映画「億男」ネタバレ解説|九十九の行方、それぞれの金の価値、芝浜についてなど考察 | 映画の解説考察ブログ - Part 2

映画「億男」ネタバレ解説|九十九の行方、それぞれの金の価値、芝浜についてなど考察

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ヒューマンドラマ

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『芝浜』の簡単なあらすじ


(引用:いらすと屋

一男に起きた出来事は、九十九が仕組んだことでした。
九十九は落語の『芝浜』に基づいた体験を一男にさせることで、お金について考えてもらおうとしていましたが、そもそも『芝浜』ってどんな話なんでしょうか?
私自身があまり落語に縁がなく、本作で初めて知ったお話です。

『芝浜』のあらすじ

魚屋の旦那は大の酒好きです。
最近は仕事もせずに酒浸りで、もうじきひと月月が経とうとしていました。
見かねた女房が旦那を説教すると、旦那は「明日から仕事に行く」と約束しました。

翌朝。旦那は女房にたたき起こされて、朝方に魚市場に出ました。
しかし、女房に起こされた時間が早すぎて市場はまだ開いていませんでした。
旦那が時間つぶしと目覚ましがてら海で顔を洗っていると、旦那が立っていた場所のちょうど真下に、革の財布が埋もれているのを見付けました。
拾って中を見てみると、42両も入っていました。
(現代の価値に換算すると、1両=13万円になるようなので、旦那は42両=546万円を拾ったことになります。)
旦那は大喜びで魚市場に行かず帰宅し、女房に拾った財布を見せました。
そして「これでしばらくは働かなくていい!お祝いだ!」と友人を集めて酒を飲みまくりました。

翌朝。旦那はまた女房に無理やり起こされました。
旦那は「大金を拾ったから、しばらく働かなくていいはずだ」と言いますが、女房は「そんなお金どこにもありませんよ。夢でも見たのかい?」と言うばかりです。
女房が言うには、旦那は昨日も働かずに友人と酒を飲んだだけで帰ってきたそうです。
ショックを受けた旦那は酒をきっぱりとやめて真面目に働く決意をします。

それから3年。
旦那は元々仕事は出来たので、やがて巷でも評判の魚屋になりました。
お客さんに褒めてもらうと旦那も嬉しくなり、今では働くのが大好きになりました。

そんなある日。旦那の機嫌がいいのを見計らい、女房は旦那に『財布についての真相』を告白します。
旦那が大金が入った財布を持って帰ってきたのは事実でしたが、女房は『まともに働いていない旦那が突然羽振りが良くなれば、窃盗を疑われて逮捕されるかもしれない』と考え、旦那が寝ている隙に大家さんに相談することにしました。
相談の結果、旦那には「財布は拾わなかった」と嘘を貫いて、財布は落し物として役所に届けていました。
その後月日が経っても落とし主は現れず、財布は拾った人の物になり、女房が役所から受け取りました。

今、財布は旦那と女房の目の前にあります。
女房は騙していたことを旦那に謝りました。
旦那は女房を責めることなく、女房に感謝しました。
「騙してくれてありがとう。
あの時の俺は舞い上がってて、疑われるかもなんて考えてもみなかった。
金をすぐに使っていたら、今頃は牢屋で震えてたかもしれねぇ。
俺はおかげで酒もやめられて、仕事は楽しくて仕方がねぇ。
今となっちゃこんな大金、何に使っていいのかも考えつかねぇや。」

女房は、旦那の新しいお店の開店資金に使ってはどうかと提案すると、旦那は喜んでそうすることにしました。

女房は3年間頑張ってきた旦那をねぎらおうと「今日ぐらいは飲んでください」と特別良い酒を用意しました。
旦那は頷いてお酒を口に近づけましたが、「よそう。また夢になるといけねぇ」と言って酒を飲みませんでした。

少々長くなってしまいましたが、こんな感じの話でした。
説明せずともわかると思いますが、一男=旦那、九十九=女房として、九十九は一男の金を持ち去りました。

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ちなみに作中で一男が演じていたのは『死神』という演目でしたね。
私でもざっくりしたあらすじを知っている演目なので、もしかしたら一番有名な話なのかもしれません。

次は『死神』についてもざっくりあらすじ載せておきます。




『死神』の簡単なあらすじ


(引用:いらすと屋)

金に困って自殺しようとしている男がいました。
死に場所に迷っていた男の前に、死神と名乗る老人が現れて言いました。
「お前さんの寿命はまだたっぷりあるから、死のうとしても死ねないよ。
お前とは先祖からの縁があるから、ここはわしが、お前さんに金儲けさせてやる。」

老人は男に『死神が見えるまじないをかけたから医者になれ』と言います。
もし患者の足元に死神が居れば患者は危険な状態だが、※呪文を唱えれば死神は消えて患者は元気になるそうです。
※呪文は演者が自由に決めて良いので、特に決まった呪文はありません。

