『プラットフォーム』解説|ラスト考察、パンナコッタの意味、聖書とドン・キホーテとの関連など | 映画の解説考察ブログ

『プラットフォーム』解説|ラスト考察、パンナコッタの意味、聖書とドン・キホーテとの関連など

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プラットフォーム スリラー
©BASQUE FILMS,MR MIYAGI FILMS,PLATAFORMA LA PELICULA AIE

映画『プラットフォーム』の解説・考察をしています!
ラスト考察、パンナコッタの意味、子どもについて、ドン・キホーテや聖書との繋がりなどについて書いています。

鑑賞済みの方のための記事です。まだ観ていない方はネタバレにご注意ください。

プラットフォーム

原題:El Hoyo
制作年:2019年
本編時間:94分
制作国:スペイン
監督:ガルデル・カステル=ウルティア
脚本:ダビド・デソーラ、ペドロ・リベロ
原案:ダビド・デソーラ
この映画はR15+の年齢制限があります。
刺激の強い人肉愛嗜の描写がみられるためです。(参照:映倫

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※このページの情報は2023年6月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。

あらすじとキャスト紹介

キャスト

ゴレンイバン・マサゲ
『穴』と呼ばれる施設に自ら入所した男。
施設で起きていた深刻な食糧問題を解決しようとする。
※イバン・マサゲの出演作品…映画『ミリオネア・ドッグ』など

トリマガシソリオン・エギレオル
ゴレンと同室になった老人。「明らかだ」が口癖。
誤って人を殺してしまい『穴』に入れられたと語る。

ミハル(子どもを探す女)…アレクサンドラ・マサンカイ
イモギリ(犬を持ち込んだ元職員)…アントニア・サン・フアン
バハラト(黒人の男)…エミリオ・ブレア ほか

『穴』のルール

プラットフォーム

©BASQUE FILMS,MR MIYAGI FILMS,PLATAFORMA LA PELICULA AIE

まずは舞台となる施設『穴』の概要とルールを整理します。

正式名称は『垂直自主管理センター』です。
政府が関わる施設のようですが、意図や目的は不明です。
1部屋に2人ずつ入れられ、部屋には両端にベッド2つと洗面台とトイレと窓だけがあり、壁には階層を示す数字が彫られています。

部屋は1階層につき1つで、下は何階層まであるのか誰も知りません。(ラストでわかります)
入所者の最上階は1階層で、その上の0階層には入所者の食事を作る料理人たちが働く厨房があるようです。
各部屋の真ん中の天上と床には1.5m×2m位の長方形の穴が空いていて、穴をのぞくと上下に同じ部屋がいくつもあるのが見えます。

入所者の階層は1カ月ごとに変更されます。
月末の夜になると全部屋に催眠ガスが流し込まれて入所者は強制的に眠らされ、翌朝目覚めるとランダムで別の階層に移動しています。
部屋が変わっても相部屋の人物は変わりませんが、相棒が満期で出所するか死ぬかでいなくなると、階層が変わるタイミングで別の入所者が相棒になります。

食事は1日1回、部屋の穴と同じサイズの浮遊する食卓台『プラットフォーム』に乗せらて降りてくる豪華料理の数々が全てです。
第1階層から順にプラットフォームが降りていく配給方式のため、下の階層の人が食べるのは上の階層の人々の食べ残しです。
フォークやスプーンは無いので手づかみで食べるしかありません。
プラットフォームが1つの階に留まるのは10分程度で、時間が経つと自動的に下の階に降りていきます。
プラットフォームに乗る食べ物で入所者全員分の量があるそうですが、上の階層の人が食べ過ぎるので100階層位から下になると食べ物は残っておらず、下層の人々は食糧難に苦しみます。

プラットフォーム

©BASQUE FILMS,MR MIYAGI FILMS,PLATAFORMA LA PELICULA AIE

食べるのはプラットフォームがいる間だけしか許されず、食べ物を確保しようとすると、その部屋は室温が極端に上がるか下がるかのどちらかになり、食べ物をプラットフォームに戻さないと死んでしまいます。
プラットフォームが一番下まで降りると、0階までものすごい速さで戻っていきその日の配給が終わりです。

また、施設に入る時に1つだけ何でも持ち込むことを許されます。
多くの人は銃、ナイフなどの武器類や、懐中電灯など便利道具を持ち込む中、主人公のゴレンだけは小説「ドン・キホーテ」を持ち込みます。

 

あらすじ

主人公の中年男性ゴレンは『穴』と呼ばれる施設の48階層で目覚めます。
ゴレンは同室の老人で1年近く『穴』にいるというトリマガシからこの施設のルールと仕組みを教わりました。

ゴレンはこの施設に半年入れば政府から与えられるという『認定証』を今後の社会生活に役立てるために自ら施設に入りました。
一方トリマガシは誤って人を殺して逮捕され、精神病院か『穴』かどっちが良いかと聞かれて『穴』を選んだと言います。

2人がいる48階層はプラットフォームに乗ってくる食事の残量に余裕があるため食べるのに困りません。
トリマガシは良く言えば憎めない偏屈じいさんだったので、1ヵ月が経つ頃にはゴレンとトリマガシはすっかり仲良くなりました。

1カ月経ち、ゴレンは初めて階層チェンジを経験します。
2か月目の初日に目覚めると2人は171階層に移動していました。
この階層になるとプラットフォームに食べ物は残っておらず食料は皆無です。
ゴレンはトリマガシにベッドに縛り付けられて食料にされかけますが、プラットフォームに乗って現れた女性入所者ミハルに助けられました。

ミハルは自分の子どもが『穴』の中で迷子になってしまったと言い、頻繁にプラットフォームをエレベーター代わりにして階層を行き来して子供を探しています。
ゴレンはミハルに助けられると、勢いあまってトリマガシを殺してしまいました。
その後もゴレンに様々な試練が降りかかります。




解説・考察・感想など

プラットフォームの意味は?

