映画『愛を読むひと』のあらすじ紹介、解説、考察をしてます!
第二次世界大戦後のドイツで「朗読」を通じて愛をはぐくんだ15歳の青年マイケルと、20歳年上のハンナの恋の物語。
制作年:2008年
本編時間:124分
制作国:アメリカ・ドイツ
監督:スティーブン・ダルドリー
脚本:デヴィッド・ヘアー
原作:恋愛小説/ベルンハルト・シュリンク「朗読者

キャスト&キャラクター紹介

2008 Hakuhodo DY Music & Pictures Inc.All rights reserved.
マイケル・バーク…レイフ・ファインズ
若い頃のマイケル…デヴィッド・クロス
弁護士のアラフォー男。15歳の頃に当時35歳だった女性ハンナと初めてお付き合いをした。
その後は彼女の引っ越しを機に別れたが、良い別れ方が出来なかったことがトラウマで心を閉ざしがちになり、そのまま大人になった。

(引用:https://www.cinemacafe.net)
ハンナ・シュミッツ…ケイト・ウィンスレットマイケルの初恋相手。
マイケルと出会った当時は鉄道会社に勤務、第二次世界大戦当時は刑務官として働いていた。
真面目で勤勉でとっつきにくい雰囲気の美女。
・その他のキャスト
ジュリア(マイケルの娘)…ハンナー・ヘルツシュプルング
ガートルード(マイケルの元妻)…カロリーネ・ヘルフルト
アンジェラ(マイケルの母)…レナ・オリン
大学教授…ブルーノ・ガンツ
火事の被害者…アレクサンドラ・マリア・ララ ほか
あらすじ:起
(ハンナに本を読み聞かせるマイケル 引用:https://nitari-movies.com)
舞台は1958年の西ドイツ、ノイシュタットです。
ある春の日、15歳の学生マイケル(デヴィッド・クロス)は、下校途中の電車の中で急に体調が悪くなったので電車を降りました。
道端で吐いた後、すぐ傍にあったアパート前のベンチで休憩していた時、30代位の女性(ケイト・ウィンスレット)に助けられて自宅近くまで送り届けてもらいました。
帰宅後、医者に診てもらったマイケルは『猩紅熱』という発疹性の伝染病にかかっていたことがわかり、医師から外出禁止を命じられてしばらく自宅療養しました。
3カ月後。割と元気になったマイケルは外出許可が出るまで待てず、助けてくれた女性にお礼を言いに行きます。
マイケルは花を渡してお礼を言いますが、女性は無表情のまま奥の部屋で下着にアイロンをかけ始めました。
15歳の少年マイケルにとって『女性の下着』は視界に入るだけでドキドキする代物なのに、女性は全く気にかけません。
戸惑ったマイケルが帰ろうとすると、女性は「私もこれから仕事に行くから、部屋の外で待っていて」と言いました。
マイケルが待っていると、わずかに空いていたドアの隙間から女性の生着替えが見えました。
マイケルが見とれていると女性と目が合ってしまったので、気まずくなったマイケルは逃げ帰ってしまいました。
数日後。マイケルが路面電車に乗っていると、あの時の女性が路面電車の駅員として働いていました。
電車では話しかけたりしませんでしたが、マイケルは女性が気になって仕方なくなり、勇気を出して再び彼女の部屋を訪ねました。
女性はマイケルを見ると、特に歓迎するわけでもなくぶっきらぼうに「外に炭があるから、バケツ2杯分持って来て」と頼みます。
素直に従ったマイケルは顔が炭まみれになりました。
マイケルはお風呂に入るよう勧められますが、裸になるのが恥ずかしいのでもじもじしていると、女性はてきぱきと入浴の準備をしてしまったので、マイケルは覚悟して服を脱ぎました。
お風呂から上がると、女性は全裸にバスタオルを持って登場します。
パニくるマイケルに、女性は「このために来たんでしょ?」と言ってマイケルを抱きしめました。
マイケルは戸惑いつつ、女性に導かれるまま初体験をしました。
翌日。医者からは「あと3週間は学校を休むべき」と言われますが、マイケルは我慢できず学校に行ってしまいます。
そして学校が終わると、すぐに彼女の家に行きました。
2回目のセックスの後、マイケルは始めて女性がハンナという名前だと知りました。
それからマイケルは、ほとんど毎日ハンナの部屋に通うようになります。
しばらくすると、マイケルはハンナに「本を朗読して欲しい」と頼まれました。
