映画『死刑にいたる病』原作ラストとの違い、榛村大和が快楽殺人者になった原因、雅也の過去など解説考察② | 映画鑑賞中。

映画『死刑にいたる病』原作ラストとの違い、榛村大和が快楽殺人者になった原因、雅也の過去など解説考察②

死刑にいたる病 サスペンス

映画『死刑にいたる病』の解説考察②です。

この記事では映画では描かれておらず、できれば描いてほしかったと思う登場人物の過去や行動理由を紹介しています。

鑑賞済みの方向けの考察記事です。
見ていない方はネタバレにご注意ください(__)

 

『死刑にいたる病』概要紹介

制作年:2022年
本編時間:128分
制作国:日本
監督:白石
脚本:高田亮
原作小説:『死刑にいたる病』櫛木理宇 著
この作品はPG12の年齢制限があります。
拷問等、殺傷描写がみられるためです。(映倫参照)

あらすじ紹介

東京の大学で孤独なキャンパスライフを送っていた筧井雅也(岡田健史)の元に1通の手紙が届きます。
手紙の送り主は死刑囚の榛村大和(阿部サダヲ)でした。

榛村は雅也の地元でもある栃木県でパン屋『ロシェル』を営んでいた男ですが、可愛い笑顔と職業とは裏腹に、高校生ばかりを誘拐・監禁・拷問の末に殺害していた快楽殺人者でした。

榛村の事件が明るみになったのは、当時監禁されていた女子高生が逃走して警察に駆け込んだからでした。
逮捕・起訴された榛村は法廷で反省の素振りを一切見せず「僕が逮捕されたのは慢心したせいです。もし人生をやり直せるなら、二度と油断したりしません」と発言して世間を震撼させました。

雅也の実家は『ロシェル』の近くにありました。
雅也は中学生の頃、学校と塾の間の時間をいつもロシェルで過ごしていました。
厳しい父親を持つ雅也は、父とは対照的にいつも優しい榛村が大好きでした。
手紙には「君にお願いしたいことがある」と書かれていますが、パン屋の客の1人に過ぎなかった雅也に榛村が頼みたいことなど検討が付きませんでした。

雅也が恐る恐る拘置所の面会室に行くと、榛村はパン屋で会っていた当時と変わらない笑顔を見せました。
榛村の頼みとは『有罪判決が出た9件の殺人の内、最後の1件だけは冤罪なので証明するのを手伝ってほしい』というものでした。

主要キャスト

筧井 雅也(かけいまさや)…岡田健史
東京のFラン大に通う栃木出身の大学生。

榛村 大和(はいむらやまと)…阿部サダヲ
高校生の連続拷問殺人の罪で逮捕された死刑囚。
雅也の実家近くのパン屋『ロシェル』の店主として町の人気者だった。

金山 一樹(かなやまかずき)…岩田剛典
榛村のいる拘置所で雅也が出会った謎の青年。

筧井 衿子(かけいえりこ)…中山美穂
雅也の母。ただひたすら大人しく家庭でも空気のような存在。
榛村大和と過去に繋がりがある。

加納 灯里(かのうあかり)…宮崎優
雅也の中学と大学の同級生。雅也に好意がある。

 

原作小説を読まないとわからない色々

知っておくとさらに理解が深まりそうな原作小説の情報をまとめておきます。
主には映画で語られていない主要人物の生い立ちです。
榛村大和の周辺人物は被虐待児ばかりなので、物騒な単語や表現が多いまとめになってしまい胸糞注意の項もありますが、平気そうであれば目を通してみてください。

筧井雅也の少年時代

死刑にいたる病
(引用:https://cinephilie.jp

雅也の過去は映画では「中学までは成績が良かったけど、高校で失敗した」と一言で片づけられていて、雅也の学生時代がいまいち掴めなかったのが地味に残念な点です。

原作小説によると、小中学時代の雅也は勉強を特に頑張らなくても成績優秀で、控えめな性格でしたが友人は多い子どもでした。
幼いころの雅也は主に父親と祖母の影響で『選民意識』があり、決して表には出さないものの、勉強が平均以下で友達も少ないタイプの同級生をひそかに見下していました。

