映画「御法度」解説考察①|加納が沖田を好きだった伏線は?山崎に色仕掛けした理由は?など | 映画の解説考察ブログ

映画「御法度」解説考察①|加納が沖田を好きだった伏線は?山崎に色仕掛けした理由は?など

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映画「御法度」の解説・考察をしています!
「映画の元ネタ」「加納と田代に何があったのか」「加納が山崎に色仕掛けした理由は?」「加納が沖田を好きだった伏線は?」などについて書いてます。

ネタバレありきの考察記事です。まだ見ていない方はご注意ください。

御法度

制作年:1999年
本編時間:100分
制作国:日本
監督・脚本:大島渚
原作小説:『真選組血風録』司馬遼太郎著より『前髪の惣三郎』、『三条磧乱刃』
出演:ビートたけし、松田龍平、浅野忠信 ほか

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解説、考察や感想など

本作の元ネタは?

映画「御法度」は司馬遼太郎の短編集「新撰組血風録」に収録されている「前髪の惣三郎」と「三条磧乱刃」を参考に作られています。
「前髪の惣三郎」は、新撰組の隊長である近藤勇の書簡に書かれていた「隊内で衆道が流行している」という意味ありげな一文と、加納惣三郎という実在が確認できない粛清された隊士の記録を元に描かれた半ノンフィクション作です。

衆道が流行する経緯や、そこに加納惣三郎が関わっていたのかなど詳細は記録に残っていないので真相はわかりませんが、妄想が膨らんでしまう記録であることは間違いありません(笑)

 

新選組『局中法度』の現代語訳

新選組には局中法度という、隊内における決まり事があります。
本作にも登場していたので、訳をのせておきます。

■原文
一、士道ニ背キ間敷事
一、局ヲ脱スルヲ不許
一、勝手ニ金策致不可
一、勝手ニ訴訟取扱不可
一、私ノ闘争ヲ不許
右条々相背候者 切腹申付ベク候也

□訳
士道に背きまじき事
(侍の道理に反する行動を取ってはいけない)
局を脱するを許さず
(勝手に組を辞めてはいけない)
勝手に金策いたすべからず
(許可なく借金してはいけない)
勝手に訴訟を取り扱うべからず
(許可なく他人の揉め事の仲裁をしてはいけない)
私の闘争を許さず
(個人的な理由で喧嘩をしてはいけない)
右の条々にあい背き候者は切腹申し付くべく候なり
(これらの決まりに違反した者には切腹を命ずる)

 

加納惣三郎と田代彪蔵

御法度
©1999 松竹/角川書店/IMAGICA/BS朝日/衛星劇場

当初、加納は田代を拒絶していたのに どうやって田代が加納を落としたのかは描かれていませんでした。
恐らく田代は脅迫に近い形で加納に関係を迫り、加納は仕方なく受け入れてしまったような気がします。
個人的にはそこもぜひ詳しく描いてほしかったです。。

加納と田代の入隊当初、土方はそれぞれと稽古して剣術の腕は田代よりも加納の方が上だと実感します。
入隊から数か月後、加納と田代の剣術稽古では田代の気迫に押されて加納が負けるという事態が起きました。
土方はこれを見て加納と田代がデキていると確信します。

外見からも何となく想像はつきますが、加納は恋愛関係では女性的な立場になります。
そして稽古で加納が田代にひるんで負けるということは、プライベートにおいても田代が加納を支配していることが想像できます。

しばらくして、加納は湯沢(田口トモロヲ)とも関係を持つようになります。
セフレ状態が続いたようですが、次第に湯沢に嫉妬心や独占欲が芽生え、加納に「田代と別れろ」と迫ります。
それに対して加納は「縁は切れない」とつまらなそうに答えています。
これは加納も田代が好きだからと言うよりは、田代が怖くて自分から別れを切り出せないと加納が思っていることを示します。

