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石本はなぜ詐欺をした?
石本が詐欺を思いついたのも、恐らく石本自身が詐欺の被害にあってお金に困っていたからではないでしょうか。
詐欺師の語る内容は半分は本当で半分は嘘だという言葉を聞いたことがあります。
石本が荒れ地を本当に所有していた点をふまえると、石本はありもしない都市開発の話を信じて土地を購入したり資金を用意したものの、資金を持ち逃げされてしまい、あの荒れ地は元々利用価値が無かったものを騙されて高値で売りつけられたのではないでしょうか。
そんなこんなで巨額の負債がかさんでしまい、お金に困った石本は九条に詐欺話を持ち掛けたのではないかと推測しています。
九条と黒田(佐々木蔵之介)の関係は?
長原支店で江島エステートへの融資が問題になった時、検査部の黒田が支店に調査に来ました。
黒田は江島エステートに融資する過程に問題があったかどうかの調査に加え、100万円の紛失があったことも知り、九条ら上席陣が無くなったお金や犯人捜しをせずに自費で100万円を補填していたことを突き止めました。
紛失したお金を自費で補填することは、お金を盗むことと真逆の行為にあたりますし、根本的解決にならないため銀行内では御法度とされています。
黒田が九条を問い詰めると、九条は黒田に取引を持ち掛けました。
今から6年前、黒田は競馬にハマって大金を賭けてみたくなり、金曜日にATMが閉まった後、勤務先支店のATMから200万円を盗みました。
その週末、黒田は盗んだお金で競馬に大勝ちし、月曜日の早朝に盗んだ200万円をATMに戻したことがありました。
黒田がATMにお金を戻した時、当時検査部に在籍していた九条はたまたま黒田が居た支店に調査に入っていました。
九条はATM管理室にいた黒田と、床に落ちていた競馬場の帯封を見た瞬間、黒田が何をしたか察しましたが、気付かないフリをして見逃しました。
九条は黒田に「100万円の件を見逃してくれたら、私も6年前に見たことは黙っていよう」と言います。
黒田は九条の言うことを聞くしかありませんでした。
西木(阿部サダヲ)の復讐とは?
西木は飲み屋で仲良くなった老人 沢崎肇(柄本明)に連絡を取りました。
沢崎は問題があって手の付けようがない物件をいくつか抱えていて、その中に『立地条件は最高だけど、耐震偽装されているビル』がありました。
このビルは普通なら20億円以上の値打ちがありますが、耐震偽装されているので簡単には売れず、売れるとしても数億円程度でしか売れません。
西木は沢崎と共謀して、このビルが耐震偽装されていることを隠して石本と九条に高値で売りつけることにしました。
まずは西木が古川副支店長を通して九条支店長に、ビルを売りたがっている顧客がいることを知らせます。
沢崎のビルの資料を見た九条は、そのビルの売値相場が20億円以上あるのに対し、沢崎が15億円で売却したがっていることを知ると飛びつきました。
九条は石本に、沢崎のビルを買って20億円以上で他に売り、利益の5億円を山分けしようと持ち掛けると、石本もこの話に食いついてすぐに購入が決まりました。
数日後、沢崎はビルの詳細な書類を石本に提出します。
この書類にはビルの図面が含まれていて、わかる人が見れば耐震偽装物件だとわかってしまいますが、石本は何も気づきませんでした。
その後、沢崎と石本の間で正式にビルの売買手続きが行われます。
手続きの当日、このビルの設計士が罪悪感に耐えきれず自首してしまい、西木と沢崎はいつバレるかと冷や冷やしますが、無事に何事もなく手続きは終わりました。
ビルを買った日の夜、九条と石本はナイトクラブで祝杯をあげていた時に設計士の耐震偽装の報道を見て真相に気付きます。
しかし、石本は事前にビルの図面を見て了承した上で購入しているのでどうしようもなく、泣き寝入りするしかありませんでした。
沢崎はビルを売って得た15億円で残りの問題物件も片づけ、余ったお金で悠々自適に暮らせるようになりました。
西木は沢崎から謝礼として3000万円を渡されます。
西木は悩みましたが、実の兄の借金を肩代わりさせられて破産しかかっていたこともあり、金を受け取りました。
その後、滝野は江島エステートの件で刑事告訴されて約2年間の実刑判決を受けました。
西木はビルの売買の直後に銀行を辞め、現在は何をしているかわかりません。
タイトル『シャイロックの子供たち』の意味は?
