映画『さくらん』ネタバレ解説|ラストのその後、清次が店を継がなかった理由など考察! | 映画の解説考察ブログ - Part 2

映画『さくらん』ネタバレ解説|ラストのその後、清次が店を継がなかった理由など考察!

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ヒューマンドラマ

結末

後日、倉之助は玉菊屋に大量の桜を木を持ちこんで庭に置き、日暮の言葉通り吉原に桜を咲かせてお花見の宴を開きます。
倉之助がみんなの前で「日暮を見受けしたい」と発表すると、周囲は色めき立ち、楼主と女将は大喜びしています。

お祝いムードの中、日暮の体調が良くないことに気が付いたのは清次だけでした。
その後、日暮の妊娠が発覚します。
子どもの父親は倉之助かもしれませんが、日暮が相手をする客は倉之助だけではないので正確にはわかりません。
日暮は「見受け話を断って子どもを産む!」と主張しますが、お店には『一度受けてしまった見受け話をお店や花魁の都合で断ることはできない』というルールがありました。

後日、日暮は「誰が父親かもわからない子を身ごもった」とあえて正直に伝えます。
倉之助を怒らせれば見受け話は白紙になるだろうと考えたのです。
ですが、倉之助は「それでも良い」と真剣に答えるので、日暮は逆に倉之助の愛と懐の深さを思い知らされました。

しかしその直後、日暮のお腹に激痛が走って子どもは流れてしまいました。

流産のショックでふさぎ込む日暮を、清次はそばについて献身的に看病しました。
ある夜。夜風に当たりながら子どもを思って泣いていた日暮を、清次は強く抱きしめました。
そして2人はお互いの恋心に気付いてしまいました。

日暮の体調が回復すると、倉之助の提案で、日暮と倉之助、清次と嫁になる女性の祝言を一緒に済ませてしまおうという話になりました。

祝言を明日に控えた夜。
日暮は一番可愛がっている禿の『しげじ』(山口愛)に、かつて粧ひからもらったかんざしをプレゼントしました。

祝言当日の早朝。
日暮と清次は、庭に植わっている咲かない桜の木に、2輪の小さな花が咲いていることに気付きます。
2人は顔を見合わせて笑うと、昔に交わした約束通り、清次が吉原から日暮を連れ出しました。

2人が駆け落ちしたことを知った楼主は「殺してやる!」と怒り狂います。
一方、倉之助は空っぽの日暮の部屋で悲しげな笑みを浮かべていました。
満開の桜と、一面に菜の花が咲く土手に来た日暮と清次は、幸せそうに一緒に桜を見て回ります。

主題歌
『カリソメ乙女(DEATH JAZZ ver.)』椎名林檎&SOIL&”PIMP”SESSIONS

挿入歌
『夢のあと』椎名林檎
『この世の限り』椎名林檎×斎藤ネコ+椎名純平

3曲とも椎名林檎さんのアルバム『平成風俗』に収録されています。

 

解説や感想など

とにかくセットや着物が華やかで綺麗でした!
本当の花魁はどんな着物を着ていたんだろうともおもいながら見てました。

以下、ラストについてや疑問に思った点などを書いていきます。

若菊がきよ葉によんだ句の意味

冒頭で、客引きをしていた若菊がきよ葉に嫌味を込めて句をよんでいました。

「心なき 間夫(まぶ)は今頃 向島(むこうじま) お茶引きの身の 一人相撲よ」

簡単な訳は「心無い男(惣次郎)はもうどこかに逃げてしまった 待っていても無駄だ」という意味です。
『間夫』は、本命の男性という意味です。
この詩をよまれた きよ葉は怒り、若菊を蹴り飛ばします。

「もったいねえ」の意味

高尾が心中しようと光信に襲い掛かったとき
光信はあやまって高尾を殺してしまいました。
翌日、高尾の遺体と壁や家具についた血しぶきを見た楼主は「もったいねえ」と一言つぶやきました。
この「もったいねえ」の意味は、まだまだ稼いでもらうつもりだった花魁が死んで「もったいない」、高い家具や壁紙に血がついて使えなくなって「もったいない」という意味です。

楼主は花魁たちを単なる商売道具としてしか見ていないことがよくわかります。

 

花屋の男(小栗旬)について

  
(引用:https://livedoor.blogimg.jp

本作では、日暮に突然バラをプレゼントする花屋の青年が登場します。
この男は映画ではチラっとしか出ませんでしたが、原作漫画では日暮に想いを寄せる青年として主要キャラになっている人物です。
気になる方は原作漫画もご覧になってみてください!




