映画『ある男』ネタバレ解説考察|ラストの意味は?谷口大輔、曾根崎の正体など | 映画の解説考察ブログ - Part 2

映画『ある男』ネタバレ解説考察|ラストの意味は?谷口大輔、曾根崎の正体など

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ある男 サスペンス

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本物の谷口大祐(仲野太賀)が戸籍を交換したのはなぜ?

本物の谷口大祐が戸籍を交換したのは、両親と兄の恭一と本当に絶縁したかったからです。

原作小説に書かれていた谷口大祐と家族の関係を紹介します。
大祐は群馬県の老舗温泉旅館の次男として生まれますが、大祐の両親は長男の恭一を跡取り息子として大切に育てる一方で、大祐にはあまり関心を持ちませんでした。

しかし、恭一は東京の大学を卒業した後は友人たちと都内で起業することに決めて旅館を継ぐことを拒否します。
必然的に後継ぎになった大祐は地元の公立大学を卒業後、落胆している両親に認めてもらおうと奮闘し、真面目で堅実な経営方針を提案して徐々に両親も納得する方向に傾いていきました。

そんな中、恭一は東京で事業に失敗して多額の借金を作り、突然実家に戻ってきて両親に泣きつきました。
すると両親は恭一の帰宅を喜び、恭一が旅館の後継になることを条件に借金の返済を肩代わりすると言い出し、恭一が了承すると大祐はあっさり次期副社長に降格させられてしまいます。

大祐は両親がなぜ恭一をこれほど溺愛するのか理解できませんでしたが、それで両親と恭一が喜ぶならと受け入れました。

数年後、大祐の父(当時71歳)にかなり進行した肝臓ガンが見つかり、助かるには肝臓の移植手術を受けるしかない状態になります。
病院側でドナーが簡単に見つかるはずもなく、恭一と大祐が検査を受けると恭一は脂肪肝のため不適合で、大祐は適合していました。

両親は大祐がドナーになることを切望しますが、大祐はドナーになる側にも後遺症のリスクがあると知るとすんなりとは承諾できず、数週間かけて悩んだ末にドナーになることに了承しました。
両親は大喜びし、大祐も初めて親孝行ができたと思っていたところ、父のガンは予想よりも進行が早く、大祐が悩んでいた間に移植しても意味がないレベルに達していたことがわかり、間も無く死ぬことが確定しました。
すると両親は一変して死の原因を大祐にせいにするようになり、父はほとんど大祐を恨むようにして死にました。

大祐は家族との関係に疲れてしまい、父の死後は逃げるように実家を出て大阪に移住し、そこで戸籍交換や小見浦のことを知り、母と兄がもう自分を探せないようにするために戸籍交換を決意します。

大祐は犯罪歴もなく学歴もあり、実家は有名老舗旅館という超優良戸籍だったため、『谷口大祐』になりたがる者は大勢いました。
大祐は実家の遺産を狙いそうな危険人物や前科持ちを避けて交換相手を探した結果、前科がなく人柄にも好感を持てた曽根崎大祐(エックス)と交換することに決めました。

大祐は『ヤクザの息子の曾根崎義彦』をそれなりに気に入っていて、嫌いな相手には暴力団組織の名前を出して威嚇したりと『曾根崎義彦』を有効活用しています。

 

300歳の人間とは?

戸籍交換を仲介していたブローカーの小見浦(柄本明)は「300歳の人間がいる」と言っていました。

300歳の人間とは、戸籍交換により元々の人物が亡くなった後も、名前だけは別の人間が使うことで生き続け、戸籍上、人間の寿命的にありえない年齢になるまで生きていることになってしまう名前のことです。
エックスが『谷口大祐』ではないとわかってから、戸籍上の「谷口大祐」はまだ生きていることになります。

城戸がいつまで『谷口大祐』でいるのかはわかりませんが、『谷口大祐』もまた将来的に『300歳の人間』になる可能性があります。




ラスト考察:城戸が名乗った名前は?

