「メメント」解説考察|レナードの正体、電話の相手、ナタリーの目的など | 映画の解説考察ブログ

「メメント」解説考察|レナードの正体、電話の相手、ナタリーの目的など

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メメント サスペンス

映画「メメント」の解説考察記事②です。
「レナードの正体」「テディを殺した理由」「テディの目的」「遺品を焼く理由」「タトゥーの意味」「電話の相手」「ナタリーの目的」などについて書いてます。

メメント

原題:MEMENTO
制作年:2000年
本編時間:113分
制作国:アメリカ
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
原作:ジョナサン・ノーラン

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解説・考察、感想など

この記事を読んで皆さんの疑問が解決すれば嬉しいです。

レナードの正体は

メメント

©2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC

レナードは表向き(?)は妻を殺した男に復讐しようという、いかにもクライム映画の主人公らしい人物ですが、実際のところは記憶障害に翻弄され、記憶がリセットされる度に湧き上がる負の感情に囚われた連続殺人犯でした。

レナードは「探偵ごっこ」を続けるために資料をわざと一部抜き取ったり、ジョン・Gを殺した証拠写真(復讐を果たした証)を破棄したりして記憶が消えるのを待ち、再びジョン・Gを探すことを繰り返していました。

胸に「I’ve done it.」のタトゥーと、そのタトゥーを撫でる妻がレナードの脳裏に浮かぶシーンが登場することから、レナードは心の底(無意識)では復讐が終わっていることを知っています。
それでもレナードが探偵ごっこを続ける理由は、復讐を終えた先の未来が、医療施設で虚しく余生を過ごすことになるとわかっているからなのでしょう。
妻の死を覚えていないサミーの方がレナードよりマシかもしれません。

施設に閉じ込められているよりは、たとえ偽りでも10分置きにこみ上げる悲しい記憶に対抗できる明確な目的を持って行動している方が精神的にも救われます。

 

レナードとサミーの話の関係は?

メメント

©2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC

レナードが何度も話していたサミーについてです。
おさらいですが、サミーはレナードが保険調査員をしていた頃のお客さんで、交通事故の怪我の後遺症で前向性健忘を患い記憶が2~3分しか保てなくなった男性です。
医師による診断の結果、サミーの記憶障害の原因は頭の怪我でなく精神的なものであることが判明しました。

サミーが回復する希望を捨てきれなかった妻は、悩んだ末に自らを犠牲にしてサミーを試しました。
糖尿病を患っていた妻は毎日決まった時間にインシュリンの注射を打つのが日課で、注射を打つのはサミーの役目でした。
妻はサミーが忘れる頃を見計らって数分置きにインシュリン注射を何度も打たせて、サミーが注射を打ったばかりだと思い出してくれるのを待ったのです。
妻の願いも虚しくサミーは妻が頼めば何度でも注射を打ち、妻はインシュリンの過剰投与で亡くなりました。
サミーはその後、施設に入れられて妻が死んだことも忘れて過ごしています。

以上がレナードが話すサミーの話の概要です。

しかしテディによると、実際にはサミーの症状は演技だったことが判明して保険金の許可が出なかった客でした。
しかもサミーは独身で、糖尿病だったのはレナードの妻であり、しかも彼女は強盗事件の時には死なず、妻を殺したのはレナード本人だったと言っています。

テディの話が真実だとすると、サミーは『レナード自身の葬りたい過去』を背負わせた架空のキャラクターだと解釈できます。
レナードの記憶のフラッシュバックに妻に注射するシーンが登場したのは、テディが真実を語っている証拠なのかもしれません。

そうなると、レナードの身に置きた真実は以下のようになる可能性が高いです。

強盗事件ではレナードも妻も生きていた。
その後、レナードは前向性健忘を患ってしまい10分以上記憶が保てなくなる。
妻はレナードを看病し続けるも、次第に限界が来る。
妻は死を覚悟でレナードにインシュリンの注射を10分置きに打たせて、レナードが記憶を取り戻してくれることを願ったが、レナードは気付かず、妻はインシュリンの過剰摂取で死んでしまう。
妻の死亡後、レナードは一人暮らしは危険と判断されて施設に入れられた。

この真実が受け入れられないレナードは無意識のうちに自分に起きた出来事をサミーに置き換えて記憶を捏造し、強盗犯への復讐を生きがいにするという選択をしたのでしょう。
簡単に言うと現実逃避です。
レナードは妻が死んだ後、記憶障害に加えて精神障害も発症してしまったのかもしれません。

では本作に登場したレナードは、施設から脱走したか、施設にいるレナードが脳内で繰り広げている妄想ということになります。
そうなると、現実か妄想かを判断する手がかりとして『テディの免許証の日付』が登場します。

