映画『検察側の罪人』解説・考察②|諏訪部、沖野、ラストと容疑者殺害の真相など! | 映画の解説考察ブログ

映画『検察側の罪人』解説・考察②|諏訪部、沖野、ラストと容疑者殺害の真相など!

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ミステリー

映画『検察側の罪人』の解説、考察パート2です!

この映画、私にはすごく難しかったので私なりに様々な疑問について整理しました!
主に諏訪部、沖野、丹野、その他諸々について記載しています。

制作年:2018年
本編時間:123分
制作国:日本
監督・脚本:原田眞人
原作小説:『検察側の罪人』雫井脩介 著
この記事は鑑賞済みの方向けの考察記事です。
まだ観ていない方はご注意ください。

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諏訪部について

検察側の罪人
(引用:https://happyeiga.com

何かと最上に肩入れしていた諏訪部についてです。

諏訪部の取り調べは何だった?

沖野が初めて最上に任せられた取り調べの相手は諏訪部(松重豊)という闇ブローカーでした。
最初の諏訪部の取り調べは『老夫婦殺人事件』とは全く別件で、この事件が起こる前に最上が担当していた事件についての取り調べです。

この取り調べの際、諏訪部はゲームを提案しました。
私は麻雀を嗜まないので諏訪部が言っていた『エアマージャン』がどんなもんかわかりませんでしたが、とにかく沖野がゲームに勝てば、検察側にとって有利な証言内容が書かれた調書にサインするが、もし負けたら諏訪部に橘と『大人のデート』をさせろ、というものでした。

橘は「受けてください」と勧め、諏訪部は「最上君は勝ってたよ」と言いますが、沖野は悩んだ末に断ります。

このシーンは『俳優としての喋りの演技の見せ場』でもあり、『沖野はどんなに周囲が許しても間違っていると思ったことはしないタイプ(周囲の意見に振り回されないタイプ)』という性格を観客に印象付けるためのものだったと思われます。

 

諏訪部が最上の味方だった理由

検察側の罪人
(引用:https://blog.goo.ne.jp

諏訪部は漠然と「自分が生まれたのは最上の祖父のおかげ」という思いがあったので、恩人の孫である最上に対してもちょっとした恩を感じていたようです。

諏訪部は恐らく子どもの頃に何度も父から最上の祖父に助けられた話を聞いていたのかもしれません。
子どもの頃から聞かされていた恩人の血縁者に友好的感情を抱くのは当然だと思います。

また、最上の祖父が戦後に執筆した『白骨街道』の話を聞きたがっていたことも、諏訪部が最上に積極的に味方した理由です。

『白骨街道』と『インパール作戦』がわからん!という方は以下記事をご参照ください。

・Wikipedia:インパール作戦




沖野について

打倒最上に執着した沖野についてです。

沖野も実は『己の正義』に固執していた

検察側の罪人
(引用:https://ameblo.jp

沖野は最上が『己の正義』に固執することが許せませんでしたが、沖野も実は『己の正義』に固執していたのではないでしょうか。

沖野は最上の計画を阻止するために「業務上知りえた情報を敵対組織に流す」という違法行為をしていたからです。
小田島が指摘すると、沖野は「黙っていればバレない」とあっさり言ってのけました。

沖野は『最上を倒すこと(己の正義)』に固執しています。

ラストで最上が語っていた「己の正義に固執しないと強く生きていけない」という台詞にも当てはまっていたように思えます。

 

沖野の咆哮の意味

ラスト、最上と別れた後で沖野は空に向かって苦々しい叫び声を上げます。

これは、沖野が上の章で説明したような『己の正義』に固執していたことに沖野自身が気付き、最上の正しさを思い知らされたと同時に『正義』がわからなくなってからの咆哮だったと思っています。

沖野は最上の計画を阻止するために松倉の無罪放免に貢献しました。
その後、祝賀会で松倉は恩人のはずの沖野に暴言を吐いた上、橘を思い切り突き飛ばしてケガさせます。
この時、沖野は『俺はこんな奴を助けるために検事を辞めてまで必死になっていたのか』と疑問を抱き、少なからず後悔したはずです。
沖野は正義を全うしたのに、心から『良かった』とは思えなかったということです。

