映画『私の男』解説考察3|血の雨、豚の餌、ラスト考察、原作との違いなど | 映画鑑賞中。

映画『私の男』解説考察3|血の雨、豚の餌、ラスト考察、原作との違いなど

クライムドラマ

映画『私の男』で印象的だったシーンについて解説考察しています。

『淳悟が花を引き取るのに大塩が反対した理由』『血の雨』『赤い小物』『豚の餌』『ラスト考察、原作との違い』について書いています。

鑑賞済みの方向けの解説考察記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください(__)

映画『私の男』概要紹介

私の男

制作年:2013年
本編時間:129分
制作国:日本
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田一樹
原作小説:桜庭一樹 著『私の男

 

この記事で言及する登場人物

腐野淳悟浅野忠信
孤児になった花を養子にして育てた男。
花の実の父親だが、表向きは遠い親戚で養子縁組の親子。

腐野花二階堂ふみ
9歳の頃に地震と津波で家族を失い、親戚と名乗り避難所に現れた淳悟に引き取られ、一緒に暮らすことになった少女。
淳悟は実の父親だとわかるが、成長と共に男女の関係になる。

大塩藤竜也
淳悟と花の住む町の大地主。淳悟の遠縁。
淳悟が花を引き取った時から常に花を気に掛ける。

田岡モロ師岡
淳悟と花の住む町の警察官。
大塩に助けてもらった過去を持ち、並々ならぬ恩義を感じている。

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解説・考察

淳悟が花を引き取るのに反対した大塩

私の男

©2013『私の男』製作委員会

淳悟が花を引き取ると言い出した時、大塩は反対していました。
1番の理由は淳悟が母親に暴力をふるった過去を大塩が知っていたからですが、それをハッキリ言えなかったので、独身で子育て経験のない淳悟よりも、経験のある夫婦に預ける方が良いと一般的な見解から説得しようとしたのです。

しかし、淳悟は譲りませんでした。
花の実の父親が淳悟であることは淳悟自身も大塩も知っていましたから、淳悟が「引き取りたい」と言えば大塩は黙るしかありません。
それに強く反対すると淳悟が何をしでかすかわからないため、大塩は怖くて強く言えなかったのもあるかもしれません。
花が9歳の時点で既に50歳を超えていた大塩は、当時25歳の淳悟には体力的に不利だからです。

小説では、大塩は「淳悟は子どもの頃から何を考えているかわからず、少し怖いと思うところがあり、だから花を引き取ると言いだした時も絶対に良くないと直感したが、淳悟を恐れる気持ちから反対できなかった」と発言しています。

 

血の雨

私の男

©2013「私の男」製作委員会

花と淳悟の愛の営みの最中、2人に血の雨が降り注ぎます。
この雨は、花が語っていた「淳悟が実の父親だと、体中が叫んでいる」という感覚を映像化したもののように見えました。

花は誰に教わるでもなく、血が騒ぐことで実の親子だと確信していると同時に、2人ともが近親相姦という禁忌に対する背徳感を持ちながら行為に及んでいることを、血の雨で表現していたのではないでしょうか。

言い換えると、セックスで感じる背徳感が親子である証拠で、親子の絆のようになっていたのです。

ちなみにこの血の雨は原作小説には登場しない表現です。

鮮やかな赤い小物


(引用:https://ameblo.jp

本作では赤い小物が印象的に使われています。
花の真っ赤なマフラー、淳悟が使っていた赤い傘などです。

これらの赤い小物は、花と淳悟の関係において依存している方(精神的にも経済的にも)が身に着けています

最初の赤い小物は高校生になった花のマフラーです。
花が淳悟と男女の関係になって間もない頃で、一般的な恋愛においても盛り上がる時期です。
経済的にも、大黒柱は働いている淳悟が財布を握っています。

花が社会人になった後、このマフラーは淳悟が身に着けます。
シンプルなロングマフラーだったので、淳悟が巻いていても自然に見える範囲内です。
経済面でも花が働き、淳悟は無職で頼れる人間も花だけということもあり、花への依存が高まりつつあります。

また、北海道に居た頃は花が外で淳悟の帰りを待っていたのに対し、上京後は淳悟が外で花の帰りを待っている点も、関係が逆転している様子を表しています。

ラストの赤い傘は、男性が持つにはかなり違和感のある女性的な花柄の傘でした。
この不釣り合いな雰囲気には、淳悟が見た目に気を遣うことをすっかりやめてしまったのと共に、花への依存度合が抜けていないのも表していたように見えます。

この傘、花の忘れ物かとだろうと思っていましたが、小説には淳悟が百貨店の傘立てから適当に盗んだ物だったと書かれていました。

 

