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コモドゥスがルッシラに添い寝をねだる
(引用:https://cannedcats.exblog.jp)
闘技会が開かれる前日の夜、コモドゥスは実姉のルッシラに子供っぽく添い寝をねだり、断られます。
するとコモドゥスはキスをねだり、ルッシラは仕方なくおでこにキスをして素早く立ち去ります。
このとき、コモドゥスは一見弟っぽくふるまっていましたが、これはルッシラが自分に気があるかどうか(恋愛の相手として)を見定める行動だったように感じます。
コモドゥスは明らかにルッシラをひとりの女性として見ていました。
それを感じ取ったルッシラは驚きと共に嫌悪感を抱いていたがよくわかるシーンです。
マキシマスがプロキシモから逃げなかった理由
(引用:https://renote.jp)
マキシマスはコモドゥス反対派のグラックス議員に「プロキシモに金を払って剣闘士団から解放して欲しい」と訴えました。
結局この作戦は失敗に終わりますが、マキシマス程の人物なら、時間もお金もかかる方法を取らずに、剣闘士団からしれっと脱走できたのではと思いました。
なぜマキシマスは売買を経て解放される必要があったのでしょうか。
私が考える理由は以下です。
マキシマスはプロキシモの元から静かに去る必要がありました。
マキシマスが逃亡して騒ぎになってしまうと、コモドゥス暗殺をしずらくなってしまいます。
そのため、プロキシモの説得はどうしても必要でした。
しかし、プロキシモも生活のために剣闘士団を運営しているため、人気グラディエーター(金の卵)であるマキシマスが抜けるのを簡単に許すとは思えません。
そこでマキシマスはお金が大好きなプロキシモに大金を払えば、さすがにプロキシモも納得するだろうと考え、お金を持っているグラックスに相談する流れになったのでしょう。
また、マキシマスは『家族を奪われ絶望し、死にかけていたマキシマス自身を生かしてくれたこと』『コモドゥスに近づくチャンスをくれたこと』『観客を味方につける重要性を教えてくれたこと』でプロキシモに恩があるので、謝礼金の意味合いもあったかもしれません。
最後にプロキシモがマキシマスのために命を張ったのは恐らくマキシマスにとっても少し意外で、プロキシモの中にも人情が残っていたことを示すシーンです。
コモドゥスとマキシマスの最後の戦い
コモドゥスとマキシマスの一騎打ちのとき、致命傷を負ったマキシマスは戦いの途中で何度も意識が飛びます。
焼けたはずの我が家が見え、マキシマスを待っている家族の姿が見えてきます。
これは、出血多量で死にかけているマキシマスが、じわじわと死に近づいていることを意味します。
マキシマスが家族と再会したとき、魂は完全に身体から抜け出て、家族の元(あの世)へと旅立ちます。
切ないですが、家族との再会はマキシマスが望んでいたことであり、復讐を果たして何の未練もなく旅立つことができました。
ラストシーンのジュバのセリフ
マキシマスのお墓を作った後、マキシマスの友人だった奴隷のジュバが「また会える。いつかな。」とつぶやいて物語は終わります。
当時のローマで実際に生まれ変わりや来世といった概念があったかはわかりませんが、本作ではそういった死生観が登場します。
ジュバの言葉の意味は「あの世、もしくは来世でまたいつか再会しよう」という意味です。
マキシマスとジュバがプロキシモの所にいたときは、「家族とは離れ離れになってしまったけど、必ずまたいつか会えるから頑張り続けよう」とお互いに励まし合っていました。
ジュバはマキシマスに思いを巡らせ、この言葉を最後に送ったのでしょう。
実在の人物について
本作は史実を元にして作られたフィクションですが、中には実在した人物も多く登場します。
歴史や時代背景が忠実に描かれているため、学校の授業でもよく教材として活用されている作品です。(私も本作を初めて見たのは授業でした。)
マキシマスや剣闘士団関連は架空の人物ですが、身分が高いコモドゥスやアウレリウス、ルッシラは実在した人物がモデルです。
以下、コモドゥスをメインにして紹介していきます。
文献によれば『コンモドゥス』が正しい名前のようです。
コンモドゥスは血筋だけを見れば、これほど皇帝にふさわしい人物はいないと言われるほどのやんごとなき生まれでした。
映画ではアウレリウスはコモドゥスを厳しく育てた風に描いていましたが、実際は違っていたようです。
コンモドゥスには兄がいたものの若くして亡くなり、コンモドゥスも幼少期から体が弱かったため、アウレリウスはコンモドゥスにまで死なれてはたまらないという思いから過保護に育てました。
