映画『12モンキーズ』ネタバレ解説|ラストの解釈、科学者の目的など考察 | 映画の解説考察ブログ

映画『12モンキーズ』ネタバレ解説|ラストの解釈、科学者の目的など考察

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SF

映画『12モンキーズ』の解説、考察をしています!
「キャサリンの既視感の正体」「科学者たちの目的」「ホセの役割」「実行犯が変わったのはなぜか」「カサンドラ異常心理」「落書きと留守電」「ヨハネの目次録」などについて書いてます。

鑑賞済みの方のための考察記事です。まだ見ていない方はネタバレにご注意ください。

12モンキーズ

原題:Twelve Monkeys
制作年:1995年
本編時間:130分
制作国:アメリカ
監督:テリー・ギリアム
脚本:デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ、ジャネット・ピープルズ
関連作品:短編映画『ラ・ジュテ』(’69/フランス)

 

主要人物紹介

12モンキーズ
©1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved.
ジェームズ・コールブルース・ウィリス
少年のジェームズ…ジョセフ・メリト
2035年の地下刑務所に収監される死刑囚。
犯罪組織『12モンキーズ』の調査を命じられ、彼らが事件を起こした過去にタイムスリップさせられる。
『空港で男が撃たれて倒れ、恋人らしき女が男に駆け寄る夢』を何度も見る。

 

12モンキーズ
©1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved. 
キャサリン・ライリーマデリーン・ストゥー
過去に戻ったジェームズを診察した精神科医。
初めて会った時からジェームズに既視感を感じるが、具体的には何も思い出せない。

 


(引用:https://filmschoolrejects.com
ジェフリー・ゴインズブラッド・ピット
ジェームズが精神病院で出会った入院患者で12モンキーズの考案者。
権威ある細菌学者の父親を持ち裕福な家庭で育った。
一見まともなことを言っているが、立ち振る舞いは挙動不審で落ち着きがなく些細なことに興奮しやすい。
ぶっ飛んだアイディアを大真面目に語るためか、次第に彼の信者が現れはじめる。

 

ゴインズ博士(ジェフリーの父、細菌学者)…クリストファー・プラマー
ジョーンズ博士(天体物理学者)…キャロル・フローレンス
ホセ(ジェームズの仲間の囚人)…ジョン・セダ
ピーターズ博士(ゴインズ博士の部下)…デヴィッド・モース
声の男…ハリー・オトゥール
ハルプリン刑事…クリストファー・メローニ
植物学者…H・ミシェル・ウォールズ
地質学者…ボブ・アドリアン
動物学者…サイモン・ジョーンズ
微生物学者…ビル・レイモンド
技術者…エルネスト・アブバ
詩人…イルマ・セント・ポール
フランキー刑事…ジョーイ・ペリージョ
ビリングズ(医療従事者)…ロズウィル・ヤング
ワシントン(惑星オゴ)…フレッド・ストローザー
フレッチャー医師…フランク・ゴーシン
医師…リック・ワーナー、アンソニー・ブリエンツァ、スタン・カン
子育てに追われる黒人女性…ジョイレ・ハリス
教授…チャールズ・テックマン
マリールゥ(キャサリンの秘書)…ジャン・エリス
伝道師…トーマス・ロイ
12モンキーズのメンバー…チャック・ジェフリーズ
上流階級…リサ・ゲイ・ハミルトン、フェリックス・ピール、マシュー・ロス
ホテルの受付…リー・ゴールデン
ウォレス(カウボーイ風の男)…ジョセフ・マッケナ
タクシードライバー…アニー・ゴールデン
トイレの男…レイ・ハフマン ほか

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あらすじ紹介


(防護服を着て地上に出るジェームズ 引用:https://www.vulture.com

あらすじ①:荒廃した近未来と囚人ジェームズの使命

舞台は2035年。人間にのみ寄生するウィルスが地球全体に蔓延して人類の90%以上が絶命し、生き残った人類は地下への移住を余儀なくされ、地上は動物たちの楽園になっています。

