ジブリ「かぐや姫の物語」ネタバレ解説考察|罪と罰の意味、月の仏様の狙いとは? | 映画の解説考察ブログ - Part 2

ジブリ「かぐや姫の物語」ネタバレ解説考察|罪と罰の意味、月の仏様の狙いとは?

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かぐや姫の『罪と罰』とは?

かぐや姫が媼に「地球に興味を持ったことが自分の罪だ」と話をしていましたが、なぜそれが罰になるの?といまいちピンと来なかったので調べました。

原作の竹取物語は仏教(特に天台宗や浄土宗など)の考え方に強く影響を受けています。
仏教を信じる者が目指すのは『涅槃(ねはん)』です。
涅槃とは仏教用語で『悟りの境地』を意味し、煩悩や感情に支配されることなく、悩みや苦しみが存在しない、完全に穏やかで安楽な世界(極楽浄土)にたどり着き、最終的に自分自身が仏様になることが最終目標です。

仏教において『人間として生きること』は苦しみそのものと考えられ、地球で人間として輪廻転生を繰り返すのは苦行です。
仏様の教えに沿って修業を積めば、いつか輪廻転生から脱却して涅槃の世界に行くことができます。
仏様は『喜怒哀楽の存在し、良いことも悪いことも沢山ある山あり谷ありの世界』よりも『苦しみも悲しみも無い代わりに嬉しい事や楽しい事も無い、静かな水面のようなとことん平穏な世界』を好みました。
竹取物語では、この涅槃の世界が月であるという風に描かれています。
つまり月に住む天人たちは皆、地上で修行に励み涅槃にたどり着いた者たちです。

天人たちから見れば、地上は未熟者の集まる場です。
修行の末に涅槃に至った月の者が、未熟者が集まる地球に対して興味や憧れを抱くのは、それ自体が未熟者の証となり、罪になるのです。

そして地球に憧れてしまったかぐや姫に与えられた罰が、もう一度地球で生きることでした。
地上で人間として生きる苦しみをもう一度味わえば、かぐや姫は仏様の教えを思い出し、地球に未練は無くなるだろうと仏様は考えたのです。

こうしてみると、かぐや姫は地上に憧れたのに、罰が地上に行くことなのは変な感じというかむしろご褒美のような気がしますが、姫が愛した両親や捨丸と引き離され、人生の途中で再び月に戻される苦しみも含めて罰だったのかもしれません。

こんな酷な罰だと かぐや姫は地上に対する思いは逆に強くなってかぐや姫が話していたような『泣いていた天人』のようになってしまう気がします。
それも含めてすべて罰なのか、泣く天人の存在が仏様の教えの矛盾を暗に指摘しているのかはわかりませんが、この辺の解釈は人それぞれですね。




天人はなぜ翁に砂金と高価な布を贈ったのか

かぐや姫の物語

©2013 畑事務所・Studio Ghibli GNDHDDTK

かぐや姫の罪と罰を理解した上で、月の天人が翁に砂金と高価な布をプレゼントした理由を考えてみます。

かぐや姫に罰を与えた天人(仏様)の狙いは、かぐや姫に人間として生きる苦しみを思い出させ、地球への未練を捨てさせて涅槃の幸せを再確認させること(初心にかえらせる)です。

そもそも天人たちは仏教の教えにすがって涅槃に救いを求めた人々の集まりです。
見方を変えると、天人たちは人間だった頃にそれほどつらく苦しい経験をして、人間として生きるのが心底嫌になり、感情を捨てて『無』になることを自ら望んだ人々の集団です。
かぐや姫もまた人間だった頃はそれほど苦しい思いをしたのでしょう。

かぐや姫に地球への未練を捨てさせるのに最も効果的なのは、かぐや姫が本当に人間だった頃に仏教にすがった理由を思い出させることです。
なので天人たちは、かぐや姫が涅槃を求めるきっかけとなった体験を、地球に追放して再体験させていたのではないでしょうか。

かぐや姫が最も避けていたのは『愛の無い結婚』でした。
恐らくかぐや姫は人間だった頃も両親や周囲の思惑に利用された末に愛の無い結婚をさせられて不幸になり、涅槃を求めたのです。

そういう視点で見ると、上昇志向の強い翁がかぐや姫の保護者として天人に選ばれたのは偶然ではなかったのかもしれず、天が翁に財産を与えたのは、翁の内に眠る上昇志向を目覚めさせ、5人の高貴な公や御門からの求婚(愛の無い結婚)に繋げる足掛かりのためだったのではないでしょうか。

 

かぐや姫が月に戻っているとき、地球を振り返るのは?

かぐや姫の物語

©2013 畑事務所・Studio Ghibli GNDHDDTK

かぐや姫が月に戻っていく時、画面から色味がなくなりセピア調になります。
これは羽衣をまとった姫が記憶と感情を失くしていく様子が表現されたものです。
姫が地球を振り返った時だけほんのり画面に色が戻り、姫は地球を見て目に涙をためます。
姫は羽衣をまとうことで、地球で感じた『様々な感情(彩り)』を失いました。

かぐや姫は月に帰った後、地球を見る度に『失った彩り』を感じてこっそり泣く天人の1人になるのでしょう。

『泣く天人』が存在するのは、月の羽衣をまとっても魂からは感情や記憶を消せない証拠です。

 

最後に月に赤ちゃんが映る場面

ラスト、月に赤ちゃんが映し出されるのは、主題歌『いのちの記憶』とも関連していそうです。

かぐや姫が地球で生きた『いのちの記憶(魂の記憶)』は、たとえ羽衣をまとって感情を失くしても、人間として生きた記憶や感情を魂は忘れていないということを暗示していたように思いました。

かぐや姫が月に帰る途中で地球を見て目に涙をためていたことから、かぐや姫は月に帰ってからも地球を見るたび、なぜか悲しくなりあの天人のように涙を流すようになるのでしょう。

以上です!読んで頂きありがとうございました。
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