照れながらマイケルが朗読すると、ハンナは「とっても上手」と嬉しそうにほめてくれました。
それからは会うたびにマイケルが朗読し、ハンナがそれを心地よさそうに聞く日々が続きます。
マイケルはハンナと過ごすうち、生まれて初めて人を愛する気持ちを知りました。
あらすじ:承
(自転車旅行中のマイケルとハンナ 引用:https://eiga.com)
ある日の終電の時間が過ぎた頃、マイケルはハンナが仕事で乗る電車に乗って驚かせようとしました。
すると、ハンナは怒ったようにマイケルを無視して別の車両に移り、ドアを閉めてしまいます。
マイケルは慌ててハンナに謝りに行きますが、ハンナは不機嫌そうに「今日はもう帰って」と言うだけでした。
我慢できなかったマイケルは、ハンナに「君がいない世界なんてもう想像できない!僕を許してくれる?僕を愛してる?」とすがると、ハンナは無言でうなずき、仲直りしました。
その後、マイケルはハンナに似合うような大人の男になるために幼心を捨て、出来るだけ紳士的に振舞うようになりました。
その中で『朗読』は、2人の心をつなぎとめる大切な儀式とも言える行為になっていきました。
2人が付き合い始めて1ヵ月が経った頃。
夏休みに入ったマイケルは、ハンナと自転車で一泊旅行に行きました。
一緒にレストランに入った時、ハンナはとても緊張している様子で、ウェイトレスが注文を聞きに来るとマイケルに全ての注文を頼みました。
お会計の時、ウェイトレスはハンナとマイケルが親子だと勘違いしたので、マイケルはウェイトレスに見せつけるようにハンナにキスをしました。
その後2人は教会に行き、賛美歌を聞いて涙を流す美しいハンナに、マイケルは釘付けになりました。
湖に着くと、マイケルは湖畔に座って詩を書き、ハンナは湖で泳ぎます。
マイケルは「君の詩を書いてるんだ。完成したら読み聞かせてあげる」と約束しました。
夏休みが終わると、マイケルの学校にソフィーという美人の転校生が来ました。
ソフィーはマイケルに好意を持っている様子ですが、マイケルは相変わらずハンナに夢中でした。
同じ頃。ハンナは仕事で勤勉な態度が認められて駅員から内勤の事務職へ昇進が決まり、引っ越しが決まりました。
数日後、その日はマイケルの誕生日でした。
同級生たちはマイケルのためにサプライズパーティーを準備していましたが、マイケルは学校が終わると友人の誘いを断ってハンナに会いに行きました。
マイケルはいつも通り本を読みきかせながら誕生日だと言うタイミングを伺いますが、ハンナは暗い表情で、朗読もろくに聞いていない様子でした。
ハンナの態度が不愉快になったマイケルは「今日は僕の誕生日なんだけど、君に祝ってほしくて誕生日パーティーを断ってきたんだ!」と怒ると、ハンナはマイケルをお風呂に入れて、身体を重ねました。
セックスが終わると、ハンナは「お友達の所へ戻りなさい」と言います。
(マイクに友達の所に戻るよう促すハンナ 引用:http://kimageru-cinema.cocolog-nifty.com)
マイケルは諦めて友人のパーティーに行きますが、ハンナの様子が変だったのが頭からはなれず、不安に襲われました。
我慢できなくなったマイケルが急いでハンナの部屋に戻ってみると、部屋はもぬけの殻になっていました。
ハンナはマイケルに何も言わずに引っ越してしまったのです。
マイケルはハンナから何も知らされておらず、彼女が消えた理由がわからないままでした。
こうして2人の関係は突然終わり、マイケルはハンナと出会う前の生活に戻ります。
この出来事でマイケルは深く傷つき、他人に心を開けなくなりました。
あらすじ:転
数年後。マイケルは法科大学生になり、勤勉でまじめで成績も優秀です。
マイケルは寮生活をしていて、同じ寮に住む同級生ガートルード(カロリーネ・ヘルフルト)に好かれているのはわかっていましたが、未だにトラウマを克服できず、人に心を開くことを恐れていました。
ある日、ゼミの授業で実際の裁判の見学に行ったとき、法廷の中から聞き慣れた声が聞こえました。
そして、被告人席に座っていたのがハンナだとわかって目を疑いました。
(裁判所でのハンナ 引用:https://www.pinterest.jp)
