映画『ハンニバル』の解説考察をしています!
前作『羊たちの沈黙』での出来事から10年後の話。
FBI特別捜査官に成長したクラリスが再び猟奇殺人者のハンニバル・レクターと対峙する。
制作年:2001年
本編時間:131分
制作国:アメリカ
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・マメット、スティーヴン・ザイリアン
原作小説:『ハンニバル』トマス・ハリス著
刺激の強い殺傷・流血および肉体損壊描写が見られるためです。
主要キャスト紹介
© 2001 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. and UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
クラリス・スターリング…ジュリアン・ムーア
FBIの中堅捜査官。
結婚も子供も諦めて必死に働くが、周囲に利用されてしまうことが多くなかなか出世できずにいる。
メイソン・ヴァージャーの指名で逃亡中のレクター捜索の担当者になる。
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ハンニバル・レクター…アンソニー・ホプキンス
猟奇連続殺人犯の精神医学博士。
クラリスと出会った7年前の事件を利用して脱獄し、逃亡生活中。
フィルに名前を変えてフィレンツェにある図書館で司書見習いとして働き始めた。
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メイソン・ヴァージャー…ゲイリー・オールドマン
レクターが起こした4件目の事件の被害者で大富豪。
街の権力者を金で操り、逃走したレクターを捕まえようとしている。
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ポール・クレンドラー…レイ・リオッタ
ヴァージャーの息がかかった司法省の男。
女性やマイノリティを蔑視する傾向が強い。
10年前の『バッファロー・ビル事件』当時、クラリスに犯人逮捕の先を越されたことを未だに根に持っている。
パツィ刑事…ジャンカルロ・ジャンニーニ
アレグラ(パツィの妻)…フランチェスカ・ネリ
コーデル(ヴァージャーの専属医)…ジェリコ・イヴァネク
イヴェルダ(ギャングのリーダー、赤ちゃんと銃の女)…ヘイゼル・グッドマン
ピアソル捜査官(FBI)…デヴィッド・アンドリュース
ヌーナン長官(FBI)…フランシス・ギナン
エルドリッジ捜査官(DEA)…ジェームズ・オファー
スリの青年…エンリコ・ロ・ヴェルソ
カルロ(養豚)…イヴァノ・マレスコッティ ほか
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※このページの情報は2022年7月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。
あらすじ紹介
前作『羊たちの沈黙』まとめ
FBI研修生のクラリス・スターリングは、同じ特徴を持つ若い女性ばかりが狙われる連続誘拐殺人事件『バッファロー・ビル事件』の捜査手伝いで、当時終身刑で収監されていた連続殺人犯の元医師ハンニバル・レクターに捜査協力を求めました。
レクターはクラリスを気に入って協力し、彼の驚異的な推理力、洞察力のおかげでクラリスは実習生ながら見事犯人を逮捕し、当時誘拐されていた権力者の娘も救出する大きな功績を残しました。
しかし、レクターはこの事件での騒動を利用して脱獄、姿をくらましてしまいました。
クラリスは誰にも打ち明けたことの無いトラウマをレクターに知られ分析されたことで、レクターが彼女の苦しみを知る唯一の存在になりました。
クラリスはレクターと心が通じる感覚を覚えて親愛の情を抱きかけますが、心の奥底に封印しました。
あらすじ①:ハンニバル・レクターを恨む男ヴァージャー
前作の出来事から10年経った現在、クラリスはアメリカ メリーランド州ボルティモアでFBI特別捜査官として活躍しています。
クラリスは現地麻薬組織のリーダー イヴェルダの取り押さえ指揮を任されますが、女性が指揮を執るのが不満だった男性捜査官がクラリスの命令を無視して暴走し、赤ちゃんを巻き込んだ銃撃戦が起きてしまいました。
この銃撃戦で、クラリスは興奮したイヴェルダを射殺せざるを得なくなった上に、彼女が信頼する捜査官が命を落としました。
