映画『私の男』の解説、考察をしています!
2007年の第138回直木賞を受賞した同タイトル小説を映画化した作品。
養子縁組を結んだ親子の禁断の愛の物語。
キャスト、キャラクター紹介
(引用:https://twinavi.jp)
腐野 花…二階堂ふみ
9歳…山田望叶
津波で両親と2人の兄妹を亡くし孤児になった少女。
元々の名字は『竹中』だったが、淳悟に養子として引き取られて『腐野』に変わった。
独占欲が強く、養父の淳悟に執着する。
©2014『私の男』製作委員会
腐野 淳悟…浅野忠信
海上保安部の調理係。花を引き取って育てた男。
淳悟の両親は彼が若い頃に2人とも他界している。
「家族が欲しい」と花を養子にした後、成長していく花を女として見るようになる。
大塩の孫の小町と長年交際している。
現役引退した地元紋別の名士。
町で彼の世話になっていない人はいないと言われる程世話焼きで人望の厚い人物。
かつては道内飲食チェーン店の社長だったが、バブル崩壊の影響で倒産した。
奥尻島の避難所で初めて花を見てからずっと気にかけ、本当の孫のようにかわいがる。
田岡(警察官)…モロ師岡
尾崎美郎…高良健吾
ダイスケ…三浦貴大
花の父…竹原ピストル
大塩暁(大塩の孫)…仲野太賀
小町の同僚…安藤玉恵
章子(花の同級生)…相楽樹
美郎の先輩…三浦誠己
花の同僚…松山愛里
タクシー会社の事務員…広岡由里子
タクシー運転手…康すおん
避難所の老婆…吉村実子
海上保安官…吉本菜穂子 ほか
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あらすじ前半
(幼い花と20代の淳悟 引用:https://tsutaya.tsite.jp)
1993年。奥尻島に住んでいた10歳の竹中花は、※北海道南西沖地震で親兄弟を失いました。
その後、花が居た避難所に現れた『花の遠縁』という海上保安官の腐野淳悟(浅野忠信)に引き取られ、花は淳悟の住む紋別で育てられました。
※地震の際、一番深刻な被害が出たのが奥尻島でした。
淳悟は海上保安官という職業柄、一度海に出ると数日戻らないことが多い生活です。
花は現役引退した地元の名士 大塩(藤竜也)をはじめ、近所中の大人達のお世話になりながら育ちます。
淳悟は、大塩の孫の小町(河井青葉)と学生の頃から交際しています。
小町は結婚を望んでいましたが、淳悟にそんな素振りは一切ありませんでした。
ある日の夜。小町は淳悟のコートのポケットからプレゼント用の小箱を発見します。
小町は「婚約指輪かも」と淡い期待を抱きながらこっそり開けてみると、中身はピアスでした。
そのピアスがデザインからして明らかに小町用のプレゼントではなかったため、怒った小町は黙ってピアスを持ち去って捨ててしまいました。
町内の集会所で夕食会をした日。
小町は集会所の2階の部屋で花が淳悟の指を舐めているのを目撃し、2人が男女の関係に発展しかけている様子を見て嫌悪感を覚えました。
その後小町は、淳悟がピアスを買い直して花にプレゼントしていたことを知りました。
花も淳悟に恋愛感情があることを知った小町は、すぐに淳悟と別れて東京に引っ越しました。
数年後。花は高校生になり、淳悟とは肉体関係を持つようになりました。
新婚夫婦のような生活を送っていた2人は、ある日の早朝、大塩に2人が体を重ねている所を見られてしまいます。
(大塩に見られていたことに気付く花と淳悟 引用:https://www.video.unext.jp)
その日の下校中、花は大塩に会いました。
大塩は「一刻も早く淳悟と離れるべきだ」と言い、旭川に住む花の遠い親戚に、花が高校卒業するまで面倒を見てもらうように話をつけてきたと打ち明けます。
大塩は淳悟と花が実の親子であることなどを明かして説得しようとすると、花は「そんなのとっくに気付いてるよ!」と激怒し、大塩を海に浮かぶ流氷に突き飛ばしてそのまま逃げ帰ってしまいました。
花が産まれる約1年前、淳悟は家庭で問題を起こして遠縁である花の両親に短期間預けられていた時期がありました。
淳悟はそこで花の母と男女の仲になり、花が産まれたのです。
あらすじ後半※ネタバレしてます
淳悟が仕事から帰ってくる日。
花は警察官の田岡(モロ師岡)から、大塩が凍死死体で見つかったと知らされました。
淳悟が帰宅すると、花は大塩を殺したと淳悟に告白して「後悔してない」と言います。
淳悟は「お前は悪くない」と言い、花の頬を優しく包みました。
その後2人は逃げるように東京に引っ越し、借家の一戸建てで新生活を始めます。
淳悟は引っ越しを機に海上保安官を辞めてタクシー運転手に転職し、花は都内の高校に転校しました。
数カ月後、平日の昼間に淳悟が1人で自宅に居た時、警察官の田岡が突然訪ねて来ました。
(淳悟を訪ねてきた田岡刑事 引用:https://tsutaya.tsite.jp)
田岡は家に上がりこむと挨拶も早々に、大塩殺害の証拠になる『花のメガネ』を淳悟に見せました。
それは花が大塩を流氷に突き飛ばした時に失くしたメガネでした。
田岡が花を逮捕しに来たことを知ると、淳悟はとっさに田岡を包丁で刺し殺しました。
数時間後に帰宅した花は、田岡の遺体と淳悟の顔を見て何が起こったか察し、ふたりは田岡の遺体を密閉して部屋の押し入れに隠しました。