ハンナは第二次世界大戦中にユダヤ人収容所の看守として働いていた時期がありました。
その収容所は、看守が定期的に囚人を数名ずつアウシュビッツ強制収容所に送っていました。
※アウシュビッツへ送られたユダヤ人はナチスの思想の元に全員虐殺されていた。
当時、ハンナが勤めていた収容所が閉鎖になり、看守たちは約300名の収容者を連れて別の収容所に数日かけて移送することになりました。
宿を求めた町の住人に「収容者は朝まで教会に入れておいて欲しい」と言われ、看守は収容者を教会に入れて施錠し、看守たちは宿泊施設に泊まることになりました。
その日の夜、町は不幸にも空襲に襲われて爆発と火事が起こり、教会も炎に包まれました。
教会の扉は脱走防止で施錠されていたので、逃げられなかった収容者約300名は全員死亡したとされていました。
しかし、奇跡的に生き延びたという元収容者の親子が最近名乗り出て、強制収容施設についての本を出版しました。
そして、火事が起きた当時の看守達の対応が問題となり、ハンナを含めた6人の元看守が罪に問われている裁判でした。
原告側の証言では、ハンナもアウシュビッツに送る収容者を決めていた1人だったようです。
マイケルはハンナの衝撃的な過去に、ただただ困惑しました。
マイケルが再び法廷見学に行くと『火災が起きたとき、教会の鍵をなぜ開けなかったのか』が議論されていました。
ハンナ以外の元看守5名は自分に都合の良いことだけを証言していたのに対し、ハンナは包み隠さず正直に証言しました。
他の5人は、自分たちの罪を軽くするのにハンナが邪魔だと感じます。
そして5人は結託し、ハンナを主犯に仕立て上げて自分たちの罪を少しでも軽くしようと決めました。
5人の元看守は「ハンナ・シュミッツが看守のリーダーで、私達は彼女の命令に従っただけ。火災直後のレポートも彼女が1人で書いた」と口を揃えました。
対してハンナは「私はリーダーじゃない。レポートも書いていない」と否認して意見が食い違うため、裁判官はハンナの筆跡とレポートの筆跡の調査を命じます。
弁護士がハンナに紙とペンを渡すと、ハンナは諦めたように「全て私がやりました」と証言をコロっと変えました。
周囲には、ハンナが筆跡鑑定を迫られて観念したように見えましたが、マイケルだけは真実に気が付きます。
ハンナは文字が読めない非識字者で、それを隠して生きているのです。
非識字者であることを明かせば、元看守5人の嘘がわかってハンナの罪は軽くなるはずなのに、彼女は非識字者であることを隠す方を選びました。
マイケルはいたたまれなくなり、裁判の途中で法廷を抜け出しました。
大学に戻ったマイケルは、ゼミの教授(ブルーノ・ガンツ)に「私は被告人の1人、ハンナ・シュミッツが裁判で有利になる情報を持っているが、どうすれば良いか」と相談します。
教授は「裁判に感情は関係ない。これから君がどう行動するかが問題だ」と答えました。
その後、マイケルはハンナがいる施設に行って面会の申し込みをしますが、結局面会できずに帰ってしまいました。
その日の夜。精神不安定になったマイケルは、ガートルードの部屋に夜這いして彼女を抱きました。
ガートルードはマイケルが心ここにあらず状態なのを知りながら、マイケルを受け入れました。
判決の日。ハンナ以外の元看守5名には『300件の殺人ほう助の有罪判決と4年3カ月の懲役』、ハンナには『300件の殺人罪の有罪判決、無期懲役』の判決が下されました。
あらすじ:結
マイケルは大学卒業後、弁護士になりガートルードと結婚しました。
月日は流れて1976年。33歳になったマイケルは、幼い娘のジュリアを連れて実家に行きました。
ガートルードと離婚することを母親に報告するためです。
母親はマイケルがほとんど帰ってこないことに文句を言いますが、離婚に反対はしませんでした。
マイケルは実家に来たついでに自分の荷物の整理をしていると、かつてハンナに朗読した本が沢山出てきました。
マイケルは裁判でハンナを助けられなかった罪滅ぼしに、本一冊分の朗読をカセットテープに録音し、手紙などは何も添えずにテープだけをハンナに送りました。
その頃、53歳になっていたハンナは夢も希望もなく、ただ淡々と刑務所での日課をこなしていました。
ある日、匿名で送られてきたカセットテープを再生したハンナは、声の主がすぐにわかってとても驚きました。
