映画『流浪の月』ネタバレ解説考察|タイトルの意味、文の病名、ロリコンの真相など | FILM LAB|映画の解説考察ブログ

映画『流浪の月』ネタバレ解説考察|タイトルの意味、文の病名、ロリコンの真相など

日本映画
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映画『流浪の月』の解説、考察をしています!

15年前に世間を騒がせた誘拐事件の『誘拐犯』と『被害者』の再会と、加害者と被害者のはずの2人に隠された真実を紐解く愛の物語。

本作を見た方向けの考察記事です。
未鑑賞の方はネタバレにご注意ください(__)
制作年:2022年
本編時間:150分
制作国:日本
監督・脚本:李相日
原作小説:『流浪の月』凪良ゆう 著

主要キャスト紹介

流浪の月
©2022『流浪の月』製作委員会

家内 更紗かない さらさ…広瀬すず
9歳…白鳥玉季
ファミリーレストランで働く24歳。
9歳の頃の家出が誘拐事件に発展してしまい、世間一般の印象と事件の真相のギャップに苦しむ。
たまたま立ち寄った喫茶店で文と再開する。

流浪の月
©2022『流浪の月』製作委員会

佐伯 文さえき ふみ…松坂桃李
19歳の頃に更紗の誘拐犯として逮捕された男。
34歳になった現在は名前を変えて夜間営業の喫茶店を経営している。

流浪の月
©2022『流浪の月』製作委員会

中瀬 亮なかせ りょう…横浜流星
更紗の婚約者。更紗の事件のことを知った上で付き合っている。
更紗が従順だった頃はひたすら優しかったが、更紗の変化を感じると次第に本性を見せ始める。

流浪の月
©2022『流浪の月』製作委員会

谷 あゆみ…多部未華子
文の恋人。
文の前科を知らず、肉体関係が無いことを悩んでいる。

安西佳菜子(更紗の同僚)…趣里
安西梨花(佳菜子の娘)…増田光桜
湯村(更紗の勤務先の店長)…三浦貴大
阿方(アンティークショップ店主)…柄本明
佐伯音葉(文の母)…内田也哉子 ほか

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あらすじ紹介

あらすじ起:

主人公の家内更紗(広瀬すず)は9歳(小3)の頃、当時19歳だった佐伯文(松坂桃李)の1人暮らしのアパートに約2ヶ月間監禁された過去を持つ誘拐事件の被害者です。

更紗が保護された時、更紗が文と離れるのを嫌がる様子を撮った動画がネットにアップされ、更紗は世間的に『誘拐犯に洗脳され、傷物にされた可哀そうな女の子』になります。

文は『ロリコンの誘拐犯・性犯罪者』にされて少年刑務所行きになり、事件は全国的に取り上げられて大きな話題になりました。

しかし、更紗と文の事件は世間一般が思うような内容とは全く違っていました。

更紗は幼い頃に父親をガンで亡くし、母親に捨てられて叔母に引き取られていましたが、そこで叔母の子(更紗の従兄)で中学生の孝弘から性的虐待を受けていました。

孝弘の件を叔母に言えなかった更紗は公園で文と出会い、そのまま文のアパートで寝泊まりしていたのです。

更紗と文の間には親愛のような絆が芽生え、更紗は文と居る時だけは本当の自分で居られました。

しばらく経つと、更紗は自分のことが誘拐事件と報道され警察に探されていることを知ります。

更紗は文が誘拐犯にされてしまうかもと焦りますが、文は「居たかったら居ても良い」と動じません。

この時、更紗は文にロリコンなのかと尋ねると、文は否定しませんでした。

更紗は文の言葉に甘えて一緒に暮らし続け、家出から2か月後に油断して外出してしまい、そのまま警察に捕まりました。

更紗は真相を警察にうまく説明できず、文は少年刑務所行きになりました。

あらすじ承:

事件から15年後。24歳になった更紗は婚約者の中瀬亮(横浜流星)と同棲して平凡で幸せな生活を手にしています。

更紗は幼少時に受けた性暴力が原因でセックスが苦痛でしたが、それは亮に言えませんでした。

そんなある日、更紗は職場近くにある夜間営業の喫茶店のオーナーが佐伯文であることに気付きます。

更紗は文と交流したい一心で喫茶店に足を運びますが、文は徹底して更紗に気付かないフリをしていました。

更紗は喫茶店通いを続けるうちに、文には谷あゆみ(多部未華子)という恋人が居ることを知り、文が『普通の幸せ』を手に入れていることを知り安心します。

一方で、更紗の外出が増えたことを怪しんだ亮は、更紗を束縛して関係が悪化し始めます。

そんな中、亮の家族に結婚の挨拶に行った更紗は、亮の妹から、亮は今までも更紗のような『複雑な環境で育ち、他に行くアテが無い女性』とばかり交際してきたことや、亮にDV傾向があることを聞きました。

あらすじ転:

その後、文と更紗の過去の繋がりを知った亮は、文の隠し撮り写真をネットに流す嫌がらせを行い、文の店は営業停止に追い込まれます。

文の写真をネットに流したのが亮だと知った更紗は、始めて亮と喧嘩しました。

文をかばう更紗が理解出来ない亮は、更紗に暴力を振るいます。

更紗は鈍器で亮を殴って家を飛び出し、気付いたら文の喫茶店の前にいました。

更紗の怪我に気付いた文は、声を掛けて喫茶店に入れました。
文は「もう関わらない方がお互いのためになると思ってた」と語りながら更紗を介抱します。

更紗は文を前科者にしてしまったことや、文のことをネットにさらしたのが婚約者だと告げて謝ると、文は更紗を許しました。

その後、更紗は亮の家に帰らず文の部屋の隣の部屋を借りてひっそり新生活を始めます。

亮は更紗の新居を特定して「今なら許してやる」と復縁を迫ると、更紗は「許されなきゃいけないことをした覚えはない」ときっぱり断りました。

引っ越しが終わって間もなく、更紗は同じレストランで働くシングルマザーの佳菜子(趣里)から、彼女の子どもで小学生の梨花を3日間預って欲しいと頼まれました。

更紗は快く引き受けて、文に手伝ってもらいながら面倒を見ますが、その後 佳菜子は蒸発して連絡が取れなくなりました。

さらに、更紗と文が一緒に居る現場が盗撮されて週刊誌に載ってしまい、更紗は『誘拐犯の洗脳が解けない元被害者(重度のストックホルム症候群)』に仕立て上げられて、働いていたレストランも辞めざるを得なくなりました。

