映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』の解説考察を紹介しています!
入水自殺の女、太宰の長男、小説『人間失格』との関係、ラストで太宰が目を開いた理由など書いています。
鑑賞済みの方のための考察記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。
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キャスト紹介
太宰 治(津島 修治)…小栗旬
第二次世界大戦前後を生きた青森県出身の小説家。
実体験を小説に投影し、小説のためなら簡単に禁忌を犯す。
酒とタバコがやめられず肺を病んでいる。
津島 美知子…宮沢りえ
太宰治の妻。3人の子どもを育てている。
太宰の不倫に本当は傷ついているが、小説のために黙認している。
太田 静子…沢尻エリカ
太宰の不倫相手の没落貴族。
太宰のベストセラー小説『斜陽』の主人公のモデルになった女性。
山崎 富江…二階堂ふみ
太宰の不倫相手の美容師。他の愛人が太宰の子を産んだことを知ってから度々自殺をほのめかすようになる。
太田薫(静子の弟)…千葉雄大
坂口安吾(小説家)…藤原竜也
伊馬春部(小説家)…瀬戸康史
三島由紀夫(小説家)…高良健吾
バーの店主…壇蜜 ほか
あらすじ紹介
小説家の太宰治(小栗旬)は妻と3人の子どもがいる身でありながら不倫に溺れ、若い愛人を作っては心中未遂をしてきました。
妻の美知子(宮沢りえ)は太宰の不倫を知っていますが、太宰は自由にさせておかないと良い小説が書けないことを知っているため、不倫も仕事だと割り切って黙認しています。
1946年(太宰37歳)の秋、太宰は疎開先から東京に戻って家族4人で新生活を始めます。
太宰は担当編集者の佐倉(成田凌)から度々新作をせがまれますが、筆が全く進んでいませんでした。
翌年の早春、太宰はかねてから愛人関係にあった神奈川県の下曽我に住む没落華族の太田静子(沢尻エリカ)と久しぶりに再会し、彼女との恋に熱中します。
ある日、静子は美知子が3人目の子どもを妊娠中だと知ると「自分も子どもが欲しい」とせがみます。
太宰は了承しますが、本心では愛人と子どもを作る気はありませんでした。
静子との関係に悩む太宰に、太宰と似た気質を持つ小説家の坂口安吾(藤原竜也)は「地獄に落ちて書け」「もっと堕ちろよ」とささやきました。
太宰が静子に惚れたのは、静子が『良い文章』を書くからでもあり、付き合い始めた頃から太宰は静子に日記を書かせていました。
ある日、太宰は静子の自宅を訪ねて日記を読ませてもらいます。
太宰の予定では、妊娠を避けるためにも日記を読んだら静子とは二度と会わないつもりでしたが、結局離れられず気が済むまで静子との恋にふけりました。
その後 太宰は新作の構想が決まり、長編小説を書き始めます。
解説・考察・感想など
太宰の小説『人間失格』との関係は?
小説『人間失格』は太宰の遺作であり、自堕落で人生に目標がない人間はどうなってしまうかを極論的に描くことで、生きる目的や意思の強さを持つ大切さがわかる反面教師のような内容です。
『人間失格』の主人公”大庭葉蔵”は、その生い立ちなどから太宰自身の半生や性格が色濃く反映されたキャラクターと言われています。
この映画は太宰自身の半生を描くことで、なぜ彼が『人間失格』という罪深い大作が書けたのかがよくわかる構成になっています。
以下小説のあらすじを書きますが、長くなってしまったので知っている方は読み飛ばしてください。
大庭葉蔵は裕福な家庭で10人近い兄弟の末っ子に生まれ、幼い頃から周囲の人たちの気持ちや考えが理解できず、それを周囲に悟られないように『道化』となってお笑い役に徹することで必死にごまかして生きていました。
葉蔵には画家になる夢がありましたが政治家の父親には言えず、父の意向に従って東京の高等学校に入学して下宿生活を始めます。
葉蔵は学校にほとんど行かず画塾に通い、そこで6才年上の堀木という男と出会います。
葉蔵は堀木から酒と煙草と女遊びと左翼思想を教わり、この頃に葉蔵は自分自身がイケメンで女にモテることを自覚しました。
上京してしばらくすると葉蔵は生きることがつまらなくなり、恋愛関係にあった銀座のカフェ店員のツネ子に誘われるがまま高校2年の秋に心中未遂を起こして自殺幇助罪で逮捕されました。
葉蔵は生き残りましたがツネ子は死に、この事件が原因で葉蔵は学校を退学処分になり父親からも勘当されました。
葉蔵は仮病で検事と警察の同情を買って不起訴になり、釈放された後は身元引受人になってくれた父親の友人の渋田という画商の家で世話になります。