ハンナは何度もテープを聞き返し、やがて図書室でマイケルが朗読した本を借りて文字の勉強を始めました。
4年後の1980年。マイケル37歳、ハンナ57歳になりました。
西ベルリンに住むマイケルの元に、初めてハンナから手紙が届きます。
丁寧な文字で『テープをありがとう 坊や』と書かれていました。
マイケルはそれから定期的に朗読テープを送り、ハンナは着実に語学を身に着けて、それをマイケルへ手紙を書くことで証明しました。
ハンナは「返事を頂戴」とメモに書きますが、マイケルはテープは送ってもハンナに手紙の返事を書くことはできませんでした。
それから約3年後、ハンナが収監されて20年以上が経ったある日、マイケルの元に刑務所から電話が入ります。
それは、ハンナは釈放が決まったものの、彼女には家族がいないためマイケルが身元引受人になって欲しいというお願いでした。
マイケルは困惑しするものの、悩んだ末に身元引受人になることにしました。
釈放の1週間前、マイケルは面会に行き、2人は25年ぶりに顔を合わせます。
2人はお互いの容姿の変化で月日の流れを実感しました。
(面会時のハンナ 引用:https://www.pinterest.jp)
ハンナは嬉しそうでしたが、マイケルは感情を出さず、ただ事務的に彼女の新しい仕事と住む場所を伝えます。
マイケルはハンナに「火事で亡くなった被害者達を思い出すことはあった?」と聞くと、ハンナは「いくら思い出したって死者は生き返らない」と答えます。
ハンナがマイケルに色目を使った時、マイケルの中で何かが吹っ切れました。
マイケルは「釈放の日に迎えに行く」と約束して面会を終えました。
釈放の日。マイケルが刑務所に行くと、ハンナが自殺したと看守から知らされました。
彼女が自殺した部屋にはメモの書置きがあり、その中のマイケルに宛てた部分は『紅茶缶に貯めたお金を、火事で生き残った娘に渡してほしい』でした。
その後、マイケルは原告の女性にハンナの紅茶缶とお金を渡しに行き、ハンナが『非識字者』だったことを教え、不当な刑罰を受けていたことを伝えました。
原告の女性は「言い訳や彼女を擁護するような話は聞きたくない」と言いますが、「お金はいらないけど、紅茶缶だけ欲しい。お金はユダヤ人の識字者率を上げる活動をする慈善団体に寄付してほしい」とマイケルに頼みました。
その後、月日は流れて1995年のドイツ ベルリン。
52歳になったマイケルは、15歳の時に書いたハンナへの愛を綴った詩を見返しました。
その後、仕事を終えたマイケルは、海外留学から戻ってきた大学生の娘ジュリアと会って食事をします。
マイケルは、今までジュリアにも心を開けなかった不甲斐なさを謝罪しました。
後日、マイケルはジュリアを連れてハンナが埋葬された教会に来ました。
マイケルはジュリアにハンナとの関係を打ち明けて、ようやく大切な人と心のふれあいが出来るようになりました。
感想と考察☆
スティーブン・ダルドリー監督は『戦争が次の世代にどんな影響を与えたか』、脚本を手掛けたデヴィッド・ヘアーは『時代の流れが人の思想にどれだけの影響を与えるか』がテーマだっただとインタビューで答えています。
だからこそ、マイケルとハンナの幸せな時間と、その後の暗い状況が交互に描かれていたんですね。
(私のまとめたあらすじは、わかりやすくするために時系列順に直してしまいました汗)
電車に飛び乗ったマイケルにハンナが怒った理由
マイケルがハンナを驚かせるために終電後の電車に乗った時、ハンナは怒っていました。
あの怒りの理由がいまいち掴めなかったんですが、Kウィンスレットのインタビューに答えが書かれていました。
『秘密を持つ人間はそれを押し隠すために鎧を纏うということ。怒りもその防御の一つ。
マイケルが勤務中の自分を見ていたと知って怒るのも、防御の表れということなの。(愛を読むひと ケイト・ウィンスレットインタビューより抜粋)』
マイケルがトラウマを克服するためにハンナに会いたいけれど、やっぱり会えなくて、特に手紙の返事が書けなかったのは共感しまくりでした。
とにかく前進できてよかったです。
次のページに続きます!
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