倉之助が日暮にプロポーズした時の日暮の答えの意味

日暮に本気になった倉之助は、日暮に「正妻になってほしい」とプロポーズします。
そのときの日暮の答えは「この吉原に桜が咲いたら、出ていくつもりでありんす」でした。
何も知らない倉之助は「吉原に桜が咲いたら結婚する」と受け取りました。

しかし、この日暮の言葉の本当の意味は別にあります。
プロポーズされたとき、日暮は清次と「この桜が咲いたら、お前をここから連れ出してやる」と約束したことを思い出していました。

日暮は清次が好きだと既に自覚していたものの、許されない恋なので心の奥にしまい込み、その代わりに独身を貫くつもりでいたのでしょう。

そして何も知らない倉之助には『吉原に桜を咲かせる』という無理難題を言い、暗に見受け話を断ったつもりでした。
しかし、倉之助は金に物を言わせて吉原に桜を咲かせてしまったので、見受け話が進んでしまいました。

 

清次が玉菊屋を継ぎたくなかった理由

子どもがいない楼主と女将が、身内との結婚と跡継ぎの話を清次に持ち掛けた際、清次は結婚も、店を継ぐのも気乗りしない顔をします。

清次はかつて玉菊屋で働いていた遊女の子どもで、生まれてからずっとここで育ちました。
「お世話になった楼主と女将のために働いている」と本人が語っています。

しかし、清次は楼主とは違って人の気持ちがわかる人間でした。
この世界のことを誰よりも知っていたからこそ、ここに長く身を置くつもりはなかったのでしょう。
吉原で働く女たちの辛さや悲しさ、苦悩を誰よりも理解していたからです。
そして、結婚話にも乗り気でなかったのは、清次の心には既に日暮がいたからです。

 

結末の解釈

映画 さくらん
©2007 蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ©安野モヨコ/講談社

結末が描かれることなく話は終わってしまいますが、日暮と清次の行く末は、登場人物たちの発言などで語られています。

祝言の当日に2人は行方をくらまし、恥をかかされた楼主は怒り狂います。
あらゆる手を使って何が何でも2人を捕まえようとするでしょう。

そして、日暮が可愛がっていた禿 しげじの発言です。
祝言の前夜、しげじが「怖い夢を見た」と日暮に泣きつきます。
その夢の内容は『姉さん(日暮)が遠くに行って死んでしまう夢』でした。
このしげじの夢が、2人の行く末を示す隠喩です。

日暮と清次はこの後 楼主に捕まって殺されるか、捕まる前に心中するかのどちらかです。
2人は結婚の約束を無視するとどうなるのかを理解した上で駆け落ちしました。
お互いに好きでない相手と結婚して長生きするよりは、好きな人と一緒にいられる短い時間を選んだのでしょう。

タイトル「さくらん」について

本タイトルは、きよ葉と清次の約束である「桜」と「錯乱(意味:感情や思考が混乱する)」を掛け合わせたタイトルだと解釈しています。
嫉妬に狂って間夫に殺された高尾も、死を恐れずに駆け落ちを選んだきよ葉と清次も、第三者から見れば「いっときの感情に身を任せて(錯乱して)破滅した大馬鹿者」に映るでしょう。

しかし、彼女たちは後悔していません。
花魁の女たちは恋愛に生き、生かされている存在です。
恋愛の末に死ねるなら本望なのかもしれません。

以上です!読んで頂きありがとうございました。
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