その後、最上と再会した沖野は、最上が次の正義に向かって突き進もうとしていることを知ります。
最上は沖野に協力して欲しいと言われますが、沖野はそんな最上に「必ずあなたの犯罪を暴きます」と宣戦布告して別荘から出ます。
沖野は、最上がこれから親友のために巨悪に立ち向かおうとしているのに、それすらも阻止しようとしている自分に気が付きます。
そしてその行動原理が「最上を倒したい」という沖野の『固執』から来ているのだと気が付いたのでしょう。

そして、己の正義に固執していたのは自分も同じだったことに気が付き、「最上の罪を暴こうとするのは真の正義なのか」「松倉を釈放した自分は正しかったのか」など疑問が渦巻いて、正しさがわからなくなって咆哮した、という解釈です。

次のページに続きます!

2ページ目は丹野の自殺理由、トラトラトラ、ガベルのコレクションについてなどです。




その他諸々

丹野についてやその他細かい疑問について考えました。

立会事務官ってどういう仕事?


(引用:https://blog.goo.ne.jp

橘沙穂の仕事だった立会事務官について知識がほぼなかったので調べました。

立会事務官は『検察事務官』とも呼ばれます。
主な仕事は被疑者などの取り調べの立ち合い、必要な手続き処理、書類の作成などです。
仕事に就くには国家公務員の資格が必要です。

『捜査公判部門』『検務部門』『事務局部門』の3つの部署に分かれていて、橘は捜査公判部門に配属されて、沖野や最上と関わりました。

立会事務官についての詳細は以下をご参照ください。

職業情報提供サイト:検察事務官

 

最上と丹野の密会理由・記者にマークされていた理由

最上と丹野は同じ大学法学部の同期で親友でした。
最上がホテルのバスルームに入った時はBL展開をうっかり期待してしまいましたが、そうではなく人目を避けなければいけない状況だったようで、舟木(三浦誠己)という記者が「噂の最上と丹野を調べている」みたいな発言をしてました。

情報を整理してみると、政治家の丹野には闇献金疑惑がかけられていました。
その真相は恐らく以下です。

丹野の妻と義父の高島(矢島健一)は極右組織(ネオナチ)に闇献金を行っていた。


闇献金に気付いた丹野はもうやめるよう説得しようとするが、既に極右思想に染まっている妻は義父と結託して一歩も譲らなかった。

どうしても許せなかった丹野は闇献金の証拠を盗み、真実が世間に知れること(高島と妻への法的制裁)を期待してマスコミに渡した。

マスコミは高島からの報復を恐れ、丹野が情報を漏らしたことを高島に報告してしまった。(マスコミに裏切られたと言っていたので)

高島は「『丹野が闇献金した』という内容で記事にしろ」とマスコミに指示。(出版社に報酬を払った可能性もあり)
丹野が闇献金の容疑者になってしまう。

闇献金疑惑の丹野とうかつに会ってしまうと、最上も疑われてしまいかねない状況下にあります。
だから最上と丹野は密会していたんですね!

記者の舟木は恐らく丹野の疑惑が真実かどうか調べようとしていて、丹野と最上が仲良しだと気づき、闇献金に関係しているのか知りたがっていたのでしょう。




丹野議員はなぜ自殺した?


(引用:https://moviewalker.jp

丹野は逮捕される前日に妻の極右仲間が経営しているホテルから飛び降りて自殺してしまいました。
丹野は闇献金の疑惑に対して無実を訴えるために自殺したのでしょう。

政治家が身の潔白を訴えるために自殺するのは昔は多かったイメージがあるのでそう思っただけですが、なんとなく『無実の証明→自殺』って現代の風潮には合わない気がします。

最上が協力すると言ってくれたのに断って自殺を選んでしまったことを考えると、無実の証明以前にうつ状態だったのかもしれません。

丹野の「体制側のお前にはわからない」という発言は、全てを諦めていた(絶望で戦う気力が残っていないけれど、冤罪で逮捕されるのも嫌だった)ように感じました。

丹野の死後、警察やマスコミが高島グループに疑問を抱くような描写も無かったので、もし無実の証明のためだとしたら完全に無駄死にだった気がします。

 

「日本を戦前レベルに引き戻そうとしている」とは?

