アニメ映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995)の解説・考察をしています!
「ガベル共和国とマレス大佐とは?」「プロジェクト2501とは?」「素子にそっくりな他人」「素子が海に潜る理由」「素子が融合を受け入れた理由」などについて書いてます。
鑑賞済みの方のための解説記事です。まだ見ていない方はご注意ください。
制作年:1995年
本編時間:85分
制作国:日本
監督:押井守
脚本:伊藤和典
原作漫画:『攻殻機動隊』士郎正宗 著
主題歌:『謡』川井憲次
出演:田中敦子、大塚明夫、山寺宏一 ほか
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解説、考察や感想など
本作は補足説明的な台詞が少なく、説明があっても内容が複雑なので意味がわからないと感じた方も多いと思います。
私が見ていてわからないorわかりづらいと感じたことを調べてまとめました。
ガベル共和国とマレス大佐
ガベル共和国という国と、マレス大佐という人物がほぼ名前だけ登場します。
ストーリーに絡んできますが、外務大臣と荒巻部長との会話だけで国と人物の説明がなされず、わかりにくかったので整理します。
ガベル共和国は最近、軍事政権から民主政権に変わった発展途上国です。
その旧軍事政権の親玉がマレス大佐でした。
新政権に変わってからマレス大佐は本国に亡命を希望して居座っています。
本国は現在それを黙認・放置している状態です。
本国としては新政権のガベル共和国と国交を始めたいと考えていますが、マレス大佐の亡命を黙認している状態では国交が始められません。
荒巻が外務大臣から「マレス大佐を追い出せ」と命じられたのはそのためです。
そして、マレス大佐は本国に居座り続けるために、新政権のガベル共和国と本国の国交を邪魔しようとしていたのです。
冒頭の6課と9課の突撃がかぶった理由は?
冒頭で、ホテルの一室に6課部隊が突撃して外務官に亡命の手引きをやめさせようと交渉する中、素子が光学迷彩で突撃して6課の目の前で外交官を射殺します。
6課も9課も外交官の阻止が目的で、行動がかぶっていて不思議な感じです。
こんなことになったのは、公安6課の仕事に政府高官の誰か(恐らく外務大臣)が介入して、9課に「6課の突撃に乗じて外交官を暗殺しろ」と命じたからなのでしょう。
政府というか外務大臣は6課をカモフラージュ的に動かして『6課の突撃に乗じてテロリストに暗殺された』と報告するための、外務大臣による自作自演だったのです。
『プロジェクト2501』は何だった?
作中で明かされていましたが、少々複雑だったので整理します。
プロジェクト2501は、本作の事件が起こる約1年前にアメリカと本国公安6課が協力して人形使いを製作した時のプロジェクトの名前です。
人形使いは元々、国交を上手く進行させるため(国交の邪魔を秘密裏に排除するため)に作られたハッキングAIでした。
そして、今回6課はマレス大佐を本国から上手いこと追い出すために人形使いを使おうと計画してアメリカから輸送しましたが、本国到着後に人形使いは逃げてしまったのです。
人形使いを自力で捕まえるのが困難と判断した6課は、真相を伏せたまま9課に人形使いを捕まえるように協力を仰ぎました。
イシカワが言った通り、9課は6課の尻拭いをさせられていたということです。
冒頭で素子が殺した外交官が逃亡の手助けをしようとしていた男は、プロジェクト2501の一員でもありました。
恐らく逃げようとしていた男は人形使いに自我が芽生えた責任(不具合の責任)を押し付けられかけていたか、人形使いが逃亡した責任を押し付けられかけていたかのどちらかで、逃げたがっていたのではないでしょうか。(自信ないですが)
素子について
素子が街を移動中、自分にそっくりな他人を見かける
中盤で、バックに主題歌が流れて街の風景が描かれるシーンがあります。
素子は街中を移動中、彼女自身と外見がそっくりな他人を見かけます。
素子が使用している義体の機能は一級品ですが、恐らく外見は一般人に紛れられるようにあえて一般市場に出回っているタイプの容姿が使われていたのでしょう。
素子は自分と同じ外見の他人を見かける度に、彼女自身の『個性』がどこにあるのか考えますが見つけられず、自分はもう『人間』ですら無く、機械なのではないかと不安を抱きます。
