映画『シャッターアイランド』徹底解説考察|伏線、原作とのラストの違い、周辺人物についてなど | 映画の解説考察ブログ

映画『シャッターアイランド』徹底解説考察|伏線、原作とのラストの違い、周辺人物についてなど

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シャッターアイランド サスペンス

映画『シャッターアイランド』の解説・考察をしています!

筆者の好きな映画のひとつです。
深く考えずに見てもどんでん返しサスペンスとして楽しめる一方、深追いしようと思えばどこまでもできるような、それぞれに楽しめる素晴らしい作品だと思います。

鑑賞済みの方向けの考察記事です。
まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

 

映画『シャッターアイランド』の概要紹介

シャッター アイランド

原題:Shutter Island
制作年:2009年
本編時間:138分
制作国:アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:レータ・カログリディス
関連書籍:『シャッターアイランド』デニス・ルヘイン著

 

あらすじ紹介

シャッターアイランドと呼ばれる孤島に、凶悪犯罪を犯した精神病患者ばかりを収容するアッシュクリフ病院があります。
アッシュクリフから通報を受けた連邦保安官のテディとチャックは、コーリー院長から「行方不明になったレイチェルという女性患者を探してほしい」と依頼されました。

テディはレイチェル探しを進めつつ、真の目的である『放火魔のレディス探し』と『人体実験の証拠探し』をしようとする。

 

主要キャスト

エドワード・ダニエルズ(テディ)…レオナルド・ディカプリオ
連邦保安官。アッシュクリフ病院でレディスという放火犯を探す。

チャック・オール…マーク・ラファロ
連邦保安官。テディの相棒。

コーリー…ベン・キングスレー
アッシュクリフ病院の院長。

ドロレス…ミシェル・ウィリアムズ
テディの亡き妻。幻覚として現れる。

 

アンドリュー(テディ)の過去をおさらい

シャッターアイランド

© 2012 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

最後のどんでん返しの衝撃で若干頭がこんがらがったため、テディがシャッターアイランドに来るまでの経緯を整理します。

まず、アンドリュー・レディス(テディの本名)は、第二次世界大戦中にノルマンディー上陸作戦(1944)を経験した元アメリカ軍人でした。

終戦後の1945年以降、アンドリューは連邦保安官としてボストンで生活します。
ドロレスと結婚した時期は明言されませんが、子供たちの年齢を考えると結婚は終戦とほぼ同時だったのでしょう。

3人目の子ども(レイチェル、サイモン、ヘンリー)が生まれてしばらくたった頃、ドロレスが心の病にかかってしまいます。
アンドリューはドロレスの病の兆候に気付きますが、仕事と酒に逃げてしまいます。
原作小説ではアンドリューは「心の病気は甘えだ」と考える傾向が強く、ドロレスのかかりつけ医師やドロレスの家族に「彼女は心の病気だからもっと向き合ってやれ」と警告されても「そのうち良くなる」と思い込んでいる様子が書かれています。

そしてアンドリューがドロレスを放置した結果、大変な事件が起こりました。
ドロレスは子どもたちの首を一人ずつ絞めて気絶させ、庭先にある湖畔に子どもたちを入れて溺死させてしまったのです。
帰宅して異変に気付いたアンドリューは子どもたちを池から引き揚げますが、既に手遅れでした。
この時ようやくアンドリューはドロレスの症状の深刻さに気付きますが、怒りと悲しみで混乱してドロレスに言われるがまま彼女を銃で撃ち殺してしまいました。

アンドリューは妻と子どもが死んだのは全てはアンドリュー自身のせいだと思い知り、心を病んで妄想性の精神病を発症しました。
事件から病院に来るまでの過程がすっぽり抜けているのはアンドリュー自身にドロレスを殺した直後からの記憶が無いからなのかもしれません。

アンドリューは強烈な現実逃避願望から、もう1人の人格エドワード・ダニエルズ(通称テディ)を生み出し、子供の記憶を消し去り、ドロレスはレディスという名の放火魔男に殺されたと思い込みます。