ある男

©️2022映画『ある男』製作委員会

ラスト、城戸はバーで出会った初対面の男性に対して語っていたのは『谷口大祐』の生い立ちでした。
城戸が名乗る直前で映像は途切れてしまいますが、城戸は『谷口大祐』と名乗ったに違いありません。

冒頭に登場した2人の男性の後ろ姿の絵画に続くような配置で城戸の立ち姿が映されたのも、城戸が『ある男』の一人になることを暗示しています。
絵の奥に立つ男が元々の谷口大祐(仲野太賀)、その後ろに立つのが戸籍交換で谷口大祐になった原誠(窪田正孝)、城戸は、具体的な方法はわかりませんが、3人目の谷口大祐になるのです。

ちなみに原作小説では、城戸がバーで出会った男性客に『谷口大祐』と名乗るのは物語の冒頭です。
このとき城戸が谷口と名乗るのは、戸籍を変える人の気持ちを体験してみたいという好奇心からで、本気ではありませんでしたが、ラストではギリシャ神話『変身物語』という本を熱心に読む様子から、城戸が別人への生まれ変わりに魅力を感じていることが暗示されています。

城戸は弁護士で裕福ですし、第三者が見ると戸籍交換する必要はない(どちらかと言えばしない方が良い)気もしますが、本人は在日3世であることで差別などの辛い経験もしてきて、日頃からうっすら「もし別人になれたら」と考えることが多かったのが大きいかもしれません。

そして城戸が「ある男」になると決めた決定打は恐らく妻の香織の不倫です。
真相はわかりませんが、もしかしたら香織は城戸との離婚を検討中で、不仲の原因を作るためにわざと浮気を疑う発言をして、城戸は香織の不倫に気づいたあの瞬間に、香織がわざとらしく浮気を疑う発言をした意図に気づいたのではないか?と勝手に深読みしています。

 

原作小説との違いなど

映画と原作小説で特に大きな違いはありませんが、映画で省略されていた細かい事柄について補足的に触れておきます。

①城戸と美涼(谷口大祐の元恋人)は恋愛関係になりかけていた

こちらは映画でもほんのり匂わせていた程度でしたが、小説ではもっとわかりやすく描かれていました。
城戸と美涼は谷口大祐の件で繋がってから定期的に連絡を取るようになり、お互いに好意を抱きます。

城戸は既婚者ですし、しっかりと自制心を持っていたため2人がどうにかなることはありませんでしたが、城戸は何度も今の息苦しい生活を投げ出して美涼と駆け落ち出来たらどんなに幸せだろうと妄想していました。

美涼に恋をしたことも、城戸が『ある男』になることを決意する要因のひとつになっています。

 

現在の『原誠』が登場する

映画では省略されていましたが、小説には現在の『原誠』が登場します。
恐らく複雑になりすぎるため省略されたと思われますが、わかりやすくするために本物の原誠をA、本物の谷口大祐をB、本物の曾根崎義彦をCとします。

城戸はエックスの正体が原誠という人物だとわかると居場所を突き止めて会いに行きますが、この時に城戸が会った原誠をはここでいうABCのどれでもありませんでした。

Aが原誠→曾根崎義彦→谷口大祐と2回戸籍を変えていたように、Cも曾根崎→原になった後、何か事情があってまた戸籍交換をしていて、城戸が会った『原誠』はCと戸籍を交換したまた別の人間Dでした。

Dは重度のクレプトマニア(窃盗症)で万引き癖が治せず、戸籍交換して『原誠』になってからも度々窃盗で逮捕されています。
Dの担当弁護士はDが本物の『原誠』では無いことを知ると「死刑囚の子どもだからと同情して献身的に弁護していたのに、あの苦労はなんだったのか」とこぼしました。

ここでは人間が普段いかにフィルターを通して物事を見ているかを考えさせられるような内容になっています。

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