映画『シン・仮面ライダー』解説考察|ハビタット世界の問題点、創設者の求めた幸福とは? | 映画の解説考察ブログ

映画『シン・仮面ライダー』解説考察|ハビタット世界の問題点、創設者の求めた幸福とは?

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シン・仮面ライダー アクション

庵野秀明監督「シン・仮面ライダー」の解説・考察をしています!
『創設者の求める幸福とは?』『パリハライズとは』『ハビタット計画の問題点』『怪人たちの目的』など書いています。

仮面ライダーシリーズを見たのはこの映画がほぼ初めてでしたが、話の流れはわかりやすかったので初心者で前知識が無くても楽しめました!
ただ説明台詞の言い回しが小難しくて、字幕ありで見れたのがかなり助かりました。

鑑賞済みの方向けの記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。

シン・仮面ライダー

制作年:2023年
本編時間:120分
制作国:日本
監督・脚本:庵野秀明
原案:「仮面ライダー」シリーズ 石ノ森章太郎

この映画はPG12の年齢制限があります。
殺傷流血の描写がみられるためです。(映倫より一部抜粋)

キャスト・あらすじ紹介

キャスト紹介

本郷 猛 / 仮面ライダー池松壮亮
悪の組織ショッカーに拉致され『昆虫合成型オーグメンテーションプログラム』によりバッタの改造人間(バッタオーグ)にされた青年。
ショッカーの破壊を望むドクター緑川弘の意思を受け、「仮面ライダー」と名乗りショッカー幹部陣に立ち向かう。

緑川 ルリ子浜辺美波
ショッカー施設の人口子宮から生まれた緑川弘の娘。
父と一緒に本郷をショッカーから脱出させた。
体内に電算機(=パソコン)の機能を装備されており『用意周到』を自称するほど計画的に行動する。

一文字 隼人 / 仮面ライダー第2号柄本佑
ショッカーが作り出したもう1人のバッタオーグ。
ルリ子が洗脳を解くと『仮面ライダー第2号』と名乗り本郷の仲間になる。

緑川 一郎 / 仮面ライダー0号森山未來
蝶々の改造人間チョウオーグ、ルリ子の兄。
全世界の人間から肉体を奪いハビタット世界と呼ばれる異世界に連れていく計画を立てている。

K(ケイ)…cv松坂桃李
クモオーグ…cv大森南朋
コウモリオーグ…手塚トオル
サソリオーグ…長澤まさみ
ハチオーグ(ヒロミ)…西野七瀬
KKオーグ…本郷奏多
ショッカー創設者…松尾スズキ
立花(政府の男)…竹野内豊
滝(政府の男)…斎藤工
本郷猛の父…仲村トオル
本郷の父を殺した男…安田顕
緑川ショウ子(一郎の母)…市川美日子
ハチオーグの部下…上杉柊平

 

あらすじ

この世界にはショッカーという巨大な悪の組織が存在します。
ショッカーは人類の幸福のために創設された研究機関ですが、創設者は深く絶望している人間の望みを実現することが人類の幸福に繋がるという考えを持っていたため、非常に独善的で危険な組織に成長しています。

オートバイ好きの青年 本郷猛(池松壮亮)はショッカーに拉致されて「昆虫合成型オーグメントプログラム」によりバッタと人間のハイブリッド「バッタオーグ」に改造されてしまいました。

手術の直後、本郷は朦朧としたまま緑川ルリ子(浜辺美波)という女性に連れられてショッカーから脱出し、追いかけてきたショッカー構成員をなぎ倒します。

隠れ家に避難した本郷は自身が改造されていることに気付き、混乱して説明を求めると、本郷を改造した医師でありルリ子の父でもある緑川弘が現れました。

緑川医師はショッカーに所属していましたが、研究に携わるうちにその危険性に気付き、ショッカーを倒すために本郷をバッタオーグに改造したと語りました。

やがてクモオーグに隠れ家が見つかってしまい、緑川医師は殺されてしまいました。

残された本郷とルリ子は緑川の意思を受け継ぎ、ショッカーと戦うことを決意します。

 

解説、考察や感想など

ショッカー創設者の求める幸福とは?