まず右翼、ナチズムなどについて詳しくなかったので、さらっと調べました。

右翼思想』はかなりおおざっぱに例えると「日本人が一番尊くて偉い。他の国は日本より格下」のような選民思想的な考え方のことです。
国に対してだけではなく、人種や地位など様々なくくりがあります。

そして『極右』は極端な右翼思想で、過激な発言や行動をしがちな傾向を意味します。
丹野の妻は世界極右会議に参加したと言われていたので、彼女はそういう思想の持主だったのでしょう。

ナチズムもほぼ右翼思想と同義語だと思います。(違っていたらすみません。)

ネオナチ』は、右翼思想を社会全体に浸透させようとする活動を意味します。

最上と丹野の「高島は日本を戦前レベルに引き戻そうとしている」という発言は、右翼団体の活動が最も盛んだった第二次世界大戦前(1930年代)のような社会を作ろうとしていることを意味しています。
右翼活動が盛んになると、日本に住んでいる外国人の排除から始まっていずれは戦争が起こります。

 

トラトラトラ

松倉が死亡した後、諏訪部と関わりのある運び屋の女(芦名星)が「トラトラトラ」と言っていました。
『トラ・トラ・トラ』は太平洋戦争が始まった頃に編み出された暗号、のようなもので、『奇襲成功』を意味します。

また、運び屋の女が唖者で機械を使って声を出しているのが印象的でした。
喉に手術痕のようなメイクも特に無かったので、生まれつきだったり幼い頃からなのではと思いますが、全く触れられないのでわかりません。
原作には何かあるのかもしれません。




松倉を殺したのは誰?

弓岡が犯人でほぼ確定したため松倉は釈放されましたが、祝賀会の後に諏訪部の関係者に殺されてしまいます。
車を運転していた男は「ブレーキを踏んだつもりだったのにな~」とあらかじめ準備していた台詞を喋るのみで、誰だったのかは明かされませんでした。

最上は諏訪部から「松倉を殺れと依頼してくれ」と言われた時、「俺は殺人の依頼はしない」と答えました。

一方で、ラストで沖野が「弓岡の失踪も松倉殺しも最上さんが関わってると思う」と言った時、最上は何も答えませんでした。
最上は松倉が釈放されて悔しいどころではなかったでしょうが、彼は松倉を法で裁くことに固執していたので、最上が依頼したとはやはり考えにくいです。
かと言って諏訪部が依頼も無しに独断で殺したりもしない気がします。

そうなると一番可能性が高いのは千鳥ではないでしょうか。
弓岡は居なくなってしまいましたが、息子としても何らかの形で復讐しないと気が済まないし、ヤクザの親分としても誰かを血祭りにあげないと顔が立ちません。
なので、第二候補だった松倉を殺してしまったのです。

次に考えられるのは、最上に強い恨みを持つ被害者遺族からの依頼です。
白川弁護士が登場していたことから、松倉の冤罪事件は白川がマスコミにネタとして提供していた可能性が高いです。(白川はマスコミを使った戦法が得意だったので)
マスコミを通して松倉の名前を見た被害者遺族が行動を起こした、とも考えられますが、でも被害者遺族が都合よく諏訪部と出会うのも都合が良すぎる気がするので、やっぱり千鳥の線ですかね。

 

ガベルのコレクション


(引用:https://newspicks.com

最上が集めていたガベルは「最上が信じる正義」の象徴、『正義の剣』を具現化した物だったように見えました。
ガベルの扉が閉ざされるのは弓岡を殺す直前です。
この時だけは、最上の武器は『法律』ではなく『銃』になるからです。

その後、再び松倉についての冤罪ストーリーを作り上げている時にもガベルの扉が開いていたので、開く時は最上が『己の正義』に従って行動している時なんだなと感じました。

解説、考察は以上です!読んで頂きありがとうございました。
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