映画『十二人の死にたい子どもたち』の解説・考察をしています!
12人の高校生の安楽死志願者が、闇サイトを通じて安楽死するために集まった。
廃病院の地下会場に全員が揃うと、そこにはベッドに横たわる13人目の少年の遺体があった。
12人の少年少女は、死ぬ前に13人目の正体を明らかにすることにした。
本編時間:117分
制作国:日本
監督:堤幸彦
脚本:倉持裕
原作小説:『十二人の死にたい子どもたち

主題歌:『On Our Way』The Royal Concept
キャスト&キャラクター紹介

© 2019 Warner Bros. Japan LLC All rights reserved.
サトシ…高杉真宙
番号札1番。闇サイトの管理人であり安楽死志願者の会の発案者15歳。
いつも冷静に周囲を観察している。家庭問題で悩んでいる。

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ミツエ…古河琴音
3番、16歳のゴスロリ女子。
大好きなバンドマンの後追い自殺をしようとしている。

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セイゴ…坂東龍汰
10番 15歳の金髪ヤンキー。
基本的にチャラチャラしているが、親分肌な一面がある。
母親への腹いせに死のうとしている。
・その他のキャスト
0番…とまん ほか
あらすじ紹介
(謎の死体の周りに集まる一同 引用:https://www.cinemacafe.net)
闇サイトを通じて集まった12人の自殺志願者の若者が、安楽死による集団自殺をするために、とある廃病院に集まりました。
地下にある会場の中央には、12人が座れるイスと長机が用意されていて、机を囲んで12台のベッドが円を描くように置かれています。
闇サイトの管理人で、この会の発案者である番号札1番のサトシ(高杉真宙)がルールを説明します。
安楽死を実行するのは参加者全員が賛成した後で、もし1人でも反対が居れば、全員の意見が一致するまで話し合いを行います。
また、途中で棄権したくなったらすぐに帰っても良いことになっています。
ルール説明が終わると、一同は既に死んでベッドに横たわっている謎の青年が気になりました。
この会の参加者は元々12人で受け付けていたはずなのに、この死体を入れると13人です。
サトシは「メンバー表の名前からすると、この死体は部外者の可能性が高い」と言いました。
多くのメンバーが「誰でも良いから早く死のう」と言う中、2番のケンイチ(淵野右登)が「この死体の正体がわからないと気持ち悪いから、わかるまで死にたくない」と言出しました。
メンバーたちは早く死ぬために、『0番』と名付けた謎の遺体の正体を調べることにします。
解説・感想や考察など
それぞれの死ぬ理由、自殺中止に賛成した理由を整理
あらすじにも一応書いていますが、12人の少年少女が死にたいと思った理由を順番に整理していきます。
サトシは『○○だから死にたい』のような明確な自殺理由はなく、ただ「家族の死や自殺未遂をきっかけに、自分も死にとりつかれた」と語っています。
死にたい理由が弱いなと思っていたら、最後の『何度もこの会を開いている』という伏線回収で納得しました。
サトシはあくまで傍観者的な目線だったことが結末で明らかになるので、絶望から立ち直る若者が見たいだけなのかもしれません。
ケンイチは空気が読めないキャラクターがあだとなって、同級生から強烈ないじめを受けていました。
最初に彼をいじめたのが担任の先生というあたり、闇が深そうです。
ケンイチはいじめに耐えられなくなったけど対抗する勇気も出ず、自殺を決意しました。
ケンイチが実行中止に賛成できたのは、マイの「空気読めない人は人気者にもなれる」や、セイゴの「俺がいじめっ子に話付けてやってもいい」という激励の言葉が大きいのでしょう。
ミツエは崇拝していたヴィジュアル系バンドの1人が自殺したため、後追い自殺をしようとしていました。
彼女が実行中止に賛成したのは、自分のことよりも芸能人であるリョウコを生かしたかったからだと思われます。
リョウコの正体は『秋川莉胡(あきかわりこ)』という人気若手女優でした。
彼女は人気が出てから『秋川莉胡』の存在が勝手に独り歩きし、プライベートも無くなり、本当の自分がわからなくなったため、本名の『リョウコ』として自死する決意をしました。
彼女が生きることを決めたのは、シンジロウの言葉に心を打たれて「もうちょっと生きて見よう」と思い直したからだと思われます。
本作は特に主演っぽい人物が居ませんでしたが、彼が登場もセリフも一番多かったので、主人公に一番近いキャラかもしれません。