シン・仮面ライダー

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

ショッカー創設者の男(松尾スズキ)はどのような思想を持っていたのか整理します。

大富豪だった創設者の男は日本の科学力を集結して最先端の人工知能『アイ』を作り、数年後に自殺しました。

ルリ子はショッカーの成り立ちについて
「創設者は最大多数の最大幸福を人類の幸福とは設定せず、最も深い絶望を抱えた人間を救済する行動モデルが人類の目指すべき幸せだと設定した」と語ります。

最大多数の最大幸福』はイギリスの哲学者・法学者のジェレミー・ベンサムが唱えた功利主義的道徳観の基礎原理で、多数決など最も多くの人が幸せになる行動をとることを善とする価値観です。

創設者はそういう一般的な幸福追求を無視して「深い絶望を 人間はいかに克服すれば幸せになれるのか それを知りたい」とアイとジェイに語っています。

その結果、人類絶滅願望、人類征服願望など非常に偏った思想を持つ人物がアイに選ばれて特別な力を与えられてしまいました。

恐らく創設者自身が深い絶望を抱えていて、克服方法を知ることがアイを作った理由でもあったのでしょうが、創設者本人が自殺してしまった所を見ると、アイが出した答えは創設者が望んだ魔法のような答えではなかったのではないでしょうか。

アイは一見 健気に創設者の意思を遂行しているように見えますが、一通り人類について勉強したあとは外の世界の観測をケイに任せてアイ自身は引きこもってしまうあたりを見ると、
アイは人類について調べた結果、徹底的に管理するか絶滅するかどちらかにした方が良いという結論に至り、似たような思想を持っていたのが たまたま創設者の言う「深い絶望を抱えた人たち(怪人たち)」だったのではないかと推測しています。




クモオーグの役目と幸福

シン・仮面ライダー

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

蜘蛛オーグのモデルは1971年に放送開始したテレビドラマ「仮面ライダー」第1話に登場する怪人「蜘蛛男」です。
プレデターをヒーロー化したようなフォルムでかっこよかったです。
クモオーグの役目は緑川弘やルリ子のような、ショッカーに対する裏切り行為を行った元構成員に制裁を加えることでした。

蜘蛛オーグは人間嫌いで、怪人になり人間ではなくなった上に人間を超える力を得られたことを誇りに思っていて、人間を殺すことで幸福感を得る人物でした。

人間殺しで幸福を感じるクモオーグにとって、組織の裏切り者を暗殺することは最高の仕事だったのでしょう。

ちなみに怪人は全員 裏切り防止のためにプラーナを応用した洗脳術で洗脳されていて、洗脳されると絶望感が多幸感に変わるため危険な思想にも磨きがかかってしまっているようです。
本郷猛は洗脳される前にルリ子と緑川弘が施設から逃がされています。

 

コウモリオーグの目的

シン・仮面ライダー

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

コウモリオーグのモデルは1971年のドラマ「仮面ライダー」第2話に登場する怪人「蝙蝠男」です。
コウモリオーグをもし子どものときに見ていたらトラウマになっていただろうなと思うくらい飛び方が気持ち悪くてよかったです。

コウモリオーグはショッカーの科学力で開発した新ウィルスのバットヴィールスを全人類に感染させて人間を支配することが目的でした。
人類をバットヴィールスに感染させて支配することで増えすぎた人口を減らし、選ばれた人間とその遺伝子だけを残していくという計画だったようです。

ルリ子は事前にウィルスの血清を作っていたため感染せず、コウモリオーグは仮面ライダーに倒されました。

 

サソリオーグの目的

シン・仮面ライダー

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

サソリオーグのモデルは1971年のドラマ「仮面ライダー」第3話に登場する怪人「さそり男」です。

サソリオーグは世直しと称し、大量生産した毒薬を使って大量殺人をはたらこうとしていましたが、アンチショッカー同盟の立花のチームに奇襲をかけられて倒されました。

この後サソリオーグの毒はハチオーグの退治に利用されました。

 

ハチオーグ(ヒロミ)の目的

シン・仮面ライダー

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

ハチオーグのモデルは1971年のドラマ「仮面ライダー」第8話に登場する怪人「蜂女」です。

ハチオーグは「社会にも自然にもストレスをかけない効率的な奴隷制度による統制された世界システムの再構築」が目的でした。
本郷とルリ子がハチオーグに会うために訪れた町はすでにハチオーグのテストタウンにされており、町の人々はハチオーグに従う奴隷になっていました。

ハチオーグ(本名:ヒロミ)はルリ子と一緒にショッカー内で生まれ育った幼馴染みでもあったようです。
ヒロミの「ルリルリを泣かせたい」などの発言は彼女なりのルリ子に対する歪んだ愛情表現でもあり、「殺してほしかった」のセリフには、ヒロミ自身が洗脳されていると自覚していたものの、洗脳から解放されるには死ぬしかないと思っていたことの表れだったのかなと感じました。