赤ちゃんは無傷で保護されたものの、クラリスは『子どもを抱く女性に発砲した』と世間から非難を浴び、さらにイヴェルダの遺族からも訴訟を起こされてしまいます。
そんな中、大富豪のメイソン・ヴァージャー(ゲイリー・オールドマン)が動いて訴訟問題を金で解決し、見返りに『クラリスにハンニバル・レクターの捜査指揮をして欲しい』と求めました。
「もし断ったら上院議員を動かしてFBIに査問を行う」とも脅されたので、クラリスは上司からも命じられてヴァージャーの言う通りにしました。
ヴァージャーはレクターの4件目事件の被害者で、唯一の生存者です。
レクターとヴァージャーは医者と患者として出会いました。
ある日ヴァージャーはレクターに麻薬を与えられてハイになり、レクターに命じられるがまま鏡の破片で顔の皮を剥いで犬に食べさせました。
ヴァージャーは気絶して首吊り状態で放置されますが、一命はとりとめました。
ヴァージャーは美しい顔を失った上、この時の長時間の首吊りが原因で重度の身体障害者にさせられたことでレクターに強い恨みを抱いています。
ヴァージャーは警察上層部に働きかけ、FBIが定めて捜査に力を入れる『10大凶悪犯』10人の1人にレクターを加えさせて『情報提供者に懸賞金300万ドル』とネットに掲載しました。
あらすじ②:レクターの居場所 金目当てのパッツィ刑事
その後すぐ、レクターからクラリス宛てに手紙が届きます。
手紙には「君の中傷記事を読んだ」「私は社会復帰する」「私の捜査を君が担当してくれると嬉しい」などの世間話が書かれていました。
クラリスは手紙から漂う特徴的な香りを分析してもらい、それが特注品で限られた地域でしか買えないスキンクリームの香りだと突き止めると、購入可能店をリストアップしてしらみつぶしに調べます。
ハンニバル・レクターは、そのスキンクリームが買えるイタリア トスカーナ州フィレンツェに潜伏中で、現在は社会復帰のため『フェル』という偽名でカッポーニ宮図書館の司書に応募し、見習いとして働いていました。
一方、フィレンツェ警察の刑事パッツィはフェルの前任者の司書が失踪したという通報がきっかけで、フェルの正体がハンニバル・レクターであることを知りました。
懸賞金に目がくらんだパッツィが指定の番号に電話すると「レクターの指紋が付いた物を提出し、居場所を教えてくれたら懸賞金の一部を払う」と案内されました。
あらすじ③:パッツィ刑事の失敗
レクターは用心深く、しれっと指紋採取するのは無理だったので、パッツィはスリが得意な盗人青年に指紋が着きやすいブレスレットを渡して「上手く指紋が取れたら金を払う」と命じました。
青年は指紋採取に成功しますが、尾行に気づいていたレクターに刺されてしまいます。
パッツィはブレスレットを回収すると、失血死した青年を放置して去りました。
ヴァージャーはパッツィのおかげでクラリスよりも早くレクターの居場所を特定すると、イタリアのサルデーニャ島に住まわせていた何でも屋のカルロ一家に連絡し、レクターを生け捕りにしてヴァージャーの住むボルティモアに連れてこいと命じました。
その後すぐ、パッツィは銀行を通してヴァージャーから10万ドルをもらいます。
ヴァージャーは「あとは私の部下がレクターを生け捕りにできたら残りの290万ドルを払うから、大人しく待ってろ」と言いますが、パッツィはカルロと合流して一緒にレクターを捕まえることにします。
パッツィを怪しんでいたレクターは、誰も居なくなった図書館でパッツィを捕まえて尋問し、ヴァージャーに居場所がバレたことを知りました。
レクターはパッツィの腸を裂いて外に首吊りにし、七つの大罪の『強欲』の罪人に課される処刑方法を再現します。
こうしてパッツィは彼の祖先と同じ死に方をしました。
レクターは図書館内をうろついていたカルロの弟も殺すと、クラリスに会うためフィレンツェからボルティモアに移動します。
あらすじ④:レクターに迫るヴァージャーとクラリス
数日後。クラリスはヴァージャーの企みにより『証拠隠蔽の罪』で停職処分を食らいました。
司法省のクレンドラー(レイ・リオッタ)がヴァージャーに買収されて偽造証拠をクラリスのデスクに隠したのです。
その頃ボルティモアに着いていたレクターは、留守中のクレンドラー宅に侵入して郵便物をチェックし、その中の1通を持ち去りました。
その後レクターは謹慎中のクラリスに接触し「私を逮捕すれば君の昇進は確実だ」とささやいてクラリスと鬼ごっこを楽しみます。
レクターはそのまま身を隠そうとしましたが、クラリスを見張っていたカルロに見つかってしまい拉致されました。
