映画『流浪の月』ネタバレ解説考察|タイトルの意味、文の病名、ロリコンの真相など | 映画の解説考察ブログ - Part 2

映画『流浪の月』ネタバレ解説考察|タイトルの意味、文の病名、ロリコンの真相など

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ヒューマンドラマ

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文はロリコンだったのか

流浪の月
(引用:https://www.astage-ent.com/

ロリータ・コンプレックスとは幼女、少女に対して恋愛感情(特に性的欲求)を抱く心理現象で、小児性愛やペドフィリアとほぼ同義語です。
元々ロリータ・コンプレックスの由来はロシア人作家の小説『ロリータ』からで、少女を愛してしまった中年男が叶わぬ恋に苦しむ物語であり性的な意味合いはありませんでしたが、時代の流れと共に性的な意味合いを含むようになりました。

文に性欲が無い点を前提とすると、文は世間で言われるようなロリコンではありません。
原作小説では、文は中学生以下の子どもにしか興味が持てないという意味合いの発言をしていて、それが世間ではロリコンという解釈をされていますが、文が抱く興味は性欲抜きの感情です。
しかしその感覚を誰にも理解してもらえないため、文はロリコンと言われても否定しなかった(理解してもらおうとするのを諦めていた)のでないでしょうか。

文が小学生に興味を持つのは文自身の体とも関係していると思われるので、その背景には複雑な感情が入り混じっていると推測します。

では文は更紗を一緒に暮らしていた当時どう思っていたのかというと凡人の私には解釈が難しいですが、文は恐らく更紗に恋をしていたように見えました。
もちろん性欲抜きの恋愛感情で、幼い子どもが異性(母親や先生や同級生)を好きになるというような純粋な好意だったと思われます。

しかし当時文は19歳で更紗は9歳なので、文を知らない赤の他人にロリコンと呼ばれても仕方無い事態かもしれません。

2人が15年後に再会した後、文は更紗への好意を再確認しています。
それがわかるのは、更紗と文がアパートのベランダ越しに会話するシーンだったり、預かった女の子の梨花が文に「更紗のこと好きでしょ」と指摘するシーンです。
それは、文はロリコンではなく純粋にずっと更紗が好きだったとも解釈できます。

一方で更紗も文に恋人がいると分かった時「良かった」とつぶやきながらもどこか寂しそうでした。
更紗は文が人並みに幸せそうだったことが心から嬉しかったのは間違いないと思いますが、隣の部屋に引っ越してしまうほどの執着を見せるのは、やっぱり文を愛し求め、必要としていたからという理由以外には説明が付きにくいです。

更紗も過去のトラウマから性的欲求が欠如していたため、彼女もまた文と似たような性欲抜きの好意を抱いていたと思われます。

最後に、文が更紗の口に着いたケチャップを拭いてあげるシーンについて、映画を先に見た私はこのシーンが文の更紗に対する好意を表していたように見えたんですが、原作小説では、文は性的興味が沸くかどうか確かめるために更紗の唇を見てみたけれど、特に何も感じなかったとされていました。

これらから、文は世間的に言われる『ロリコン』ではないと言えるのではないでしょうか。




文があゆみと交際していた理由

更紗が亮と付き合っていたのは『自分を愛してくれる人となら、いつか自分も彼を愛し、幸せになれるかもしれない』という理由からでした。

恐らく文があゆみと交際していたのも更紗と似たような理由からです。
文は更紗が亮と付き合ったのと同じ理由に加えて、更紗に対する思いの正体を確かめるためにもあゆみと交際していたのではないかと推測しています。

 

文が別れ際のあゆみにかけた言葉

別れ際、あゆみの「私と一度もしなかったのは、小児性愛者だから?」という質問に対し、文は「そうだよ。大人の女ともセックス出来るかどうか確かめたくて付き合ってたけど、無理だった」と辛辣な言葉を浴びせました。

文とあゆみの交際期間はわかりませんが、文は逮捕歴があることすらも言えていませんでした。
それは、あゆみというか世間一般に逮捕歴を知られることに対する恐怖心からでしょうが、あゆみは文の過去を知ると、彼女もまた文に世間一般的な態度を取りました。

あゆみは文が逮捕された過去と罪状を確認するだけで文の人間性を決めつけて、そこにどんな事情やいきさつがあったのかは知ろうともしませんでした。
しかし、罪状が罪状なのであゆみが先入観を持ってしまうのは仕方ないのかもしれません。

文はあゆみに対して心を開けなかった理由を、逮捕歴を知ったあゆみの態度で確信して、怒りからあのような発言をしたのではないでしょうか。
また、作中で『人は自分が信じたいことしか信じない』という意味合いの発言があるように、あゆみは「私と一度もしなかったのは、小児性愛者だから?」と聞いた時点ですでに答えがイエス以外に無いと考えていたのは明らかでした。

文はあゆみの思い込みも読み取った上でどう答えても無駄だと思い、あのように答えたとも考えられます。

 

中傷のビラを撒いたのは誰?