シンジロウは幼い頃から難病におかされていて、もうすぐ自分の意思では動けなくなると医者に告げられていました。
シンジロウは、それなら死ぬタイミング位は自分で決めたいと思い、この会への参加を決意しました。
彼が実行の中止を決めたのは、0番が生きていて嬉しかったからで、同時に、12人全員に生き続けてほしくなったからです。
彼自身も、植物状態でも生きている0番に心打たれて、自分もいつか死ぬまでは精いっぱい生きようと考え直しました。
メイコの家庭事情は複雑だったようで、父親がモテるのか母親がコロコロ変わっています。
その原因は、父親のサイコパス的な性格からだったようです。
メイコ自身も父親が大好きで尊敬していて、娘という立場なので「父親は自分だけは絶対に捨てない」と安心していたんだと思います。
ですが、ずっとそういうことにはならず、父親はメイコをも捨てようとしました。
父親への愛情が憎しみに変わったメイコは、父親に自分の存在を一生覚えてもらうにはどうしたら良いか考えた結果、自分自身に生命保険を掛けて、保険金の受取人を父親にして、受け取ってもらおうと思いつきました。
父親の会社の経営が傾いていて、メイコの保険金で会社が立ち直れば、周囲からも『娘の保険金で立ち直った会社』と言われ続け、一生娘のを忘れないはずだと思ったのです。
捨てられたことの腹いせ・復讐として、父親が周囲に良く思われないような形で死んでやろうと考えたのでしょう。
メイコは恐らくあまり納得出来ていないながらも、他人を思いやる心が少し芽生えたから会の中止に手を挙げたのではないでしょうか。
アンリは母親からネグレクトの虐待を受けながら育ち、4歳の頃に母親が起こした火事で当時0歳だった弟を失いました。
それから彼女は『自分や弟が生まれてきた意味』について考えるようになり『本当は生まれてきたくなかった』と思い至ります。
自殺を考えた時に、自分の意思で死ぬことが許されない日本社会に怒りを感じた彼女は、集団自殺の一員になって『生死を自分で選ぶ権利』を主張しようと考えました。
彼女が実行の中止に賛成した理由は、自分以外のメンバーに生きていて欲しくなったからだと思います。
また集いに参加したがっていたので、彼女の死にたいという気持ちは一時的に和らいだものの、まだ自殺願望は根深いようです。
タカヒロは母子家庭で育ち、母親からかなり間違った方法でコントロールされながら育っています。
彼自身は吃音症を含めた精神病が一生治りそうにないから自殺を決意したと語っていますが、本心は恐らく母親から解放されたかっただけですが、母親から解放されるには死ぬしかないと思い込んでいたのです。
幼いころに駄々をこねたからと言う理由で十代後半になっても薬漬けにされていたあたりも闇を感じます。
タカヒロは精神病にかかっているわけではなく、母親から与えられる薬のせいでおかしくなっていると気が付いたので、未来に希望が持てました。
ノブオは中学生の頃、いじめっ子を階段から突き飛ばして殺してしまったことで良心の呵責に悩まされて自殺を決意しました。
彼が棄権した理由は作中でも語られていますが、警察に自首して罪を償ってスッキリしようと決めたからです。
セイゴは母親と再婚相手の男に生命保険に加入させられたので、母親に保険金を渡さない方法で死ぬことを考えて、この会にたどり着きました。
彼が生きることを諦めたのは、母親の知り合いに人殺しを何とも思わない連中(恐らくヤクザ)がいるからです。
実行中止に賛成した理由は、彼もまたシンジロウの言葉に励まされたこと、他の皆に生きていて欲しいと感じたからです。
メンバーの中で一番生き続けるのが難しいのはセイゴですよね。
気になるので、彼のその後を描いてほしかったです。
セイゴ演じる坂東龍汰だけが実際に喫煙している姿が映っていたのですが、気になって年齢を調べたら1997年生まれの22歳(2019年1月16日現在)でした。
登場人物が全員未成年の設定なので、たばことか出てくるとソワソワしちゃいます(笑)
マイは出会い系サイトで出会った男性に無理やりキスされて、不治の病を染されたことが自殺理由だと語っていました。
病名が明らかになっていない段階ではエイズかと思い込んでいまいたが、ふたを開けるとヘルペスでした。
ヘルペスは確かに完治することがないと言われている不治の病の一種ですが、彼女が何をそこまで悩んで自殺しようと思い至ったのかはわかりません。実行中止に賛成したのはシンジロウの言葉に心を打たれたからでしょう。
その後ヘルペスについてちゃんと調べている彼女の様子が思い浮かびます。
実行中止に賛成したのは、他のメンバーが「0番が生きていて安心した。救いたくなった」と、兄が生きることに心から賛成してくれたからです。
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