アンドリューは発症後、妄想に囚われた上に記憶を保てなくなり、『保安官テディ』としてレディスとレイチェルを探し始めました。
テディはシーアン医師やコーリー院長が粘り強く説明すれば真実を思い出してアンドリューに戻りますが、しばらく経つとまた全てを忘れて『保安官テディ』に戻ってしまいます。
テディは激情しやすい上に元軍人で戦闘訓練を受けているため、暴れると非常に危険でした。

テディを危険視した理事長や警備隊長は、彼にロボトミー手術を受けさせるべきだと提案します。
ロボトミー反対派だったコーリーとシーアンは、彼らの方針に基づくロールプレイ治療をテディに受けさせて、もし効果が出たら手術はやめて欲しいと理事長に進言して本作の内容となる大掛かりな治療を行うことになりました。




テディにとっての水と火

シャッターアイランド

© 2012 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

冒頭からテディが水を異常に恐れる描写がありました。
彼が水を怖がる原因は子ども達が溺死したことによるトラウマからで、子供がいたことを忘れていても、テディの無意識が子どもを失った時の絶望や、子どもを殺して笑っていた妻ドロレスに対する恐怖や憎しみを覚えていたからです。
そのため、テディは水と正反対の火に頼ることで恐怖心を和らげようとしていたのでしょう。

火を頼りにしていた点は『ドロレスは放火魔に殺された』という話が現実逃避による作り話であることも意味しています。

 

最初の夢の解釈

テディの夢には、彼の意識が拒否する真実が詰め込まれています。
テディがアッシュクリフに来た初日の晩に見た夢は、テディはドロレスと引っ越し前のアパートの一室に居る夢でした。
部屋は燃え、ドロレスも灰になってしまいますが、アパートの窓からは引っ越した場所にあるのはずの池が見え、ドロレスの灰を抱いていたはずのテディの手には、灰ではなく水が残ります。

眠っていたテディの真上から雨漏りの水が落ちていたという外的要因もありますが、真実の記憶(子どもが池で殺され、アンドリューが妻を殺した記憶)と、テディが捏造した偽の記憶(子どもはおらず、ドロレスは放火魔に殺された記憶)が混在している心の状態が表現されています。

 

ナチス将校が死ぬ記憶

テディはナーリング医師と話した時、テディが昔ノルマンディー上陸作戦に参加した時のことを思い出します。

自殺に失敗して銃に手を伸ばしていた将校から、テディは銃を遠ざけます。
この行動や、ナーリング医師がドイツ人だとテディがめざとく気付いたのは、テディが戦時中の価値観や当時の敵国民に対する憎しみを引きずっていて、漠然とドイツ人全体に対して敵対心や嫌悪感を抱いていたからだったように感じられます。

 

夢に現れたレディスは?

シャッターアイランド

© 2012 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

テディの夢の中に『顔に大きな傷があり片目の視力を失っている放火魔レディス』が登場します。

この人物はテディがたまたま新聞記事で見た放火魔であり、テディ自身がレディスだったことを考えると、新聞記事の内容が妄想の材料となり、偽の記憶を作ったのだと思われます。




夢に現れる少女

テディの夢に現れる少女は彼の愛娘レイチェルでした。
彼女がテディに「なぜ助けてくれなかったの?」と聞くのは、テディの罪の意識からです。

この夢でテディは少女を池に沈めますが、この時隣にいるのはレイチェル・ソランドーでした。
テディは真実を思い出しつつあるものの、この時点ではまだ整理出来ていない状況を表しているのでしょう。

 

頭痛と震えと光過敏

コーリー医師によると、テディのこれらの症状は、彼が入院してから2年間にわたって投与されていたクロルプロマジンという薬を断ったことによる禁断症状(離脱症状)だと説明がありました。
テディの病名は明言されませんが、この薬は統合失調症の患者が服用する薬の代表格のようです。

 

ドロレスについて

テディの幻覚に現れるドロレスは、テディの防衛本能や現実逃避願望が具現化したものです。
彼女が「レディスを殺して」と言うのは、虚構の世界にいる方が精神的には安定するので、アンドリュー・レディスだった頃の記憶は消してしまった方が良いと防衛本能が訴えているからです。
テディは自分自身の中に矛盾する衝動を抱えているのです。