メメント

©2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC

ナタリーが用意したテディの免許証の有効期限は存在しない日付(2001年はうるう年ではない)でした。

この書類はナタリーが作らせた偽造書類か?とも考えたんですが、ちゃんとテディの顔写真もあるし作るの難しいですよね。。
そうなると、この物語はまるごとレナードが作り出した妄想である可能性が高くなってきます。

すべて夢なら、多少の矛盾は『夢だから』で片付いてしまいます。
リアリティを追及すればそもそもの設定に若干無理があるというか、10分間しか記憶が保てないなら、そのほとんどは現状の把握や入れ墨の確認に使われてしまい、把握できた頃にまた忘れて振り出しに戻ってしまったり、10分以上経ったのに自分の車を覚えている点など、細かい所で弊害が沢山出てきます。
レナードが事件よりも前のことを覚えているなら、注射のやり方は覚えていて妻の糖尿病は忘れているというのも変ですよね。

駐車場所や部屋番号、入れ墨の内容など細かい事も全て忘れていちいち立ち止まっていたら話が進まないので、そこはしれっと進めてしまって、細かい矛盾は『夢だから』で済ませようとする制作側の『逃げ場』としての日付設定だったような気もします。

すべてが妄想だとすると、テディやナタリーも(全部なんですが)レナードの分身ということになります。

だとすると、テディはレナードが『現実と向き合いたい』という思いを反映した存在で、ナタリーは『復讐心』や『憎しみ』を象徴する存在に置き換えられます。
本作は、レナードが抱える葛藤を夢妄想という舞台を通して表現したものだったのかもしれません。

 

なぜテディを殺したのか


(引用:https://chrispalmen.files.wordpress.com

レナードはなぜテディを殺そうと決めたのか整理します。

真実を語るテディを殺すことは、レナードが現実逃避と探偵ごっこを続けることに決めたという意思の表れです。

レナードはテディに『利用されたこと』よりも『真実を語りかけてくること』に殺意を覚えたのです。

もし物語が妄想ではなく現実だったとしたら、レナードはある意味『協力者』を失ったことになります。
本物の犯人を殺してからの約1年間、連続殺人犯になってしまったレナードが逮捕されないように上手く取り計らっていたのはテディです。
協力者が消えた今、レナードは間もなく逮捕される、もしくはマフィアに消されることになるでしょう。

 

テディの目的


(引用:https://www.seeing-stars.com

テディについて考えます。
テディはレナードが本物のジョン・Gを殺してからの約1年、レナードを利用して麻薬絡みの人間を殺し、金を得ていた悪人のようです。

テディは自らの職業を『麻薬の秘密捜査官(警察官)』と言っていましたが、本当に刑事だったのかはぶっちゃけ疑わしいですが、テディの言葉を信じるなら汚職刑事が正しいです。
まぁ妄想とすれば職業はどうでもよくなってしまいますが。

個人的に気になったのは、レナードに「刑事か?」と聞いた時、テディは答える前にバートの様子を伺っていたシーンです。
秘密捜査官なので正体をむやみに知られたくないと言う意味で、バートが会話を聞いているかどうか伺うのは納得できますが、わざわざこの描写を入れて怪しい雰囲気を増したのは、レナードの気分を少しでも体感してもらうためだったんでしょうか。
答えはわかりませんが、個人的にこの描写の意味が気になります。

話を戻してテディの目的についてです。
レナードの物語が現実である前提で考えると、テディの目的はジミーの車のトランクに入っているカネで、それを回収したくて常に近くにいたのでしょう。
レナードは不用心にも殺した男の車に乗っているので、いつ逮捕されてもおかしくない状況です。
テディはレナードが逮捕される前にしれっと金を回収したくて常に近くにいたのです。

レナードが車のカギをかけ忘れていたのか、車に乗ったら既に助手席にテディがいるシーンがありますよね。
最初、車のカギが開いていたならお金を持ち逃げしてしまえばいいのにと思って矛盾を感じていましたが、当時の車ってドアは開いていてもトランクは閉まったままで、その都度カギをトランクの鍵穴にささないと開け閉めできない仕様になってるんですね。
今の車はボタンひとつで全てのカギが同時に開いたり閉まったりするし、そういうタイプの車しか知らなかったのでプチ驚きでした。
これは、本作を見た後に見たブラピとハリソンフォード主演の『デビル』を見て、車のトランクを開けようとするシーン見てなるほどと思いました。

また逸れてしまいましたが、もしこの話がレナードの妄想だったとすると解釈は簡単です。
テディは『もう一人のレナード』なので、レナードに真実を思い出させるためにいつも近くに居て警告していたことになります。

次のページに続きます!

次はジミーの服と車を奪った理由、遺品を焼く理由、タトゥーの意味、電話の相手、ナタリーの目的などについてです。




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