そのため、中学生時代の雅也は加納灯里を見下していて、友達のいない彼女に話しかけていたのは『誰にでも平等に接する自分』を演出するための行動でした。

雅也は中学までは公立校に通いましたが、高校受験で県内有数の進学校に入学が決まり、学校の寮に引っ越しました。
雅也のロシェル通いが中学で終わったのもこの時の引っ越しが理由です。

細かい点ですが、映画では雅也は塾通いをしていましたが、小説では父が知人に『雅也は塾に通わなくても勉強ができる天才肌の子』と思われたいがために塾ではなく家庭教師を雇っていて、雅也がロシェルに通ったのは週に1度 母衿子と一緒に来ていた程度でした。

雅也が父に暴力を振るわれていることに榛村が気付くのも小説には無いので、映画と小説の雅也と和夫はキャラ設定が多少違うのかもしれません。

見栄っ張りの父 和夫は雅也の受験成功を親戚から職場まで自慢しますが、和夫の期待とは裏腹に、雅也は高校入学直後から授業についていけなくなります。
雅也は内心焦るものの、プライドが邪魔をして勉強を教えて欲しいと誰にも言えず、『優等生の仮面』が剥がれ、『選民意識』も崩れてついには鬱状態になってしまいます。
雅也自身は自分が見下していたそのままの人間になりつつある現状に絶望したのです。

教師からは「実家に戻った方が良い」と言われますが、雅也は地元で恥をかくのを恐れて帰れず、和夫と祖母も当然中退を許しませんでした。
苦肉の策で雅也は休学と復学を繰り返しますが、やはり勉強面で挫折して最終的には高校側から退学を告げられました。

その後、雅也は高卒認定試験を経て大学受験に挑戦しますが、本来の志望校には落ちてしまい、受かっていたのは『Fラン大学』だけでした。
当時雅也は浪人を望みましたが、和夫が謎のこだわりから許さなかったためFラン大に通うことになりました。




雅也と灯里の関係

映画では居酒屋での会話で、灯里が中学時代から雅也に好意を抱いていたことが仄めかされていました。
中学時代の灯里は暗い性格で友人を作れずにいた中、雅也だけが灯里に普通に話しかけてくれていたことが救いだったようです。

灯里と雅也は高校が違うので、灯里は大学で再会するまで『優等生の雅也』しか知りませんでした。
雅也と灯里は高校を経て立場が真逆(陰キャ⇔陽キャ)に入れ替わっていたので、雅也は彼女の顔を見ることすら当初は嫌がっていました。
小中学生時代の『友達が多い優等生』から『ボッチのFラン大生』に変貌している現状を笑われるのが怖かったのです。

しかし、灯里は雅也が変わっていても気持ちが冷めることは無かったので、そこに灯里の変わらぬ愛を感じます。
恐らく灯里にとって大学生の雅也は過去の自分を見ている気持ちになり、むしろ親近感すら抱いていたかもしれません。

一方、雅也が灯里を好きになったのも恐らく彼女と同じ理由で、大学で友人が作れずにいた雅也に普通に話しかけてくれたのが灯里だけだったからです。
ここら辺にも例えづらいですが輪廻のようなものを感じます。

 

雅也が祖母を嫌っていた理由

死刑にいたる病

©2022映画「死刑にいたる病」製作委員会

雅也の祖母のお葬式から物語が始まり、雅也は「祖母に育てられたようなもの」と語っていたものの、祖母を嫌っていた発言を何度かしていました。
こちらも詳細はほぼ明かされずでしたが、雅也が祖母を嫌いだったのは、祖母がずっと母 衿子を嫁いびりしていたからです。

父 和夫は祖母の衿子に対する態度を当然と思っていて何もしませんでした。
雅也は学校で活躍することで祖母と父が上機嫌になり、結果2人が衿子に優しくなるので、これからも活躍して衿子を救おうとしましたが、高校で失敗してしまいました。

肝心の衿子自身は過去の虐待のせいでとにかく自己評価が低く「こんな私と結婚してもらえただけでありがたい」という考えから、祖母が死ぬまで嫁いびりに耐え続けました。

ちなみに原作小説では祖母は健在です。

次のページに続きます!

次は雅也の母の過去、榛村大和の過去、大和の母についてなどです。




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