豚の餌だ

私の男

©2013『私の男』製作委員会

警察官の田岡(モロ師岡)は「豚の餌だ」と言いながら、淳悟に花のメガネを見せます。
本作1番のパワーワードでしたね。

「豚の餌だ」の意味は、恐らく『花を豚箱(刑務所)に入れるための餌(証拠)を見つけたぞ』という意味だろうなと感じました。
犯人に対する憎しみがにじみ出た表現なんだろうと思います。

田岡は殺された大塩に人一倍恩を感じていた人物で、恩人を殺した犯人を憎み、密かに犯人逮捕に燃えていました。
恐らく、大塩の葬式の直後に引っ越した2人を怪しいと思っていたのでしょう。

唐突に「豚の餌だ」と言われて若干戸惑いますが、これは原作小説で田岡が犯人への憎しみや軽蔑を込めて使用した表現です。
ただ、小説ではまだ自然に登場していて雰囲気は全く違うので、引用しておきます。

「身内しか愛せない人間は、結局、自分しか愛せないのと同じだ。
利己的で、反社会的なそれらは、豚みたいに生きていくしかないんだ。
食う物だって…豚の餌だ」
吐き捨てるような声。ちらりと見ると、嫌悪感に満ちたゆがんだ顔をして、俺の手元をじっと見下ろしていた。 

小説『私の男』より引用 ※「」は田岡の発言、『俺』は淳悟です。

東京に出てきた田岡が私服だったことや、仕事を休んで来たという発言から、大塩殺しの犯人探しは警察の意向ではなく田岡が独自に捜査していたことを示します。

田岡の死体をどうやって処理したのかなどは映画では全く描かれませんが、小説では、田岡の死体を布団用の大きなビニール袋にくるんで押入れに隠し続けています。

また、田岡が淳悟に見せる大塩殺しの証拠は、映画では『花のメガネ』ですが、原作小説では『大塩のカメラ』です。
小説では、淳悟は田岡を殺した後も大塩のカメラを処分せず、花が『サムシング・オールド』を結婚式の時に持ってきてほしいと言うと、罪を思い出させるかのようにこのカメラを渡しています。

ラストの考察、原作小説との違い

私の男

©2013「私の男」製作委員会

花は高級レストランに淳悟を呼び、ダイスケとの結婚を報告します。
この時に、花は約3年前から淳悟と離れてひとり暮らししていたことが明かされます。

美郎との関係を壊されたことが、花が淳悟から離れようと決意したきっかけになったのは間違いないです。   
ダイスケとの結婚を歓迎しようとしない淳悟に、花は祝福を強要します。
花は淳悟が原因でダイスケと別れることになるのは絶対に避けたかったからです。

足をなぜるのは、花が淳悟の気を引いて、かつダイスケに気付かれないための行動です。
2人が座るテーブルを真横から撮ることで、水面下で絡み合う2人の特殊な関係性が表現されていたように見えました。
花の意図を汲み取った淳悟は、この後2人を祝福する言葉を発すると思われます。

今後の2人については映画の内容だけで想像すると、花は『普通の幸せ』を掴もうと必死なので、しばらく淳悟と接触することは無いような気がします。
あっても花が淳悟に金銭的な支援をする程度ではないでしょうか。
もしまた2人が繋がる可能性があるとすれば、花とダイスケの結婚生活に問題が起きた時です。

なお、映画のラストと原作小説のラストは違います。
小説では、花が淳悟の家を出るのは美郎との結婚式の当日です。
結婚式が終わると、花は美郎とそのままハネムーン旅行に直行して海外で数週間過ごします。

花は帰国してすぐ、淳悟と住んでいたアパートの大家からの「部屋に荷物が残っているがどうすれば良いか」という留守電を聞き、訳が分からずアパートに行きます。
淳悟は花に何も言わずアパートを解約して消えていました。
2人が住んでいた部屋は、花が置いていった私物を残してきれいに片付けられていて、花が結婚式のとき淳悟に渡した花束が台所に置きっぱなしで腐敗臭を放っていました。

花は田岡の死体が気になって押入れを確認すると、死体もきれいになくなっていてひとまず安心し、淳悟が一言も無く消えたことに絶望しながらアパートを出ます。
淳悟がどこに行き、どうするつもりなのかは花にもわからずじまいです。

淳悟は花が『普通』を求めていることを察し、自分が用無しになったから罪を一人で背負って静かに去ったのです。
淳悟はずっと父親になりたいと思っていました。
父親として、花のために出来た行動が『殺人の罪と一緒に花の世界から消えてやること』だったのではないでしょうか。

映画と小説の違いは、淳悟には花に対する執着があまり無かった所です。
映画の花と淳悟は嫉妬心が強調され、よりドロドロ感が強い作品になっていたように思いました。

以上です。読んでいただきありがとうございました。
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