をけなげに玄関で待つリンを見た信代は「『生まなきゃ良かった』って言われて育つと、ああはならないよね。あんなに優しくなんかなれないんだよ」と言います。
恐らく信代(ユウコ)は親にそういうことを言われて育ってきたと想像できます。
また、信代はリンの実母の「産みたくて産んだんじゃない」という発言に対する怒りからリンを保護しようと決意したんだな、と納得がいきます。
また、刑事に「(子どもがいる人が)羨ましかった?だから誘拐したの?」と聞かれた信代は「母親が憎かったかもね」とも答えています。
信代は特に『母親』への執着が強く、同時に子どもにちゃんと愛情を与えられる親になりたいと考えていることが伺えます。
信代は、信代が切望している『子ども』を当たり前のように持っているのに、その子を虐待する母親に対する憎しみが強いです。
子どもを盗んだのは、『子どもが欲しかった』、『虐待されていた子を守るため』というのももちろんですが、子どもを奪うことで母親に報復してやりたい、子どもの大切さをわからせてやりたいというのが一番大きな理由だったのではないでしょうか。
しかし、子どもを奪われた当人であるリンの母親は、リンが戻ってきた後もリンへの虐待をやめないので、信代の思い知らせてやりたいという目的は果たされていません。
ユリに万引きを手伝わせて祥太が不機嫌だったのはなぜ?
治が万引きをユリに手伝わせた事に対して、祥太は「こいつ(ユリ)は妹じゃない」「男だけの方が楽しい」などと言って不機嫌になります。
祥太は恐らく治とふたりだけの時間にユリが入ってくるのが嫌だったのです。
治とふたりで出かけている時間が、祥太にとっては本物の親子のように感じられ、治に仕事(万引き)を褒められることが承認欲求を満たしてくれる貴重な時間だったのではないでしょうか。
祥太は治と信代が本当の両親ではないことは知らされていますが、治は特に祥太から「お父さん」と呼ばれることを望んでいます。
(治をお父さんと呼ぶように催促するシーンが何度かあります)
祥太自身は生みの親ではない治と信代との付き合い方に悩みながらも、祥太自身も気付かないうちに親子の信頼関係は出来上がっていたのだと思います。
ちなみに、祥太がたまに遊んでいた円盤状のものは『ディスクグラインダー』という、ガラスや石などを削る工具だそうです。
作中では祥太はガラスを削っていましたね。
これは恐らく、治が職場の工事現場からくすねて祥太に与えたものです。
祥太からすれば、「父ちゃん」がくれた数少ないおもちゃの1つだったのかもしれません。
治が祥太に自分の本名を付けた理由
刑事が治に「なぜショウタと名付けた?自分の本名だろう」と聞いたとき、治は口ごもったまま答えませんでした。
治が祥太に自分の本名でもある「しょうた」という名前を付けた理由は、親が子どもに自分が成りたかった職業や大学に行ってほしいと願うことと通じる理由ではないでしょうか。
治は仕事で行った建築中の一戸建ての中で「ただいま~」と呟いてみたり、外でサッカーをしている親子を眺めた後に「祥太~、父ちゃんカッコイイ!」と呟いたりしていたことから、普通の家庭や「父親と息子の絆」への憧れがあることがわかります。
しかし、治には殺人の前科があるため夢を諦めて、普通の人生を送りたかったという願いを、祥太に自分と同じ名前を付けることで託したように見えました。
また、祥太を分身のように思い、祥太が父(治自身)と交流する姿を見て父親としての理想も、治自身の子ども時代の理想も同時に叶えていたようにも見えます。
普通の家庭を築いてほしいなら万引きなんて教えるなよ、と思いますが、「教えてあげられることが万引きしかなかった、でも少しでも親らしく、何かを子どもに教えたかった」と治自身が語っています。
治は信代と違ってあまり後先を考えられないタイプなので、この答えは治らしいのかなとも思います。
「おじさんに戻る」治、バス停のシーン
事件が発覚して、法的な罪は全て信代が被ることになりました。
治は久しぶりに祥太と再会し、治が1人暮らしを始めたアパートで一泊させます。
その際、治は祥太に「父ちゃんからおじさんに戻る」と涙ながらに告げ、祥太はただ「うん」と答えました。
治は久しぶりに再会した祥太と一緒に釣りをしたとき、祥太が賢い子どもだったことに今更気付きました。
信代も祥太に本当の親に繋がるヒントを伝えていることから、治は「祥太と親子ごっこを続けるのは無理だ」と悟ります。
祥太の賢さに気付いた時、治は「もう自分が教えてあげられることは何もない」と身に染みたのではないでしょうか。
治と信代は本当は病院にいた祥太を迎えに行く(連れ去る)つもりでいましたが、祥太に「僕を置いて逃げようとしたって本当?」と聞かれたときは「うん、ごめん」と答えました。
これは恐らく祥太と未練なく別れられるように、嫌われようとしてあえて嘘をついたのです。
祥太はバスに乗って治が見えなくなった後に振り返って「お父さん」と誰にも聞こえない声でつぶやきます。
祥太は治と信代の愛情をわかっていましたが、一方で、賢さゆえに治と信代のモラルの低さに気付いてしまいました。
わざと治に冷たくしたのは、彼自身が気持ちを切り替えるためだったのではないかと感じました。
治と信代と別れるのはつらいですが、祥太は今までのように閉じこもっているよりも施設や学校などの社会を通して将来の夢を探したり、友達を作ったり、自ら道を切り開いていく生活の方がずっと心地良いはずです。
治、信代、祥太についての解説考察は以上です。
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