プラットフォームと聞いて私が最初に思い浮かんだのは駅のホームでしたが(笑)簡単に言うと「様々な物事の土台や基盤」という意味があるようです。
例えば建物のプラットフォームは床下の基礎だったり骨組みで、パソコンやスマホのプラットフォームはOSです。

私たち生き物のプラットフォームは生命維持活動であり呼吸、食事、睡眠、排泄などが当てはまります。
この映画は食糧問題がテーマになっているので、タイトル『プラットフォーム』と何となく繋がってきます。

冒頭に『3種類の人間がいる 上にいる者、下にいる者、転落する者』というナレーションがはいります。
『這い上がる者』は?と一瞬思いますが、それは上の階層に自力で行った者がいないという意味なのでしょう。

 

『穴』と食料問題

『穴』では生きるのに必要な物は’理論上’供給されていますが、実際には食料が不足しています。

センターの元職員イモギリの話では「プラットフォームに乗っている食事で入所者全員分ある」とのことですが、実情は上の階層の人々が食べ過ぎてしまうので下の階層の人々は常に食料不足です。

こうなるのも無理はなく、上の階層にいる人々は「まともに食べられるのは今だけかもしれない」と思うと必要以上に食べがちですし、さらに先月下層で生き延びて上の階層にいる人は飢餓状態で食欲を我慢出来ず、みんな自分のことで精一杯で他者を気遣う余裕がありません。

食料の総量は足りているはずなのに食べれない人が出てくるということは、食事の配給方法に問題があることになります。
しかしセンターを作った人物(政府?)はトリマガシや導師いわく良心のない人たちで「必要最低限は与えているのだから責任は果たしている」「’自然に生まれる連帯感’で入所者がお互いを思い合えば全員食べられるはずだ(むしろそれが狙いである)」という考えのため何かを変えるつもりは無いようです。
食糧難が原因で死人が出ている時点でそんなレベルではないのに、管理者には良心が無く意見は変わらないようです。

『穴』で起きていることは、現実世界でも起きている食糧問題や格差社会の縮図になっていることは多くの方が気付いたと思います。
世界規模で見れば食料の量は全人類が食べられる分あると言われているのに、日本などの先進国では食料が余って毎日大量に捨てられる一方で発展途上国のアフリカなどは食糧難に苦しむ人が沢山います。

格差社会はどんな国や組織にも多かれ少なかれあるものですが、富裕層はより豊かになる一方で貧困層はいつまでも貧困から抜け出せない構造が『穴』でも簡潔に再現されています。

 

聖書との関連

この映画には聖書になぞらえていると思える描写がいくつかあったので、気付いた部分を紹介します。

私の肉を食べ 血を飲まなければ命はない

私の肉を食べ 血を飲まなければ命はない
食べて飲んだ者は永遠の命を得て 最後の日に私が復活させる
私の肉こそ食べ物であり 私の血こそ飲み物だ
食べて飲んだ者は私の中に生き その者の中に私が生きる

イモギリが自殺した後、ゴレンが妄想で聞いたイモギリの言葉はヨハネによる福音書の6章54~56節です。
ヨハネによる福音書は主にイエスの半生と思想が書かれたもので、著者ヨハネはイエスが最も信頼したとされる3人の愛弟子の1人です。

この後ゴレンはイモギリを食べて生き延びるので、イエスの弟子のような役割を与えられたようにも見えてきます。

 

333という数字

「3」はキリスト教では聖なる数字で神を表すと言われ、「三位一体」など挙げればキリがない位登場します。
キリスト教だけでなく、仏教でも3は「早起きは三文の徳」「三種の神器」など縁起の良い数字とされています。
その3が三つ連なった「333」はエンジェルナンバーとも言われ、「333」を偶然見たら幸福の前触れとされています。

ゴレンはトリマガシ(死者)に呼ばれて行ってしまったので、最下層にたどり着く前後で恐らく死んでしまっています。
『穴』から魂だけでも解放されたことは幸福であり「死こそ救済」という皮肉なのかもしれません。

1部屋に2人ということは『穴』の収容人数は理論上666人になります。
666と言えばヨハネの黙示録に登場する有名な『獣の数字』であり、獣とは悪魔そのものだったり、悪魔に従う人間(神を信じない人や悪魔崇拝者)を指すとも言われています。
「666人の収容者」には人間の愚かさや未熟さが示唆されているように思えました。

 

次のページに続きます!

2ページ目はミハルについて、ラスト考察、パンナコッタの意味などです。




感想などお気軽に(^^)

  1. 匿名 より:

    ミハルの子どもはVSCに入ってから産まれた、と仮定することもできるでしょう。
    イモギリを憎んでいるのであれば直接手をかけるはずです。子どもと離ればなれになる苦しみを味わってもらいたいからイヌを殺したという解釈もできそうです。

  2. 匿名 より:

    333階の子供は確実に幻想だったと思います。理由は元管理員の人(名前は忘れました)が16歳以下は入れないようにしていると言っていたからです。

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