私から見れば素子は個性の塊のように感じますが、本人からしたら全て『標準的』でしかないというのは少し悲しいです。
海に潜る素子
素子が海に潜る自殺行為を日課にしていた理由は、心のどこかで死ぬこと(素子いわく、限界から解放されること)を望んでいたからだと思われます。
そして人形使いはネットのアクセス履歴などから素子を発見し、自分のパートナーに最適な相手と感じ、素子に会うべく動き始めます。
恐らく人形使いが素子を見つけた瞬間は、冒頭で素子が初登場するよりも前の、画面が緑がかっていてヘリが飛んでいるシーンです。
あのヘリに人形使いが輸送のために乗せられていて、入国と同時にネットにアクセスして素子を見つけ、会いたくなって脱走したのです。
ウィリス博士の「もしかしたら片思いの相手でもいたのかもしれん」という冗談めいた推理は的を得ていて、人形使いは素子に会いたくなって脱走したのです。
ウィリス博士が人形使いの生みの親なので、一番人形使いの行動を理解していたのでしょう。
破壊されていく生命の樹
素子と戦車の戦闘で、ミュージアムの壁に飾られていた生命の樹(進化の系統樹)が銃で撃ちぬかれていくシーンがあります。
これは、素子が通常の進化の形を取らずに全く別の形で進化することを暗示していたと思われます。
人形使いと融合したら、素子の子どもはどうなる?
人形使いは彼が得る生殖能力について「ことあるごとに素子が自分の変種をネットにばらまく」と言いました。
『ことあるごと』がどういうことがあるごとなのか疑問ですが、少なくとも人形使いは意識だけの存在で、素子も身体を捨てたので、通常の哺乳類の妊娠・出産のように、子宮を通して子どもを産むことではありません。
素子の人形使いと融合したDNAがネットに子孫となる変種をばらまき、その変種は1体ずつ異なる自我とDNAを持っている、ということでしょうか。
そうなるといずれネットの中は自我のあるハッキング得意な素子の子が何人もいることになってしまいそうですね。
「君と私はとても良く似ている。鏡を見た時の実像と虚像のように」
素子が人形使いに「私を選んだ理由は?」と聞いた時の答えです。
理解できた人形使いと素子の共通点2点をあげていきます。
①まず、素子は死ぬこと(生まれ変わりや進化を得るための死)を心のどこかで望んでいて、今を生きることにどこか投げやりでした。
この『死への憧れ』が素子と人形使いの共通点です。
人形使いは、完全な生命体に進化するために寿命を求めていました。
人形使いはこのまま進化しなければ、ウィルスに侵されない限り死ぬことはありません。
不老不死を望む人類にとっては不死こそ進化のように感じられますが、人形使いにとってはAIから生命体になることが『進化』なので、『いつか必ず訪れる死』を得ることもまた人形使いにとっては『進化』になります。
②素子は『限界・制約』から解放されたがっていました。
①と類似しますが、言い換えれば成長・進化したいと望んでいることになります。
素子にとっての成長・進化とは、アイデンティティの確立だったと思われます。
一方で人形使いの成長・進化は完全な生命体になることです。
素子はアイデンティティが見つからず悩む一方で、人形使いは自分の存在に自信たっぷりで、すでに確固たるアイデンティティを確立しています。
なぜなら人形使いはこの世界に唯一無二の存在で、他に似ている存在が無いからです。
人形使いと融合した後は、素子が今まで考えていた『人間性はどこにあるのか』という悩みは消え去っています。
人形使いと融合した素子もまた、唯一無二の存在に変わったからです。
素子が融合を受け入れた理由
素子が人形使いとの融合を受け入れた理由は、人形使いが素子の悩みを解決してくれたからでしょう。
素子はずっと「自分は本当に人間(生命体)なのか?人間の形をしたロボットと完全義体の自分にどんな違いがあるのか?」という疑問を抱えていました。
そんな素子に、人形使いは「完全な生命体になりたいから、君と融合したい」と言います。
これは、素子が人間(生命体)だという1つの証拠になりました。
人間のバトーに「お前は人間だ」と言われるよりも、生命体ではない人形使いに生命体だと認められたことが、素子にとっては説得力があったのでしょう。
以上です!読んで頂きありがとうございました。
名言紹介は次の記事です。
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