アメリカ合衆国メリーランド州ボルチモアの地下刑務所で終身刑に服するジェームズ(ブルース・ウィリス)は『強靭な精神と鋭い観察眼』を持つ男として科学者たちに選ばれ、ウィルスが蔓延する直前の1996年にタイムスリップさせられました。
ジェームズに与えられた仕事は、ウィルスをバラまいた犯罪組織『12モンキーズ』の情報を集めることです。
ジェームズの仕事に科学者たちが満足すれば、ジェームズは特赦(減刑)を受けられます。

 

あらすじ②:1990年4月にキャサリン医師と出会う

ジェームズは1996年10月に送られる予定でしたが、何か間違いが起こって1990年4月に着いてしまいました。
半透明のレインコートに下着1枚という怪しい姿だったジェームズは、すぐに通報&逮捕されてしまいます。

ジェームズは今日の日付も答えられずウィルスについて喚くため、精神病者と判断されて精神科医キャサリン(マデリーン・ストゥー)が呼ばれました。
キャサリンはジェームズと昔どこかで会ったような気がする一方で、ジェームズは彼女を全く知りませんでした。

ジェームズは統合失調症と診断され、ボルティモア大学付属病院の精神病棟に収容されて患者のジェフリー・ゴインズ(ブラッド・ピット)と出会います。

ジェフリーが口走る持論はまともなようにも思えますが、特定の物へ執着や他の患者への気遣いの無さは普通ではありませんでした。


(精神病院のジェームズとジェフリー 引用:https://ew.com

その後、ジェームズはジェフリーの協力を得て病院から脱走を図りますが、捕まって独房に監禁されたところで科学者たちの意向により2035年に戻されました。




あらすじ③:1996年のキャサリンと再会

ジェームズは科学者たちに、自分が送られたのが1990年だったことや、ジェフリー・ゴインズと会ったことを報告すると、科学者はジェフリーが12モンキーズの首謀者だからジェフリーを見張れと告げました。

科学者達は「今度は捕まるなよ」と言い、ジェームズに2度目のタイムスリップをさせます。
そこで再び誤作動に見舞われて、ジェームズは数分間だけ第一次世界大戦中のフランスに舞い降りてしまい、脚に銃弾が当たった直後に1996年11月のボルチモアに到着しました。

1996年のキャサリンは、本を執筆して講演会を行うほど著名な医師になっていました。
ジェームズは講演後のキャサリンを捕まえて車に乗ると、12モンキーズの拠点のあるフィラデルフィアに向かわせました。

フィラデルフィアに到着すると、ジェームズはそこかしこの壁に12モンキーズのシンボルマークが落書きされているのを見つけました。
キャサリンは隙を見て逃げることも出来ましたが、ジェームズの体調が心配で付き添います。

ジェームズは科学者たちに言われたテナントを見つけると、中には動物解放協会の若者数名がいて12モンキーズとジェフリー・ゴインズを知っていました。
ジェフリー・ゴインズは動物解放協会の一員であり、過激な活動をするために立ち上げたのが『12モンキーズ』で、現在はメンバー募集中だそうです。

ちなみに動物解放協会は動物を動物園や水族館に閉じ込めて見世物にするなどの行為に反対し、動物を自然にかえす活動をする動物愛護系団体です。

 

あらすじ④:1996年のゴインズと争う

1996年のジェフリー・ゴインズは退院してゴインズ邸で暮らし、父親が経営する細菌研究所で働いていました。

ジェームズはゴインズ邸に着くと、キャサリンを車のトランクに閉じ込めてからジェフリーに会いに行きます。
するとジェフリーは「細菌で人類を滅ぼす作戦を思いついたのは君じゃないか!」と笑いました。
ジェフリーは1990年の病院でジェームズが言っていた未来の話を聞いてウィルス計画を思いついたらしく、ジェームズは無意識にジェフリーに入れ知恵をしてしまっていたのです。
怒ったジェームズはジェフリーを殴って逃走を図ります。

