映画『愛を読むひと』の解説、考察をしてます!
「電車に乗ったマイケルにハンナが怒ったのはなぜ?」「ハンナが何も言わず引っ越した理由」「非識字者であることを隠した理由」「自殺した理由」について書いてます。

制作年:2008年
本編時間:124分
制作国:アメリカ・ドイツ
監督:スティーブン・ダルドリー
脚本:デヴィッド・ヘアー
原作:恋愛小説/ベルンハルト・シュリンク「朗読者

感想と考察☆
スティーブン・ダルドリー監督は『戦争が次の世代にどんな影響を与えたか』、脚本を手掛けたデヴィッド・ヘアーは『時代の流れが人の思想にどれだけの影響を与えるか』がテーマだっただとインタビューで答えています。
だからこそ、マイケルとハンナの幸せな時間と、その後の暗い状況が交互に描かれていたんですね。
映画を観て気になった点などを書いていきます。
電車に飛び乗ったマイケルにハンナが怒った理由
マイケルがハンナを驚かせるために電車に乗った時、ハンナは怒っていました。
あの怒りの理由がいまいち掴めなかったんですが、Kウィンスレットのインタビューに答えが書かれていました。
『秘密を持つ人間はそれを押し隠すために鎧を纏うということ。怒りもその防御の一つ。
マイケルが勤務中の自分を見ていたと知って怒るのも、防御の表れということなの。(愛を読むひと ケイト・ウィンスレットインタビューより抜粋)』
ハンナは社会で少しでも生きやすくするための隠し事が多い女性なので、探られることが苦手です。
だからマイケルに「見られていた」ことはハンナにはたとえ恋人でも不快だったのでしょう。
ハンナが何も言わずにいなくなったのはなぜ?
ハンナは一見自分のことしか考えていないように見えますが、
彼女はずっと教会の火事での事件に罪の意識を持ち続けていて、
自分が幸せになってはいけないと思っていたのかもしれません。
また、ハンナは非識字者であることを周囲に隠していたので、事務職への昇進が決まったときに仕事を辞めています。
ハンナは仕事を辞める理由をマイケルに言えなかったので、それも何も言わずにいなくなった理由の1つだと思います。
また、ハンナはマイケルを彼女なりに愛していたのでしょうが、いかんせんマイケルは若すぎます。
ハンナはおそらくマイケルは若いので、おばさんの恋人が1人位消えてもすぐに忘れて新しい恋に夢中になるだろうと考えていたことや、
マイケルに対して年上の自分といるよりも、もっと同世代と青春を分かち合うべきだと考えていたことも、何も言わずに消えた理由だと思われます。
裁判で非識字者だと公表しなかった理由
ハンナが不当な刑罰を受けてまで字が読めないことを隠そうとした理由を考えてたんですが、
当時、ジプシー民族はヨーロッパ各地で酷い差別を受けていました。
ジプシーは定住せずヨーロッパ各地に移り住み、主に男は鋳掛、女は占いで生計を立てていた少数民族です。
そのジプシーの特徴として、彼らは文字の文化を持たないため、文盲はジプシーを連想させたそうです。
つまり、ハンナはジプシーと思われて差別されることを恐れていたのではないでしょうか。
もしくはハンナの家系が本当にジプシーだった可能性もあります。
それに、ハンナはずっと罪の意識を持って生きてきたのだから、
自分の罪を軽くするような行動はとりたくなかった点もあり、
公衆の面前で非識字者だと打ち明ける事もためらわれた、
だからその時は諦めるしかなかった、と考えたら納得がいきました。
無期懲役刑も、もしかしたらハンナにとっては妥当な刑罰だと感じていたかもしれません。
ハンナが自殺した理由
ハンナは戦争のさなかを生きてきて、まともに教育を受けずに育ったことが読み書きができなかった原因と思われます。
裁判の時、あまり罪の意識がなさそうに見えたのも色々な方面に対する学が無かったから『言われた通りに仕事をしただけだ』と考える一方で、
アウシュビッツ刑務所に人を送ることの意味はわかっていたので、心の底ではずっと罪悪感を感じていたはずです。
その後刑務所で勉強して、文字が読めるようになった彼女は自分が看守として行ってきたことの罪の重さをより深く理解したのだと思われます。
収監されていた時のハンナを知っている看守が「今まではきちんとしていたけど、最近は身なりに気を使わなくなった」と発言していました。
これはハンナが鬱状態にあったことを意味しています。
おそらくハンナは刑務所の中で勉強の楽しみを知りますが、勉強するうちに自分がしてきたことの罪の重さに気付いてしまい、さらに罪悪感に苛まれて鬱になり、
釈放後の生活にも希望が持てず自殺したという流れになるのではないでしょうか。
悲しすぎますが、それが当時のハンナが選んだ人生の締めくくりです。
戦争はそれだけ人間の人生に影響を与えるという事です 。
とにかく色々考えさせられる作品でした!
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映画.com:愛を読むひと インタビュー
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