映画『愚行録』ネタバレ解説|登場人物についてなど14の考察 | 映画鑑賞中。 - Part 2

映画『愚行録』ネタバレ解説|登場人物についてなど14の考察

ミステリー

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光子にまとわりつく手

ベッドに寝ている光子の全身に多くの手がはい回る描写が何回かあります。
不気味な腕が何本も出てきて光子を覆っていたのは、多くの人間に利用されてきた光子が心に抱えた闇を現わすとともに、光子もまた被害者であることを強調していたように見えました。
まとわりつく手が体毛のない中性的で不気味なぬるっとした手だったことも、光子を利用した人たちを男女問わず抽象的に表していたように感じます。

 

渡辺正人と田向浩樹


(引用:https://twitter.com

田向浩樹の友人だった渡辺は、繰り返し田向を『良い奴だった』と言っていましたが、渡辺が語ったエピソードは一般的にみると性格の悪さが露見するもので『良い奴』という言葉がひどく浮いて感じました。

しかし、渡辺自身が田向を良い奴だと思っていたのは本当だったようで、過去のエピソードからも2人の考え方が似ていたのは明らかです。

例えば新入社員だった山本礼子の件では、渡辺は「お互い様」と言っていました。
つまり、田向と渡辺は山本に酷いことをしたけれど、山本も2人に対して同じくらい酷いことをしたと言いたいのです。

田向と渡辺が気に入らなかったのは、山本の恋愛観や結婚観です。
2人は山本が結婚を急いでいることや、社内の男性なら誰でも良いと思っていることを感じて嫌悪感を抱きました。

山本は渡辺のアプローチにも簡単に落ちていますし、彼女が誠実であれば2人の作戦自体も成り立たないのです。

渡辺と田向にとっては、そういう山本の誠実さに欠ける行動に対してそれなりの対応をしただけなので、2人はむしろ、彼女の性格を矯正してやった位に思っていたのでしょう。

渡辺の言う『良い奴』というのは、価値観の合う数少ない友人という意味だったのでしょう。

山本礼子のキャラクターというか行動は、光子と非常によく似ています。
また、結婚に引いてしまう男性心理や、結婚したいことがにじみ出る女性は、男性から『痛い女』認定されてしまうこともよくわかります。

男性だって、異性の肩書きしか見ていない女性と結婚したいとは思いません。

また原作小説で、渡辺は他にも田向のエピソードをいくつか語っているのでざっくり紹介します。
田向と渡辺が入社して数年後、田向は合コンで出会った女性(山本ではない別の女性)に本気の恋をしますが、その女性は合コンに同席していた田向の同期の男Aとの交際を決め、田向は振られてしまいます。

すると田向は上司に根回しを行い、その同期Aを出世争いから脱落させて地方に転勤させてしまいました。

田向は元々同期Aを内心見下していて、恋でも仕事でも絶対に負けるはずがないと思っていたので、プライドが傷ついて逆上したのです。

渡辺は田向本人からAの左遷の裏話を聞き、田向のプライドの高さと執念深さに驚きました。




夏原友季恵が尾形孝之と交際した理由


(引用:https://mdpr.jp

夏原、宮村、尾形の関係について考えます。
まず、元恋人の尾形が発言していたように、宮村はかなりの『見栄っ張り』なので、宮村が夏原をどう思っていたかについては尾形の見解『かなり対抗意識を燃やしていた』が正しいでしょう。

夏原と宮村は親しかったわけでもないのに、宮村が夏原の性格の深い部分まで考察できていたのも、彼女が夏原を注意深く観察していた証拠です。

感情を表に出さない夏原は、宮村をどう思っていたのか正確に捉えるのは難しい(特に映画だけだと)ですが、夏原は尾形が宮村を嫌いになるように仕向ける発言をしています。
それが「宮村さんは尾形さんの恋人なら、もう少し尾形さんを褒めてあげても良いのにね」です。
裏を返すと、宮村は周囲に尾形のグチを言っていると尾形本人に告げていることになります。

この忠告だけなら夏原は『良い人』の範囲を超えませんが、夏原は宮村と尾形を別れさせるためだけに尾形と短期間交際しているので、やはり夏原もまた田向と似て腹黒いようです。