その後、キャサリンが助けを呼んでいる間にジェームズは再びタイムスリップしてキャサリンの前から忽然と消えました。

 

あらすじ⑤:真実を知るキャサリン

無事に保護されて自宅に戻ったキャサリンは、ジェームズの足から取り出した銃弾が第一次世界大戦(1914年〜1918年)当時のものだったことを知り、さらに大戦中に撮影された写真にジェームズが写っているのを発見し、タイムトラベルは本当だと信じざるをえなくなりました。

一方ジェームズは、ゴインズ邸から消えた後は2035年に戻されて、ウィルス計画のルーツがわかったことでなぜか科学者達から賞賛を浴び、特赦を言い渡されました。

ジェームズは度重なるタイムトラベルと、周囲から病人扱いされ続けたために「タイムトラベルも科学者たちも本当は全て妄想で、自分は精神病だ」と思い始めていました。
科学者たちは「もうタイムスリップする必要は無い」と言いますが、キャサリンに会いたかったジェームズは科学者たちを言いくるめて再び1996年12月のフィラデルフィアにタイムスリップさせてもらいました。

キャサリンもジェームズを探して再びフィラデルフィアに行っていたため、2人は無事に再会しました。
「俺は精神病だ。治療してくれ」と懇願するジェームズに、キャサリンは「今まで信じなくてごめんなさい。あなたは病気じゃなかった」と答えます。

 

結末

ジェームズの知る限り、ウィルスは1996年12月にフィラデルフィアを始め、世界各地の主要都市9か所で拡散されていました。
また、ジェームズは96年のフィラデルフィアでは『女医誘拐の犯人』で指名手配されています。

ジェームズとキャサリンは逮捕とウィルスの脅威から逃れるため、変装して空港に向かいました。
空港に行く途中、ジェフリー・ゴインズ率いる12モンキーズが動物園から勝手に動物たちを解放する事件を起こしているという速報がラジオから流れました。
ジェフリーはウィルス散布とは無関係ということになりますが、そうなるとウィルスをバラまいた犯人は別にいることになります。

空港に着くと、キャサリンは細菌研究所職員のピーターズ博士が空港にいるのを見て、彼がウィルスをばらまいた真犯人だと確信します。
キャサリンは急いでジェームズに真相を伝えてピーターズ博士を追いますが、既にウィルスは空港内に散布されていました。
ジェームズは銃を持ってピーターズ博士を追いますが、警官に撃たれて倒れてしまいます。
ピーターズは撃たれたジェームズに目もくれず、そそくさと飛行機に乗り込みました。


(撃たれたジェームズに駆け寄るキャサリン 引用:https://cinema1544.wordpress.com

キャサリンはジェームズに駆け寄って手当てしようとしますが、心臓を撃たれていたジェームズは死んでしまいました。
ジェームズが撃たれてから死ぬまでの一部始終を、1996年当時、まだ9歳だった少年のジェームズ本人が目撃していました。
キャサリンはジェームズ少年の存在に気付くと、涙を流しながら少年にほほ笑みかけました。

ピーターズが無事に飛行機の席について安心していた時、未来の科学者の1人であるジョーンズ博士が「救済保険業者」と名乗り、ピーターズ博士の隣に座っていました。

・挿入曲:
『プンタ・デル・エステ組曲』ポール・バックマスター/アストル・ピアソラ作曲
『ブルーベリー・ヒル』
『What A Wonderful World』ルイス・アームストロング




感想、解説や考察など

初めて見たのは学生時代だったと思うんですが、雰囲気など好きだったものの、話の内容は理解できずにいた作品でした。
改めて見てみてもやっぱり複雑でしたが、面白くて考察がはかどりました。

以下、私なりの疑問と答えをまとめています。

ちなみにこれはただの感想と言うか疑問ですが、ジェームズが1990年の病院に入れられた際、医療従事者がジェームズのシラミをチェックしていたのがなんだか気になりました。
スキンヘッドでもシラミは付くのでしょうか?

