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泉の服は紫、百合子の服は黄色
百合子はいつも黄色やオレンジの服や装飾品を身に着けていることが多く、対して泉は紫や青い服を着ていることが多かったです。
色の基本をかじったことのある方は同じことを思ったかもしれませんが、黄色と紫は補色関係にある色同士です。
補色関係にある色2色の光を混ぜると白(透明)になります。
白い光から黄色の成分を取り除くと紫色になり、逆に白い光から紫の成分を取り除くと黄色になる、黄色と紫はお互いに補い合う色同士です。
泉と百合子についても、2人が補い合う関係だったことが強調されるような配色だと感じました。
ちなみに香織は茶色の服を着ていることが多かったですが、茶色も黄色の仲間で色のトーンが違うだけなので、泉と香織もまた違う形で補い合っていることが示されていたように見えました。
AI歌手『koe』との関係
泉と香織の会社で、自ら作詞作曲した歌を歌うAIが登場しました。
koeは表現豊かに曲作りするように様々な感情や記憶をインプットされますが、泉の後輩は『記憶を詰め込みすぎて何者でもなくなった』『忘れる機能を付ければよかったかも』などと嘆いていました。
『忘れる』という現象は人間や動物ならではの特徴であり、忘れることも人間らしさの一つであることがkoeを通して強調されていたように感じました。
タイトル『百花』の意味
泉と百合子が過ごした家で咲いていた数百の花のように、それが美しかったということだけを記憶に残し、やがて消えていく。 ※小説『百花』より引用
タイトル百花とは、百合子が常に部屋に飾ってきた様々な種類の一輪挿しの花のことですが、泉と百合子の記憶にある数々の思い出を意味します。
一輪挿しの花が枯れた後や、花火が終わった後になるとどんな花(または花火)だったのかは忘れがちですが、『美しかった』という思い出や感情はしっかり残ります。
百合子は認知症になり記憶のほとんどを手放しますが、たとえ認知症ではなかったとしても自分の過去を完璧に覚えている人間はほぼいません。
『百花』というタイトルには、人間が寿命を全し、人生終える時に感じる余韻のようなものが込められていたように感じました。
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