解説・考察後半
デイビッドが描いた鳥
©2001 DreamWorks LLC and Warner Bros. All Rights Reserved.
マーティンに「最初に見たものは?」と聞かれた時、デイビッドは「鳥」と答えて、その絵を描きました。
デイビッドが最初に見た「鳥」は、サイバー・トロニクス社のロゴのことでした。
これはデイビッドがマシンだと再確認させられる悲しい伏線です。
ジゴロ・ジョーはなぜ逃亡した?
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ジョーは殺人の罪をなすりつけられて逃亡していましたが、マシンなら事件と判断すれば何も考えずに警察に通報しそうなものなのに、ジョーはあえて逃亡を選択しました。
恐らくデイビッドやジョーなどの高機能AIが搭載されているマシンは、ある程度の未来予測と自己防衛機能が備わっていて、罪をなすりつけられたとわかった時点でジゴロの頭の中に冤罪を証明する手立ては浮かばず、逮捕されたら廃棄される未来しかないと判断して自己防衛のために逃亡していたのでしょう。
また、ホテルで殺された女性ミス・ベビンズとジョーが前回関係を持ったのは25万5133秒前(約3日前)と言っていたので、彼女が殺されてしまったのは恐らく、彼女がジョーのようなラブマシンとの遊びにハマってしまったからで、恋人が彼女を殺したのはミス・べビンズとマシン両方に復讐したかったからでしょう。
男が「お前が先に俺を殺した」と言ったのは、ミス・ベビンズが恋人の『男性としてのプライドを殺した』という意味だったようです。
デイビッドはなぜ作られたのか
デイビッドのモデルはホビー教授の亡くなってしまった実の息子だったことが明かされています。
恐らくホビー教授の言っていた『妊娠が許されない親向けに』というのは建前で、本当は彼自身の『もう一度息子に会いたい』という願望を科学で実現するためにデイビッドを作ったのではないでしょうか。
ホビー教授は自分の息子の成長が見られない代わりに、デイビッドを量産して世界中の親に愛されるデイビッドが見たかったのかもしれません。
デイビッドはなぜもう一人のデイビッドを壊した?
デイビッドはもう1人の自分を見ると怒って壊してしまいました。
デイビッドはモニカに執着するあまり、もう1人の自分もモニカに愛されたいと思っていると勘違いしてライバル認定してしまったのです。
嫉妬に狂って暴れてしまう程強い感情を持たせたのは、デイビッドを作った製作陣のミスです。
モニカ(親)への執着が強すぎたことがデイビッドが追い出されてしまった原因のひとつでもあるので、その他のデイビッドは感情のコントロールが出来るように改善されていることを祈るばかりです。
デイビッドはなぜ人間になりたかったのか
デイビッドが人間になりたくなったのは、モニカが人間のマーティンを愛していたからです。
デイビッドは彼自身とマーティンの違いは『人間かマシンか』しかないと思っていたのでしょう。
デイビッドは思考回路も子どもなので、血の繋がりなどには考えが至りません。
それに、マーティンがしつこく言っていた「僕は人間だから」、「僕は本物だから愛される、お前はニセモノだから愛されない」というような、マシンであることが愛されない理由だと言う理屈を真に受けてしまっていたのです。
愛する人間を自分で選べないデイビッドが可哀そうで泣けてきます。
仕事を求めるマシン達
マシンの存在価値は仕事をすることなので、デイビッド以外のマシンは常に仕事を探していました。
ジゴロ・ジョーは女性に買われることに意味を感じ、ベビーシッターマシンは子どもの世話をすることに意味を感じますが、需要が無ければ成り立ちません。
デイビッドの仕事は親を愛することなので、やはり愛してもらえなければ意味がなく、愛されるために人間になりたいと考えるのは、マーティンとデイビッド自身の扱いの違いを目の当たりにしたデイビッドにとっては絶対に必要になってしまったのでしょう。
スペシャリスト達はどうやってデイビッドを見つけた?
デイビッドは電源が落ちてから2000年後にスペシャリスト達に発見されました。
彼らは『過去に起こったありとあらゆることが宇宙時間の中に記録されていることがわかった』と語っていたので、人類の研究のために膨大な宇宙時間の記録を見ていた時に、たまたまデイビッドの記録を見たのではないでしょうか。
『宇宙時間』がどのようなものか想像しにくいですが、スペシャリスト達は宇宙も探索して、地球の歴史が全て記録されている空間のようなものを発見したのかもしれません。
スペシャリスト達の見た目
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2000年後の世界に生き残っていたスペシャリストと呼ばれるマシン達は、今までのマシンとは違い宇宙人のような見た目でした。
恐らくスペシャリストを作った人間達は、マシンを人間に似せて作ることが問題の種になるとようやく気づき、人間とは違う見た目のマシンを作ったのではないでしょうか。
モニカはなぜ1日しか生きられなかった?
スペシャリスト達は生きる意味を探し続けた人類に興味を持って人間を研究しようとDNAから復活を試みますが、人体の一部から蘇らせた人間は皆、目覚めてから眠るまでの1日しか生きられませんでした。
何度実験しても生き続けられなかったため、彼らは『1人の人間の宇宙時間は1度使われてしまうと2度と使えない』と解釈していました。
デイビッドは「ママだけは特別で生き続けられるかもしれない」と期待しますが、デイビッドの期待はかないませんでした。
愛してると言うモニカ
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蘇ったモニカのクローンの記憶はどれくらいあったのでしょうか。
髪を切った時点だとすると、デイビッドを森に捨てる少し前の記憶ですが、蘇ったモニカは何となくデイビッドを捨てた後の記憶もあるような表情に見えました。
モニカがデイビッドに「愛してる」と言ったことも踏まえると、オリジナルのモニカの生まれてから死ぬまでの記憶が全てあったと考える方が何となくしっくりきます。
モニカはデイビッドを森に捨てた後、死ぬまで罪の意識にさいなまれて、1度もデイビッドに『愛してる』と言ってあげられなかったことを後悔して生きてきたのが感じられるような言い方でした。
心から愛してると言われたデイビッドは最後に夢が叶って本当に良かったです。
私の涙腺も無事崩壊しました。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
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感想などお気軽に(^^)
本日初めて拝読しました。とても読みやすくてわかりやすい考察で、こんなに丁寧に書いた文章を読ませていただき感謝しかありません>_<
デイビットの気持ちを考えると…私も始めから終わりまでずっと泣いてしまいます…。
読ませていただいて、この映画の良さを再発見し、作品への理解が深まりました!
とても素敵な考察をありがとうございましたm(_ _)m