キャサリンが抱くジェームズへの既視感の正体は?

キャサリンは初めてジェームズと会った時、過去に会ったような気がして仕方ない様子でしたが、その後、既視感の理由は明かされないままだったのですごく気になりました。

ピンとくる答えは見つかりませんが、実はキャサリンもジェームズを夢で見ていたか、ジェームズのようにタイムスリップさせられた別の囚人にキャサリンが会ったことがあって混同しているか、位しか思い浮かびません。

 

科学者たちの目的

12モンキーズ
(c)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

囚人達をタイムスリップさせていた科学者たちの目的について考えます。
科学者たちの最終目標は地上での生活を取り戻すことです。
そのためには、ウィルスに効く治療薬やワクチンの開発が必須です。
ワクチン開発のためには、ウィルスの元株が必要だと科学者が発言しています。

ジェームズに与えられた使命は『ウィルスの元株を持つ人物(ばらまいた犯人)の特定』であり、ウィルス拡散を止めることではありませんでした。
ウィルス拡散の阻止が目的なら犯人を殺す計画を立てたり、ピーターズが持っていた試験管を奪う計画を立てるはずですが、科学者たちはそこに関心を持ちません。

ラストでジョーンズ博士がピーターズと握手をしたのは、保菌者であるピーターズに近づいて物理的に接触し、自らウィルス元株に感染して2035年に持ち帰るためだったと思われます。
彼女が『保険業者』を名乗っていた点も、ウィルス蔓延阻止そのものが目的ではないことを物語っています。
保険とは、事故や災害が『起こった後』に援助・救済活動を行うものであり、事故や災害そのものを未然に防ぐものではないからです。

つまり科学者たちは「ウィルス拡散→人類激減」の歴史そのものを変えるつもりは無く、彼らが生き残る2035年以降の未来をより良いものに変えようとしていたということです。

また、なぜ科学者たちがウィルス拡散を阻止しようとしないのかを考えると、理由はいくつか挙げられます。
まず、ウィルス拡散そのものを止めようとすることは既に何度も試して失敗し、過去を大きくは変えられないことがわかって諦めていた可能性です。
ウィルスをばらまく犯人はジェフリーからピーターズ博士に変わっていた所など、誰かが必ずやる可能性が示唆されていたからです。

次に、ウィルス拡散が歴史から消えれば、生き残った科学者たちが退廃した2035年で築いていた絶対的な地位や権力が得られなくなることも考えると、権力を持つために歴史を変えなかったという可能性もあるでしょう。

それに、生き残っていた科学者は動物学者、植物学者、地質学者など全員自然科学の専門家だった点を考えても、地球環境保護の意識が高い顔ぶれなので、もしかしたら人類が大幅に減る現象には賛成していた可能性(環境保護のためには人類は少ない方が良いので、ウィルス拡散を止めるつもりは最初から無かった)があります。
筆者は個人的には後者だったのではないかと思います。

次のページに続きます!

次はホセの役割、夢の実行犯、カサンドラ異常心理、落書きと留守電、ヨハネの目次録などです。




感想などお気軽に(^^)

  1. 匿名 より:

    クライマックス辺りの解釈が難しくて、こちらの考察を拝見して、なるほど、と思いました。ありがとうございました。ひとつ、実行犯がジェフリーではなくなったのは、パパ博士を拉致したときに、パパがジェフリーに、細菌室に入る暗証番号を私も知らない暗証番号に変ったんだよ。と言って、ジェフリーが、手遅れなんだよパパ。こっちは先を読んでいる。と言っていたので、この時点で実行犯はピーターズ博士に予定変更されていた。余談ですがパパをゴリラ檻に監禁の新聞一面の写真がおかしくておかしくて、なんど見ても笑ってしまいます。個人的にブラピに出演作で一番好きな作品です。

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