更紗が文の住むアパートに引っ越してからしばらく経ってから、アパートの集合ポスト付近に文に関する中傷のチラシがバラまかれていました。

亮の仕業だと思い込んだ更紗が亮と直接話をしに行くと、亮は「俺じゃない」とはっきり否定しています。
亮がもし嘘をついていないとしたら誰がやったのかと考えると、思い浮かぶのは文を恨んだ谷あゆみ(多部未華子)か、ネットで文の情報を知った心無い見知らぬご近所さんあたりのどちらかになります。

犯人はわからないままで作中にヒントも特に見当たらなかったのですが、原作小説ではあゆみが更紗を警察に突き出そうとしたりと2人に対して何らかのアクションを取っていたので、あゆみの仕業だったのかもしれません。

 

亮はなぜリストカットしたのか

流浪の月
(引用:https://movie.jorudan.co.jp

亮は、更紗が亮にとって理想の彼女であるうちは優しかったですが、言葉の端々から更紗を内心下に見ている発言がありました。
それは「たかがバイトだから仕事を頑張る必要ない」、「今なら許すから」などの発言です。
更紗は特に、亮の『許す』という言葉に「何を許される必要があるのか、許されなければいけないことをしたのか」と疑問に思っていました。

亮の行動は典型的な『デートDV』でした。

デートDVとは、交際中の相手に対して暴力やハラスメント行為を行うことです。
特徴は『交際相手の行動や交友関係を制限する』、『交際相手に対するストーカー行為』、『交際相手が自分を最優先しないと怒る』、『身体的暴力、性的行為の強要』などです。

亮がDV男になってしまった背景は映画では語られていませんでしたが、原作小説には、亮は幼少時に父親から暴力を振るわれ、それが原因で離婚していた過去が明かされています。

なので、亮がリストカットしたのは更紗を引き留めるための行為で間違いないですが、救急車に担ぎ込まれる直前に更紗に「もう良い」と言って解放したのは何となく理解出来ませんでした。

リストカットするほど執着するなら更紗を解放するタイミングが早すぎる気がしたのです。
もしくはお別れの「もう良い」ではなく、引き留めるためにあえて突き放す言葉をかけた更紗を試していたのかもしれません。

亮の正確な意図はわかりませんが、更紗は亮の言葉を素直に受け取って亮から離れました。

ちなみに原作小説には亮がリストカットする描写は無く、亮は更紗と口論の末に階段から落ちて怪我をして「この人(更紗)に突き落とされました」と発言して最後まで更紗を困らせようとしています。

 

安西佳菜子と連絡が取れなくなった理由

流浪の月

©2022『流浪の月』製作委員会

更紗は佳菜子が彼氏と2人きりで旅行に行っている間だけと頼まれて、佳菜子の子どもの梨花を預かりますが、その後、佳菜子とは連絡がつかなくなり、勤務先のレストランにも出勤しなくなりました。

佳菜子は梨花を捨てて赤いスポーツカーの男と蒸発したのです。

佳菜子は自らを『コブ付き(=シングルマザー)』と自虐的に表現していましたが、『コブ付き』という表現自体が子どもを厄介だと思う感情から生じた言葉(子ども=瘤)で、佳菜子が新しい家庭を築く上で子どもが邪魔になると内心考えていることが仄めかされています。

なので、佳菜子は恐らく更紗の人が良いのを利用して、計画的に彼氏と逃亡したのです。

 

梨花はどうなった?

更紗が預かっていた女の子 梨花のその後が描かれず少し心配でした。

彼女は警察に保護され、更紗が警察に事情も説明し、文も逮捕されていなかったので、あの後は警察が佳菜子を探してコンタクトを取ってくれるはずですが、佳菜子にはもう梨花を育てる気が無いようなので、佳菜子の元に戻されても似たようなことが繰り返されてしまう可能性があります。
梨花が少しでもストレスの少ない環境で生きていけることを願うばかりです。

原作小説では、梨花は安西佳菜子の元に戻されて、一応元通りの生活を送っています。
梨花は更紗と文の唯一の理解者になり、2人が流浪生活を始めてからも年に1度は必ず梨花と会っている様子が描かれています。

個人的には2人は海外で暮らした方が精神衛生上良い気がしましたが、梨花が気がかりで日本から出られないのか、出られない別の事情があるのかもしれませんね。

以上です。読んでいただきありがとうございました。
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・参考サイト様一覧

映画『流浪の月』公式HP

メディカルノート

政府広報オンライン

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