『パンズ・ラビリンス』解説考察|3つの試練の意味、時計、ペイルマン、マンドラゴラなど | 映画の解説考察ブログ - Part 2

『パンズ・ラビリンス』解説考察|3つの試練の意味、時計、ペイルマン、マンドラゴラなど

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パンズ・ラビリンス ダークファンタジー

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2つ目の試練:ペイルマン

パンズ・ラビリンス

©2006 ESTUDIOS PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

オフェリアが2つ目の試練で入った地下には、手のひらに目がある不気味なクリーチャー『ペイルマン』がいました。
ペイルマンは一度見たら忘れられないキャラクターなので、映画を見たことがなくてもこいつだけは知っているという方も多いかもしれません。

ペイルマンは、テーブルの上の豊富な食べ物などから『自分の子どもを食い殺した』ことで有名な農耕神サトゥルヌスがモチーフになっていると思われます。

また、オフェリアの心理状態が反映されているものとして見ると、このクリーチャーはオフェリアの中のビダル大尉に対する恐怖や敵意が具現化した姿です。
そして棚から盗む短剣は3つ目の試練に必要な物でもありますが、ビダル大尉から身を守らなければいけないという思いが具現化したものでもあると思われます。

 

3つ目の試練:無垢なる者の血

パンがオフェリアに課した最後の試練は『無垢なる者の血』で、パンはオフェリアが2つ目の試練で手に入れた短剣を出して「弟の血が数滴欲しい」と言います。
しかし、オフェリアは弟を傷つけることを拒否しました。

追ってきたビダル大尉はオフェリアから赤ちゃんを奪うと、非情にもオフェリアを撃ち殺しました。
オフェリアもまた『無垢なる者(子ども)』だったので、彼女の血が流れたことで魔法の王国に辿りつきました。

オフェリアはパンから「あなたが弟を守るかどうかが試練だった あなたは合格した」と言われて喜びます。
現実の世界でオフェリアは死んでしまいますが、望み通り『嘘や苦痛の無い魔法の王国』に行くことが出来たのです。
ちょっと時間がずれていたらオフェリアはメルセデスと再会出来ていたのにと思うと悲しくなりますが、この時すでにオフェリアは幻想の世界に逃げると決めてしまっていたのです。

DVDの表紙に書かれている『だから少女は幻想の国で永遠の幸せを探した』と繋がってきます。
オフェリアの運命からは『戦争や差別が蔓延する社会は、無垢な少女が生きることよりも死に希望を見出してしまうほど悲惨である』というメッセージが込められていたように感じました。




ビダル大尉と壊れた時計

ビダル大尉は父親の形見の懐中時計を大切にしていました。
しかしその時計は壊れていて、ビダルは修理を試みますが針は動きません。

その翌日に開かれた夕食会で、ビダルは参加していた軍人仲間に言われて初めて父の時計が壊れている理由を知ります。
ビダルの父は戦場で亡くなる直前に自ら時計を壊し、息子ビダルに『勇敢なる死』の手本になるようにと『父の死の時刻』を形見として遺したそうです。

この時、ビダルは「父は時計など持っていなかった」と否定しますが、恐らくは時計が壊れている理由を知らなかったと正直に言えず嘘をついたのです。
ビダルは父の時計の意味を知らず、修理しようとしていた自分を内心恥じていたと思われます。

また、壊れた時計にはビダルの人間的な成長が止まっていることも暗示していたようにも感じました。
カルメンの馴れ初めの話を「つまらない」と一蹴するのは、ビダルは誰にも心を開いていないため、プライベートな話をされるのが不愉快で不適切だと思ったからでしょう。
大尉としてメンツを保つ意味でもプライベートは明かしたくなかったのかもしれませんし、嫌味な奥様2人組にいじられて不快だったのもあるかもしれませんが、態度からカルメンへの愛は微塵も感じられません。
カルメンは聞かれたことを答えただけなのに、ビダルに怒られ恥をかかされてただひたすら可哀想です。

そんなビダルですが、カルメンのお腹にいる息子だけには唯一関心があったようです。
しかしそれは息子への心からの愛情ではなく、恐らく尊敬する父親に対する憧れから来るもので、父親がしてくれたことを自分も息子にしたいというのが彼なりの夢であり、息子を持つことが一人前の男である指標のひとつだったのでしょう。

 

マンドラゴラのおまじない

マンドラゴラの根っこは毒性が非常に強く、古くから薬や魔術に使われていた植物です。
現在は治療薬に使われることはほぼないようですが、根っこが人間の形に似ている物は強い魔力を持つとされて魔術界では人気が高く、高値で取引される場合もあるようです。

有名な逸話として『土から引き抜くときに悲鳴をあげ、悲鳴を聞いた人間は死んでしまう』というものがあり、ハリーポッターや地獄先生ぬ~べ~なんかにも登場します。

オフェリアの母が倒れた時、守護神パンがマンドラゴラを渡して「これをお母さんの枕の下に忍ばせなさい。ミルクにつけて、毎朝血を2滴垂らしなさい」とアドバイスします。
お母さんの枕がとんでもないことになりそうだと思ったのは私だけではないと思いますが、ベッドの下だったので安心しました(笑)

パンがオフェリアに教えたおまじないの方法は願いを叶える黒魔術の一種のようで、魔術の途中で処分してしまうと、マンドラゴラが溜め込んだ悪い気が処分した人間に跳ね返ってしまうという言い伝えがあります。
マンドラゴラを火にくべたのはカルメンだったので、オフェリアにはせっかくマンドラゴラに吸い取ってもらった病気がカルメンに逆戻りしているように見えたのです。

あの時もしもビダル大尉がマンドラゴラを処分していれば、母は死ななかったかもしれないとオフェリアは思ったのではないでしょうか。

 

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参考サイト様一覧

Wikipedia:パーン(ギリシア神話)我が子を食らうサトゥルヌス

世界史の窓:スペイン内戦/スペイン戦争

黒魔術:マンドラゴラの魔術

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