 

メモの真相

シャッターアイランド

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THE LAW OF 4(4の法則)』『WHO IS 67?(67は誰?)』のメモの答えについてです。

コーリーは「レイチェルのメモ」と言っていましたが、本当は医師たちが相談して作った、テディに本当の自分を思い出してもらうためのクイズでした。

4の法則』は、カギとなる4つの名前『エドワード・ダニエルズ』『アンドリュー・レディス』、『レイチェル・ソランドー』『ドロレス・シャナル(ドロレスの旧姓)』のアルファベットが一致することを暗示しています。
コーリーがホワイトボードに書いてくれていたものがそのまま答えで、アナグラムで作った名前『エドワード・ダニエルズ』と『レイチェル・ソランドー』は元々テディが自分で考えたものでした。
レイチェルはテディの娘、エドワードとダニエルは息子の名前でもあります。

EDWARD・DANIELS = ANDREW・LAEDDIS
エドワード・ダニエルズ = アンドリュー・レディス

RACHEL・SOLANDO = DOLORES・CHANAL
レイチェル・ソランドー = ドロレス・シャナル

2行目の『67は誰?』は、67番目の患者がアンドリュー・レディスであり、レディスがテディ自身という答えなんですが、テディがコーリーに「67人目の患者がどこかにいるということか」と聞いた時、コーリーは「違う」と答えます。
完全に間違ってはいないと思いますが、「67番目の患者は自分自身」という回答しか求めていないから「違う」だったんですかね(厳しい)

原作版のメモ

原作小説にはもっと長い暗号が残されているので、答えも一緒に残しておきます。

4の法則
わたしは47
彼らは80
+ あなたは3
われわれは4
でも
67は誰?

47と80を足すと127になり、1、2、7に4行目の3を足すと『13』です。
5行目の『4』は『1と3』、最後の行の6と7も足すと『13』になります。
『EDWARD DANIELS(13文字)』と『RACHEL SOLANDO(13文字)』が2名とも13文字のため、この数字が強調されています。

また、アルファベットを順番に『A -1』『B -2』『C -3』のように数字に置き換えると、『RACHEL』は『18、1、3、8、5、12』で、足すと2行目の『47』になります。
『SOLANDO』は『19、15、12、1、14、4、15』で、足すと3行目の『80』で、
テディは『ソランドー』がレイチェルの結婚後の名字だから「彼ら」なのだと指摘します。

4行目の『あなたは3』は、テディ、チャック(シーハン)、コーリーを示し、
5行目の『われわれは4』は、死んだドロレスと3人の子どもたちではないかと推測されていますが、明確に答えは示されていませんでした。(私の読み間違いだったらすみません)

さらに、テディは外を調査していて不自然に積み上げられた13個の小石の山を見付けます。
石の数を数えると、18、1、4、9、5、4、23、1、12、4、19、14、5 でした。
これらをアルファベットに当てはめると『R A D I E D W A L D S N E』で、これは『EDWARD DANIELS(ANDREW LADDIS)』を構成するアルファベットです。

さらに、岬で9つの小石の山を見付け、石の数を数えると13(M)、21(U)、25(Y)、18(R)、1(A)、5(E)、8(H)、15(O)、9(I) で、アルファベットを入れ替えると『YOU ARE HIM(お前が彼(レディス)だ)』となります。

個人的には映画の省略されている暗号の方がシンプルで好きです。

実はタイトルもアナグラム

タイトル『SHUTTER ISLAND』も実はアナグラムになっていてハッとしました。
タイトルのアルファベットを入れ替えると『TRUTHS AND LIES(真実と嘘)』になります。

真実と嘘の振り分けが重要だよ!という著者からのメッセージが込められているように感じます。

次のページに続きます。

次は『テディの選択』、『レイチェル・ソランドーについて』『ジョージ・ノイスについて』『警備隊長について』などです!




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