それ故、コンモドゥスは優秀な将軍でもなかなか得られないような数多くの称号をアウレリウスから授けられていますが、称号の数と同じ位コンモドゥスに実力があったかどうかは疑問視されています。
こうして溺愛されて育ったコンモドゥスは、アウレリウスが亡くなった後に19歳という若さで皇帝になりました。
賢帝の1人だったアウレリウスも『賢が子賢ならず』に漏れず、子育ては上手ではなかったのです。
皇帝になったばかりの頃は、父から教わってきた帝王学を活かして良い感じに治世を行いましたが、まだ若かったコンモドゥスをいくつかの悲劇が襲い、徐々に精神を病んでいきます。
コンモドゥスの実の姉ルキッラは、映画でのルッシラにあたる人物です。
このルキッラは出世欲が強く、父アウレリウスに似て非常に賢くプライドが高く、裏で皇帝の座を狙っていました。
ルキッラはコンモドゥスが思い通りにならないことを知ると、コンモドゥスを暗殺して皇帝の座を奪おうと計画します。
その計画は実現する前に明るみになり、ルキッラは島流しの刑になりますが、実の姉から命を狙われたことでコンモドゥスは深刻な人間不信に陥りました。
コンモドゥスは、ルキッラに協力していた疑いのある人物は問答無用で全員死刑にしました。
主犯のルキッラだけ殺さなかったのは変な感じですが、実の姉だったから殺せなかったんでしょうね。
この非道なやり方が波紋を呼び、コンモドゥスは宮廷内で孤立して宮殿から郊外へ移り住んで引きこもりのようになります。
コンモドゥスが不在の間、政治に関することはコンモドゥスが信頼を置いていた親友の部下クレアンデルが代理で行いました。
※クレアンデルは映画には登場しません。
しかし、クレアンデルは権力狙いでコンモドゥスに媚びていただけで、かつ人の上に立ってはいけないタイプでした。
クレアンデルは『皇帝からの絶大なる信頼』を振りかざして気に入らない人物を勝手に処刑したり、賄賂で私腹を肥やしたりと好き勝手します。
この頃、コンモドゥスは政事をクレアンデルに任せきりにして弓矢や投げ槍などの武芸に没頭していました。
クレアンデルの暴君ぶりに周囲が耐えられなくなり、もう1人いた実の姉がコンモドゥスを説得してクレアンデルは処刑されました。
コンモドゥスは代理人が居なくなったため仕方なく宮殿に戻って皇帝としての職務を再開しましたが、人間不信は治っておらず、宮殿からほとんどの人間を追い出したり処刑してしまいます。
暇さえあれば闘技会を開いて磨き上げた武芸を披露したり「私はヘラクレスの生まれ変わりだ」と言い始めて改名したりします。
当時、有名な神の生まれ変わりを主張することは、自分自身の価値を上げるためによく使われた手段だったそうです。
これらの行動はコンモドゥスが身を守るための演出だったのではという見解もあるようですが、ただ注目されたくて奇抜な行動を取っていたという意見が濃厚のようです。
最終的にははオオカミの毛皮をまとって過ごすようになりますが、方向性を見失っていくコンモドゥスを軌道修正しようとする人物は誰もいませんでした。
オオカミの毛皮をまとうコンモドゥス(引用:https://ja.wikipedia.org)
ちなみに、映画ではコモドゥスは武道が苦手な風に描かれていました。
実際コンモドゥスは幼い頃は体が弱かったため運動とは無縁だったようですが、引きこもって訓練を積み、闘技会で周囲に披露した武術の腕前はかなりの出来栄えだったそうです。
その後もコンモドゥスの『怪しい奴は全員排除する方針』は収まらず、コンモドゥスはついに愛人マルキアも疑って暗殺リストに加えました。
そして暗殺リストをマルキア本人に見られてしまい、暗殺リストに書いたメンバーから逆に暗殺されて31歳で生涯を閉じました。
コンモドゥスの死後、元老院たちはコンモドゥスに対して「ダムナティオ・メモリアエ(=記憶の破壊)」という措置を決定します。
ローマ時代においては通常、皇帝が亡くなった後はその皇帝を神として崇め、その銅像を祀ったりするものでしたが、「ダムナティオ・メモリアエ」は、コンモドゥスが皇帝だったという事実を記録から抹消する、という最大の罰だったようです。
議員、元老院、使用人を沢山殺して相当な恨みを買っていたので仕方ないかもしれません。
以上です。読んで頂きありがとうございました。
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参考記事
Wikipedia:コンモドゥス
古代ローマライブラリー:コンモドゥス―実の姉に命を狙われ、側近に政治を任せきりだった若き剣闘士皇帝―
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