結末
その後、花は短大を卒業し、派遣社員として大手会社の受付嬢として働きます。
一方で淳悟は花が就職した後は無職になり、一日中酒を煽って人生に後悔する日々が続きました。
ある日、花は派遣先会社の社員の尾崎美郎(高良健吾)と親しくなり、デートを重ねるようになります。
ある夜、美郎は酔い潰れた花を送った時に初めて淳悟に会いました。
淳悟に「終電無いだろ?泊まっていけ」と言われ、2人の家に上がりました。
花と淳悟が親子ではなく男女の雰囲気を醸し出しているので、美郎は驚きで固まってしまいます。
花が寝た後、淳悟は美郎に「お前じゃだめだ」などと言ったり美郎の服を無理やり脱がせて指を舐めたりしたので、美郎は家から逃げました。
その後花と美郎は破局しました。
美郎との破局がきっかけで、花は淳悟から離れて一人暮らしを始めました。
2人が離れてから約3年後。花はダイスケ(三浦貴大)という青年と婚約し、高級レストランに淳吾を呼んで結婚報告をしました。
3年ぶりに会った淳悟は、ダイスケにも「お前には無理だ」と言い放ちます。
ダイスケが料理を注文している間、花は素足を淳悟の脚に這わせながら、口パクで「『おめでとう』は?」と祝福を強要しました。
淳悟は息を呑み、美しい花を見つめました。
感想、解説、考察など
(引用:https://eiga.com)
撮影当時19歳だったとは思えない妖艶さを見せてくれた二階堂ふみさんに、年を重ねるごとにダメ男と化していく淳悟を演じた浅野忠信さんも、相変わらず良い味出してくれてました。
二階堂ふみさんの、動物モチーフの耳当てを着けた中学生コスプレと、浅野忠信さんがどんなに若作りしても20代後半には見えなかった点以外は楽しく鑑賞できました。
冒頭の、花が流氷の海から産まれるみたいに陸に上がるシーンは、私まで冷たい水につかった時みたいに息が苦しくなりました。
気になったシーンを振り返り、原作小説とも比較しながら考察します。
解説・考察まとめ
花について
映画の花は、小説の花よりもメンヘラな部分を強調して描かれていたように感じます。
原作小説には、地震が起こる前の奥尻島で暮らす花の状況と心境がつづられています。
花の両親は奥尻島で民宿を経営していて、花には中学生の兄と小学校低学年の妹がいましたが、兄弟の中で自分だけ顔立ちが違うことや、親戚家族から花だけ好かれていないのを気にしている様子が描かれています。
その他『母の死体を蹴る花』、『花がペットボトルの水を飲まない理由』、『お金をせびる老婆のフラッシュバック』、『花が結婚したのはなぜか』についてはこちらの記事に書いてます。
淳悟について
(引用:https://woman.excite.co.jp)
淳悟もまた小説と映画ではキャラ設定が違い、より暴力的で嫉妬深い性格に変更されていました。
『淳悟の年齢』『淳悟の家族と生い立ち』『淳悟はどうなりたかったのか』『淳悟の指のにおい』『お前じゃダメ』『スーツにサンダル、赤い傘』についてはこちらに書いています。
その他の疑問
淳悟が花を引き取るのに反対した大塩
淳悟が花を引き取ると言い出した時、大塩は反対していました。
1番の理由は淳悟が母親に暴力をふるった過去を大塩が知っていたからですが、それをハッキリ言えなかったので、独身で子育て経験のない淳悟よりも、経験のある夫婦に預ける方が良いと一般的な説得しようとしたのでしょう。
しかし、淳悟は譲りません。
淳悟は花の実の父親で、それは淳悟自身も大塩も知っていましたから、大塩は黙るしかありません。
それに大塩はあまり淳悟に大きく出ると何をされるかわからないという保身もあったのかもしれません。
この時既に50歳を超えていた大塩は、当時25歳の淳悟には肉体的に勝てないからです。
小説では、大塩は「淳悟は子どもの頃から何を考えているかわからず、少し怖いと思うところがあり、だから花を引き取ると言いだした時も絶対にダメだと直感したが、淳悟を恐れる気持ちから反対できなかった」と発言しています。
血の雨、豚の餌、赤い小物
・血の雨
花と淳悟の愛の営みの最中、2人に血の雨が降り注ぎます。
この雨は、花が語った「淳悟が実の父親だと、体中が叫んでいる」という感覚を映像化したもののように見えました。
・豚の餌
「豚の餌だ」の意味は、『花を豚箱(刑務所)に入れるための餌(証拠)を見つけたぞ』という意味だろうなと感じました。
・赤い小物
本作では赤い小物が印象的に使われています。
花の真っ赤なマフラー、淳悟が使っていた赤い傘などです。
これらの赤い小物は、花と淳悟の関係において依存している方(精神的にも経済的にも)が身に着けています。
詳しくはこちらに書いてます。
ラスト考察
ダイスケとの結婚を歓迎しようとしない淳悟に、花は祝福を強要します。
それが「『ありがとう』は?」の口パクです。
花は淳悟が原因でダイスケと別れることになるのは絶対に避けたかったからです。
原作小説との違いなどについても、詳しくは以下の記事に書いてます。
以上です!お読みくださりありがとうございました。
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