KKオーグ(カマキリ・カメレオンオーグ)

シン・仮面ライダー

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

ハチオーグのモデルは1971年のドラマ「仮面ライダー」第5話と第6話に登場する怪人『かまきり男』と『死神カメレオン』です。

KKオーグはオーグメントの中でも唯一のカマキリとカメレオンと人間の『3種混合型オーグメント』です。
緑川弘には秘密で作られたためルリ子も把握しておらず、奇襲をかけられてしまいます。

KKオーグはクモオーグを「クモ先輩」と慕い大好きだったようなので、クモオーグの仕事を継いで裏切り者の暗殺役になったと思われます。

 

チョウオーグ(イチロー)の目的

シン・仮面ライダー

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

チョウオーグが計画していた『ハビタット計画』は、全人類のプラーナ(≑魂)を完全掌握し、ハビタット世界と呼ばれる異世界に移動させて人間から肉体を奪うことでした。

チョウオーグはハビタット世界について『死も理不尽も無い魂だけの世界』『幸せなユートピア』と表現します。
チョウオーグは母親を殺された経験から人間を信用できず、人類から暴力の元である肉体を奪うことで平和な世界を作ろうとしていたのです。

 

パリハライズとは

イチローと接触してルリ子が使えるようになった『パリハライズ』は、ショッカー構成員のプラーナ洗脳を解除するシステムです。
恐らく『浄化、清める』などの意味を持つ英単語『purify』が元になった言葉だと思われます。

個人的にはルリ子は一番最初にイチローに会ってパリハライズをゲットしてから他の怪人に会いに行って全員の洗脳を解いてあげればよかったのでは?そうすれば怪人の何人かは殺さずに済んだのでは??と思ってしまいますが、何か事情があったのでしょうか。

 

ハビタット世界の問題点

ルリ子は「ハビタット世界は地獄のようなもの 本心だけのウソのない世界であり、人間が耐えられる場所じゃない」『不幸なディストピア』と言い表します。
ハビタット計画には当初はルリ子も参加していましたが、ハビタット世界はルリ子の求める幸せとは違っていたため協力をやめています。
恐らくハビタット世界では人間の理性は無くなってしまうのではないかと推測しています。
確かに全ての人間から理性を奪ってしまったらとんでもないことになりそうですが、イチローの考えではたとえ争いが起きたとしても、肉体が無く殺し合いのしようがない(口論しかできない)からOKということなのでしょう。

しかし、チョウオーグやハチオーグが他人のプラーナを吸収できるように、いつかは意図的に他人のプラーナを奪う(殺す)方法を編み出す人物が必ず現れるので、そうなると肉体を奪う意味はなくなります。

また、肉体がなくなるということは食べることもできないということです。
ルリ子がご飯を食べながら話していた内容で「プラーナは周囲の生物から少しずつプラーナを吸い取って生命維持している」とあったので、ハビタット世界では食べる必要はなくなりますが、動植物が存在しないなら人間同士だけでのプラーナの奪い合いになることは目に見えています。

さらに肉体が無いということは生殖機能もなくなるので、ハビタット世界に人類を移動したら子孫を残すことが出来ず、いずれ人類は滅びてしまいます。
ルリ子はこれらのハビタット計画が成功した後のことを考えて破綻していることに気付いたのでしょうが、イチローは恐らく計画の遂行しか見えておらず、後で起こる問題は計画が成功してから考えれば良いと後回しにしていたのかもしれません。

 

孤独相と群生相

チョウオーグが仮面ライダーを倒すために放った大量のバッタオーグは『群生相』と呼ばれていました。

バッタには実際に『孤独相』と呼ばれる単独行動するタイプと、『群生相』と呼ばれる群れて行動するタイプがいます。
孤独相のバッタはのんびりしていて人間に危害を加えることはありませんが、群生相のバッタは性格が凶暴で食欲もすさまじく、集団で畑を食い荒らすなどの被害をもたらします。

群生相のバッタが日本でみられることはほとんどありませんが、アメリカやアフリカなどの一部の地域では度々 群生相のバッタが発生して問題になっています。
同じ種類のバッタで相が別れる原因はちゃんと解明されていませんが恐らくバッタが育つ環境の餌と天敵の違いではないかと言われています。

群生相のバッタは旧約聖書にも登場し、人間の罪深さに怒った神様が罰として街に放った虫でもあるので、チョウオーグが自身を神のように思っていることもにじみ出ている攻撃だったように感じました。

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『シン・仮面ライダー』公式サイト

怪人図鑑|仮面ライダー|東映

 

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