ただし、死神が枕元にいた時は、その人の寿命はもう尽きかけているから何もしてはいけないと忠告されました。
「そうして人助けをして金儲けすればいい」と言うと、死神は男に呪文を教え、男が呪文を繰り返すと死神は消えました。

男は家に帰ってすぐに医者の看板をかかげました。
その後、男は足元に死神がいる患者に呪文を唱えて死神を消すと、患者はたちまち元気になって、男は医者として大成功しました。

しばらくは順調で裕福な生活が出来ましたが、その後『枕元に死神が居る患者』に何人も当たってしまい、男の評判はガタ落ちします。
気が付けば、男はまた貧乏になっていました。

ある日、町で有名な店を経営している富豪の使いが、男に助けを求めてきました。
男が言われるがまま患者を見てみると、やはり今回も枕元に死神がいます。
男はもう諦めるように説得しますが、使いの者は「一か月だけでも寿命を延ばしてくれたら大金を支払う」と引きません。
粘り強さと報酬に負けた男はどうしようかと考えて、手伝いを数人頼んで再び患者の前に立ちました。
男の合図で患者の布団を180度回転させて、死神の居場所が患者の足元になった隙に呪文を唱えると、死神は消えました。
すると患者はすぐに元気になり、男は多額の報酬を手に入れました。

その後、男の前にあの死神の老人が現れて、男をろうそくがいくつも並ぶ部屋に案内しました。
「このろうそくは人間の寿命だ。
例えば、この太くて長いのがお前の息子のろうそく。
お前のろうそくはこれだ。」

そのろうそくはとても短くて火も弱く、今にも消えてしまいそうでした。
男はびっくりして「はじめて会った時、俺の寿命はまだまだあると言ってたじゃないか!」と言いました。
死神老人いわく、男が富豪を救うためにズルをしたため、富豪のろうそくと男のろうそくが入れ替わってしまったそうです。

死神は「こっちに火を移せたら、お前の寿命は延びる」といい、消えて転がっていた燃え残りのろうそくを差し出しました。
男は震えながら消えかけの自分の火をろうそくに移そうとしましたが、火は移すまえに消えてしまい、男は死んでしまいました。

この話のラストは色々とアレンジされていて、演者によって様々なラストがあって楽しいです。
デフォルトのラストは『ろうそくの火を移すのに失敗して死ぬ』ですが、『火を移すのに成功して生き延びるけど、その後何かがあって火が消えて死ぬ』バージョンもあります。
気になった方は聞いてみてください(^o^)

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それぞれにとってのお金について


(引用:https://movie.jorudan.co.jp

主人公の一男はバイカムの元重役3人に会い、それぞれのお金に対する価値観を学びます。
バイカムの元重役や一男はお金のことをどう考えていたのかしらと思ったので振り返ります。

まず、一男が見出したのは『お金で性格が変わる人は沢山いて、変わった原因はお金の力のせいだと思い込んでいるが、本当は自分を変えたのは自分自身だ』ということです。
九十九が見てきたバイカムの元重役はお金によって変わってしまった人々です。
一男が会った百瀬、千住、十和子はお金によって変わった後の姿でしたが、九十九はバイカムの起業からずっと一緒だったので、3人の変化を一番知っています。
特に百瀬と千住はバイカムを起業したばかりの当時は見た目がまともだったので、それぞれが夢や信念を持って日々努力しながら働いていたんだと思います。
その判断材料が口調と見た目でしかほぼわからなかったので、個人的にはもう少し百瀬と千住のビフォーアフターを詳しく描いてほしかったです。

謎の女だったあきらは主要キャラではなかったですが、彼女にとってお金は『男の良し悪しを測るためのもの』でした。
それは、彼女がアドレス帳の名前欄に「億男」と「雑魚」と振り分けていることから判断できます。
ちなみに、本作の主要キャラの名前に数字が入っていますよね。
一男、万左子、百瀬、千住、十和子はわかりやすく、まどかはひらがなですが、漢字に直すとしたら「円」が連想できます。

あきらも何か数字と関連がないかなーと考えましたが特に何も思い浮かばないですし、関係ないのかもしれません。

百瀬にとってのお金は『実体の無いもの』です。
百瀬が一男にかけた言葉は『お金は実体があってもなくても、お前の頭の中を出たり入ったりした。お金とはそういう物』とでした。
また、百瀬はお金の力を利用して一男とあきらをもて遊ぶ言動をして『お金は実体が無い』ことを証明しようとしていましたね。
後にあきらが「百瀬さんは会社が上手くいってないらしい」とも言っていたので、それが事実だとしたら、百瀬は恐らく競馬場のビップルームにいただけで、本人も実は競馬はしていなかったのかもしれません。
じゃぁ百瀬は何をしていたのかということになりますが、現実逃避(息抜き)か、金持ちの気分に浸るため(自分がそう思い込む、または周囲に思わせるため)にあの場にいたか、ビップルームで誰かがお金儲けの話を持ってくるのを待っていたのかもしれません。