(引用:https://julius-caesar1958.amebaownd.com)
シャイロックは、シェイクスピアの喜劇『ベニスの商人』に登場する強欲な金貸し男の名前です。
ベニスの商人のあらすじを簡単に紹介しておきます。
アントニオはお金持ちでしたが、その時彼の財産は船で移動中だったため貸すことができませんでした。
そこでアントニオは、強欲で有名な金貸しシャイロックからお金を借りてバサーニオに渡しました。
アントニオはシャイロックから金を借りた時『もし期限内に返済できなければ、アントニオの肉1ポンド(454g)で返済する』という誓約書にサインしていました。
※シャイロックはアントニオが嫌いだったので、この誓約書を特別に用意していました。
アントニオは船が到着すれば借金はすぐに返せるので「大丈夫」と高をくくっていましたが、アントニオの財産を乗せた船が難破したと連絡が入り、借金を返せなくなってしまいます。
借金の支払い期日が過ぎ、シャイロックは「約束通り肉を切り取れ」と言いますが、アントニオは拒否したため裁判になりました。
裁判官はシャイロックの誓約書を読むと、「誓約書に血は書かれていないので、肉を切り取るのは良いが、血は絶対に流してはならない」と言い渡しました。
血を流さずに肉を切り取る方法はないため、シャイロックはなす術がなくなって悔しがります。
その後アントニオの船は無事だったことがわかり、バサーニオは幸せな結婚を迎えてハッピーエンドです。
余談ですが、デヴィッド・フィンチャー監督の映画『セブン』に登場した犠牲者の1人が、このシャイロックの誓約書通りに殺されていましたね。
話を戻しますが、お金の世界で働く銀行員の彼らは、全員が「シャイロック(金貸しの始祖)の子供たち」だと言えます。
銀行員にもまっとうな者とそうでない者がいたりなど、様々な銀行員の姿を上手にまとめたタイトルだったように感じました。
主人公の西木を始め、九条、滝野、黒田は個人の幸せを優先して、例え違法な手段だとしても大金を手に入れることを選び『まっとうな銀行員』をやめています。
まっとうな銀行員でなくなった彼らは全員銀行を退職または解雇されていたので安心しました。
西木とは逆に、北川愛理は『まっとうな銀行員』になることを選び、堅実に生きることに意味を見出すタイプでした。
田端は就活に失敗したことや、北川と良い感じだったのでしばらくは辞めずに頑張る雰囲気ですが、間違っていることは間違っているとちゃんと思えるタイプなので、これからの上司次第的で続けるか辞めるかが決まると思われます。
原作小説との違い
私はドラマ版は見ていないためドラマ版との比較はできませんが、原作小説は読みましたので違いをあげていこうと思います。
北川愛理と半田麻紀との関係
映画では愛理と麻紀の不仲の理由はよくわかりませんでしたが、小説には書かれていたので残しておきます。
映画には登場しませんが、愛理は同じ長原支店行員の三木という男と職場恋愛をしていました。
愛理が貯金出来ない理由も家庭事情に加えて三木との交際費がかさんでいたからです。
そして三木が愛理の前に付き合っていた女性が麻紀でした。
麻紀は三木が愛理と付き合っていることを知ってから嫉妬と逆恨みを募らせていて、思いつきで帯封を愛理のバッグに入れてしまいました。
西木雅博の正体
西木(阿部サダヲ)の行動は原作小説とは大きく変えられていました。
映画の西木は九条と石本の架空融資を見抜き、西木自身も沢崎と手を組んで不正を働いてから退職していました。
小説では、江島エステート絡みの融資の黒幕は西木です。
赤坂リアルターの石本と最初に出会って取引先にしたのが西木で、江島エステート絡みの融資詐欺は西木と石本が手を組んで行っていました。
なので、映画で黒幕だった九条支店長(柳葉敏郎)は、小説では事件とは無関係で、沢崎(柄本明)は小説には登場せず、西木と沢崎の詐欺は映画オリジナルのシナリオです。
原作小説の西木は石本と組んで長原支店から5億円をだまし取った後、銀行を無断欠勤してそのまま失踪します。
その後、検査部の黒田が西木の失踪の理由を調べる内に江島エステートの架空融資がバレて、担当の滝野は江島エステートの詐欺に加担した容疑で逮捕されました。
滝野は「西木は石本が殺したと聞いた」と供述しましたが、石本は失踪し、西木も死体は見つからず、2人ともどこかで生きていることが暗示されて終わります。
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