そういったやり取りの数日後、湯沢は加納に殺されます。
加納は湯沢が本気になって面倒臭いことになってきたから殺したのでしょう。

また、加納と田代の戦いの際、加納は剣を抜いてニヤッと笑ったり、田代を何度か斬りつけていたことから、加納は田代を殺したいほど嫌っていて、むしろ殺すことを楽しんでいる様子が見て取れます。

加納はピンチになると、土方と沖田には聞こえない小声で田代に何か囁いていました。
これ、音をかなーり大きくしたら「もろともに」と言っていたのが聞き取れました。
『もろともに』は『一緒に』という意味です。
この時は「一緒に死のう」という意味になり、加納に惚れていた田代が考え込んでしまうのもわかります。

沖田が言っていたように、閨での睦言(ねやでのむつごと※セックスの際にかけ合う言葉)としても普段から言っていたのでしょう。
ちなみにその際は「一緒に果てよう」的な意味になります。

加納がいつから性格が歪んでしまったのかは明かされませんが、入隊した翌日の介錯(=切腹する人の首を切る役)を平然とやってのける加納を見て、土方が「加納は人を切るのは初めてじゃない」と気づくことから、加納は新選組入隊前からすでに人殺しだったと推測できます。

そうなると加納と田代の馴れ初めは、田代が加納を調べて人を殺した過去を知り、「付き合ってくれなきゃお前の過去をバラす」とでも脅したのかもしれません。




加納惣三郎と山崎烝

監察官の山崎は加納を女に目覚めさせるため遊郭に連れ出そうとしますが、最終的に加納は山崎を誘惑しました。

加納の誘惑には、女好きの山崎ですら心揺さぶられるものがありました。
この山崎の葛藤には、加納の妖艶さにはノンケの隊員でもやられかねないという加納の持つ魔性の影響力が強調されています。
山崎は持ち前の我慢強さで何とか誘惑を振り切りましたが、平隊員は恐らくやられていたでしょう。

山崎はその後、変装した加納に襲われて偽の証拠である『田代の小刀』を掴まされます。
この事件から、恐らく加納が山崎を誘惑したのは山崎に気があったからではなく、監察官の山崎を惚れさせて、『田代を湯沢殺しの犯人に仕立てる計画』の共犯者になってもらいたかったからだったことがわかります。

しかし加納は山崎を落とすのに失敗したので仕方なく変装して山崎を襲い、田代の小刀を落として拾わせました。

 

加納惣三郎と沖田総司

加納の本命が沖田だったことは終盤で明らかになります。
終盤で加納が前髪に願掛けしていると発言したり、沖田が『菊花の契り』を読んだという話が伏線です。

『菊花の契り』は雨月物語の話のひとつで、男2人が意気投合して家族になり、まるで夫婦のようにお互いを慕い合うという、どことなく同性愛を思わせる話です。

沖田は「衆道は嫌い」と発言している通り男好きの気配は無かったですが、加納の気持ちを知ったことで衆道について少しは考えてみようと思い『菊花の契り』を読んでみたと思われます。

これらの伏線や加納と沖田の行動から推測すると、恐らく加納は田代を殺せと命じられてから実行するまでの間に、沖田に愛の告白をしていたのです。

加納が田代を殺した後、沖田は土方と別れて加納に会いに行きました。
先に去ったはずの加納が屯所に戻っていないこと、そしてどこにいるのか沖田が知っていたことから推測すると、加納は事前に『田代を殺せたら恋人になって欲しい(もしくは2人きりで話がしたい)』などと沖田に伝えて川辺付近のどこかで待ち合わせしていたのでしょう。

加納にとって田代(今彼)を殺すことは『沖田に対する愛の証明』になるので、だから加納はあんなにあっさり田代殺しを引き受けたのです。(沖田にその愛情表現は伝わらなかったですが)

解説考察②に続きます。読んで頂きありがとうございました。
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