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鏡を割るルー
『割れた鏡』は『割れた鏡に映ったり鏡を割った人物が破滅する』ような隠喩表現として使われる場合が多いですが、本作の場合はちょっと違います。
ルーはニーナに『良い映像を提供し続ける』ことと引き換えに肉体関係にこぎつきましたが、ニーナと初めて寝た後の一番期待されていたタイミングで仕事がうまくいかず、ニーナに失望されます。
落ち込んで帰宅したルーは、自宅の洗面台で思いきり叫んで鏡を割りました。
このシーンには、ルーが『道徳心やモラルが仕事の邪魔になると判断し、倫理観を自ら破壊した』ことが、鏡を割ることで表現されています。
その後、ルーはライバルであるジョー・ロダーを事故らせて、話題のレイプ事件よりもあえて大けがしたロダーの撮影を行います。
ルーは仕事に戻る前にロダーの無残な姿を生で見ることで優越感に浸り、自信を取り戻したのです。
ロダーはルイスが犯人だと悟ったのか、同業者である自分までネタにするかと思ったのか、両方なのかはわかりませんが、殺意のこもった目でルイスをにらみつけていました。
ニーナがルーの条件を飲んだのはなぜ?
ルーが提示した条件はルイスにメリットのある条件が多く、ニーナにメリットは少なそうだったのに、なぜニーナはOKしてしまったのでしょうか。
ニーナが一番欲しがっていたものはキャリアであり、そのために正社員になることを望んでいました。
彼女が出世するのに必要なのは視聴率であり、視聴率を上げるためには、誰もが見入ってしまうような刺激的な事件・事故の映像が必要で、そういう映像をニーナの所に優先的に持ってくるのはルーだけでした。
ニーナは出世とルーの条件を天秤にかけて、出世の足掛かりになると確信してルーの条件を飲んだと思われます。
ニーナが求める『ストーリー』とは?
ニーナがグラナダヒルズ事件が麻薬がらみだったことを報道しなかったのは、家族が殺された理由がニーナの理想とは違っていたからです。
ニーナの言う『ストーリー』とは『犯罪の少ない安全な郊外に暮らす”何の罪もない”富裕層の人(特に白人)が、ある日突然、誰もが同情するような可哀想な被害にあう』というような悲劇的なものです。
グラナダヒルズの事件は当初、単純に富裕層家庭を狙った強盗と思われていましたが、後に被害者の自宅から大量の麻薬が見つかりました。
これは殺された白人家族の誰かが麻薬売買に関わっていたことを意味し、白人家族は純粋な被害者ではなく、彼らもまた犯罪者だった可能性が濃厚になります。
ニーナが真実を報道しないと決めた点が、彼女は真のジャーナリストではなく出世欲の強い報道関係者であることの証拠であり、同時にルーと人間性が似ていた(もしくはルーの影響を受け価値観が変わった)ことを示しています。
ルーが育てていた植物
ルーが自宅に置いていた紫色の花の鉢植えに水やりしているシーンが何度かありました。
ルーがカメラマンを始める前から咲いていたその花は、映画の終わりになっても咲き続けています。
見た感じサルビアっぽいですよね。
サルビアは条件さえ良ければ日本でも最大半年程は咲いてくれる花で、一年中温かいロサンゼルスならもっと長期間咲くのかもしれません。
しかし問題はその『条件』です。
サルビアのようなガーデニング向けの花は日光が沢山当たって風通しが良い場所、つまり明るい屋外で育てないとすぐに枯れてしまいます。
そうなるとこの花は造花、もしくは超強力な活力剤で無理やり開花状態を維持させていたと考えられますが、個人的には造花じゃないかなと思ってます。
もし造花だったとすると水をあげてること自体怖いですし、造花だと気づかずに水やりしているとしてもそれはそれで問題ありです。
これも何かのメタファーだと思うんですが、造花に水やりしてしまうルイス・ブルームの恐さ(異常性)を表現したかったのかもしれないし、『ブルーム(bloom)』には『花が咲く』という意味があるので、それと掛けていたのかもしれません。
サイコパスは自分にしか興味がないので、可愛いのは自分自身(ブルーム)だけであることを強調していたのかもしれません。
その他感想など
ルーの築いていく合理的な人間関係、ギラギラの眼光も見ものですが、ルーの危険運転もこの作品の見どころです。
とくに犯人の車とパトカーの追いかけっこをルーが追いかけるシーンはキレッキレでした。
ちなみにですが、本作のヒロインであるニーナ役を演じたレネ・ルッソは監督ダン・ギルロイの奥さんです。
ルイスとニーナの濡れ場的なシーンが一切なかったのは、だからかな~とか余計なことも考えてしまいました。
作品のイメージとして人と触れ合うシーンをあえて使わなかったのかもしれませんが。。
本作が初監督となったダン・ギルロイは、筆者の大好きなマット・デイモン主演の『ボーン』シリーズの脚本を手掛けたトニー・ギルロイの弟さんのようです。
兄弟そろってすごいですね~
あと、テレビ局のスタッフ役で出演していたアン・キューザックは、映画『マルコヴィッチの穴』や『推理作家ポー 最期の5日間』などのジョン・キューザック氏のお姉さんなんですって。地味に意外でした(笑)
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