夏原は誰からも好かれていないと気が済まない完璧主義者で、宮村はそういう夏原の性格を見抜いたからこそあえて親しくしなかったと思われますが、宮村の態度が気に入らなかった夏原は、宮村の恋人を奪うことでマウントを取ったというのが実際だったのではないでしょうか。
自分の方が格上であることを、尾形を宮村から奪う形で示したのです。

ちなみに尾形と夏原の交際期間は映画では明かされませんが、小説では2人は約1か月しか交際しておらず、尾形は夏原と手をつなぐことすら許してもらえなかったと語っています。

 

稲村恵美と田向浩樹


(引用:https://eiga.com

田向の大学時代に交際していた稲村恵美は、田中を「犯人がわかった」と言い呼び出しますが、犯人が誰なのかについては明言しません。
その代わり、恵美は「その人、自分が単なる入れ物に過ぎないことに気付いて、壊れちゃったんでしょうね」という発言の後、彼女の子供の父親が田向であることも暗に示しています。
つまり恵美は『恵美と田向の不倫に気付いた田向友季恵が一家心中したというのが事件の真相だ』と言いたいのです。

恵美によると、田向は性格の異なる女性数人と同時に付き合うことでバランスを取っていたらしく、簡単に言うと浮気性タイプでした。
これは恐らく、田向が本気になれる女性と出会えていないせいだと思われます。

一方で、お互いの結婚後も関係が続いていたことや、恵美の「父のために父の会社の社員と結婚した」という発言などから、少なくとも恵美の本命は大学時代からずっと田向だったであろうことが言葉の端々から感じられました。

また、恵美が田向を『2番目の彼氏』にすることにこだわったのも、元々は田向が恵美を『2番目の彼女』にし続けた(二股をやめなかった)ことに対する仕返しでした。

本命の田向が死んでも恵美がどこか冷静だったのは、恐らく彼女が長年抱き続けていた田向と夏原に対する嫉妬や憎しみから解放された安心感が勝っていたからではないでしょうか。
恵美は心の奥底では、田向へ愛を止められずいっそ殺してしまいたいほどの愛憎入り混じる感情があり、その妻に選ばれた夏原のことも殺したいほど嫉妬していたのです。

自信満々に事件の真相を推理した恵美でしたが、真相とは違っていたため武志に殺されることなく取材は終わります。

 

光子はなぜ有名私立に進学できた?

映画で明かされていた武志と光子の生い立ちだけだと、2人は貧乏で私立大学の学費をどうやって工面したのか謎ですが、小説にはもう少し詳しい2人の生い立ちが書かれていたので気になった方のために紹介します。

光子が産まれる頃、すでに両親の関係は破綻して別居していました。
母の孝子は、武志と生まれたばかりの光子を祖母父に預けて愛人と暮らします。
武志と光子は祖父母の元でしばらく穏やかな暮らしができましたが、光子が4歳の頃に祖母が癌で倒れて面倒を見られなくなり、2人は孝子の元に返されます。

ほぼ同時期、孝子の夫が孝子の元に舞い戻ってきて家族4人暮らしが始まります。
そして武志と光子は虐待を受けるようになり、特に光子は父親からの性的虐待に加えて、母からも泥棒猫呼ばわりされて、ひどい環境に置かれます。(映画では、光子への性的虐待を孝子が知ったのは夫が出て行った後ですが、小説では早い段階で気付いていたものの放置しています)
武志は母親からは比較的可愛がられていましたが、どちらかというと光子を傷つけるために武志は過剰にかわいがられていて、真の愛情ではありませんでした。

その後、武志が高校生の頃に孝子と夫はようやく離婚して、孝子は新しい恋人と生活するために再び武志と光子を一人暮らしになった祖父に預けます。
この祖父が一流会社の元重役だったため、それなりにお金がありました。
光子が大学入学する頃に祖父は他界していましたが、2人にまとまった遺産を残してくれていて、その遺産で光子は私立大学に通うことができました。

 

次のページに続きます!

次は宮村が殺された理由、光子と夏原の関係、光子がよく笑う理由、犯行動機などです。




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