千住にとってお金は『誰もが信仰する宗教のようなもの』でした。
その価値観を象徴していたものが『ミリオネア・ニューワールド』です。
作中では特に語られていませんが、原作では、千住が『ミリオネア・ニューワールド』を立ち上げたのは脱税目的だったことが明かされています。
一番金を崇めていたのが千住だったわけですが、彼には愛人(?)と子供が何人もいて、彼女たちを養うためにもお金がたくさん必要なのかもしれません。

十和子は『お金を持っていること』に意味を見出すタイプでした。
バイカム売却で手に入れた10億円を、狭い団地住宅の一室の壁と床にびっしり入れて保管していました。

最後は一男になりますが、彼にとってお金は、最初は『家族を取り戻して元の幸せな生活に戻るために必要なもの』でした。
百瀬、千住、十和子、九十九と接して一男はお金のことを知り、万左子にも「変わった」と指摘されて、お金に翻弄されていた自分に気付くことができます。
そして九十九との再会と万左子との別れを経て、一男は初心に返り、お金にとりつかれる前の自分を取り戻しています。
九十九に3億円を帰してもらった後に一男が最初に買ったのは『娘の自転車』だったので、一男にとってのお金は『愛する人に喜んでもらうために使うもの』に変わったのではないでしょうか。

 

感想~


(引用:https://www.club-typhoon.com

シリアスめな内容でしたが、違和感がたくさんあって私はあまり楽しめませんでしたm(__)m
なので、今回は辛口(もはや悪口)になってしまうと思います。

まず、佐藤健が妻子持ちの男に全く見えません。

次に、一男がお金と九十九が消えたことに気付いた朝、床に一男がばらまいた一万円札が何枚も散らばっていたのもあり得ないと思いました。絶対に誰かが全部拾うだろと思いませんか?
私だったら絶対に拾って帰りますww
あのクシャッとなって床に落ちていた万札が、これから一男がお金を失う暗示なんだろうとは思いますが。。
もしかしたら九十九が気を利かせてお金持ちしか呼んでなくて、誰も拾わずに帰ったのかもしれませんが、それでもやっぱりお金持ちにもケチがいたりお金好きな人は沢山いるはずなので、散らばってたお金の量が異常というか、違和感がぬぐえません。

そして、パーティ中の一男とあきらの出会いも。
初対面で突然携帯奪って勝手にライン交換して「消したら殺す」とか言う人います?笑
ラブコメとかなら許容範囲だと思うんですが、誰にでも起こりそうなリアルさを演出しようとしている作品だと思ったので、余計に変に感じてしまいました。

北村一輝が演じたエンジニアの百瀬は『変人っぽさ』と『胡散臭さ』を出したかったのかなーと思いますが、毛はヅラと付け髭にしか見えなかったし、お腹も夫が妊婦体験の時に着けるようなやつとか入れてるように見えて不自然だし、『これは演技です』感がすごいというか何というか、とにかく違和感ありすぎで・・・
北村一輝 好きな俳優さんなんですけど、全然ピンときませんでした。

藤原竜也が演じた千住は、演技はいつも通りな感じで安定感はありましたが、アドバイザーの時と教祖の時とで名前は一緒なのに、わざわざ外見を変えていた意味がわかりませんでした。

最後に一男があっさり九十九を許しちゃうのも、というか盗まれてすぐの時に警察に行かない一男に違和感。
途中で九十九の狙いに気付いて探さなくなるのはわかるんですが、もし私が同じ目にあったらお金と友人が一緒に消えて、携帯も繋がらない時点で警察に駆け込むと思いますww
いくら親友だとしても会うのが10年ぶりだし、お金を持って消えた友人を信じてあえて警察に行かないって中々出来ることじゃないと思います。

そもそもストーリーの要だった『芝浜』もどんな話なのか説明が無いので、私みたいに落語を全然知らない人にとってはわかりづらい。。
というか、『あなたにとってお金とは何?』と問いたいのはわかるんですが、登場人物全員が富豪だし普通の人があまりしない体験をしてきたような人ばかりでどこかぶっ飛んでたり、『お金持ちが考えるお金とは』みたいな考え方しか出てこなくて共感できるような『お金とは』があまりなかったです。

文句ばかりですみませんm(__)m

良かった点は、佐藤健のオーラの消し方、お札を入れると何度も返って来る牛丼屋の券売機、藤原竜也の「お金は神」の辺りの演技、お金について考えさせられること、でした!

以上です。読んでいただきありがとうございました。
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