レクターはヴァージャー邸の敷地内にある倉庫に連れ去られ、ヴァージャーがこの日のために準備していた『人間の叫び声と食欲が直結している巨大イノシシ』にレクターを食べさせようとします。
そこにクラリスが駆けつけますが、ヴァージャーの部下に肩を撃たれて気絶してしまいました。
レクターは自らの拘束を解き、クラリスを抱き上げてイノシシたちから離れます。
異変に気付いたヴァージャーは、専属医コーデルに「レクターを撃ち殺せ」と命じますが、コーデルは犯罪者になりたくないため困惑します。
レクターはコーデルに「ヴァージャーをイノシシに食わせろ。私がやったことにすれば良い」と悪魔の言葉をささやきます。
コーデルは少し考えると、黙ってヴァージャーをイノシシの囲いに突き落としました。
あらすじ⑤:結末
数時間後、クラリスはクレンドラーの別荘の2階寝室で目覚めました。
レクターはクラリスにモルヒネを投与して肩の怪我を処置した後、彼女を晩餐会の正装にドレスアップさせていました。
クラリスはまだモルヒネが抜けず、まともに歩くこともできません。
ひとまず警察に電話して応援を呼んでから1階に降りると、レクターは銀食器を美しく並べて晩餐会の支度をしていました。
クラリスが来ると、レクターは事前に捕まえて麻薬漬けにし、頭蓋骨を切開していたクレンドラーから脳の一部を切取り、焼いてクレンドラー本人に食べさせます。
麻薬で状況把握が出来なくなっているクレンドラーは「美味い」と言いながら自分の脳を食べました。
警察の気配が近づいてくると、レクターは逃亡の準備に移りました。
クレンドラーは意識を失っていて生死不明です。
クラリスはレクターを捕まえようと彼の片手に手錠をかけますが、レクターは応援が来る前に逃げてしまいました。
その後、追手から逃れたレクターは飛行機に大勢の客と一緒に乗っていました。
レクターは手錠から逃れるために片手を切断したらしく、右手にはしっかり包帯が巻かれています。
レクターが機内で手作り弁当を広げていると、隣に座っていた女の子がレクターのお弁当に興味を示します。
その中には、クレンドラーの脳のステーキも入っていました。
女の子はその灰色の物体を人間の脳とは知らずに食べたがるので、レクターは「『新しい食べ物に挑戦するのは大事だ』と、私の母がよく言っていた」と言いながら、女の子に脳ステーキを食べさせました。
解説・考察
紳士的で知的で猟奇的なハンニバル・レクター博士の魅力がたっぷり楽しめましたが、復讐者ヴァージャーがせっかくゲイリー・オールドマンだったのにお顔がほぼ加工されてしまっていて面影が無く残念でした。
せめてヴァージャーが被害に遭う前の映像がもう少しあると嬉しかったかもと思いつつ見てました。
以下、気になった点を考察します!
メタファー:赤ちゃんを抱く女性
クラリスが赤ちゃんを抱くイヴェルダを撃つのは、クラリス自身が結婚や子どもを諦めたことを表現するメタファーだったように感じました。
騒動のあとの会議で、クラリスの「私は選択し、子どもを抱く母親を撃った。それは後悔している」という発言からも、彼女は女としての幸せを捨て、それを内心後悔していることを暗示する発言のように思えます。
ヴァージャーがレクター博士の患者だった理由
ヴァージャーはクラリスに会った時、唐突に彼が参加していた子どものキャンプの話をしようとしました。
キャンプについては「子どもは飴玉ひとつのために何でもする」という冒頭しか聞けず詳しくわかりませんでしたが、ヴァージャーの回想に登場した若きレクターは「子どもを手懐ける笑顔を見せてくれ」と言いました。
また、ヴァージャーは担当医師のはずのレクターにも自慰行為を見せつけていたことから、恐らく彼は重度の性依存症者で、子ども相手でも見境なく性欲を発散させてしまうのが原因でレクター(精神科医)のお世話になっていたと予想できます。
ヴァージャーは奇跡的に生きていましたが、首吊り状態で放置されていたため重度の障害が残り、身体をまともに動かせなくなりました。
ヴァージャーがレクターを恨むのは当然ですが、最も根に持っていたのは性的不能になったことではないかと推測しています。
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次はヴァージャーの職業、バーニーについて、宙返り鳩についてなどです。
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