翌年の冬の終わりになると、渋田は葉蔵に将来の方針を聞きます。
このとき葉蔵は思い切って「画家になりたい」と言いますが、渋田は小ばかにしたように「ちゃんと考えなさい」と返しました。
傷ついた葉蔵はその日のうちに家出して堀木に会いに行きます。
その後、葉蔵は堀木の知人で出版社勤務でシングルマザーのシヅ子と恋愛関係になりすぐに同棲を始め、シヅ子に勧められるがまま漫画家の仕事を始めます。
シヅ子の奮闘のおかげで葉蔵の漫画は雑誌に掲載されるようになり、葉蔵は自分でいくらか稼げるようになりました。
しばらく経つと、葉蔵はシヅ子と会うのが何となく嫌で、夜は外で遊びまわるようになります。
ある日、葉蔵は自分の帰りを待つシヅ子と娘を見ると急に『幸せ』が怖くなってしまい、シヅ子から逃げて行きつけのバーの女店主の家に転がり込みました。
それから葉蔵はバーの手伝いと漫画家を両立するうちに本格的なアル中になります。
しばらく経ち、葉蔵は近所に住む18歳のヨシ子にアプローチされ、彼女の純真無垢さに惹かれた葉蔵はヨシ子と結婚しました。
葉蔵は酒を絶ち穏やかな日々を手に入れますが、ある日ヨシ子は悪い男に騙されて強姦されてしまいます。
強姦事件から葉蔵はヨシ子への接し方がわからず、再び酒に溺れて外を出歩くようになり、2人の間に大きな溝が出来ました。
ある夜、葉蔵はヨシ子が隠し持っていた致死量以上の催眠剤を衝動的に薬を飲み干して死の境をさまよいますが、数日後に目を覚ましました。
その後も葉蔵は漫画も描かず安酒を飲み歩く日々を送り、ある冬の日に喀血して肺を患っていることを知ります。
死の恐怖に駆られた葉蔵は苦し紛れに薬屋に行きますが、酒をやめられた代わりにモルヒネ依存になってしまいます。
葉蔵の状態は葉蔵の兄に伝わり、葉蔵は脳病院(精神病院)に強制入院させられました。
このとき葉蔵は『人間失格』の烙印を押されたように感じました。
入院から3ヶ月後、葉蔵は兄から父が病死したと知らされ、葉蔵は退院させられて辺鄙な土地にあるボロ屋と老婆の世話係をあてがわれ、ここでしばらく静養しなさいと命じられます。
葉蔵は父の死で心にぽっかり穴が空いてしまい、何も感じなくなって完全に廃人になりました。
それから数年経ち、葉蔵はまだ20代にも関わらずすっかり老け込み、老婆とは夫婦にも似た関係になり、病状の一進一退を繰り返しながら静養生活から抜け出せずにいます。
『人間失格』の中で、葉蔵は少年の頃に竹一という不思議ちゃん系の友人に「お前はきっと女に惚れられる」「お前は偉い絵描きになる」と予言めいた発言をされます。
葉蔵は『偉い絵描き』になれませんでしたが、本気で画家を目指していれば竹一の予言は当たっていたのではないでしょうか。
一方で太宰は小説家として大成功しましたが、もしも自分に夢がなかったり、夢を諦めていたらどうなっていたかを想像し、太宰自身のあり得た別の姿が葉蔵というキャラクターに込められていたような雰囲気を感じました。
最初の心中相手は誰?
冒頭で太宰が一緒に入水した女は田辺シメ子という太宰の愛人だった18歳のカフェ店員です。
彼女もまた太宰の短編小説『道化の華』のヒロインのモデルになった人物です。
太宰とシメ子は3回しか会ったことがありませんでしたが、心中の約束をしてカルモチン(鎮痛催眠薬)を買い込み、鎌倉市にある七里ヶ浜で薬を飲んでから一緒に入水し、シメ子だけが死に、太宰は生き残って自殺幇助罪で逮捕されました。
太宰は警察に遠い親戚がいたおかげで不起訴釈放になっていますが、『道化の華』に書かれている内容や、太宰自身がカルモチン常用者で薬が効きにくかった点などから、太宰は最初から死ぬ気がなく小説のネタにするために計画的にシメ子を誘導したのではないかと噂されていました。
この映画で太宰が海から上がった直後の台詞「死ぬかと思った」や、のちに宴会でシメ子との心中未遂を笑い話にしているシーンなどにはこの噂の内容が詰め込まれています。
また、シメ子が死ぬ直前に別の男の名前を叫んだというのも実話のようですが、太宰が笑い話で語った内容らしく、映画の中では少なくとも「蹴り飛ばしてやった」の部分は嘘だったので真相はわかりません。
太宰治の長男について
映画で太宰の妻 美智子が育てていた長男はダウン症でした。
これは実際に太宰治の長男がダウン症だったためです。
太宰治の長男 正樹は父親の肺の弱さを受け継いでしまったのか、肺炎により15歳で亡くなっています。
次のページに続きます!
2ページ目はラスト考察です。
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