一方、文は文の過去を知ったあゆみから別れを告げられました。

その後も文に対する嫌がらせが続くため、更紗は亮に会い「嫌がらせはもうやめてほしい」と頼みます。

亮は「俺じゃない」と言うので更紗が帰ろうとすると、亮は自分の手首を切って血を流しながら更紗を追いかけました。

更紗が救急車を呼んで病院まで付き添うべきか迷っていると、亮は「もういいよ」と言い更紗を解放しました。

あらすじ結:

その後、警察の事情聴取を受けた更紗は、警察が亮のことではなく文について質問するので疑問を抱きます。

警察は近所住民からの通報で、文に再び児女(梨花)誘拐の疑いをかけていました。

文は警察に取り押さえられて梨花は警察に保護されます。
更紗が事情を説明して文は逮捕を免れましたが、更紗も警察から「佐伯文に洗脳されて幼女をあてがっているのでは」と疑われました。

文に会いに行った更紗は、文が生殖器が成長しない(二次性徴が来ない)特殊な病気であることを告白されました。
泣きじゃくる文を、更紗は無言で抱きしめました。

その後、更紗と文はお互いの必要性を再確認して一緒に生きていく決意をします。

2人の上辺だけの過去を知った周囲の人間からは気味悪がられるので、噂が広まる度に生活拠点を変えながら、ひっそりと幸せに暮らしています。




解説・考察や感想など

一般社会に無理やり自分をはめ込んで生きるよりも、本当の自分で居られて、その分過酷な生き方を選んだ2人は、繊細に見えて本当はとても強かったんだなと思い勇気をもらいました。

ものすごく個人的な感想になってしまいますが、更紗と文が見ていたDVDが今敏監督の作品ばかりな所で地味にテンション上がりました(笑)

以下、口数が少なく雰囲気から心境を察しなければいけないことが多かった文についてを中心に気になった点などを考察していきます。

文は何の病気だった?

文に二次性徴が訪れなかったのは『類宦官症(るいかんがんしょう)』と呼ばれる病気を患っていたためと思われます。

私自身もこの映画で初めて知った病名ですが、男性特有の二次性徴(ヒゲが生える、生殖器の発達など)が適齢期を過ぎても訪れない病気です。

原因は先天性の染色体疾患(クラインフェルター症候群)や、幼少時に受けた化学療法の影響など原因はさまざまあるようです。

作中で病名が明かされないのは、恐らく文自身が病名を知らなかったからではないでしょうか。

文の母がこの症状を恥じて病院に連れて行かず、文も自分の体に強い劣等感を抱いてしまい、大人になってから自分で病院に行くこともできなかったのかもしれません。

他にも二次性徴が来ない症状が出る病気に『カルマン症候群』と呼ばれるものがありますが、こちらは特徴のひとつに嗅覚に異常が出ることが挙げられていて、文に嗅覚異常をほのめかすシーンは無かったので違うかなと思っています。

文の『死んでも知られたくないこと』とは?

更紗の失踪がニュースで報道された時、文は「逮捕されたら死んでも知られたくないことが明るみになるかもしれない」と言いました。

文の言う『死んでも知られたくないこと』は、文が患っていた類宦官症のことです。

母親は大人になれない息子を『欠陥品』と思い、恥ずかしさから病気を隠すだけで適切な対応を取らなったのです。

口にせずとも母がどう思っているかを感じていた文もまた、自分を恥と思い隠して生きてきました。

文がそう言いながらも更紗を匿い続けたのは、更紗に対する愛情もあると思いますが、心のどこかでは誰かに病気を知ってほしい願望があったからだと思われます。

文が逮捕された後、更紗はどうなった?

文と更紗が警察に引き離された後、更紗がどうやって生きて来たのかは語られず、24歳の更紗が叔母との関係が切れていることだけが示されていました。

こちらは原作小説に答えがあります。
更紗は事件の後は叔母の家に戻され、また孝弘に寝込みを襲われたので、孝弘を鈍器で殴って反抗しました。

この件がきっかけで、更紗は叔母の家を出て養護施設に引き取られました。

タイトル『流浪の月』

流浪の月
(引用:https://suumo.jp)

『流浪』は『さすらう、さまよう』という意味の熟語で、月は『無意識の世界(深層心理)』や『母性』の象徴とされています。

更紗と文が見ていたアニメが『パプリカ』だったのも、『深層心理』を強調していたように思えます。
(『パプリカ』は夢と現実を行き来する近未来SFです)

本作において、月は更紗と文がお互いのことを思っている時に眺めていたものです。

更紗と文は引き離された後、もう関わってはいけないと思いつつ無意識ではずっとお互いを求め続けていた点や、

煩わしい世間の目から離れてジプシー暮らし(流れ者)を選んだ2人の決断を表すタイトルでもあるのかなと解釈しています。

次のページに続きます!

2ページ目は『文はロリコンだった?』『文とあゆみの交際』『中傷ビラの犯人』などです。




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